正義の味方と幼き勇者 作:Y2
―――ある所に、まだ幼い勇者がいた
皆のためになる事を勇んで実施する事を信念に、なるべく諦めず、自分達の日常と大切な友達を守るため世界と契約した幼き勇者がいた
―――ある所に、正義の味方を目指した者がいた
義父から受け継いだその
この物語はそんな二人の物語
神樹様の所に火の塊が向かう
東郷さん、風先輩、樹ちゃん、そして目と耳が機能しないはずの夏凛ちゃんまでもが満開して必死に食い止めている
私はといえば散華の代償で足を持っていかれ一歩も動けない状態だ
しかし火の塊は勢いを衰える事を知らず徐々に皆を押し出していっている
私がこの場から動く事ができない以上東郷さん達は押し切られ神樹様の元に火の塊が着弾、バーテックスにより人類は滅んでしまうだろう
そんな絶望的な状況に置かれても私は決して諦めない、勇者部五カ条の一つ”なるべく諦めない”だ
そんな時、世界の声が聞こえた
力が欲しいか?
目の前の理不尽を覆す事のできる力が欲しいか?と
勿論私は頷く
世界は問う
目の前の理不尽を覆すために力を与えよう、だがお前は何を対価として差し出す?と
私は心の中で笑ってしまう
満開と散華の関係のように、やはり物事は等価交換によって成り立っているらしい
対価はある、余りにも恐ろしい対価だが目の前を救うためなら何を差し出したって構わない
大きく息を吸い私ーー結城友奈は世界に言った
「私の人生を差し出す!その代わりに目の前の理不尽を覆す力を頂戴!」
――――――契約はここに成立した
I am the bone of my sword.
―――体は剣で出来ている
Steel is my body, and fire is my blood.
血潮は鉄で、心は硝子
I have created over a thousand blades.
幾たびの戦場を越えて不敗
Unknown to Death.
ただの一度も敗走はなく
Nor known to Life.
ただの一度も理解されない
Have withstood pain to create many weapons.
彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う
Yet, those hands will never hold anything.
故に、その生涯に意味はなく
So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.
その体は、きっと剣で出来ていた
「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレも、これから頑張っていくから」
この言葉を最後にアーチャー、英霊エミヤの体が消滅する
第五次聖杯戦争
今回も苛烈を極めたこの戦いの勝者はいないのだった
アーチャー…英霊エミヤは不思議な空間にいた
見渡す限り白い地面が続く空間だ、あの世界から去った以上この身は英霊の座に戻るはずなのだが…
「来ましたか、英霊エミヤ」
「ッ!」
いつの間にか背後に女性が立っていた
白銀の髪に真紅の瞳…恐らくイリヤが成長したらこのような容姿になっていただろう
「……誰だ君は、ここに俺を連れてきたのも君か?」
「はい、そうですよ」
即答
何かを考える素振りもみせず即答されたので少し面食らう、が目の前の女性が誰かわからない以上警戒は怠らない、いつでも愛剣を投影できるように備える
「ああ、申し遅れました
私の名前は世界、貴方が生前に契約した世界そのものです」
「……なん…だと」
息が詰まる、その時を忘れるはずがない
正義の味方を目指していたあの時、自分は目の前の100人を救うため死後を世界に捧げた、それが正義の味方になれる方法と信じて…
実際、正義の味方には程遠いただの掃除屋だったのだが
「……世界が俺に何の用だ?」
「ああ、少し待ってください
もう少しで彼女も来ると思うので」
その言葉の後、1人の少女が姿を現した
赤い瞳に同じ色の髪
一見どこにでもいるような少女だが、彼女の体から溢れる力を感じて戦慄する
その力を間違えるはずがない、自分と同じ…守護者としての力だ
「……この子は」
「ええ、私と契約した者です」
最悪の想定を肯定するかのように世界が頷く、当の本人は突然の事態に頭が追いつかずオロオロしているが構っている暇はない
彼女が自分と同じ契約をしたということは守護者となり磨耗するまで使役されるということだ
「さて、本題に入りましょうか。衛宮士郎、結城友奈」
世界は二人に頭を下げこう言った
「並行世界を救ってください」
これが、正義の味方と勇者の出会いだった
「えっと…ここはどこなの?私家にいたはずなんだけど…」
「貴方にも説明したいといけませんね、結城友奈
では貴方に説明しましょうか、最後のバーテックスの戦いの時に得た力、それとそこにいる男について」
〜世界説明中〜
守護者について、そして俺自身の説明が一通り終わる、こんな子供に過酷な運命を背負わせた環境に嫌悪していると突然その子がこちらを尊敬の目で見つめていた
「結城友奈と言ったかな?どうしたんだ私を見て」
「あ、自己紹介がまだでしたね
私、結城友奈!讃州中学二年です!友奈って呼んでください!」
「アーチ…いや、衛宮士郎だ。士郎と呼んで構わない
それでどうしたんだ?そんなに私を見て」
「士郎さんって正義の味方になんですよね?かっこいいなぁ〜!」
なにやら尊敬の念を込めているようだが苦笑して否定する
「私はそんな高尚な物ではないさ
助けを求める1を切り捨て平和を享受している9を救う、そんな掃除屋にすぎない。正義の味方には程遠い存在だ」
「でも、助けてくれた人は士郎さんの事を正義の味方だと思ってるはずです。だから士郎さんは正義の味方です!」
その言葉に頭を打たれたような衝撃が走る
今までは救えなかった1の人々にしか目を向けていなかったが、確かに自分が救った9が存在する
そして救った人々に罵られ、蔑まされ、殺された最期だったがその中には自分を正義の味方と思ってくれた人がいるはずだ。―――地獄の中から自分を救ってくれた切継を自分が正義の味方と呼んだように
「……そうだな。ありがとう、友奈」
「えへへ…」
褒められたのが嬉しいのか照れたように頬をかいている友奈
さて、自分の話はここまでだ
「さて、本題に入ろう。世界、並行世界を救えと言ったな?あれはどういうことだ」
「言葉通りの意味ですよ。数多ある並行世界ですがそれも全て安全で平和な世界というわけではありません。
中には小学生になったばかりの子が武器を取る世界や理不尽な暴力が平然と振るわれる世界もあります」
「そんなことって……」
友奈が悲痛そうに呟くが悲しいことにこれは現実だ。
実際これまでもその様な国は飽きるほど見てきたしその痛々しさだって人以上に分かってはいるつもりだ―――その1を切り捨て9を救ってきたこともあるのだから
「ですのであなた達にはその世界の手助けをして貰いたいのです。それなりの報酬は用意するつもりです。」
「報酬?」
「ええ、衛宮士郎は世界の理からの脱却、結城友奈は平行世界を巡る旅が終わったら元の世界で守護者としての活動をやらなくてもいい事を保証します」
「ふむ、私達にはうってつけの条件だな。では次の質問だ、なぜ私達を選んだ?私よりも強い者はいるはずだ」
「それは貴方達の存在によるものですよ
エミヤと友奈も名称こそ違えど根本は同じく正義を執行する者。
あなた達ならなんの間違いも起こすことはないでしょうから」
「……なるほどな」
確かにこの身は正義の味方であり聞く所友奈も「勇者」として活動してきたらしい。守護者の力というのは余りにも大きい、その力を悪用し私達が並行世界を滅ぼすというのはまずないだろう
「次の質問。私達の行動に制限はあるか?また1を切り捨て9を救えというなら私はこの提案を蹴らせてもらうが」
「とんでもない、並行世界での行動は完全にあなた方の自由にしてもらって構いません
目の前の1を救う行動も目の前の1を切り捨て9を救うのもあなた達の自由意思です」
「そうか、安心したよ。さすがに世界に剣は向けたくなかったのでな」
良かった。もし仮に掃除屋としての行動をやれというのなら自分は確実剣を向けていた。
例え勝てない相手でもそれだけは許容できなかった
こんなに驚いたのは多分初め樹海の中に入った時以来かもしれない、そんな事を考えながら私こと結城友奈は世界の説明を聞いていた
家の中にいたら突然この空間に連れてこられた時は驚いたが、世界の説明で大分落ち着いた。
あの時は無我夢中だったからこんな力を手にしているとは全く知らなかった、世界曰く今の私は20体近くの精霊従えた園ちゃんよりも強いらしい
士郎さんの質問が一通り終わると世界が問いを投げかける
「それでは返答を聞きましょうか」
「私の返答は聞くまでもないだろう、イエスだ」
士郎さんは当然のごとく即答、もちろん私の返答も決まっている
「私も行きます!救いを求める人達を切り捨てるなんてできないし、たとえ並行世界でも困ってる人がいるなら見捨てたくありません!
といいたいけど皆んなになんて説明しよう…」
そう、一番の問題はこれだ
私が突然いなくなったら両親はもちろん勇者部のみんなも心配するだろう
果たしてどう説明すればいいか…
「結城友奈、貴方の世界の時間を止めましょう。世界を巡る旅が終わったら学生に復帰してください」
「本当ですか︎お願いします!」
どうやら友奈も覚悟が決まったらしい
「それで、私達はどの程度並行世界に滞在すればいい?」
「あなた方の判断にお任せしますよ、この礼装に魔力を込めればすぐに発動するようにできています」
そう言って世界が取り出したのは……宝石剣︎
「宝石剣を取り出すとは流石としか言えないな」
「並行世界の移動はこれが一番楽ですから
………それでは頼みましたよ、正義の味方、幼き勇者」
世界がそう告げると宝石剣が輝き、衛宮士郎と結城友奈はその姿を消した
こうして二人の守護者の旅が始まる
辛く、苦しく、絶望的な世界があるかもしれない
だが、二人の行く道は決して悪いものではないはずだ
――――――ここに、新たな
ちょっとした本編の補足
この物語は多重トリップです、仮面ライダーディケイドみたいなものだと思ってください
クロス先は今のところ2つ考えています
「この世界に行ってほしい」「この二人にこの事件とかかわってもらいたい」などの要望がありましたら活動報告にてお願いします