おそまつな管理にも関わらず感想等も頂き、短いですがようやく更新ができました。これからも、細々ですが頑張って書き続けます。
最近はナルコレとか、ナルスト4とかばっかで全然原稿進んでませんでした。ネタは大量摂取してますがww
あと、初・全忍2に参加してきました!!今度は大阪か……遠いな…
――木ノ葉隠れの里特別上忍・月光ハヤテ
彼の者は、その病人然とした風貌とは裏腹に、常に平静を保ち迅速な判断を下すことのできるその優れた能力を買われて、此度第三の試験の予選審判役としてこの場に居た。
中忍試験は死者を出すことも厭わない過酷な試験ではあるが、それでも死者は出ないに越したことはないし、例え此度の試験で中忍に昇格できずとも、いずれも第一・第二の試験を突破できるだけの実力を持った可能性多き下忍たちがこの場には居るのであって、そんな受験者たちの命を守るのが彼に課せられた任務であった。
そして、来る第九回戦。
この我愛羅という砂の忍の能力については、ハヤテも十分注意していた。第二の試験の最中、彼らと対峙した雨隠れの忍はこの変幻自在に動く砂で圧死させられたという報告を受けている。それは無残な死に様だった。彼の者の試合の際には、止めに入る瞬間の見極めが重要になること肝に銘じていた。
対戦相手となったロック・リーの凄まじい猛攻には、ハヤテも十二分に感心していた。流石、あのマイト・ガイを師事しているだけはある。しかし、それ以上に驚かされたのが、やはりあの我愛羅という忍だった。あれほどの威力で石敷きの床に叩き落とされながらも、彼はなおも砂を操ってロック・リーに襲い掛かったのだ。
ロック・リーは八門遁甲の影響で、すでに戦闘不能状態だった。決着はついた。
ハヤテはこの時点ですぐに、この試合を止めるつもりでいた。
「………(ピク)」
しかし…このとき彼は、人知れず異常な事態に襲われていたのだ。
「……!(声が、でない…?)」
まるで、喉の奥に空気の塊が詰まったかのように、ハヤテは声を発することができなかったのだ。
だが息を吐けなくなっただけで、即死に至るわけではない。ハヤテだからこそ、その時点でパニックにもならず冷静に自身の状態を分析できたわけだが……しかし、止める者のいない試合は継続され、彼らの目の前で我愛羅の操る砂がロック・リーの左の手足に絡みついた。
「っ……(まずい!!)」
飛び込んで止めようにも、息を止められたハヤテには初動の動きが妨げられてしまい、物理的にも即座に前へと飛び出すことができなかった。
「――我愛羅っ……やめてぇええッ!!!」
突如、少女の悲痛なる叫びが砂を引き裂いた。それは、比喩でも何でもない事実だった。
観覧席から飛び込んできた木乃花カミナが、手にしたクナイでロック・リーを捕らえていた砂の束を切り裂いたのである。
「はッ!!――ゴホッ、ゴホッ……」
この瞬間、ハヤテはようやく、喉元のつっかえが外れて呼吸ができるようになった。ついでに、常日頃の癖のようになっている咳も数回出たため、周囲の者たちに異変を気づかれることはなかった。喉元の違和感は、完全に消え去っていた。
そして、ハヤテの視線の先には……ロック・リーを捕らえていた砂は崩れ、木乃花カミナと砂の我愛羅が対峙していた。
◆◆◆
このままではリーは、我愛羅の砂によって手足を潰される。そうなれば、彼の忍びとしての未来は、完全に断たれてしまう――そんなの、ダメだ!!
カミナはナルトの腕を飛び出して、無我夢中でクナイを手にし、観覧席の柵に掛けた脚を全力で蹴り出していた。
一連の動作はわずか数秒のことで、弾丸のごとく試合会場に落下してきたカミナは、その勢いのままクナイでリーを捕らえた砂をスパンッと大きく斬り裂いた。我愛羅の砂は、チャクラによって砂粒同士が繋がり合い変幻自在に動く仕組みであり、故に束となった砂の途中を一瞬でも完全に分断すれば、そこから先へと繋がった砂は我愛羅のチャクラと切り離されてコントロールを失い地に落ちる。……かつて、夜叉丸が暴走した我愛羅の砂を止めるために対峙していた記憶が、カミナに仲間を救う術を教えてくれた。
「ハァ、ハァ………邪魔を、するな…カミナ…」
瓦礫の中から、我愛羅がゆらりと立ち上がる。カミナはクナイを構えたまま、背後にリーを庇った。カミナの蒼白い顔は、悲痛な悲しみに歪んでいた。
「ダメよ、我愛羅!……もう、決着はついたわ…だから、」
「五月蠅いッ!!」
「ッ!!」
我愛羅の操る砂の束が、カミナとリーに襲い掛かる。リーはすでに、死力を使い果たして気を失っていた。
「カミナぁッ!!」
ナルトが叫び、柵に脚を掛ける。しかし、砂がカミナ達に触れる直前にパァンッと弾けた。
ガイが砂の前に立ちはだかり、攻撃を防いだのだ。
「なぜ…助ける……」
「…こいつは、愛すべきオレの大切な部下だ。そして彼女は、オレの部下を身を呈して救ってくれた恩人だからだ」
ガイは、よどみなく言い切った。
愛などと……そんなものは我愛羅にとって意味無き言葉、またはただの文字の羅列に過ぎなかった。
6年前、敬愛していた偶像の母と、偽りの優しさを与えていたと言う叔父と…初めての友であったカミナを奪われて喪った、あの日から……
「………。」
「………。」
「両者、試合はここまでです。――勝者、我愛羅!!」
咳を落ち着けたハヤテの宣言で、第九回戦は終了した。
医療忍者たちが担架を持ってリーの元に駆けつける中、我愛羅はしばらくガイとそしてカミナを睨みつけていたが……やがて、くるりと背を向けて、観覧席へ戻っていく。サラサラと、周囲に散らばった砂が我愛羅の背中にひょうたんの形となっていった。
「我愛羅、待って!!」
「………。」
それを、カミナが呼び止めた。我愛羅が足を止め、僅かに振り向く。
先ほどの俊敏な身のこなしを成したとは思えないほど、相変わらずカミナの顔色は悪かった。しかし、目に痛いほどに鮮やかな真紅の髪と蒼い双眸の色彩は、冷たい表情を張付けたままの我愛羅のことを目を逸らすことなくまっすぐに見つめていた。砂色以外の色彩に乏しい故郷では、父や兄姉たちでさえ、我愛羅のことを正面から見返す者などひとりも居ないというのに……カミナの瞳は、昔と全く変わっていなかった。
「我愛羅、どうして……」
カミナの瞳には、その蒼さが溶け出したような揺れる雫が浮かんでいた。場違いにも、我愛羅はそれを美しいと胸の内で思った。
「我愛羅……あなたはかつて、その砂で人を傷つけてしまうことを、とても悲しんでいたわ……忍になったのなら、その類まれな能力を使うことも分かる。でも、なんで……どうして、奪う必要もない命まで奪おうとするの!?」
カミナには分からなかった。そして悲しかった。昔の我愛羅と、あまりにも違いすぎるその心に。
カミナは知らない。カミナが砂隠れを去ってからの6年間で一体何があったのか。なぜ、あんなにも慕っていた夜叉丸を、その手で殺すに至ったのかを……
「……それが、オレの存在理由だからだ」
「存在、理由?どうしてっ……!!違うよ、そんなのっ…!!」
「お前に何が分かる!!」
我愛羅が怒鳴る。
その声は周囲に響き、何ごとかとナルトたちの視線を集めた。テマリたちも驚いていた。あの我愛羅が、かつて今まで、こんなにも感情的な声を出したことがあっただろうかと。
「お前だって、本当はオレのこの力が怖かったんだろう!?だから逃げたんだ、オレの前からっ…!!」
「違うっ!!」
我愛羅は誤解をしている。カミナも、感情的になって叫んだ。夢と現実の境界があいまいになり、疲弊した精神は普段冷静な彼女の理性を弱らせていた。
「6年前、私を砂隠れから連れ出したのは、夜叉丸さんよ!!」
「「「?!」」」
カミナの言葉に、我愛羅だけでなく、テマリとカンクロウも驚きを露わにしていた。
――6年前、その若い命を散らした彼らの叔父。優しい人だった。叔父の死を告げられた時、二人の兄姉はそれが信じられなかった。我愛羅が、彼の人を殺したなどと……我愛羅は夜叉丸にだけは、心を開いていたから。その人を……我愛羅が暴走して、手にかけたのだと。
そして、その事件の日に、カミナは砂隠れから消えていた。
「夜叉丸さんは、あの日の夜…私に突然、砂隠れを出ろって言ったの。理由は教えてくれなかった……でも夜叉丸さんは、我愛羅の友達になってくれてありがとうって言ってた!あの人は誰よりも、我愛羅のことを大切に想っていた!!」
「ッ、嘘だっ!!」
「嘘じゃない!私だってッ…できるなら我愛羅とずっと一緒に居たかった!!」
「!!」
もはや叫び合うようにして言葉を投げ合うカミナと我愛羅の様子に、ナルトは、ズキリと…自身の胸元が痛むのを感じた。なんだ、コレ……
「――…両者とも、私語はそこまでです」
「カミナ……もうやめろ」
我愛羅とカミナを止めたのは審判役のハヤテと、観覧席から降りてきたカカシだった。
我愛羅は、今しがたのカミナの言葉と事実が衝撃的だったのだろう。動揺の為かぶるぶると震わせていた腕を無理矢理鎮めると、テマリたちの居る観覧席へと戻っていった。瞬身の術で傍らに戻って来た我愛羅を、テマリは……複雑な表情で見遣り「お帰り…」と小さく声を掛けた。カンクロウもまた、異郷の地で明らかになった意外な真実に、動揺の消えぬ表情のままこちらに戻って来る姿が見えた。
カミナは未だ闘技場の真ん中に立って…ぽろぽろと、止めどなく溢れてくる涙を止められなかった。
涙を見せるなど、忍として失格だ。それでも、零れる涙は嗚咽を誘い、しゃくりあげる喉を耐えるために、ぎゅうっと服の裾を握り締めた。
「……カミナ……残念だが」
肩に乗せられたカカシの手に、彼が言わんとしていることが分かった。
カミナの目の前に、影が立つ。ハヤテだった。
「……木乃花カミナさん。キミは、他受験者の試合中に介入しました。これは規定違反です。よって…キミは現時点で、中忍試験を失格とします」
「……はい」
カミナは反論もせず、それを受け入れた。
「えぇっ!?」
「失格!?」
「…しかたねーよなぁ…」
「そんなっ……」
カミナの突然の失格宣告に、木ノ葉側のギャラリーは騒めいた。しかし、至極当然のことでもあった。
ハヤテの言う通り、カミナは我愛羅とリーの試合に決着を待たず割って入ってしまったのだ。それが例え…ハヤテの身に人知れず起きた異常事態の為に、試合を中止することが妨げられたのだとしても。
ハヤテとしても、この通知には呵責の想いがあった。彼女が試合を止めに入ったのは、ロック・リーを…仲間を守るためだ。彼女の咄嗟の判断のおかげで、彼の命は守られた。それほどに、危うい刹那であったのだ。そしてそれは本来、審判を任された自分の役目であったというのに。
しかし、中忍試験主催里としては贔屓と取られないためにも、審判の非を認めることも、自里の受験者の違反を甘く見過ごすこともできないのである。観覧席の上では、三代目火影が苦渋の表情を浮かべつつも、その判断に肯定の意思を示していた。
しかし、そこへ――
「――ちょいと、木ノ葉の皆さん?悪いが彼女の失格、ちょっと待ってくれませんかねぇ?」
場違いにも軽い調子の、その判定に異を唱える声が投げかけられたのだ。
会場中の視線が、そこへと集まった。
「(え……?)」
カミナの視線も、そこに含まれていた。
しかし、カミナの視線は不意を突かれたような驚きそのもので、その余りの驚きに涙が止まるほどだった。
観覧席から声を掛けてきたのは、カミナの″見知らぬ″男だったのだ。
「キミは……」
ハヤテが問うた。
「えぇ――音隠れの忍の、ナギ・ナタクと申します。
彼女の失格、ちょっと待ってもらえませんかね? 彼女が失格になれば、残りの受験者は三人。オレとドスと、そっちのおデ…もとい、ぽっちゃりくん。不戦勝でも第三の試験に進めるのか、それとも失格になるのか……まぁ、それはどちらでもいいんですが。これだけ待たされて一戦も戦う機会がないなんて、そんなのつまらないんですよ?」
にっこりと、他の3人と比べればずいぶんと愛想の良い表情で質問してくる音隠れの忍と名乗る青年が、そんなことを言っている。隣にいるドスという音忍は、そんな仲間に一瞥をくれるだけだった。
え……音隠れの忍が、四人?
この人、ダレ?
カミナは呆然と、感情の見えない笑顔を浮かべるその音忍を見上げていた。
オリキャラ登場!次回はほぼオリジナル。
ネタ模索中。