第9話
雪華は、九校戦メンバー選出会議の前に生徒会メンバー+摩利+十文字の事情聴取を受けていた。
「雪華さん四葉の支援を受けられたってどういうことなの?」
と真由美
「司波さん!あのトーラスシルバーも所属するFLTの援助を受けられるようになったってどういうことなんですか?」
とあずさが
興奮交じりに問い詰めた
「ええとですね。四葉の方はあるコネから四葉家当主代行の四葉真夜様に依頼をFLTは、CADの調整を手伝ったりしてるので、そのコネでお願いしました。」
「FLTの方はまだ納得してるわけじゃないけれど、とりあえずわかったわ、けど四葉の方は納得いかないのだけれど」
「お姉様…………」
雪華は、以前の嘘をついたことで深雪に嫌われそうに事件を思い出し真実を話すことにした。
「わかりました。ここには十師族の当主候補と十師族当主の長女がいることですし、嘘はいけませんよね。
四葉家当主 四葉雪華、FLT CAD開発担当 トーラスシルバーです。以後お見知り置きを。あとこのことは、他言無用でお願いします。」
生徒会室に数分の沈黙が流れた
「「「「ええぇえええええ」」」」
「今まで黙っていてすいません」
「と、言うことは雪華さんは四葉家のご当主!?」
「えぇそう言うことになります。気にせず今まで通りでお願いします。」
その後も雪華への質問責めや、謝罪などが続いた。
「気を取り直して九校戦のメンバーのことね。ある程度決まってきてはいるけど、技術スタッフが足りないのよね。腕のいい生徒はいないかしら?」
「いや、普通に雪華に依頼すればいいだろう」
「摩利!雪華さんは天下のトーラスシルバーなのよ!そんな雪華さんに九校戦スタッフを依頼出来ると思うの!?」
それに続き梓も、反論する
「そうですよ!天下のトーラスシルバーに技術スタッフを依頼するなんておこがましい行為ですよ!トーラスシルバーにやってもらう何て、大金を積んでもできません!」
雪華は、今まで通りでっていったのになぁって思いながら言う
「みなさん。今まで通りでお願いしますといったはずです。そんなにトーラスシルバー、トーラスシルバーと他人行儀にされると、困ります。委員長みたいに気軽に依頼していいんですよ?」
ハッとみんな自分のしていたことに気づきいう。
「雪華さん、技術スタッフやってもらえない?」
「お受けします。ただ2科生からの参加は受け入れられるでしょうか?」
「なにを言っているんだ雪華は、雪華は九校戦の参加メンバーにも入ってもらうつもりだったんだぞ?」
「刹羅の魔法師、九校戦に参加。笑えるジョークだな」
と十文字が真顔で言う
「まぁ、いい経験にってことで」
その次の日、競技メンバーより先に決定した技術スタッフの顔合わせがあった。
しかしそこで一悶着があった。雪華の実力を疑う者が複数現れたのだ。
「実力を疑うのであれば、ここで実力を見ればいい。俺のCADの調整をさせよう」
という十文字の一言をはっし部屋は騒然となった。
「危険です!実力のないものにCAD調整をされては危険です。」
「じゃあ、私のCADを調整してもらうわ。」
「会長まで生贄のようにならなくても」
「私のCADを調整してもらうのはどうでしょうか?私は九校戦にも参加しませんし問題無いと思います!」
梓が珍しく大きな声を出してお願いしたため、皆驚いたが参加しない梓のならと皆妥協をした。
「では行きます。」
雪華は、誰にも理解できないような文字列が凄まじい速さでスクロールされるのを見て、上にスクロールし直すとキーボードマニュアル調整を始めた。
ものの数十秒で終わり、調整のスピードは満点ということになった。
しかし、それでも文句を言う者がいた。
「速くても腕が無いなら意味はない。速いだけの奴には任せられない。」
その言葉と同時に梓が声を上げた。
「すごいです!このCAD。今まで感じたことのない調整です!雪華さんは、絶対に技術スタッフに入るべきです。」
ぴょんぴょんと跳ねながら小動物がお願いする、という可愛らしい行動に耐えられず、皆が賛同し雪華の技術スタッフ入りは決定をした。
次の日摩利に呼ばれ生徒会室に行くと真由美がいきなり、話しかけてきた。
「雪華さんには、本戦 アイス・ピラーズ・ブレイクと 新人戦 モノリス・コードにでてもらいます。勿論競技スタッフの時のように問題がないように話は進めてあります」
「本戦ですか?あとモノリス・コードは男性のみの競技のはずなのですが」
「今年から女子生徒女の参加も認められました」
雪華は、真由美が勝った!みたいな小悪魔笑顔を浮かべるのをみてかなわないなって思いながら答える
「わかりました。全力で1高に尽くします。」
九校戦当日となりバスで移動中のことだった。突然対向車線にいた車が、ガードレールを乗り越え突っ込んできたのだ
バスは急ブレーキをかけ回避を試みるが、間に合わない。
「吹っ飛べ!」
「消えろ」
「(このままじゃ、爆発する。)」
など言いながら魔法を放とうとする生徒たちそれを雪華は、術式解体で吹き飛ばし窓から飛び出した。
「(私が止めるしか無いわね……)」
「お姉様!?」
「雪華!?」
深雪と摩利の声を聞きながらそんなことを思っていた雪華は、術式解体を突っ込んできた車に打ち込んだ。
それだけでは止まらない車に対して今度は、ドライミーティアを放ち攻撃での爆発を起こらないようにする。
そして、減速魔法で車の滑るスピードを緩め、障壁をはり受け止めた。ここまでおおよそ15秒 の出来事だった。
雪華は、バスに戻り言う。
「惨事にならなくてもよかったです。」
その言葉に対し十文字は、問う
「いい働きだった。本当に高校生なのか?」
「えぇ、私は普通の高校生ですよ」
最強の魔法師、四葉家当主の時点で普通では無いだろうと思いながらも、答える
「そうか、とにかく助かった。感謝する。」
「みんな、大丈夫?」
真由美が皆の安否を確認することで、生徒たちは落ち着きを取り戻す
「もう、大丈夫よ。それにしても雪華さんすごいわね。素晴らしい判断力、魔法だったわ」
「ありがとうございます」
「雪華助かったよ。私は動けなかった。風紀委員長として礼を言うよ」
「では、私は事故の後処理をしてきますね」
雪華がバスを降り確認をしに行った後のことだった
「そういえば、最初に使った魔法は何だったんだ?いや……そもそもあれは魔法だったのか……」
その摩利の疑問に近くにいた真由美が答える
「ええ、あれは歴とした無系統魔法であり、対抗魔法でもある、固有名は"術式解体"(グラム・デモリッション)
「グラム・デモリッション………」
「圧縮したサイオンの塊をイデアを経由せずに対象物へ直接ぶつけて、
そこに付け加えられた起動式や魔法式の情報体を吹き飛ばしてしまう、
情報強化も領域干渉もキャスト・ジャミングにも影響されない
物理的な作用がないから、どんな障害物でも防ぐことはできない
射程距離が短い意外に、特に弱点らしい弱点がない最強の対抗魔法よ。ただたった一人だけつかえる術式解体の上位魔法があるらしいのだけど、これは噂でしか無いわね」
雪華がドライバーの体調などを、確認し戻ってきたところに摩利が話しかける
「今、術式解体の話をしててその上位魔法があるって話を聞いたんだが、雪華は何か知ってるのか?」
「術式滅風(グラム・イクスパンジ)のことですか?その魔法は、私の秘匿魔法のはずなんですが……」
「えーと雪華さん。マナー違反も承知で聞くわ、答えなくてもいい。その魔法は一人しか使えない 伝説の対抗魔法って聞いているのだけど、どんな魔法なの?」
「仕組みは、術式解体と同じですよ。サイオンの塊をぶつけるってやつです。ただ術式滅風の場合は、超高密度のサイオンの風を周囲に放つ、術式解体の範囲魔法になってるんです。」
「術式解体だけでもかなりのサイオンを使うのだけど、術式滅風はどれくらいのサイオンを使うことになるの?」
「術式解体の100倍のサイオン量です」
摩利と真由美は驚愕で固まる。なぜなら術式解体でも、並の魔法師、いや凄腕魔法師でもパワーファイターで無ければサイオン不足でできないからだ。
無事に会場につき
九校戦毎年恒例の懇親会という名目のパーティーに参加する。
雪華達が会場でぶらぶらしていると
「お客様方、お飲物はいかがですか?」
とエリカが話しかけてきた。
「エリカなんでここにいるの?」
「あ、雪華。ここに泊めてもらう代わりにお手伝いしてるの」
エリカは、仕事中のためすぐに行ってしまったが皆の緊張は大分、解れた。
そこに他校の生徒が話しかけてきた。
話しかけてきた理由は、雪華が無理に作ってもらった2科生参加ジャケット(紋無し)をきていたからだろう。
「何故、1高は2科の生徒を連れてきているんですか?荷物持ちのためにでも連れてきたんですか?そのような差別は良く無いとおもうのですが」
それに真由美が反論する。
「雪華さんは、1高の大事な参加者です。本戦 にも新人戦にも、競技スタッフとしても参加が決まってます。」
「1高は、人材にお困りのようですね。もう連覇はさせません。それでは」
その生徒は言いたいことを言うだけいって、去って行った。
「今のは何だったんでしょうか?」
「雪華さんが、わざわざエンブレム無しの参加ジャケットを着ているから、興味を持たれたんでしょうね」
来賓の挨拶が始まった。
様々な優秀な魔法師の挨拶が終わり最後は、九島烈の挨拶が始まった。
しかしそこでざわめきが起きた。
でてきたのは、パーティドレスを纏い髪を金色に染めた、若い女性だったからだ。
代役が選ばれたのか、と思う人々がいる中雪華の考えは違った。
「(あれは・・・)」
彼女の背後に、一人の老人が立っている。
「(精神干渉魔法ね・・・) 」
目立つものを用意して、人の注意を逸らすという「改変」は
改変と呼ぶまでもない些細なもの。何もしなくても自然に発生する「現象」。
「(流石ね)」
雪華は、綺麗な礼をする。それをみた老人は、嬉しそうな笑みを浮かべた。
その瞬間、ライトが老人を照らし、大きなどよめきが起こる。
ほとんどの者には、九島老人が突如どこからか現れたように見えたことだろう。
「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する。今のは一寸した余興だ。魔法というより手品の類だ。 だが、手品のタネに気付いた者は、私の見たところ1人だけだった。つまり」
九島がそこで言葉を切ったため、其の後重要なことを言われるのかと、皆耳を傾ける。
「もし私が君たちの鏖殺を目論むテロリストで、来賓に紛れて毒ガスなり爆弾なりを仕掛けたとしても、それを阻むべく行動を起こすことが出来たのは1人だけだ、ということだ」
今度は、静寂というより沈黙の時間が流れる
「魔法を学ぶ若人諸君。
魔法とは手段であって、それ自体が目的ではない。 私が今用いた魔法は、規模こそ大きいものの、強度は極めて低い。 魔法力の面から見れば、低ランクの魔法でしかない。 だが君たちはその弱い魔法に惑わされ 、私がこの場に現れると分かっていたにも関わらず、私を認識できなかった。 魔法を磨くことはもちろん大切だ。 魔法力を向上させる為の努力は、決して怠ってはならない。 しかし、それだけでは不十分だということを肝に銘じて欲しい。 使い方を誤った大魔法は、使い方を工夫した小魔法に劣るのだ。 魔法を学ぶ若人諸君。私は諸君の工夫を楽しみにしている。最後に名前はわからないが、2科のジャケットを着た、1高生の女子生徒。君はこの中で一番の原石だ。これからも鍛錬に励んでくれ。」
こうして、雪華の九校戦は幕を開けた。