ハイスクールD3~悪魔の実の能力者は転生する~   作:NCドラゴン

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思った以上にアンケートが集まりません。できればこれを見終わった後、活動報告をみてアンケートに答えてください。


第92話 巨龍

〜イッセーSide〜

 

「さてお前ら、龍門(ドラゴン・ゲート)を開くぞー」

 

アザゼル先生がパンパンと手を叩きながら言う。何時の間にかタンニーンのおっさんまで居る。本当にいつの間に来たんだ?

 

「確か終末の大龍って、世界の終末に動きだすものの一匹で、使命が来るときまで眠りについているんだったよな」

 

アザゼル先生の言葉にタンニーンのおっさんはうなずく。

 

「ああ、あいつは基本的に動かん。たまに地上へあがってきていたこともあったが、そのときですら寝ていた。数百年前、ついに世界の終わりまで深海で過ごすと宣言していたしな」

 

そんなドラゴンが龍王に……。それで大丈夫なのか?でも、会いたくても会いにくいのはわかった。深海のそこじゃ、さすがに会えないわ。

 

「さて、魔法陣の基礎はできた。あと各員、指定された場所に立ってくれ」

 

先生たちに促され、俺たちはそれぞれ、見知らぬ紋様が描かれたポイントに立った。自分たちの下に描かれている紋様がそれぞれ、二天龍、龍王を意味するものらしい。ちなみにルフトの紋様だけは俺たちのとは違い安っぽく見える。これはルフトが二天龍でも龍王

でもないからその他的な紋様らしい。くくく……勝った!各自指定ポイントに立ったことを先生が確認すると、手元に小さな魔法陣を操作して、最終調整をしているようだった。するとルフトの魔法陣だけが大きくなっていく……なんで!?

 

「こいつ合わせた紋様に調整したらでかくなりがったな……ただものじゃないってことだろう」

 

くそう……勝った気が薄れた……。すると淡い光が下の魔法陣を走りだし、俺のところが赤く光り、ヴァーリのところが白く光った。先生のところが金色に、匙のところが黒く、おっさんのところが紫色に、ルフトのところが青く光り輝く。

 

〈それぞれが各ドラゴンの特徴を反映した色だ〉

 

と、ドライグが説明してくれる。

 

〈ここにはいないが、ティアマットが青。玉龍(ウーロン)が緑を司っている〉

 

へぇー。って、そういや見た目と色が一緒だな。てかルフト被ってね?

 

 

魔法陣が展開してから数分、何も反応もなく俺たちはその場で立ち尽くすだけだった。……本当にそのミドなんたらさんの意識とやらが来てくれるのか?怪訝に思う俺だが、魔法陣から何かが投影され始めた。立体映像が徐々に俺たちの頭上に作られていくが……。

 

「……大きくねえ?」

 

俺と匙はどんどん広がっていく映像の規模に口が開きっぱなしだった。そうして俺たちの眼前に映しだされたのはこの空間を埋め尽くす勢いの巨大な生物だった。

 

「で、でけぇぇぇぇぇぇええええええっ!うわ、このドラゴン、グレードレッドより断然デカいぞ!」

 

姿はでっかい蛇のようだ。頭部はタンニーンのおっさんみたいなドラゴンだけど。長い体でとぐろを巻いている様子だった。体が長細いタイプのドラゴンなのか。そういや、ドラゴンにはドライグやおっさんみたいに西洋のドラゴン然としたタイプと東洋の長細い蛇みたいなタイプがあると聞いたことがあるな。俺が驚いた声を聴いて説明するかのように、タンニーンのおっさんが言う。

 

「ドラゴンのなかで最大の大きさを誇るからな、こいつは。グレードレッドの5、6倍はあるだろう」

 

じゃ、じゃあ、5、600メートルですか……?怪獣の域を超えてる!

 

「サンファン・ウルフよりもでけえな……」

 

誰だサンファンウルフって!そんな俺の耳に特大にデカい奇っ怪な音が飛び込んでいた。

 

〈………………ぐごごごごごごぉぉぉ……おおおおおおおおん……〉

 

…………いびき?このドラゴン寝てますでおりがんまな…………←何弁だ?

 

「案の定、寝ているな。おい、起きろ、ミドガルズオルム」

 

タンニーンのおっさんが話しかけると、巨大なドラゴンはゆっくりと目を開いていく。

 

〈…………懐かしい龍の波動だなぁ。ふああああああああああっ……〉

 

大きなあくびをひとつ。でっけぇ口だな!タンニーンのおっさんを余裕で丸呑みにできる大きさだよ!

 

〈おぉ、タンニーンじゃないかぁ。久しぶりだねぇ〉

 

なんともゆったりした口調だな。そのドラゴンが俺たちを見渡す。

 

〈……ドライグとアルビオンまでいる。……ファブニールと……ヴリトラも……?知らないけどすんごく強そうな奴もいる。なんだろう、世界の終末なのかい?〉

 

「いや違う。今日はおまえに訊きたいことがあってこの場に意識のみを呼び寄せた」

 

タンニーンのおっさんがそう言う。しかしミドガルズオルムは返事をしない……なんでだ?

 

〈…………ぐ、ぐごごごごん……〉

 

ミドガルズオルムは再びいびきをかき始めた。ダメだこのドラゴン!話している途中で寝ちゃって大丈夫なの!?

 

「寝るな!まったく、おまえと玉龍だけは怠け癖がついていて敵わん!」

 

口から炎を画像に吐きつけて怒るおっさん。ミドガルズオルムも大きな目を再び開けていた。

 

〈…………タンニーンはいつも怒っているなぁ……。それで僕に訊きたいことってなんなのぉ〉

 

「おまえの兄弟と父について訊きたい」

 

おっさんがそう訊く。あれ?兄弟と父?

 

「ロキとフェンリル対策じゃ?」

 

俺が疑問に思い先生に問う。

 

「ミドガルズオルムは元来、ロキが作りだしたドラゴンでな。強大な力を持っていながら、その巨体と怠け癖から北欧の神々も使い道が見いだせず、海で眠るよう促したんだ。せめて、世界の終末が来たときだけ何かしろと言ってな」

 

「そ、それで終末の大龍なのか……。スリーピングででっかい龍ですね」

 

おっさんの質問にミドガルズオルムは答える。

 

〈ダディとワンワンのことかぁ。いいよぉ。どうせ、ダディもワンワンも僕にとってどうでもいい存在だし……。あ、でも、タンニーン。二つだけ聞かせてよぉ〉

 

「なんだ?」

 

二つだけって……そこはひとつじゃないのか?

 

〈ドライグとアルビオンの戦いはやらないのぉ?〉

 

俺とヴァーリを交互に大きな目で見ていた。

 

「ああ、やらん。今回は共同戦線でロキとフェンリルを打倒する予定だ」

 

おっさんの言葉にミドガルズオルムは笑ったように見えた。

 

〈へぇ、おもしろいねぇ……。2人が戦いもせずに並んでいるから不思議だったよぉ。じゃあそっちの新顔さんは誰?〉

 

そう言ってルフトを見つめる。

 

「竜成ルフトだ……それよりさっさと情報を教えろ……」

 

な、なんかピリピリしてないかルフト……

 

「んー。いいよぅ」

 

そう言ったあと、改めて質問に答えだした。

 

〈ワンワンはダディよりも厄介だよぉ。牙で噛まれたら死んじゃうことが多いからねぇ。でも、弱点もあるんだぁ。ドワーフが作った魔法の鎖、グレイプニルで捕らえることができるよぉ。それで足は止められるねぇ〉

 

フェンリルがワンワンね……。まあ、このミドガルズオムから見たら、小さなワンワンだよな。

 

「それはすでに認識済みだ。だが、北欧からの報告ではグレイプニルが効かなかったようでな。それでおまえからさらなる秘策を得ようと思っていたのだ」

 

〈……うーん、ダディったら、ワンワンを強化したのかなぁ。それなら、北欧のとある地方に住むダークエルフに相談してみなよぉ。確かあそこの長老がドワーフの加工品に宿った魔法を強化する術を知っているはずぅ。長老が住む場所はドライグかアルビオンの神器(セイグリット・ギア)に転送するからねぇ〉

 

先生がヴァーリのほうを指さす。

 

「情報は白龍皇に送ってくれ、こちらは頭が残念だ」

 

馬鹿でゴメンなさいね!

 

「でも、ドワーフとかエルフって本当にいるんですね」

 

俺は思ったことを口に出していた。だって、ファンタジー小説や映画でしか知らない存在だし。まあ、それを言うなら悪魔や天使がいるんだから、いて当たり前なのか。

 

「大概は人間界の環境激変で異界に引っ込んだがな。一部の奴らはまだ人間界の秘境に住んでいる」

 

ヴァーリが情報を捉え、口にする。

 

「前世には巨人族や小人族、人魚族に魚人族なんてのもいたな」

 

マジか!人魚もいるのか!!!

 

「把握した。アザゼル、立体映像で世界地図を展開してくれ」

 

先生がケータイを開いて操作すると、画面から世界地図が宙へ立体的に映写される。ヴァーリは一部を指定した。先生は素早く、その情報を仲間に送りだしていた。

 

「で、ロキ対策はどうだ?」

 

おっさんが急かすように訊く。

 

〈そうだねぇ。ダディはミョルニルでも撃ち込めばなんとかなるんじゃないかなぁ〉

 

ミドガルズオルムの話を聞いて、先生はあごに手をやった。

 

「つまり、基本普通に攻撃するしかないわけだな。オーディンのクソジジイが雷神トールに頼めばミョルニルを貸してくれるだろうか……」

 

「トールが貸すとは思えないが。あれは神族が使用する武器のひとつだからな」

 

先生の意見にヴァーリがそう言う。神族が使用する武器ってすごいんだろうな……。

 

〈それなら、さっき言ったドワーフとダークエルフに頼んでごらんよぉ。ミョルミルのレプリカをオーディンから預かっていたはずぅ〉

 

「物知りで助かるよ、ミドガルズオルム」

 

先生は苦笑しながら礼を口にした。なんだかんだ言って龍王なんだな……。

 

〈いやいや。たまにはこういうおしゃべりも楽しいよ。さーて、そろそろいいかな。僕はまた寝るよ。ふあああああ〉

 

大きなあくびをするミドガルズオルム。少しずつ映像が途切れてきた。

 

「ああ、すまんな」

 

〈いいさ。また何かあったら起こして〉

 

それだけ言い残すと、映像がぶれていき、ついには消えていった。ミドガルズオルム。変な龍王。また会うことはあるのかな?……ないな多分。そして俺たちは龍王からの情報を得て、動きだすことになった。

 

 

「あなた?一体何をしようとしていたの?」

 

「朱璃!俺は朱乃に引っ付く悪い虫を問い詰めようとしていただけで……!」

 

「命の恩人に何をいっているのあなたは!?」

 

あれ……なんかバラキエルさんが朱乃先輩似の女性に叱られている……誰だあの人は?

 

「バラキエルの妻の朱璃だ」

 

あの人が……!すっごい美人だ!

 

「いいでしょう。そこまで言うのなら、今夜は覚悟しておきなさい」

 

「か、覚悟!?一体どんな目に……!!!」

 

あれ?何かバラキエルさんの目が期待しているような……。

 

「バラキエルはドMなんだ。でもってその妻はドSだ」

 

上手いことバランスがとれてますね……。

 

「今夜は浮気相手と寝ますわ」

 

「う、浮気ぃぃぃぃぃぃいいいいいいいい!?」

 

バ、バラキエルさんがショックで石化を!?

 

「クスクス……冗談よ。って聞いてないわね……」

 

そりゃ言われた本人はすごいショックだろうに……。

 

「いいんじゃない?娘の幸せを邪魔しかけたんだし、お灸を据えた方がいいわ」

 

「そうね」

 

そう言って笑いあうお二人……仲がいいなー。

 

「お二人は古い付き合いなんですか?」

 

「「そうね。かれこれ5分ぐらいの付き合いよ」」

 

「短っ!」

 

ほぼ初対面じゃん!しかしそんなことを思わせないように笑いあうお二人。そうとう馬が合うんだな。

 

「朱璃にはなんか逆らえなくてな……」

 

「分かりますね。その気持ち……」

 

こっちじゃ旦那同士の気が合っている……似た者関係の夫婦なんだな。

 

「あなた?なんでこそこそしているの?こっちにいらっしゃい」

 

「真一もだよ」

 

「「え?ちょっと……うわあああ!?」」

 

ちょっと違った意味で似たもの夫婦だな。

 

〜イッセーSideout〜


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