ハイスクールD3~悪魔の実の能力者は転生する~ 作:NCドラゴン
~イッセーside~
俺が撃ったアーマメント・ドラゴンショットはヤツに当たらず、その隣を通り過ぎて壁を破壊して飛んでいく。それでも奴はもう一度魔力を練り込もうとするが……。
《ドゴォォオオオオオン!》
「ヒィッ!」
俺は勢いよく拳を床に叩きつけた。神殿そのものが大きく揺れる。奴は床にできた巨大なクレーターを見て、目元をひくつかせ、ガチガチと歯を鳴らし、震え上がっていた。俺はヤツに対して吠える。
「二度と、アーシアに近づくなッ!次に俺たちのもとに姿を現したら、そのときこそ、本当に消し飛ばしてやる!」
そんな下種屑の瞳は、怯えの色に染まっていた。
〈相棒。そいつの心はもう終わった。そいつの瞳はドラゴンに恐怖を刻み込まれた者のそれだ。〉
そうかよ……。
「イッセー、トドメを刺さないのか?」
アスカロンの切っ先をディオドラに突き立てているゼノヴィア。その瞳は凶悪なほど、冷たいものとなっていた。
「アーシアにまた近づくかもしれない。いまこの場で首をはねたほうが今後のためじゃないのか?」
確かにそうした方がいいかもしれない……けど俺は首を横に振った。
「……こいつもいちおう現魔王の血筋だ。いくらテロに加担したといって、殺したら部長や部長のお兄さんに迷惑をかけるかもしれない。もう十分に殴り飛ばしたさ。」
「その方がいいだろうな。
ルフトが俺に合わせるように話し、下種屑を持ち上げる。死すら生ぬるい?
「こいつは現政権に反対して裏切った。もう二度表には出られない。それにこいつはさっき言った通り禍の団の情報も吐いてもらわなくちゃいけねえ。これからのこいつの未来は永遠の生き地獄と暗い暗い下の世界だ。……こっちのほうが下種屑にはふさわしいだろう?」
……確かにそっちのほうがこいつにとっては地獄だな。
「……わかったよ。そう言うなら私は止める。だが。」
「ああ、そうだ。」
俺とゼノヴィアは拳と剣、それぞれをルフトが持ち上げている下種屑に向けた。
「「もう、アーシアに二度と近寄るな!」」
俺たちの迫力ある声に下種屑は瞳を恐怖で潤ませながら何度もうなずいた。そして俺たちは下種屑をルフトに任せると、アーシアのほうへ戻った。
「アーシア!」
「イッセーさん!」
アーシアの頭をやさしくなでる。安堵したのか、アーシアはうれし泣きをしていた。よかったよアーシア……。しばらく頭をなでていると信じられない声が聞こえてきた。
「……手足の枷が外れない?」
木場の言葉に、俺も枷を取ろうとするものの。
「クソ!外れねぇ!」
赤龍帝のパワーをもってしてもビクともしない。アーシアの四肢についている枷を部員全員が取り払おうとする。聖魔剣、聖剣でも切れず、魔力でも仙術でも覇気でも外れない。しまいにはルフトやゼフィの力でも簡単には壊せない。全力を出せばアーシアの方が危ない。
「おい!これはどうやって外す!?」
ルフトが下種屑を脅して聞き出そうとする。
「ヒィッ!そ、その装置は機能上、一度しか使えないが、逆に一度使わないと停止できないようになっているんだ。……アーシアの能力が発動しない限り停止しない!」
下種屑が必死に喋る。
「どういうことだ?」
「その装置は
そんなのありかよ!?
「発動の条件と、この結界の能力は?」
「……発動の条件は僕か、他の関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら。結界の能力は……枷に繋いだ者、つまりアーシアの神器能力を増幅させて
反転……その言葉を聞いて部長たちから聞いた話が頭をよぎる……。
「効果範囲は?」
「……このフィールドと観戦室にいる者たちだよ。」
まじかよ……俺たち全員がその言葉に驚愕した。アーシアの
……。
「……各勢力のトップが根こそぎやられるかもしれない!」
木場の言葉に青ざめる俺たち。
「会長との一戦でそんな作戦が思いつかれたのか!」
そんな俺の疑問に下種屑は首を横に振る。
「……いや、随分前からその可能性が出ていたようだよ。ただ、シトリーの者がそれを実際におこなったことで計画は現実味を帯びたそうだ……。」
部長が怒りに顔を歪める
「堕天使の組織に潜り込んだままの裏切り者がソーナに反転を貸すことでデータを集め、利用していたのね!」
「胸くそ悪りぃな……あいつらグラシャラボラスだけじゃなく、おれたちの戦いでそんなことをしていたのか?」
グラシャラボラス家の不審死、会長との戦い、ディオドラ、全部禍の団が絡んでいたようだ。ドライグにこの装置を外す手段はないか訊くが、ドライグ曰く絶霧は赤龍帝の籠手より高ランクであり、禁手状態である以上どうにもならないと言われた……。くっそ!!!どうすれば……!
「イッセーさん、私ごと……。」
アーシアが変なことを言ったので俺はアーシアに怒鳴った。
「バカなこと言うんじぇねぇッ!次にそんなこと言ったら、怒るからな!アーシアでも許さない!」
「で、でも、このままでは、先生やミカエルさまが私の力で……。そんなことになるくらいなら、私は……。」
「俺は……俺は!二度と、アーシアに悲しい思いをさせないって誓ったんだ!だから絶対にそんなことさせやしない!俺が守る!ああ、守るさ!俺がアーシアを絶対に守ってやる!」
アーシアの肩を抱き真正面から俺は言う。その言葉に涙を溢れさせるアーシア。いやアーシアだけじゃなく、俺の瞳からも涙が……。
「だから一緒帰ろう。家で父さんと母さんが待ってる。俺たちの家に帰るんだ!」
「イッセーさん……!」
けどどうすれば……!?するとゼフィが叫ぶ。
「全員!俺の体に触れろ!」
「え……?なんで……?」
「いいから触れろ!」
そう言われて全員がゼフィの体に手を合わせる。
「
すると真っ黒な龍の手が装着されさらに禁手して籠手に爪が装着されるゼフィの神器……今の状況で一体なにを……!?と思っていたら俺の頭がクリアにスムーズになる……なんだこれは!?
「俺の禁手の力だ!これで思考速度は倍だ!」
ありがてえ……おかげで頭がさえた……ただ問題は……。
「イッセー!おれたちは後ろを向く!さっさとしろ!」
そう言ってルフトはゼフィと木場を後ろに振り向かせる……どうやら同じ考えに至ったようだ。ありがてえ!
「アーシア、先に謝っておく。ごめん。」
わけがわからず首をかしげるアーシア。
「高まれ、俺の性欲!俺の煩悩!
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
鎧の各宝玉が赤く輝き、枷に触れている手に流れていく……。
……思い描くはアーシアの全裸のイメージ……強く、強く描くんだ!
《バギンッ!バリバリバリッ!》
金属……枷が壊れる音と、布……服が弾け飛ぶ音が聞こえた。アーシアの四肢を捕らえていた枷は木っ端微塵に吹き飛び、同時にアーシアのシスター服も消し飛んだ。
「いやっ!」
その場に屈むアーシア。それを見て思わず鼻血を垂れ流す……。
「あらあら大変。」
朱乃先輩がすぐさま魔力でアーシアに服を着させた。ちょっともったいないといつもなら思うがそんな気は全くおきなかった。
「イッセーさん!」
シスター服に身を包んだアーシアが俺に抱きつく。よかった……無事だ……。
「信じてました……。イッセーさんが来てくれるって!」
「当然だろう。でも、ゴメンな。辛いこと、聞いてしまったんだろう?」
アーシアは首を横に振り、笑顔で言う。
「平気です。あのときはショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから。」
アーシア……ゼノヴィアも隣で目元を潤ませている。
「アーシア!良かった!私はおまえがいなくなってしまったら……。」
「どこにも行きません。イッセーさんやゼノヴィアさん、それにみんなが私のことを守ってくれますから。」
「うん!私はおまえを守るぞ!絶対だ!」
抱き合う親友同士……いい絵だな!
「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私のために……。」
アーシアが一礼すると、皆が笑顔で応える
「アーシア。そろそろ私のことを部長と呼ぶのは止めてもいいのよ?私を姉と思ってくれていいのだから。」
「……っ!はい!リアスお姉さま!」
部長とアーシアが抱き合っている。なんか一瞬花が咲き乱れたように見えたのは気のせいか?
「よかったですぅぅぅぅっ!アーシア先輩が帰ってきてくれてうれしいよぉぉっ!」
ギャスパーもわんわん泣いており、小猫ちゃんに頭を撫でられていた。
「やれやれ……まさかあんな技が役に立つとはな……。」
「それにしてもあんな技があるとは……。すげえな。今度俺にも教えてくれよ。」
「てめえもエスオと同類か!」
「はっ!男なら当然の感情だ!」
「てめえそれでもゼファー先生の子どもかよ……どんな育て方したんだよ……。」
「親父は親父、俺は俺だ。」
言い争う二人……。あ、そうだ。
「ゼフィ、お前の神器ってなんなんだ?いきなり頭がよくなったけど……。」
「ああ?あれか?俺の龍の手は亜種でな、単純な力だけでなく速力、魔力、体力、回復力、耐久力、防御力、瞬発力、思考速度力すべてを強化する。そして龍の爪は俺をさらに倍強化してさらに他人に触れることによりその他人のもつ力も倍強化されるっつー代物だ。」
何それ?めちゃくちゃ強いじゃねえか……。
「ああ、かなり強いな。だけど詳しい話は帰ってからにしようぜ。さすがにちょっとつかれたし、こいつを突き出さなきゃいけねえし……。」
そう言ってルフトはさっきまで空気だった下種屑は持ちあげる。下種屑は目の前の光景が信じられないのか、目をしきりにこすっていた。
「まあいいや。アーシア。帰ろうぜ。」
「はい!と、その前にお祈りを。」
アーシアは天に何かを祈っている。
「アーシア、何を祈ったんだ?」
すっげー気になるな……。
「内緒です。」
恥ずかしそうに言うアーシア。笑顔で走り寄る。
《カッ!》
突如、まばゆい光が俺たちを襲う。視線を送るとアーシアが光の柱に包まれていた。
光の柱が消え去ったとき、そこには……。
「……アーシア?」
誰もいなかった。
主よ。お願いを聞いてくださいますか?
どうか、イッセーさんをずっとお守りください。
そして……。
どうか、これからもずっとイッセーさんと一緒に楽しく暮らせますように。
空っぽになったような俺の頭の中に、アーシアの声だけが聞こえた……。
~イッセーsideout~