アイアンボトムグレイヴディガー~ショタ提督の苦悩~ 作:ハルカワミナ
うぅ、最近ACからのネタにお世話になりっぱなしですね。
エスコンネタも入れたいのに。
「望んでこのような姿をしている訳では無いしな……」
ふぅと溜息をついた。
「あらそう? 似合ってるのに。できればずっとその格好で居て欲しいくらい」
本気なのか冗談なのか判らないが設楽がクスリと笑う。
あぁ、こういう性格だったなぁ。そういえば。
同期のイケメン提督が設楽に好意を抱いているが……。もし付き合ったら絶対尻に敷かれるな。
「提督、その……なんだ……。私も随分と似合っていると思うぞ」
長門が口を開く。何やらこちらを凝視していて少し怖い。
「長門か、その後どうだ? 不自由は感じていないか?」
設楽の鎮守府は過去に問題を起こした将校の鎮守府をそのまま引き継いでいる。
長門ともそのおかげで私と面識があるのだ。
「あぁ特にはないな。……難点があるとすれば設楽が抱かせてくれないので少々悲しい」
「抱かせて……というと貴様等そういう関係だったのか?」
胡乱気な目を設楽と長門に向ける。
……他人の鎮守府の事までとやかく言うつもりは無いが、風紀が乱れているようならば注意しなくてはならないだろう。
「……後ろから腕を回されて長門ネックレスというか、長門リュックサックをされたい提督は少ないのではないかしら」
あぁ、そういうことか。随分設楽に懐いているな。
微笑ましくてクスリと笑いがこみ上げた。
「とりあえず座ったらどうかしら。長門もそのゴスロリ提督の隣に座ると良いわ。たっぷりと抱かせてくれるから」
抱かせて、という部分を強調し此方にも座るように強制する。
……此処は私の鎮守府なのだがな。
「天津風、すまないが私にも茶を頼む。衣笠は私の服を取ってきてくれるとありがたい」
「はーいっ! 衣笠さんにお任せ♪」
「あ、お茶葉切れたから厨房でもらってくるわね」
小気味良い返事を残して衣笠と天津風が出て行く。
設楽と話したいこともあったので、対面のソファに腰掛けた。
自分の体がソファに沈んで落ち着かない。
固い椅子の方が好きなのだ。
隣に長門が座り、体格差で長門の方に傾いてしまった。
彼女の名誉の為に言っておくと決して長門が重いわけではない。
ソファが柔らかすぎるのが問題なのだ。たぶん、きっと、おそらく。
「おっと……。大丈夫か? 提督」
「すまない、柔らかい椅子に慣れていなくてな」
少し釣り目気味の艦娘の顔を見つめる。
長い黒髪、瞳の中に炎が揺らめいているような朱がある。それが彼女の意志の強さを証明しているようだ。
「私の顔になにかついているのか?」
見つめていると長門が口を開いた。
「……いや、瞳が綺麗だな、と思ってな」
正直な感想を漏らす。
「あー……。そんな事長門に言ったら……」
設楽が盛大な溜息をついて、知らないぞといった表情をする。
何だ?何かあるのだろうか?
疑問を考える暇も無く、長門にぎゅうと抱きしめられた。
「あぁ、もう可愛いでちゅね~! もう長門お姉さんがチュッチュしたいくらい!」
「な、長門!?」
ありえない言動に動揺する。
いつもはキリッとして、頼れる姉、または副指令を務められる威厳を持った艦娘なのだが……。
「はぁ……。やっぱりこうなったわね。長門は小さくて可愛いものには目が無いのよ。で、抱きしめられると離さないから私の鎮守府でついたあだ名が妖怪アリジゴク。年少の駆逐艦達にはそれをネタに遊んでいたりしてスリスリしてるわ」
設楽がヤレヤレと苦笑する。そういうことは早く言え!
「だぁーってぇー、設楽はあんなに良い匂いをさせてるのにスリスリもチュッチュもさせてくれないんだもん。でも提督でちいかわ成分補給するから良いもん」
ちいかわ成分とは小さくて可愛いといった略だろうか。
……長門の口調まで変わってしまっている。ヒョイと持ち上げられ膝に乗せられてしまった。首筋にスリスリと鼻を擦りつけられる感触にくすぐったさで身悶えした。
が、先程の言葉に看過できない部分があった。
あんなに良い匂い……やはり設楽も……?
くすぐったさを我慢しつつ設楽に問いかける。
「……設楽、もしかしてお前も、なのか? 艦娘の、その……」
何と言って良いか言いよどむ。
「……そうね。エサよ」
茶を口に含み、事も無げに言い放つ設楽は複雑な表情をしていた。
「アナタは気付いてないと思っていたわ。鈍いし、できれば気付かないままのが幸せだったのかもしれないけれど。私自身は海軍公認の人形姫。……傀儡姫と言ったほうが良いかもしれないわね」
「設楽、だから自分をそう卑下するのは止めろと言っている」
設楽の世をひねた自虐的な笑い方に、長門が怒気を込めた声を放った。
「そうね、ごめんなさい。ただ同期として忠告しておくけれどマスコットとして役に立つ今の私以外は使い捨ての駒よ。それはアナタも」
設楽の瞳の中に深い闇が見えた気がした。
相当な苦労を重ねて来たのかもしれないな……。海軍のマスコットガールにされたとは言え少将までの道のりは並大抵の努力では無かっただろう。
……考えたくはないがあの陸軍大将の様な趣味の人間も居る。設楽がそういう行為をするとは考えたくは無いが、な。
「設楽よ、もしかしてこんなに早く到着できたのは、やはり血か何かを飲ませたのか?」
コクリと設楽が頷いた。……だろうな、戦意高揚状態で無ければとてもじゃないが数時間で来れる距離ではない。
「小型魚雷艇を改造したものを比較的高速で移動できる艦娘達に牽引してもらったわ。風向きも良かったので、おそらく40ノット以上は出てたはず」
そういえば設楽は小さくても重武装の兵装が好きだったな。
おや?海路で来たのなら護衛艦隊と出会わなかったのだろうか……。
「設楽、こちらから護衛艦隊を向かわせたのだが見なかったか?」
「え? 見なかったけれど……。何処のルートから送ったの?」
キョトンとする設楽、何故だろう。何か胸騒ぎがする。
「南方ルートだが……。お前達は何処を通ってきた?」
私の言葉に設楽がハッとしたように声をあげた。
「ダメよ! 南方海域は今、深海棲艦の姫クラスが居るわ!」
その言葉に驚愕した。
姫クラスだと!?
では春雨達は……!
「あなた、お茶葉もらってきたわよ……って何してるのよ。他の鎮守府の艦娘まで手を出すつもり?」
厨房から帰ってきた天津風が呆れたように声を出す。
長門の膝の上に座らせられているが、これをどこをどうみれば手を出していると見るのか。
私が手を出されているとは考えてくれないのかと少しだけ悲しくなった。
しかし今はそのような事どうでも良い。
「天津風、大淀を呼び出してくれ。それと長門、すまないが離してくれると有難い」
アリジゴクのように両腕をガッチリと此方の腰に回し、首筋に鼻を埋めている長門に声をかけた。
めんそーれ♂様がロリ提督を描いてくださいました。大感謝です。
【挿絵表示】
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