Fate/SAO それ行け、はくのんwith赤い暴君   作:蒼の涼風

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まさかの2週間ごとの更新。
頻度上げるように頑張ります。


Art23:英雄王

 ぶつかりあう剣と剣、正しくソードアート。なんて言っている余裕なんて無いくらい、正直一杯一杯です。

 やっぱり殺人ギルドのリーダーを張っているだけあって、PoHは強い。こっちは2人がかりで挑んでいるって言うのに、それを余裕で凌いで反撃してくる。

 

「おいおい、どうした? 攻略組トップクラスのプレイヤーの実力ってのはこの程度のモンかよ?」

 

 軽口交じりに告げてくるPoHを睨みつけて剣を振るうけれども、如何せん小回りの聞く短剣と片手剣だとせまい洞窟では相性が悪い。

 凛も投剣で援護してくれるんだけれど、思った以上に押されてる。

 

「ちょっとはくのん、あまり良い展開じゃないわよ。こういう時って、都合よくこの世界の勇者ポジションの主人公とか駆けつけてくれないかしら。どうせあんたのことだから、ヒロイン枠のキャラも気にせず誑かしてるんでしょ!」

「凛、ちょっとなに言ってるかわかんない!」

 

 うん、何のことを言っているんだこの子はー!?

 と言うより、何で私が“ヒロイン”を誑かさなければいけないのか詳しく。ワタシ、オンナノコ。

 

「随分余裕だなぁ! それなら、こんなのはどうだ?」

 

 ぐぐ、とPoHの体が前かがみになる。次いで光りだしたダガーの刀身を見るに、ソードスキルが来る。

 とっさに凛を庇うように前に出て、コクテンドーを構える。コクテンドー、普段使うには何の変哲も無いバックラーだけれど、ことソードスキルに対してはそのダメージの8割を防ぐと言うとんでもない代物。だと言うのに。

 

「そうら、踊れ踊れ!」

 

 愉快そうに叫ぶPoHが繰り出したソードスキルから、無数の竜巻のような斬撃が襲い掛かってくる。

 とんでもない。短剣系ソードスキルの奥義技、エターナルサイクロン。コクテンドーを構えているにもかかわらず、がりがり私のHPが削られている。

 

「く、この……!」

 

 8割、7割、6割……イエローゾーンに突入した私のHPはそれでも減少するのが止まらない。3割、2割……そこまで減ったところで、やっと止まった。

 とんでもない、とは正しくこの事。ただ2割に威力を削いでいるにも関わらず、私のHP……現在レベル87、HP15492が、消し飛ぶ勢いで減らされた。

 ぞっと、背筋が冷たくなるのを感じる。こんなものを直撃させられていたら。いや、もう一度撃たれたら私は終わりだ。

 ただでさえ、ザザと戦っているセイバーは私とHPが連結しているのを気にして十分にその剣を振るえていないと言うのに。

 

「しかと見よ、赤眼のザザ! 余の剣技こそ至上のもの! とくと(まなこ)に刻み付けて冥土の土産にするが良い!」

 

 あ、平常運転でした。楽しそう。

 

「ヒール!」

 

 とん、と。背中で回復結晶が弾け飛ぶ感覚と凛の声が聞こえた。次の瞬間には私のHPはぐんと回復してグリーンゾーンへと立ち戻っている。

 

「は! 流石血盟騎士団の参謀長様。この俺に短剣を投げながら相方の回復までこなすとはな!」

 

 愉しげに笑うPoHと、決め手に欠ける私たち。

 どうしよう、このままじゃ勝てないとは言わないけれど、ジリ貧になるかもしれない。そうしたら、明日の夜には攻略組の皆がここに奇襲をかけてくる。

 アスナやキリト君が、その手を血に染めるようなことになるかもしれない。そんな事は、させたくない。させないんだ、この命に代えても。

 

――ずいぶん……無様……な……種。

 

 ぶつりと、何かが頭の中に流れてきたような感覚。

 どこかで聞いたことがあるようで、ないような。それは、この世全てを誰もが到達できない高みから見下ろすように、高慢で……私たちの行動をすべて下らない物と断じているかのように傲慢で……それでもそんな世界を愛しているかのように、優しさにもとれる声色だった。

 

――随分と無様な姿よな、雑種。貴様に待つのはどの道消滅だけだと言うのに、友のために剣を振るうか。しかし、その破滅さえ愛してやれるのは天上天下においてただ一人、我しか居るまいよ。……1度だけ、助けてやろう。その剣を抜く者に敗北は許されん。

 

 そんな言葉と共に、不意に私の意識が自分の体から切り離されるような、不思議な感覚に襲われた。

 まるで、そう。まるでゲームの画面を見ているかのように、私は私を俯瞰している。

 そこに居たのは、どことなく不遜で私のイメージとは違った、全てを見下すかのような表情を浮かべた()がいる。

 

「セイバーに、ランサーか。ふむ、死にたくなければ控えておれ、雑種。」

 

 つい、と。簡単に言い放った私の姿をしたそれは、持っていたオリジンソードの刀身が回転し始めている。

 回るんだ、あれ……というか、とてつもなく嫌な予感がする。その気配を感じてセイバーとランサーも距離を開け、私の後ろにとび退いて身を護る。凛もすぐさま距離を開けている。それだけ異常な魔力が剣に集中している。そう、魔力が集中しているんだ、魔法の概念が一切無いこの世界で。その力は、正しくサーヴァントのそれ。

 

「いーっひひ、どうしたどうしたぁ!」

「にげ、るか?」

 

 サーヴァント達の行動にジョニー・ブラックとザザが訝しそうな表情をしているけど、それだけ。ただ、PoHだけは油断無く構えている。

 

「我が雑種の命を奪い、我の愉悦の時を台無しにしようとしたその罪、万死に値する。我自ら直々に首を撥ねてくれる、疾くそこへ直って首を差し出せ」

「あのヤロウ、やりたい放題にも程があるじゃねえか。何だそりゃ、他人のマスターの体を乗っ取るとか聞いたことがねえ」

「ランサー? 何か知ってるの?」

「ちっとばかしな。いや、()は知らねえが……覚えはある。あの喋り方。いけ好かねえ雰囲気、おそらく間違いねえだろ。だが、こと味方に廻すにしちゃ扱い辛えが、これだけ心強いヤツも居ないだろうさ……人類最古の英雄王、ギルガメッシュ。あの剣、どっかで見たことあると思ったらあのヤロウの剣か!」

 

 なんて、嫌そうな口調で。それでもどこか懐かしそうな口調で答えるランサーの言葉に、はてと首を傾げる凛。因みに私も傾げてる、はて。

 

「――出番だ、エア。おまえとて不本意だろうが、これも王としての努め。雑種共、その笑う棺に納められるのは自らだと知るが良い。――死にたくなければ、死に物狂いで逃げ遂せてみよ」

 

 にやり、とその私が笑った。

 次の瞬間迸ったすさまじい光の奔流が、笑う棺桶のメンバーに襲い掛かる。

 

天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)

 

 全てを破壊するかのように走る光と衝撃、轟音を聞きながらいつの間にか自分の体に戻っていた私はとんでもない疲労感を感じてその場に倒れこんだ。

 薄れていく意識の中、最後に見たのは私に駆け寄ってくる凛とランサー。そして、今にも泣きそうなセイバーの姿。

 

――貴様には過ぎた剣であったか。ならば身の程に合った剣をくれてやろう。努、今の貴様の在り方、違えるなよ。

 

 最後に、そんな声が聞こえたのは気のせいだったのかな。

 




チートやチーターや!
なんでそこでギルガメッシュが出てくるんや!

……ビーターも真っ青なチートぶり回でした。
ギルガメッシュ、かっこいいよね。

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