真・恋姫†無双 飛信譚   作:しるうぃっしゅ

18 / 36
第18話:漢陽紛糾

 

 

 

 

 

 漢陽郡冀県の郡城。傅燮が太守を勤めるその地には、多くの民が押し寄せてきていた。周囲の村や小さな町の民はこぞってそれぞれの住んでいた場所からこの街へと難民が如く逃げ込んできていた。それは反乱軍による金城の凄惨な虐殺を知れば当然のことであり、傅燮もまた彼らを受け入れた。幸いなことに、この街は漢陽の要所として豊富な兵糧があり、涼州の武器庫としての役割も担っていたからだ。逃げ込んでくる民とは正反対に商人達や旅人などは関わりあいを避けるべくこの地を避けて通っていた。

 

 なんと言っても反乱軍の行いは、これまでの漢王朝の歴史でも類を見ないほどの虐殺と略奪を繰り返して突き進んでいるからだ。彼らの通った後には草一つ生えていない焦土となった地のみが残される。それを聞けば、民は逃げ出し、商人や旅人も近寄る筈もない。そんな反乱軍が近づく中、今まさに郡城の謁見の間にて喧々囂々とした軍議が行われていた。参加しているのは官僚だけではない。太守傅燮、補佐蓋勲、県令董卓に県丞の賈詡。その他全ての文官に加え、張遼、華雄、胡軫や高順―――無論李信といった者達までもが参集されていた。これだけの人数での軍議などこれまで行われたこともなく、これが初めてであったが、それも無理なかろう話だ。現在話し合われていることは、反乱軍へどう対抗するべきか、である。

 

「反乱軍の数は割り出すことが出来たのか!?」

「正確な人数は不明ですが、物見によるとおよそ六万にも及ぶとのことです!!」

「六、六万!? 馬鹿な、以前の報告ではもっと少なかった筈では!?」

「手下八部全ての将が参加したことによって、更に兵数が増加したのではないかと」

「ぐっ……馬鹿な。なんという数か」

「しかも、多くの異民族のみならず、漢民もまた反乱軍に参加しているとのこと!!」

 

 反乱軍の兵数に愕然とするのはこの場にいる全ての人間であり、賈詡や傅燮であってもそれは例外ではない。顔には出していないものの、横顔から滴り落ちる珠の汗が彼女達の内心を示していた。

 

「それで反乱軍はどこまで進んでいるの!?」

 

 凄まじい声が響き渡る中、賈詡が声を張り上げ反乱軍がどの位置まで来ているのか確認を取ろうとする。一瞬静まり返った謁見の間ではあったが、その時激しい音をたてて一人の男が部屋に慌てて入室してきた。洪手とともに跪き、顔中汗だらけの様子ではあるが、それを拭く余裕もなく傅燮達に向かって報告を飛ばす。

 

「狄道の城、陥落との連絡がっ!!」

 

 シンと再び静まり返るのは、それが衝撃の報告であったからだ。狄道といえば、既に自分たちがいる場所から目と鼻の先。後数日どころか二、三日もせずに、六万という大規模な軍勢であろうとも辿り着くことは必至。もはや一切の猶予も余裕もない彼らではあったが、一体どうすればいいのか未だ意見はまとまっていない。

 

「……私は別の地域へと撤退すべきでは、と考えます」

「しかし、今現在のこの街の民をつれてどこへ逃げるというのだ!? 元々の民に加えて難民も合わせれば四万(・・)。そのうちの半分が女子供に老人だ!!」

「反乱軍を構成するのは騎馬民族が多い。奴らの行軍速度を考えれば必ず追いつかれる!! さすれば後は地獄だぞ!!」

「ならばどうするというのだ!! まさかこの城で籠城を行うというわけではないだろうな!?」

「そ、それは……」

「確かに兵糧はある!! 武器もある!! だが、肝心の扱う兵士が圧倒的にたりないのだ!!」

 

 この時代の兵役制度は大体であるが四種類に分別することが出来る。一つ目が戸籍に登録された民を召集して兵士とする徴兵制。これは遥か昔から変わらず行われている制度で、かつての李信の子供の頃にも村の仲間がよく徴兵されていた思い出がある。二つ目が軍人の家系による子を兵士とする世兵制。三つ目が罪人の罪を免じる代わりに兵士とする謫兵制。四つ目が賃金払いによる兵士を雇い入れる募兵制などがあった。この街には世兵制や給料を払って召し上げている募兵制などによって兵士をまかなっているのだが……。

 

「足りないのはわかっている!! だが、戦うしか他に道はない!!」

「そうだ!! 反乱軍による暴虐の嵐は聞いておろう!! 老若男女問わず皆殺しだというのだ!! この地でそんな馬鹿な真似させてなるものか!!」

「現実を見ろ!! こちらには正規兵が四千しかいないんだぞ!? それで一体どうしろというのだ!! お前たちはそれでもどうにかなるとでも言うのか!?」

 

 この街にいる兵士は他の町より多いといえどおおよそ四千。それでもその人数は破格だ。さらに滅ぼされた街々から逃げ延びてきた兵士が二千。あわせて六千の兵士しかいない。つまり、傅燮軍六千対反乱軍六万の戦いとなるわけだ。戦力比にすれば十倍。李信や華雄が最近戦っていた異民族との戦力比も十倍などざらにあったが、それとは比較する人数の桁が違う。

 

 義憤にかられていた者達の勢いが弱まると、撤退を押す者達が自分たちの意見を叫び示す。そうすると再び徹底抗戦組みが声を上げる。先程からこれの繰り返しだ。全く意見が出ないよりはよほどましであるのだが、一歩も先に進んでいないというのもまた洛陽で行われた軍議と同様であった。もっともさすがにそれはこの地の文官達にとっては失礼な物言いかもしれない。

 

 文官達が騒ぎ立てるなか武官組みの者達も渋い顔をしている者が多かった。彼らは軍人だ。戦う者だ。生死を賭けて争う戦人である。だが、それでも兵士六千で六万の軍勢をどうにかしろと言われても―――はっきりいってどうしようもないという答えしか返すことが出来ない。野戦におけるここまでの数の違いは致命的だ。しかも相手の多くは騎馬民族。個の能力でも圧倒的に劣っているであろう。

 

 ならば、籠城はどうか。それもなかなかに厳しい話だ。確かに攻城戦においては守り手が有利となる。攻め手は三倍の戦力がいるなどとは良くいったものだ。だが、それは籠城するほうに十分な戦力があってこそだ。六千の兵士ではこの街を守るには絶対的に人数が足りていない。一部を崩されればそれを補う兵力がないのだ。それに籠城をしたとしてもその勝利のためには援軍が必要となる。だが、今現在他の郡や県からの援軍は期待できない。自分たちの街を守護することで手一杯ということもあるが、反乱軍の進撃目的はあくまでも漢朝の首都。そこへ至るまでの道から大きく逸れている街々には今のところ兵を送っていないのが現状だ。放っておけば通り過ぎる災禍へとわざわざ救援に来る者達がどれだけいるだろうか。一応は救援要請をしているものの期待できないというのが皆の本音であった。

 

 口論が続く中、ふぅっと深く息を吐いた傅燮。彼女は周囲に侍っている蓋勲、賈詡、董卓へと一度視線を向ける。三人ともが頷いたのを確認するといきおいよく立ち上がり手を振りかざした。

 

「反乱軍への徹底抗戦を漢陽太守傅燮が命じるっ!! 今更逃げて多くの無辜の民の命を無駄に散らすことは許さない。我ら一同の全てを持って、この城を守りきるのだ!!」

 

 傅燮の命とともに、ざわついていた官僚達は一斉に洪手とともに膝をつく。今の今まで撤退を訴えていた者達でさえも覚悟を決めて傅燮とともに戦うことに異論はないように見えた。彼女が如何にこの涼州で慕われているかがわかる光景でもあった。

 

「幸いにもこの街の門は強固だから簡単には壊すことはできない。城壁も高く、反乱軍の長梯子も届きにくいはずです」

 

 賈詡の説明に頷く文官達。賈詡の説明どおり、この街は籠城するにあたってはかなりの優良な場所でもあった。城壁、城門の二つがそう易々と突破されないのだから、その報告には胸を撫で下ろす。

 

「あー、賈詡っち……ん。賈詡……せやけど、反乱軍も幾つかの攻城戦をこなしてきてるやろうし。それなりの道具をもってるはずや。多分城壁には上ってこられると思うで」

「そこは城壁の上の乱戦勝負に持ち込むしかない。それに守城戦というのはそういうものでしょ?」

「まぁ、そうなんやけどなぁ……誰も言わんけど、ちと厳しいで」

「……兵が足りないってこと?」

「そうや。さっきも言うてたけど、うちら正規兵が四千。で、くたびれた兵が二千。あわせて六千やで? はっきり言うけど幾ら城壁が高い言うても、そこら中から敵兵がよじ登ってくるで」

 

 張遼の現実を見た発言に、幾度目かの静寂が謁見の間を覆いつくす。如何に傅燮の命令で徹底抗戦を選ぶのだとしても、兵力差自体は如何ともしがたい。そしてそれを埋めなければ籠城すらもままならない。張遼の言葉に、賈詡は何かを言いた気にしながら口を開き―――しかし、それは言葉にならずに消えていく。横目で董卓の方をチラっと見るものの、賈詡は後一歩を踏み出すことが出来ないかのようであった。兵力差をどう補うべきか、誰もが思考し考えるものの答えが出ない。嫌な空気が充満する謁見の間にて、どこか呆れた溜息の音が聞こえた。誰かと思えば―――李信その人。彼がパシンとおざなりな洪手とともに口を開く。

 

「傅燮殿。発言をお許し下さい」

「……どうぞ、李信殿」

「兵は六千。なるほど、これは絶対的に増減はない。しかし、兵数を揃えるならば方法はあるかと」

 

 何を言っているんだこの若造は。そんな視線が李信の全身を貫いていく。その方法がないから、こうして意見を出し合い、しかしこの静寂を作り出しているのだというのに。肝心の李信は一切気にすることもなく、ある一人の文官を一度見る。

 

「先程そちらの方が言ったかと思いますが。この街には難民を含めて民四万がいる(・・・・・・)、と。これで此方は兵六千(・・・・・・・・・)と合わせれば四万六千(・・・・・・・・・・)。十分に籠城戦になるかと」

 

 李信の発言に空気が凍った。誰も彼もが理解できない。したくない。武官としても人としても最低の台詞であった。既に徴兵制が廃れ始めているこの時代において、民を戦わせるという発想をあっさりとしながら、さらに一度も戦場にたったことがない民をこの絶望的な戦いに狩りだそうとするなど正気の沙汰ではない。

 

「き、貴様ぁ!? 気が触れたか!! 一般の民を兵士にしたてて戦うだと!」

「戦を舐めるなよ、小僧!! しかも民四万の半分は女子供老人を含むというではないか!! お前は我らを馬鹿にしているのか!!」

 

 非難が轟々と謁見の間を支配する。あまりの大きさにキンっと耳が痛くなるほどだ。胡軫など反射的に自分の耳を手で押さえてしまった。それら全てを一身に浴びながら、李信はふっと笑った。

 

 

「―――黙れ(・・)馬鹿共(・・・)戦を馬鹿にして(・・・・・・・)いるのは(・・・・)どちらだ(・・・・)!!」

 

 数十人からなる怒号を、一喝で消し去る李信の咆哮。噴出するあまりの圧力に室内を満たす突風が吹き荒んだ。仮にも命の危険を何度も乗り越えてきた文官達や、多くの武官ですらもその場に尻餅をつき呆然と愕然と、そこに現れた怪物を見上げていた。

 

「徹底抗戦を決めたんだろうが!! ならば俺たちにできることは今ある中で(・・・・・)最善を尽くして戦うことだ!!」

「……永政殿。貴方の言いたいことはわかる。守城戦は後方支援が重要視されるから戦の素人がもっとも加わりやすい戦場だしね」

 

 賈詡がまるで李信を補う形で言葉を紡いでいく。その表情には先程とは変わらずどこか痛ましさが見て取れた。

 

「ああ。負ければ兵士は勿論、市民も皆殺しになるんだろう? ならば彼らを使わない手はない。それに野戦ならば難しいが、守城戦ならば民兵の力も役に立つ。全てを使ってでもこの窮地を乗り越えるしかない」

「だけど一つだけ問題がある。ううん……これが唯一にして最大の問題。戦術、戦略なんてものの前における前提。つまりは戦意(・・)()のままでは駄目。全員が兵士(・・)にならないと」

  

 そうだ、と誰かが声を上げた。賈詡の言うとおり頭数は揃っても、彼らに戦意がなくば戦いにもならない。戦う気持ちすらなくば、戦力どころか邪魔になるだけだ。そういった意味では、今現在のこの街にいる民では戦力にはならない。全てを失って逃げ込んできた難民と、反乱軍の虐殺を聞いて、震えているだけの者達。果たして彼らを如何にして兵にまで戦意を高めるのか。

 

「それが不可能に近いことは解っている。だが、他に方法も手段もない。それならば、どれだけか細い道であろうとも、そこを突き進むしかないだろう。それに、兵士(・・)でなければ戦えないというのなら、それを為す(・・・・・)のが上の者の役目ってやつだ」

 

 俺がやってもいいが、と平然と言い放つ李信に誰もが開いた口が塞がらない。なんと大法螺を吹く少年なのだ、と誰しもが思いながら―――それでもこの李信ならばそれを為すのではないかという淡い希望が胸の奥に浮かんでくる。ただの少年ではない。彼の背後に浮かぶは、何十万何百万という兵士の幻覚。本来ならば見えるはずのないそれをこの場にいた全ての人間が確かに見ていた。

 

「だが、それはあんたの役目だ(・・・・・・・)……傅燮」

「……」

 

 自分へと語りかけてきた李信を、傅燮は全てを受け入れるかのような静かな瞳で見つめている。まるで彼がそんな発言をすると悟っていた、とでもいうべき姿であった。

 

「反乱軍は殺戮と凌辱と破壊の限りを尽くしている。あんたの血と汗を流して作り上げてきたこの地の平和を、平穏を、全てを蹂躙しようと進撃している。敵は屈強だ。民兵など相手にもならないだろう。戦えば多くの血が流れ、それ以上の民の命が失われる」

 

 李信の淡々とした発言に、これから起きるであろう悲劇に、周囲の文官も武官も恐れにも似た表情を浮かばせる。

 

「それでも。それでも、だ。この地を愛したあんたなら、民の気持ちを動かせる。この地の民を愛したあんたなら、民の戦意を燃え上がらせられる」

 

 この街を救えるのはあんただけだ。最後に短く締めくくった李信に、傅燮は椅子に深く深く座り込み天上を見上げた。どこか疲れたように、しかしどこか覚悟を決めたが如く。謁見の間にいる全ての配下の視線が一身に浴びせられるのを感じながら傅燮は小さな吐息を漏らした。

 

「……少し、考えさせて」

 

 彼女の返事を聞きながら、それでもその場に集っている文官武官は感じ取っていた。既に傅燮は自分の進むべき道を決めている、と。後はそれを為すための覚悟を決めるための時間が必要である。言葉にせずとも皆が皆悟っていた。

 

「では、後はあんたたちに任せる。俺は少しやることがあるんでな」

 

 この状態を作り出した原因が、平然とそう言いながら謁見の間を出て行った。慌てて追っていく華雄と高順、胡軫達を、呆然と見送る官僚達。あまりに自然に出て行くものだから、止める暇もなかったようだ。どうするべきか、これから何をするべきなのか、迷っている皆を尻目に、この場から飛び出した人物が一人。賈詡文和その人である。謁見の間から駆け出した彼女はもつれそうになる足を動かし、どんどんと離れていく李信達の背を追いかけた。そして思いっきり息を吸い―――。

 

「―――待って!!」

 

 決死の想いを込めて呼び止めた。ピタリっと足をとめた李信が振り返る。呼び止めた人物が予想外だったのか、驚いた表情を一瞬垣間見せる彼だったが、何か用か、と短く返答をする。今は一分一秒が惜しい鉄火場だ。それを理解しているであろうに、肝心の賈詡は何かを言いたげにしてはいるものの、肝心の言葉が出てきていない。何度かそれを繰り返していた賈詡ではあったが、遂に腹を括ったのか震える声で自分の本心を口にする。

 

「……ごめんな、さい」

 

 謝罪とともに賈詡が頭を下げた。あの賈詡文和のその姿に、華雄と胡軫が信じられないものを見た、と目を白黒させる。一体何故彼女がこんな謝罪をしているのか、それが理解できずに李信と賈詡の二人を交互に黙って見守ることしか出来ない。

 

「何を謝る必要がある、賈文和?」

「……ボク。ボクは……ボクが言うべきだった(・・・・・・・)。ボクが言わなくてはいけなかった」

 

 とりとめもないその言葉に、華雄達は先程の李信の発言のことだと悟った。民を兵士とすること。民兵として戦わせるという意見。それを賈詡は自分が意見として出さなかったことを悔いているのだと。

 

「何を気にする必要がある、賈詡よ。そもそもこの状況で民を兵士として戦わせるなど考え付く方がおかしい」

「そうでごぜーますよ、賈詡殿。李信殿の発想がちょっと普通じゃないだけですよ」

 

 慰める二人に向かって、賈詡は違う違うといわんばかりに首を横に力なく振る。

 

思いついていた(・・・・・・・)。考え付いていた。どれだけ思考しても、それしかないってボクもわかっていたんだ。でも……言えなかった」

 

 賈詡は語る。自分も李信と同じ発想に至っていたのだと。そしてそれしか方法はないのだと理解もしていた。だが、そのことを口に出すことは出来なかった。何故ならば―――。

 

「民を戦わせる。それは、それは……()が悲しむ。あの娘を傷つける。優しい娘だから」

 

 そして、そんな作戦を出した自分は董卓にどんな目で見られるのだろうか。蔑まれるかもしれない。恨まれるかもしれない。憎まれるかもしれない。それを想像しただけで、自分の存在意義が失われるに等しい恐れに襲われた。賈詡文和にとって、もっとも大切なのは董卓だけだ。それ以外は全てが無意味。彼女以外欲するものもないし、得ようと思うものもない。故に、例えどれだけ自分勝手で身勝手であろうとも、李信のように民を戦わせるという提案を出せなかった。

 

「永政殿。貴方が言ってくれた。ううん……貴方に言わせてしまった。ボクが逃げたばっかりに。だから、ごめんなさい」

 

 自分は最悪だ。最低だ。友から嫌われることを怖れて全てを台無しにするところであった。賈詡にとって董卓は全てだ。だが、悲しいかな董卓にとっては、賈詡は大切なものの一つでしかない。彼女は全てを愛している。民も上司も同僚も、あらゆるもの全てを慈しみ、愛する。全てを包み込む優しさと器を持っている彼女だからこそ、賈詡も友人として董卓を愛しく思っている。そんな彼女の愛するものを見捨てる行為をしかけていた。先程の軍議の最中の董卓の顔を見て、ようやくそれに気づくことができた。ならば、後は董卓の為にも自分は最善を尽くすのみ。この叡智、全てをこの戦の為に振るって見せよう。

 

 一切の余分が含まれていない純粋な謝罪を受けた李信はというと、ガリガリと頭を乱雑に掻き乱す。別に賈詡のことを考えて言ったわけでもないし、彼女の代弁をしたわけでもない。これしか方法がないと判断したから提案しただけだ。だが、賈詡が同じ考えに至っていたことを聞かされて驚きと、今回の戦に関して小さくはあるが光明が僅かに見えてきた。

 

「今回の戦は正直な話、かなり後がない状態だと俺は考えている」

「……うん。ボクも同感だ」

 

 実際のところ、李信が兵六千を率いて反乱軍に局地戦を仕掛けることができれば、反乱軍を壊滅とまではいかなくても足を止める程度のことは可能だ。生き残ることを考えず兵六千を犠牲にすれば、反乱軍の総大将の首をあげることも可能であろう。そんなことを言い出せば何を馬鹿な、と思われるかもしれないが、それを為せるのが本能型の畢竟(・・・・・・)である李信という名の大将軍だ。もっとも、肝心の兵六千を自分に預けろといっても絶対に許可は下りないことはわかりきっている。ならば、先程もいったが現状の手札でどうにかしなければならない。

 

賈文和(・・・)……お前に聞きたい」

「答えられることなら何でも答えるけど……何?」

「先程は俺の見立てで出来るといったが、実際に長い付き合いのお前から見て太守は出来ると思うか?」

 

 民を兵士にできるのか、との問い掛けに賈詡は一瞬も考えずに頷いた。

 

「勿論。傅燮様なら必ず」

「ならば籠城したとして、援軍の見込みは?」

「既に出せる相手には全部援軍の要請を送ったよ」

「……速いな。何時の間に?」

「二日前。ボクの予想ではほぼ全ての郡県からの援軍は期待できない。できるとすれば一つだけ(・・・・)

「一つか……なかなかに厳しいな。ちなみにお前の予想だとどこが動いてくれる?」

「恐らくは馬騰様が」

 

 賈詡の予想は、李信にとっての予想外の返事であった。何故ならば、反乱軍総大将の韓約の友である馬騰がこちらに味方するとは思えなかったからだ。それが表情にでていたのだろうか、賈詡が予想の根拠を語り始めた。

 

「これは完全にボクの予想でしかない。でも限りなく正解に近いものだと思う。反乱軍の総大将は別にいる」

「……その理由は?」

「まず一つ目。先日ここを訪れた韓約様は反乱軍の招集を拒否しているといっていた。油断を誘うため? そんな馬鹿な。わざわざそれをボク達の前で言っていく意味はない。二つ目、馬騰様が反乱軍に参加したという話は聞いていない。義姉妹の契りを交わしているあの二人ならば、手を組んでいたらさっさと合流している筈。三つ目、韓約様が総大将を勤めているならあんな暴虐を絶対に許しはしない。四つ目、今現在反乱をおこしても絶対に鎮圧される。漢王朝はこの程度で倒れるほどまだ(・・)弱まっていない。それを知っていながら韓約様が反乱を起こすはずがない」

 

 この間初めて会った時の韓約の印象は李信にとっては正直随分とおかしい人間しかなかったが、他の者達からの評価は随分と高いらしい。その彼女が負けるとわかっている勝負に出るはずがない。韓約の人望を利用する為に反乱軍の飾りの大将とした。そう考えた方がしっくりとくる。賈詡の説明に、おもわず成る程、と納得する李信達。韓約が本気で反乱軍の長として動いていないのならば、馬騰がそれを止める為にこちら側の援軍要請を受け入れてくれる可能性は高い。

 

「お前の予想はわかった。だが、もう一つ(・・・・)援軍がくると思うがな、俺は」

「……もう一つ?」

「ああ。漢王朝(・・・)からの援軍だ」

「それは……」

 

 今回の反乱は当然鎮圧しなければ中央の者達もまずいとは思っているはずだ。だが、果たして中央がそんなに早く討伐軍を組織するだろうか。今までの経験上難しいのでは、というのが賈詡の本音だった。

 

「張譲がいるからな。あいつが嫌といっても援軍を送ってくるはずだ」

 

 十常侍の筆頭張譲。とんでもない化け物染みた噂しか聞いたことがないが、李信がそれだけの評価をする相手。不確かではあるものの、それならば期待が出来るというものだ。そこで会話も一段落ついたのか、李信が賈詡へと背を向ける。

 

「今は相手の戦力を削っていかないと何ともならない。とりあえず傅燮殿の準備が終わるまでに先遣隊を潰してくる(・・・・・・・・)

「つ、つぶ……? え? 潰す? で、出来るの?」

「多分な。華雄達とその隊は連れて行くけどいいな?」

「う、うん……。てっ、えぇぇ? 本当に!?」

「無理そうならそのまま帰ってくるから心配するな」

 

 絶対に不可能なことを出来て当然と言わんばかりの軽く言ってくるのだから、賈詡としても反応に困る。冗談なのかとも思ったが、李信の様子的に冗談ではないらしい。他の人間ならば死んでも止めるのだが……何故か彼の場合は止めるという行動が思いつかない。逆に実際にやってのけてしまうのではないか、と微かな期待すら覚えてしまう。

 

「籠城での策は任せる。俺なんかが言うのもお門違いかもしれないが……素質はあるぞ、賈詡(・・)

「へ? あ、ちょ……ちょっとぉ!?」

 

 不意打ち気味に初めて呼ばれた名前に、ドクンと一度強く心臓が胸を叩く。珍しくも混乱の極みに達した賈詡が頭の中を整理しきれないうちに、李信は華雄達を伴って姿を消してしまった。あっと言う間に賈詡のことも気にせずに、自分たちの出来ることを行うため出発していった彼らの姿に、何だよもう……と短く漏らした賈詡であったが、未だおさまらない激しい動悸に自分は何か病気になってしまったのではないかと心配しながらも、これからの守城戦への策を練るため謁見の間へと引き返すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 狄道の城を反乱軍の本隊が落としたその頃。漢陽郡冀県の郡城へと傅燮や賈詡の想像を超える速度で迫り来る一つの部隊があった。手下八部と称えられる涼州でも名を轟かせる勇将。韓約の旗の下に集った傑物が一人―――李堪。彼が率いる総勢五百からなる一団が、斥候の役目を担って漢陽郡へと侵入してきていた。彼らは途中にある村や町を攻撃することもなく粛々と目的地である郡城目掛けて馬を走らせる。李堪は自分の配下で特に優秀な五百の兵を連れて斥候の任を自ら志願した。というのも涼州にて生まれ育った彼は、傅燮、蓋勲という人物を知っていた。

 漢朝において腐った人材が多いなか、彼女達は本物だ。本物の戦士であり、優秀な戦略家でもある。まともにやりあえば相当な苦戦を強いられる相手なのは戦う前からわかっていることだ。反乱軍の目的は漢王朝そのもの。宦官を誅することを目的としている。傅燮を相手にするということは、かなりの時間を浪費することだろう。かといって、彼女を放置して突き進むことは絶対に出来ない。最悪、挟み撃ちという形をとられる可能性もあるからだ。それに太守傅燮と韓約はかなりの友好を結んでいたというのも聞いている。敵対し、韓約の悲しむ姿は見たくないがゆえの行動でもあった。その為戦端が開かれる前になんとか傅燮に下るように説得を試みようとしているところだ。

 

 乱れることのない騎馬が地を駆ける。目的地でもある郡城まではまだしばらくかかるが、この調子で走らせればほぼ予想通りの時間につくことができるであろう。僅かに気が緩んだその時であった。急激に空気の色が変わった。チリチリと肌を焼いてくるのは、感じなれた戦場の気配。いや、違うと李堪は熱い空気を肺から搾り出した。どんどんと空気が熱されていき、身体中にへばりつく重さを増していく。何かがいる。何かが来る。戦場を駆け抜け、戦場を支配する何かが彼方よりやってくる。

 

「―――全軍、止まれ」

 

 李堪が馬を止め、付き従っている配下に声をかけると一糸乱れることなく彼らもまた足を止めた。何事か、と自分たちの主を見れば、李堪が視線を送る先、彼方の丘の上から駆け下ってくる騎馬隊があった。巨大な矛を片手に持つ一人の少年を先頭に、おおよそ百名からで構成された部隊だ。

 

「寡兵ですが。如何いたしますか?」

 

 部下の問い掛けに、李堪は黙ったままだ。間違いなく敵兵だ。反乱軍に組するものではない。それに反乱軍に加わろうとする者達でもないのは一目で明らか。彼らからは燃え上がるような敵意のみが迸っている。此方は李堪率いる精鋭五百の騎馬部隊。相手はどこのものとも知れない寡兵百名。考えるまでもなく、勝利の文字は揺るがない。そのはずが、主である李堪は沈黙を保ったままで、その姿に配下の者達の間でわずかなざわめき揺れ起きる。

 

「……少年兵か。丁度俺の息子とおなじくらいだ」

 

 ぽつりっと漏らした李堪の呟きに、そのせいかと納得しかける配下であったが。

 

「だが、放つ圧。纏う雰囲気は尋常ではない」

 

 背負っていた籠から矢を取り出すと弓に番えると、その姿に配下は皆見惚れた。背中がピンっと伸ばされ弦が胸に、矢が頬に付く位置でとめ、矢の狙いが一箇所に絞る。右肩と左肩を結んだ線が矢と平行。腰の中心と頭頂部を結んだ線がそれと垂直に交わっている。基本に忠実。奇想天外な弓の引き方もしない。だが、彼の弓の腕前は―――中華十弓に数えられる領域に至っている。

 

「先頭の少年(怪物)は俺が全力を持って射殺す。残りはお前たちが蹂躙せよ」

 

 御意、という配下の返答を背に受けて、中華十弓の矢が解き放たれた。瞬きする間もなく空を渡る一矢が、李信目掛けて牙を向く。馬を走らせている彼からしてみれば、体感速度は止まっているときに比べてさらに速い。あらゆる敵を射殺してきた正確無比の李堪の矢を、あろうことか大矛を振って弾き落とす。ギャンという金属が噛み合う音が後から響いた。

 

「ばか、な……李堪様の矢が止められた?」

「偶然だ……隊長の矢をあんなガキが見切れるものか」

 

 ざわめく配下。信じられないモノを見た、という彼らを余所に、李堪は口元を歪ませた。

 

「……俺の矢が、見えているか」

 

 だが、と新たな矢を番え狙いを定める。先程よりもさらに近づいてくる一団は、遠くから見るよりも随分と強い(・・)。このままぶつかれば此方とてただではすまない。特にやはり先頭を行く少年。李信は危険だと武将としての直感が警鐘を嫌と言うほどに鳴らしてくる。距離が近くなれば次の一撃はさらに早く李信には感じられる。それでも防ぎきれるか、と次なる一矢が煌いた。先程よりも一段と速い、気がついたときには目の前に届いているその矢を、それよりもなお速い大矛の盾が防ぎきる。唖然と言葉もない部下達を尻目に、かつてない強敵の出現に李堪の口角の笑みがさらに深くなった。

 

「見事。次の一射……防ぎ切ることができればお前の勝ちだ」

 

 もはや彼方と此方の距離は殆どない。李信の神業に呆然としていた部下達も、慌てて李堪の前へと馬を駆けらせる。その合間を縫って放たれた二射。一つは李信の脳天(・・)へ。次いでほとんど同時に放たれたもう一矢は、李信の乗る()へと狙いを寸分違わず放たれた。自分を殺そうと飛ばされた一つ目の矢を防いだとしても、馬までは守れまい―――と、考えていた李堪の想像はあっさりと覆される。腰から抜いた剣で自身への攻撃を防いだ李信は、大矛で自分の愛馬へと降りかかってきた死を振り払った。その間、秒を十数に分割した刹那の出来事。 

 

 そしてぶつかりあう両軍。五百と百。本来ならば結果は明らかだ。しかも五百は李堪の配下でも精鋭中の精鋭。だが、獅子の突撃を鼠がとめることができようか。いや、できはしまい。李信の一振りで李堪を守ろうと前へ前へと出てきた騎馬が斬り飛ばされる。強い、という表現を超越してしまった人外染みた鬼神の行進。圧倒的な突撃力と破壊力を持って五百の軍勢に風穴を開けていく。それに付き従う華雄達もまた凶悪だ。華雄、胡軫、高順の三人だけでも十分に李信の援護ができているというのに、さらに加えての百名。突撃を続ける李信を守るべく、続くべく、咆哮をあげながら敵兵の蹂躙を開始した。外から見る分と実際に戦った際の強さの違い(・・・・・)に誰もが驚かされた。精鋭五百の兵が、為す術なく屠られていく。既に弓の間合いを崩された李堪もまた、剣を抜く。撤退の二文字も考えずに、迫り来る李信へと刃を向けた。こいつはここで殺さねばならない。さもなくば、必ずや韓約にとっての災厄となる。反乱軍を潰しかねない、正真正銘の化け物だ。手下八部の誰であろうと、この存在とまともにやりあえる者はいない。いや、辛うじて手下八部最強の武将である楊秋ならば渡り合える可能性はあるかも、といった程度だ。

 

「韓約様。大望願うこと……お祈りしております」

 

 部下を斬り殺しながら迫り来る李信へと、馬を走らせる李堪。せめて相打ち覚悟で―――と振り上げた渾身の一撃は、振り下ろす前に腕を飛ばされ、返す刀の切り上げで首を落とされた。勇将手下八部。中華十弓が一人、李堪―――戦死。

 

 

 

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「急げぇ!! 敵が来る前にそれぞれの配置につけ!!」

「走れっ!! 走れ!! 足をとめるなっ!!」

「ここにいる者は全て西門だ!! そっちは南だ!!」

「反乱軍はじきにやってくるぞ!! 皆いそげ!!」

 

 李信達が敵斥候を蹴散らしてから郡城へと戻ってきてみれば、そこは興奮のるつぼと化していた。民と言う民が、それぞれ武器甲冑を身に纏い、街の至る所に配置されていた。誰もが、誰かに強制されたわけではなく、強い意志の光を瞳に宿し、戦いへの恐怖と向き合いながらも戦争への準備を行っていた。城壁の上には力の強い男達が、老いも若いも関係なく配置され、後方支援組みには女子供の多くが、負傷者の救護隊、武器の補充組み、食事隊などとして割り振られた。城壁の上で戦う者達との交代を行う予備隊。弓を打つ部隊なども準備された。その熱気溢れる光景に、華雄達は驚き目を見開き―――そして李信はかつてのとある光景を思い浮かべた。脳裏に描くそれと今の状況が似通っており、このような危機に陥っていながらも不思議な郷愁に襲われる。そんな中、官庁へと辿り着いた李信の姿を見つけたのは、大声をあげながら様々な人に指示を出している賈詡であった。

 

「―――李信(・・)!! 戻ったの!?」

「ああ。今さっきだけどな。というか、凄い熱気だな。火付けには成功したのか」

「勿論よ。傅燮様の檄で、見てわかると思うけど……皆が戦う兵士(・・)の顔になったよ。これで最低限の準備は整った」

「たいしたもんだ。俺よりも随分と上等な結果だ」

「……ちなみに李信。貴方が傅燮様の代わりをしたらどうなったと思う?」

兵士には出来る(・・・・・・・)。だけど精々が持って二、三日くらいだろうな」

 

 李信と傅燮。元々が信頼、尊敬の桁が違うのだ。幾ら李信が檄を飛ばしたとしても今これ以上の結果に出来るとは思えない。それこそかつての友には及ばないものの、これならば万が一が見えてくる。

 

「で、籠城の割り当ては?」

「反乱軍が落として行っている街から予測すると、間違いなく西からやってくるはず。となれば、西壁が一番の激戦区となる。次いで南、北……東。となれば、西壁にはもっとも信頼できる武将を配置しないといけない」

「張遼か?」

「いいえ。李信。貴方よ。貴方にお願いしたい」

 

 賈詡の発言に予想外の答えを聞かされた李信がキョトンっとした表情を作り、それが少し可愛く思えた賈詡は苦笑した。

 

「理由があるわ。張遼の本領は馬にのっての野戦。狭い城壁の上では力を十全に発揮しにくい。かといって、蓋勲様は指揮官としての経験や知識はあるけど戦場を離れて久しい。傅燮様はボク達の最後の砦。最大の激戦区に配置できるはずもない。月……董卓は、実戦の経験が皆無」

 

 賈詡が指揮官として西壁に入ることも考えた。だが、それは悪手だ。四方から揺さぶられどこかに必ず穴があく。その際に的確に増援・対処を行わなければあっさりとこの街は落ちるだろう。賈詡以外の文官は、様々な武官を挙げはした。だが、それら全てを切り捨てて、賈詡は李信をえらんだ。今まで様々な間違いを犯してきたが、この選択だけは失敗ではない。それはきっと胸を張っていえる。

 

「激戦区の西壁に李信。南壁に張遼。北壁に蓋勲様。東壁に傅幹(・・)様。中央の司令室にボクと傅燮様と董卓。それぞれの城壁の指揮官はこれでいくから」

 

 傅幹、と聞きなれない人名に首を傾げれば、傅燮の息子だと付け加えた。まだ年若いが、優秀な武官ということらしい。賈詡が評価するならば間違いないか、と李信は人選を受け入れた。

 

「それと……」

 

 一度華雄を見た賈詡だったが、彼女が何を言いたいのか悟ったのだろう。口元に笑みを浮かべながら、頷いた。

 

「李信。ボクの権限により貴方を華雄の代わりに独立遊撃部隊の隊長に任命します」

 

 西壁の指揮官として戦う以上、所属している隊の長である華雄との指揮系統に齟齬が発生する。故に、独立遊撃部隊の隊長に李信を。副隊長に華雄を、となるのがもっとも納まりが良い。

 

「ごめん、華雄。相談もなく勝手に決めて」

「なに、構わんさ。元々私に隊長の責務は重かった。代わってもらえるのならば非常に助かる」

 

 本心から言っているのだろう。華雄の表情からは肩の荷が下りた、とでも言わんばかりの朗らかな様子が見て取れた。実際に華雄としても口に出したのが本心だ。むしろ、隊長から降りることによって自由に暴れられるようになる分、彼女の武が活かされる事になるのは間違いない。伝えること全て伝えきったのか、この場から離れようとした賈詡だったが、ふと振り返って握った右拳を李信へと向けた。その動作に、李信もまた自身の拳を掲げてゴツンとぶつけ合う。

 

「期待してるから。西壁は任せたよ、李信」

「お前の指揮にも期待しているぞ、賈詡」

 

 絶望的な状況にも関わらず、軍師としてあるまじきことではあるが、賈詡はこの籠城戦がなんとかなるのではないか、という楽観的な想いを抱いてしまった―――が、それを一瞬で打ち消して、自分の全てを持ってこの戦を勝利に導こうと心に決めるのであった、

 

 

 そしてこれより二日後―――反乱軍。ついに郡城へと到着。激戦の幕が開く。 

 

 

 

 

 

 

 

 




地理や街城については結構適当です。すみません。
そして水着イベのために溜め込んでいた石を、我慢出来ずに放出してダヴィンチちゃん、ゲットならず。もうだめだ……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。