正義の味方と幼き勇者 作:Y2
プリヤ、がっこうぐらし、下セカ、シャーロット、うまるちゃんなどの濃ゆい面子の今季アニメの中みなさんいかがお過ごしでしょうか
この話はこの小説を書くときに絶対やろうと思っていた話です、それではどうぞ
「またね」
そう言って大切な友人を投げ飛ばす
何も喧嘩をしているわけではない、親友を死から遠ざけるためだ
「さてと……」
地面に突き刺した二本の斧を引き抜き振り返る
そこには再生を終了しこちらに進軍してくる三体のバーテックスがいた
「………」
足が震える
汗が噴き出す
口の中がカラカラになる
頭の中の理性が逃げろと告げている。あれは生物の頂点、三人で勝てなかった相手に自分一人で勝てるはずがない、今すぐ逃げなければ死ぬと理性が警鐘を鳴らす
でもここで引くわけにはいかない
自分の後ろには大切な親友が、友達が、弟がいる
だから私に…三ノ輪銀に敗走は許されない
「ここは任せろって言った以上…責任持たないとカッコ悪いからね……いっとくかァーーーー!」
最期の戦いが始まった
少女は駆け抜ける
大見得を切ったものの彼女の勝機は絶望的だ
なんせ1体すら倒す事のできない相手が3体もいるのだ、'御霊'と呼ばれるバーテックスの心臓に当たる部分が判明しておらず満開システムが存在しないこの時代では倒す事はまず不可能といえるだろう。
だが倒す事はできずとも相手を撤退させる事はできる。
つまり彼女の戦法は単純明快で防御を軽視し攻撃力に全てを賭ける短期決戦、彼女の耐久力が先に尽きるかバーテックスが撤退するかの我慢勝負だ。
人類を滅ぼす為に生まれた神の使いと交戦する
弱点がわかっている鋏のバーテックスに重点的に攻撃を仕掛けていく、中央のバーテックスが矢を放ってくるが鋏のバーテックスを盾に使いその攻撃を防ぐ
死角から長い尾を持つバーテックスの針が襲いかかるがその針さえも自らの斧を交差させて受け止める
中央のバーテックスが援護するかのごとく光の矢を射ってくるが動きは止めない、一度でも止まればそのまま押し込まれるからだ
敵の攻撃が急所に当たらないように体を捻りながらバーテックスに乱舞を当てていく、まさに肉を切らせて骨を断つ。
その諺通りの動きをする事で苛烈な攻めを展開していた
「化け物にはわかんないでしょう、この力!」
彼女は声が枯れそうになるまで吼える
ここが自らの正念場であるし、無意識のうちにここが死地というのがわかっていたなのかもしれない
「これこそが!人間様の!気合ってやつよーーー!」
―――勇者とは強き者のことではなく、強き者に立ち向かう勇気を持つ者のこと
「このまま、出て行けーーーッ!!!!」
だが、気合だけで倒せる相手ではない。光の矢が銀の膝を貫通する。
倒れそうになる所を間一髪踏みとどまる、ここまで来た以上絶対に倒れるわけにいかない
目が霞む―――それがどうした
腕に力が入らない―――気合を入れろ
全身の傷から血が滴り落ちる―――帰ってご飯を一杯食べれば大丈夫だ
―――その不屈の精神を持つ彼女はまさに、勇者だった
そして、そんな勇者の死の未来を変えるべく
「……友奈、あちらは任せた」
「士郎さん、銀ちゃんをお願いします」
正義の味方と未来の勇者が降臨した
士郎は満身創痍となり意識を失った銀を抱えて慎重に地面に寝かせる
防御を軽視した戦いをしていたからだろう、体のあちこちに傷ができ血が流れていた
特に膝を貫通している光の矢が致命傷だ、あまり長居はできないので簡易的な治癒魔術を施す。光の矢は魔を断つ魔槍の力で霧散させた
「同調…開始」
衛宮士郎が体の髄にまでしみ込んでいる魔術を発動し銀の心との会話を試みる、膨大な魔力供給を得ているからこそできる力技だ
さて、条件をクリアしていこう
私は一面真っ白な世界にいた
バーテックスと戦っていた事は覚えている、という事はここは死後の世界なのだろうか?
そんな事を考えていると1人の男の人が目の前に現れた
『三ノ輪銀、時間がないので手短に話そう
君は生きていたいか?』
なぜ私の名前を知っているのか、ここはどこなのかと疑問は尽きなかったが相手の目が余りにも真剣だったからか私も真剣に答える
『生きていたい!』
『そうか、それでは次の質問だ。
この世界の住民とほぼ会える確率が0になるとしても君は生きていたいか?』
息が詰まる
私の大切な友人…須美、園子。
家で寝ているであろう弟
皆と二度と会えなくなっても生きていたいか…
私は震える声で一つだけ質問をした
『………二度と会えないの?』
『いや、二度と会えないわけではないがほぼ確率は0に近い』
ああ、良かった。その解答を貰えたなら安心だ
『なら私は生きる!二度と会えないなんて関係ない!絶対に私はあの二人と会ってやる!』
『―――そうか』
その返答を聞いて満足したのかその男の人は薄く笑い
『なら生きると願え!ここで目を閉じればお前は死ぬ、絶対に死にたくないなら生きるという意志を見せてみろ!』
彼女は心の底から願う、生きていたいと。
またね、と挨拶をしたのだ。また会わなければ嘘だろう
その願いに反応するかのように白の世界が輝いていき―――
―――
―――勇者
パァァァァァァァァンチ!―――
鷲尾須美と乃木園子が大橋を駆ける
二人の傷は完治とは言えないが動けるまでには回復していた
それに、須美の全身に嫌な予感が包んでいたのもあっただろう
なんせ敵がいるには静かすぎるのだ。
道路の部分までよじのぼるが誰もいない
地面には点々とした血痕と破壊跡だけが壁の方へと続いている
敵が銀によって壁に押し戻されている証拠だ
「銀…!」
「いこう!」
二人は痛みを訴える体に鞭をうち走る
彼女達が内心何を思っていたかは語るまでもないだろう
二人は程なくして壁の手前にたどり着く
そこにいるのはただ一人、敵の姿は見えない
「銀!!!」
安堵の気持ちが広がる
二人は不安に駆られていた胸を撫で下ろし親友に近づく
「ミノさんが…追い払ってくれたんだね、凄い!本当に凄いよ〜」
「もうすぐ樹海が解けるわ。戻ったらすぐに病院に……!」
須美が言い終わる前に銀が振り向く。
その顔に満開の笑みを浮かべると……その姿は幻影の様に消えていった
「……ミノ…さん…?」
「……銀?」
その二人の言葉に答える者はいない
先ほどまで銀がいた場所には彼女の武器である二振りの斧と血が付着した携帯端末だけが落ちていた
この後二人が直ぐに銀を探したが一向に見つからず、現実世界に戻り大赦の力を借りて捜索するも銀が見つかる事はなかった
そして大赦は決断する、樹海内に飛び散った血の量から察するに恐らく三ノ輪銀は死んだのであろう、と。
須美と園子は勿論否定した、銀はまだ生きていると。銀の遺体が見つからないのは事実、まだ生きていると希望を持っていたが飛び散っていた血の量から察するに致死量を超えていたのも事実
徹夜で捜索作業が行われたが三ノ輪銀を見つけ出す事は出来ず大赦は「三ノ輪銀は戦死した」という結論を出したのだった