クラリッサは優雅な微笑みでわたしに声をかけた。
「クローディア、あなたはエッグハントに加わらないの?」
わたしはひきつりそうな笑顔で首を振った。
「わたしはいいの……」
冗談じゃなかった。そんなお子様向けのお遊戯なんて心底ご免こうむりたい。きゃいきゃい黄色い声を上げて馬鹿げたカラフルな卵の殻を探しまわる子どもたちを見るとうんざりした。空気を冷ましたいわけではないけれど、自分もやろうとはちょっと思えない。
(ノリが……違うのよ……)
あまりのテンションの違いに連想的に前世の職場を思い出していた。やあ、みんなおはよう!今日も最高の一日にしよう!式の職場を。
(自営業万歳だわ)
そういうわけでわたしは隅っこで目立たないように“絶”をしていたのだった。なのになぜ見つけてわざわざ声をかけてくるのだろうか。
「退屈してるんじゃない?」
「まさか。そんなんじゃないわ」
居心地悪い思いをしているだけだ。わかっているだろうに。彼女はまったく意地の悪い女だった。
「そう? あなたには子どもっぽすぎたかと心配していたの。でも寂しいイースターを過ごすのもつまらないじゃない?」
にゃーお! クラリッサは鋭い鉤爪でわたしをいたぶりにかかった。
(いらない世話だわ)
わたしがひとりでこの祝日をすごすしかなかったような言いようだった。ほんとうに意地の悪い女。
「ええ、あなたの言うとおりだわ、クラリッサ。バンナムハウスに戻ろうかと思っていたけど、ご招待を受けてよかったと思ってるわ」
どれだけ厚顔だったらこんなことができるのだろう? 不倫関係にある男の娘をホームパーティーに招くなんて。
(上等じゃないの)
招待状をもらったときから火がついていたわたしの闘志は新たな燃料を得てまばゆく燃え盛った。絶対に引いたりしない。こういうときに一歩前に出てあごを突き出すのは、前世からのわたしの習い性だったしグレイ家の女の常でもあった。
負けじと微笑みを返した。
「そういえばしばらくあなたのお顔を見なかったわね、クラリッサ。お変わりはない?」
「ええ、別にないわ」
「最近はヴァイオリンの教師をなさってるんですってね」
「そうなの。ジュビリーアードに招かれたのよ。教師として第二の人生というところかしらね。実際のところ、悪くない生活よ」
「お父様から聞いたわ。夏期講座は定員いっぱいの大人気だったとか。教師の職は、向いてたみたいね」
わたしは、クラリッサがヴァイオリニストとしては落ち目でここ数年コンサートを開けていなかったこと、なのでパーティーなどの華やかな場に出てくる機会が少なくなっていたことを、疑いの余地なく当てこすった。
クラリッサの目が冷たく冷たくとがった。
「気にかけてくれていてありがとう。ところで、あなたのお母様はどうしているかしら?」
(あなたの知ったことじゃないわよ)
クラリッサは一秒も無駄にせず丁寧にやり返してきた。嫌になることに、彼女はほんとうにわたしの弱点をよく知っていた。母親のことを持ち出されてカッとしそうになったけれど、体の内側で荒れる怒りを抑えて抑えて、なんとか余裕を示す微笑みを浮かべた。
「あら、お父様から聞いてないの?」
「ええ。でもあまり具合がよろしくないんじゃないかしら。心配だわ」
「お気遣いありがとう。でも、お父様があなたに話さないならわたしが話すわけにはいかないわ。グレイ家の、身内のことだものね」
わたしは狙い過たずがつんと一撃をくれてやった。ただの愛人にすぎないあなたには関係のないことよ、自分の立場わかってるの?と。クラリッサの弱みはわたしの父親との不道徳かつ不安定な関係なのだ。その点では正妻との子であるわたしのほうが、立場が強い。クラリッサに何を遠慮する必要があるだろう?
クラリッサはそれでも持ちこたえた。
「そうかもしれないけれど、昔のナタリーを知ってる人ならみんな心配してるのよ。少しでいいからようすを教えてほしいの」
「……あまり私的なことについて深く尋ねないほうがいいわ、クラリッサ。困ってしまうでしょ。……わたし失礼なこと言ってるかしら?」
わたしは迷惑をにじませた口調で、クラリッサの親切ごかしを粉砕し、彼女のきれいな顔を張り飛ばす言葉を放った。クラリッサの顔色はお化粧に隠れてよくわからなかったけれど、結いあげた髪の下から見える耳が赤くなっていて彼女の内面の一端をうかがうことができた。
(ふん。いい気味だわ)
たった11歳の、しかも正妻の子にマナーの欠如を指摘され、たしなめられることを、クラリッサが屈辱に思うとわかっていてわざと言ったのだった。こんな、不穏な空気に好奇の視線が集まっている、衆人環視の中で。
わたしは勝利に微笑み、しかし戦いの興奮はすぐに醒めた。
(何やってるんだろ……。やりこめて気分いいけど、人を笑いものにして喜ぶなんてわたしの趣味じゃないのに。あーあ、これじゃまたゴシップの的だわ)
あとに残るのは億劫でしらけた気持ちだけ。
(いいや。逃げよう)
「……失礼、付き人が呼んでるわ。お父様からメールでも来たのかしら」
誰に言うともなしに言ってその場を離れると、出入り口付近で所在なげに立っていたゼパイルのそばに避難した。
ゼパイルは皮肉げに眉を上げると、わたしの健闘をたたえるでもなくからかいの言葉を口にした。
「なかなか面白い見物だったぜ。シャンパン片手に見るにはな」
ゼパイルは背後関係を知らなくて皮肉や嫌みの内容の大半は理解できなかっただろうけれど、それが皮肉や嫌みだとは理解できていたらしい。
「やめてよ。馬鹿なことをしたって後悔してるところなの」
「半年も放置しやがって忘れられたのかと思っていたら、こんな楽しいパーティーに連れてきてもらえるなんてな。まじでお前何がしたいんだ?」
この男にもモーナンカスからポストカードを送ったはずだけれど。
「あなたの頭の冷却期間よ。それに準備に時間がかかったの。でも、もうそろそろ仕事をしてもらうわ」
ゼパイルは、そうかよ、と言ってシャンパンをあおった。
「あの女とどういう関係なんだ?」
「ここにいる大人の中で知らないのはあなたひとりね、ゼパイル。わたしの父親の愛人よ、彼女は」
「じゃあなんで後悔する必要があるんだ? もっと言ってやればよかっただろ」
「何を言えっていうの? くだらない。娘が父親の不貞やその相手を必ず嫌うと思ってるなら間違いよ。非難に値するとは思うけどね。でもそれだけだわ。別にそんなことに対して意見なんてないの」
不倫なんてひとりじゃできないんだからクラリッサひとりを責めても仕方がない。そして父親の結婚生活は破綻している。クラリッサにしてみれば、不倫で家族関係を壊したわけじゃないし、夫婦関係は破綻しているんだから完全な不倫じゃないという意識でいるのかもしれない。それに、わたし自身、許せないと思っているわけじゃなかった。ジュリアンがどこの誰と付き合おうがどうでもよかった。あの人の女性関係に口を出したいなんて思ったこともなかった。にもかかわらず無関係でいられないことが、ただただ煩わしかった。
ゼパイルはそれ以上触れようとせず、ヒヨコが踊っているイースター仕様の紙ナプキンにサンドウィッチをはさんで、食えば、と渡してくれた。
サンドウィッチをもぎゅもぎゅ食べていると、家中駆け回ってエッグハントに興じていた子どもたちが笑い声を立てながら居間に戻ってきた。全部見つけられたのだろう。クラリッサは子どもたちの頭を撫で、全部見つけられたご褒美だと言ってキッチンからケーキを出して来た。テーブルにかじりつくように集まった子どもたちに囲まれながらクラリッサはケーキを切り、小皿に取り分けた。そのうちのひとつをわたしも見知った金髪の男の子が持ってきてくれた。
(まさか手作りじゃないでしょうね……)
クラリッサが料理をまったくしないことを知っているわたしは心許無がりながらケーキを受けとった。
「ありがとう、ジェイミー」
お礼を言うとぱっと輝く笑顔。
(可愛い)
ジェイミーは気恥かしげに彼の兄のもとに小走りに戻っていった。兄から頭を撫でられて嬉しそうにしている。
「いい子だわ」
「そうなんだろうな」
「あなたの考えてることわかるわ、ゼパイル。わたしにもあんなころがあったのかってことでしょ?」
「どうなんだよ?」
「ないわ、全然。物心ついたときからこうだったわ」
「可愛げのねェガキ」
ふん、と鼻を鳴らしてわたしはケーキにとりかかった。見た目から察するに、ありがたいことにケーキ屋に頼んだものみたいだったから味にも問題はなさそうだった。ただひとつの問題――ケーキに載っている黄色くコーティングされた――合衆国クオリティの蛍光色の――チョコエッグを食べようかどうしようか迷っていると、ゼパイルがちょんちょんと物言いたげにつついてきた。
「おい」
「わかってる。わたしだって気づいてるわよ」
「どうすんだよ?」
「放っとけばいいでしょ」
わたしはため息をつきつつどぎついチョコエッグをゼパイルのケーキ皿に移した。
「いらねーよ」
「わたしだっていらないの」
ゼパイルはシルバーのフォークを押し付けてパキッと卵を割った。
「放っとけって言うけどよ、お前、すげー睨まれてるだろ」
ぐさぐさと突き刺さる視線。気づかないでいられるわけがない。その発信元はわたしも知った人物だった。
わたしは手を一払いして態度を示した。
「わたしにはどうしようもないわ。わたしが睨んでるわけじゃないんだもの。わたしの問題じゃないわ」
「……お前のそういう考え方がまた怒りを煽るんじゃねェのか?」
「それだってわたしの問題じゃないわよ」
端っこを切り取って口に入れた。普通のフルーツケーキだった。
「わたしが悪くて怒らせたのならごめんなさいって言うわ。でもね、それですむ話じゃないのよ、たぶんね。どうせあいつはわたしが何したって気に入らないんだろうし」
「知ってるやつか」
「当たり前でしょ。ホームパーティーなんて身内の集まりだもの」
引き立たない気分を抱えてフォークでケーキを弄り回した。
「はっきり聞けばいいでしょ、誰なんだって。察しなさいよ。わかるでしょ。さっきの女、父親の愛人のクラリッサ、彼女の息子よ。加えてさっきケーキを持ってきてくれた男の子の兄ね。まったく親子そろって嫌んなるわ」
「苛々すんなよ」
ゼパイルは鬱陶しそうに言って、横にずれて距離をとった。
「なーんで睨んでくるのかしら。わたしが何したっていうの」
「心当たりねェのか?」
ゼパイルの言いようは、どうせお前が何かしたんだろ、と言わんばかりだった。ほんとうに頭にくる。わたしは耐えかねて皿を置いた。
「……ちょっとお手洗いに行ってくるわ」
わたしはゼパイルの隣からも逃げ出した。
なぜかゼパイルに裏切られたように感じて、それがさらに苛々させた。周りを知らない人に囲まれればゼパイルもわたし側についてくれると思っていたのに。そうやって仲間意識を植えつけるつもりでもあったけれど、当てが外れたのかもしれない。
(なんでわたしの気持ちをわかってくれないのよ)
と思うし、
(誰にもわかりっこないんだわ)
とも思う。さらに言うなら、ほんとうには誰にも理解してほしくないのだった。自分でもそれはわかっているから、気持ちは自分で整理するしかない。こういうときはひとりになるのが一番だった。だって、世界中の誰がわたしの不機嫌なんかに構いたいだろう? ゼパイルにもそっけなくされたばかりだ。
廊下に出て壁に背を預け、深呼吸をして気を落ち着かせようと試みていると、居間のドアが開いた。出てきた人物を見てすぐに無関心そうに眼をそらした。もちろん傷つけるためだった。とても愛想よくしたいような相手でも気分でもなかった。
「クローディア」
相手はわたしの心中に気づくこともなく呼びかけてきた。
わたしは舌打ちをこらえながらちらっと見遣って、無視してやりたい衝動と戦いながらなんとか笑みらしきものをつくった。
「何?」
タイミングからいってわたしを追って出てきたのはわかっていた。迷惑だったけれど、12歳の男の子を邪険にあしらうのは分別ある態度とは言えない。でもわたしは、今気づいたけれど、自分で思っていたよりも性格が悪かったらしい。
「……えっと……」
彼をみつめながら、顔は見覚えているけれど記憶の引き出しから名前を引っ張りだせないというように困惑の表情を浮かべて見せた。
「イーニアスだ」
案の定イーニアスの声には怒りがにじんだ。
「ああ、そうだわ、イーニアス。ごめんなさい。イーニアスだかアドニスだか何だか、そんな感じの名前だったような気はしてたのよ」
彼の口角はむっつりと下がった。
わたしがこの名前を忘れるわけがない。イーニアス。ご立派な名前じゃないか? なんたってギリシャ神話に登場する勇者の名前だ。その勇者は美の女神アフロディテと人間とのあいだに生まれた。まったく、クラリッサはどういうつもりで自分の息子にイーニアスと名付けたのだろう? わたしは勇者としての名前にあやかったわけじゃないと思う。フェアな見方じゃないと言われたらそれまでだけれど、自分を美の女神に見立てていたから息子をそう名付けたのではないかと本気で疑っていた。
「……1月に会ったばっかりだろ」
「ごめんなさいってば」
責められてさも心外そうに謝罪を口にした。
「ジェイミーのことは覚えてたくせに」
「ええ。顔を見たら名前がすっと出てきたの」
イーニアスと弟のジェイミーとはたしかに先々月の初めに会い、新年を同じところで過ごした。わたしの実家でもあるバンナムハウスで。とはいってもバンナムハウスは広くて四六時中一緒にいたというわけじゃなかったし、わたしも積極的に仲良くしようと努力したことは一度もなく、それはイーニアスも同様だった。だから覚えていなかったことを詰られても困る。というか、してやったりという感じ。イーニアスはおもしろいと思っていないようだけれど、わたしはこのささやかな意趣返しを存分に楽しんでいた。
「ねえ、さっきからわたしのことをずっと見てなかった?」
わたしをずっと睨みつけていたのを咎めて言った。
イーニアスは仏頂面のままうつむいた。
「クローディアを今日ここに呼ぶように言ったのは僕なんだ」
「ああそう。ご親切にどうも」
(なんなのこいつ)
わたしをホームパーティーでさらしものにしようとたくらんだのは自分だと聞かされて、わたしは何と言うべきなのだろうか? よくも馬鹿にしてくれたな? 絶対に許さん? どれも負け犬っぽい台詞だ。わたしにできるのはあごを上げて、全然平気、みたいな顔をしてそれを死守することだけだった。
「用があったんじゃないの?」
「お前に?」
「ないならもう行くけど」
「待てよ」
(なんなのこいつ、ほんとに)
遠慮を脇へ置いて率直に面倒くさそうな顔をすると、イーニアスは顔をゆがめた。
「お前はほんとうにむかつくな、クローディア」
「は? あっそ」
「お前が母さんを気に入らないのはわかるけどな、さっきのあれはないだろ」
「何のことよ」
「人前で母さんを馬鹿にしただろ」
わたしは眉をひそめた。
「わたしだけを責めるつもり?」
「お前があんなことをするってわかってたら呼ばなかった」
「わたしが呼んでくれって頼んだ? それとも招待してくれたことをわたしがありがたがってるとでも思ってるの?」
イーニアスはぐっと詰まった。追加でもっとしっかり嘲っておこうとしたけれど、わたしを睨みつける深い緑色の目が傷ついているように見えて、なんとなく哀れっぽくて、躊躇ってしまった。
(何なのよ、なんでそんな顔するの。わたしが悪いみたいじゃない)
こういう沈黙は苦手だった。だって、わたしがほんとうに相手をぐっさり傷つけたみたいじゃないか。
(あー馬鹿)
そうしているうちに胸の内でおなじみの自己嫌悪が広がってきた。
(イーニアスは12歳なんだってば……。母親を大切に思うのは当然じゃないの)
11歳の可憐な少女であるわたしをいじめるなんて虐待だと思う。どう考えてもクラリッサが悪い。でもわたしとクラリッサが繰り広げたキャットファイトは、イーニアスからしてみればわたしが母親を無下に扱ったのも同じなのだ。正妻の子という立場から居丈高に。子どもからしたら母親の肩を持つしかないし、あんな場面は見ていられなかっただろう。
もっと嫌なことにも気がついた。
(イーニアスが招待してくれたってことは、あの場で一番気まずかったのはイーニアスなんじゃないの。そりゃそうよ、自分の招待客と女主人である母親とが一触即発の空気になるなんて最悪の展開じゃない。わたしのせいで母親とぎこちなくなっちゃったわけよね)
よく考えたら、しわを寄せられ貧乏くじを引かされたのは、わたしの目の前に立つこのイーニアスなのだった。
(まったく馬鹿だわ。わたしってほんと気遣いってものがないんだから。――待って、あの場にジェイミーはいなかったでしょうね……)
納得しきれていないにしても自分に非がないとは言えそうになかった。
「……言いすぎた。ごめんなさい」
「いいよ、別に」
「クラリッサにもあんなこと言うつもりじゃなかったの」
「わかってる」
「あなたたちのパーティーの雰囲気を悪くするつもりもなかった」
「ああ」
「……わたし、来るべきじゃなかったわね」
今さらすぎた。それにパーティーの雰囲気を悪くするつもりはなかったとは言ったけれど、実際のところ、とくに意識してなかったにしても、わたしが出席することで微妙な空気になることはわかっていたと思う。クラリッサだってまさかほんとうにわたしが来るとは思っていなかっただろう。お義理で、あるいはからかいの気持ちで招待状を出したのだろうと、冷静になった今なら推察できた。
「……僕がお前を呼ぶように言ったんだ」
「じゃああなたにも悪かったわね。……帰るわ」
当然だけれど、引きとめる言葉はなかった。イーニアスとすれ違うとき、最高に気まずかった。わたしが通り過ぎるまでお互い目を伏せて、物も言わなかった。
ちょっぴり落ち込んでいた。わたしが嫌われているのも無理はないと思った。初めて自分が完全に客観的に見れた気がした。そしてやっと、あのときどういうふうにゼパイルがわたしを見ていたかということに気づいた。この日わたしがしたことは、わざわざ歓迎されていないところに来て、楽しいイースターのパーティーをぶち壊したということだけだった。
ドアの前に来てもなかなか顔が上げられずに爪先ばかり見ていた。とにかく早く帰りたい気分だった。でもその前にゼパイルやクラリッサと言葉を交わさなければならない。
(あーあ、なんでこんなに難しいんだろ……)
わたしはため息をつきつつのろのろドアを開けた。きっと何度目だって、誰になったって、人生ってままならないのだろうと、わたしはようよう悟った。