仮面ライダー鎧武 外伝 「変身!光実、新たなるステージへ!」 作:ホールデン
プロローグ
夏、昼、埠頭
沢芽市はヘルヘイムに侵食されており、もはや元の姿を止めてはいなかった。
埠頭も例外ではなく至る所に植物に覆われていた。
潮の香りがするこの場でスーツを着た二人の男が話していた。
光実「呆れたね...あんたの役目はもう終わってるのにまだ首を突っ込んでくるなんて」
貴虎「俺には最後の勤めが残されている。この手でお前を止めなくてはならん」
光実「僕はユグドラシルのプロジェクト•アークを引き継いでいるようなものだよ。ただし今度は人類の半分が救われる。褒めてくれたっていいじゃないか」
貴虎「そうか、それが俺から学んだ結論か。」
貴虎「お前は俺の影だ。俺が犯してきた過ちの全てだ。」
光実「僕が兄さんの影っていうなら、僕はあんたを消すことでしか本物になれないじゃないか!」
貴虎「そうだな、だからこそ、お前はここで終わる」メロン!
光実「...」メロンエナジー!
『ロックオン!』
二人がロックシードをセットし、カッティングレバーを引くのとジューサーを押すのは同時だった。
『メロンアームズ!天・下・御・免!』
『ソーダァ...!メロンエナジーアームズ!』
クラックから二人のアームド•アームズが降りて展開していく
変身が完了すると貴虎は無双セイバーを手に取りお互い身構える。
光実「ハァ!」
貴虎「ハァア!」
互いに走り出し剣を交えた。戦いはほぼ互角だか僅かな差で貴虎が上にあった。
貴虎は隙を突き光実のバランスを挫き、追い詰める。
貴虎「どうして俺の影ばかりを引き受けた?俺より輝く才能を持っていながら!」
光実「それをあんたが言うのか、僕あんたは理屈ばかり押し付けてきた癖に!」
光実がソニックアローで攻撃する。
貴虎は無双セイバーガンモードの応戦し、銃弾の応酬が続く。
隙を見た光実が飛びかかるが、貴虎は薙ぎ払い更に追い詰める。
しかし光実は貴虎に砂を投げ付けその隙に貴虎の盾を吹き飛ばす。
形成逆転し光実による続けざまの攻撃で今度は貴虎を海へ追い詰める。
光実「あんたはいつも言ってたね"ノブレス•オブリージュ"...優れた者ほど真っ先に犠牲を払わなければならない。それこそが本当の名誉だって」
貴虎「その通りだ!」
光実「名誉ってなんだよ?他人の為に傷ついて利用されて...そんなの嬉しくないよ!」
貴虎「光実!」
しかし貴虎は光実を投げ飛ばす。
光実「ねぇ、兄さん。あんたは誰よりも優れた人間なんだろう?だったら最後は僕の為に犠牲になってよ。それがあんたの務めだろ!」
『ロック...オン!』
光実はLSをソニックアローに装着し最後の攻撃に入る。それに気付き貴虎は噛みしめるようにカッティングレバーを引く。
『ソイヤ!メロンスカッシュ!』
ソニックアローの光の矢を無双セイバーで防ぎ、二人は距離を置き様子を伺う。
光実は飛び掛かり攻撃するが貴虎から銃撃を受ける。
怯んだ光実にトドメを刺そうと貴虎が駆け寄る。
無双セイバーを振り下げようとした瞬間、走馬灯のように過去のことが脳裏をよぎった。
光実(幼少期)「こっち、こっち!」
幼い頃、庭で光実が貴虎に向かって走ってきた時の事だ。
光実(幼少期)「あっ!」
光実が転んでしまい貴虎は駆け寄った。
貴虎(幼少期)「光実、大丈夫か?」
貴虎は転んだ光実を起こした。
光実(幼少期)「ありがとう、貴虎兄さん」
貴虎(幼少期)「偉いぞ」
貴虎「(光実、これがお前が求めていたものなのか...)」
気がつくと貴虎は無双セイバーを投げ捨て、ゲネシスドライバーのメロンELSを取り外そうとした。
しかし、光実はその"隙"を逃そうとはしなかった。ソニックアローを振り上げ貴虎のベルトからマスクをエグり、貴虎は海面に吹っ飛ぶ。
貴虎の体は海に流されていく。
壊れた戦極ドライバーとメロンLSは光実の足元に落ちた。
それと同時に光実の変身が解除された。
貴虎がメロンELSを掴んでいたのだ。
遠くの茂みにメロンELSが光に反射していた。
光実「兄さん...」
光実はそんな事に気付かないくらい気持ちが高ぶっていた。すぐに鉱太が来ると思いその場から逃げるように立ち去った。
この二人が兄弟だったとはもう誰も思えない。
鉱太はこの場を見て呆然とした。
二人の姿は無く、あるのは壊れた戦極ドライバーとメロンLS。
鉱汰は遠くの茂にメロンELSを見つけた。
鉱太はそれを拾い上げ強く握った。
鉱太「貴虎、お前...」
鉱太にとってはそれが貴虎に託されたように感じ、拾い上げ、胸に当てた。
朝、ユグドラシルタワー、最上階
光実とオーバーロードの一人レジュエは貴虎がいた部屋にいた。
この部屋もヘルヘイムの植物に覆われていた。
レジュエ「いい目になったね...どうだい?実の兄を手にかけた気持ちは。流石に君でも、フフフッ...心が痛いかい?」
光実「心が痛む...?フッ...フフフッ...バカ言えよ!僕は兄さんを乗り越えた。ようやく解放されたんだ...呉島貴虎の呪縛から!」
「それは違うよ」
光実が振り返ると青いTeam.鎧武のパーカーを着た初々しい少年、ずっと昔の"弱い"頃の自分の姿があった。
光実(亡霊)「"キミ"はどうやっても兄さんからは逃れられない」
光実「なんだお前か...」
レジュエ「ん?」
不思議そうに光実を見た。
光実(亡霊)「キミの人生は全部兄さんから与えられたものだよ。キミの力で勝ち取ったものなんて一つもない...」
光実「黙れ!説教はもうウンザリなんだよ!」
光実(亡霊)「一人じゃ何も出来ない臆病者...どれだけ上手く見せてもそれがキミの本性だよ」
光実「ふざけるな。何も出来なかったのはお前の方だろう。これ以上僕に付きまとうな!」
レジュエ「おいおい...お前一人で何をやってる?」
光実「消えろよ幻め!僕の中から出て行け!」
光実(亡霊)「呉島光実は呉島貴虎の影だ。兄さんが消えれば影である僕たちも消えるしかないよね?」
光実「うるさい!消えろ!消えろ!消えろ!」
光実は積み上げていた書類を崩し、訳も分からず投げつけた。
レジュエ「もしかして、壊れちゃった?」
力果て光実はその場に倒れこんだ。
レジュエ「そういえば、君たちが使ってるロックシード?あれ面白いねぇ...僕がちょっと改良してみたんだけど使ってるみるかい?」
そう言うとレジュエは机に茶色の見慣れないロックシードを置いた。
光実は反応して机の上を見る。
〈LS-YOMI〉
レジュエ「"ヨモツヘグリロックシード"...使ってくれるかい?」
光実は頷いた
仮面ライダー鎧武 外伝 「変身!光実、新たなるステージへ!」