今昔夢想   作:薬丸

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初作品で初投稿。とにかく拙い。

注意

知識も無く勢いで書いております。
時代考察もしておらず、姓名の呼び方、単位の付け方、礼儀仕来り等の常識はめちゃくちゃです。
雰囲気だけで気楽に流し読んでくださればと思います。

改稿済み。


1.転生

 俺は今、ノートPCの前にいる。

 PCの前にいる、この言葉だけを切り取るならば、それは俺にとって馴染み深い風景と言える。

 家にいる時も、仕事の時も、住所は違えど俺が一日の大半を過ごす場所だから。

 

 けれどそこ以外を見てみれば、異常しかない。

 PCと机と椅子と俺以外、何もかもが真っ白で、天井、床、壁は影も形もないときた。

 うん、非常に分かりやすい夢の類ですわ。

 

「けどぉ、夢じゃないんだなぁぁ~」

 

 うぇ?!

 

「あはっ、変な声!」

 

 確かに奇妙な声が出てしまったが……。

 夢の類と分かって気を抜いた瞬間に声をかけられて驚かない人間は恐らくいない。だから奇声は不可抗力である!

 

「あははっ、ごっめ~ん!」

 

 どうやら声は目の前のノートPCから聞こえてくるようだ。更に言うなら、ディスプレイに映し出された俺の大好きなアニメキャラからである。

 

 ……妄想が行き過ぎてこんな奇妙な夢を見ているのだろうか?

 俺はしばらく仕事を休まないといけないのかもしれない。

 

「大丈夫、あなたはおかしくなってないよ! アニメキャラの姿をしてるのはねぇ、あなたに取り入る為の手段としてやっているだけなんだよ!」

 

 俺の好きなキャラクターが、デスクトップ上でこちらに向かって手を振りながら喋っている。

 これだけ切り取ればちょっとした感動の光景である。

 だがあまりに台詞が明け透けすぎないだろうか?

 声も口調も仕草も完璧だが、あのキャラクターは取り入る為、なんて言い回しはしない。

 

「では無事ファーストコンタクトを取れたという事で、説明に入らせてもらいます」

 

 っておい! しまいには口調すら模倣しなくなっちゃったよ!

 

「ここは事務手続きみたいなものですし、真面目にしないと怒られるのですが……けど君が言うのならしょうがないな!」

 

 あっ、気を遣わせちゃってなんかすんません。

 あー、こりゃ夢確定ですわ。精神科に相談しに行かなきゃならん類の夢ですわ。

 

「とはいえ話す事なんてあんまりないんだけどね!

 まず一つ!君が戦国時代に行ったとして、誰になったら最後まで生きていけると思う?」

 

 はぁ、これまた突飛な質問。あれですか?ネット小説なんかにある転生の前振りってやつですか?

 

「質問を許した覚えはないよ! けど今から許しちゃう! そうなんだよね、転生なんだよね、それ以上は詳しく言えないから聞かないでね!」

 

 あっはい、答えてもらってありがとうございます。

 

「さあさっさと答えを捻り出すのだ!

 あっ、歴史的事実とか色々加味してもらって、伝説とか、逸話とか知ってると補正がかかりやすいよ!」

 

 いや、補正って何だよ。ゲームかなにかか?

 行くのはリアル戦国じゃなくて無双やBSR的なとこなの?

 

「具体的には言えないんだよ! ……どっかの馬鹿がクイズ形式で答えちゃってさ、識の間でそれが流行っちゃったんだよね。そんで、明確な基準が決められちゃって、面倒が増えたんだわ。マジやってらんない。でもサービスとしてちょくちょく独り言挟むから、それでよろしく」

 

 急に疲れきったOLっぽい感じに。

 あの、キャラのイメージ崩れるんで、マジでやめていただけませんかね。

 

「あはっ! ごめんねぇ! というわけで決めちゃってー!

 でも二つ注意! 貴方が日本人だから、ローカライズする為に日本の強い男の人で決めないと駄目なの!

 ジャンヌダルクとか言われても困っちゃう!

 あと神話とか混じっちゃ駄目!

 イザナギだ……とか言われてもついていけないの!」

 

 そうですか、わかりました。

 ……転生系物語は好きだけど、めちゃくちゃな導入だな。夢にしたって適当すぎる。俺の妄想力って案外残念仕様だったんだな。

 

「色々調べるためにPCも用意してあるから活用してね! あっ、戦国時代を強調しちゃったけど、実際に室町時代に飛ばされるわけでもないからね!」

 

 おっ、そうなのか、勘違いしかけてたわ。重要な情報ありがとう。

 しかし逸話はあっても伝説となるとなぁ。あんまし最近の人だと駄目そうだな。……イチローの逸話だったら行ける?

 

「貴方がその人の逸話を深く知って信じている程、更にその逸話を知っている人、信じている人が多ければ多いほど補正がかかるの!」

 

 んーそうなると完全にネタだし無理そうだな。

 

「後ね、いつまでも悩めるほど私は暇じゃないから制限時間をつけるの!制限時間は30分!精一杯の譲歩だから了承してね!」

 

 マジか!人生を左右する時間として30分は短すぎやしないか?!

 

「早く決めると良い事あるかも? それじゃあスタート!」

 

 良い事あんの? なら上杉謙信で。

 

「はやい!」

 

 知ってる事が補正に繋がるなら、謙信公のお膝元に生まれてる訳だし、実は確定なんだよね。知り尽くしてるって言っても過言ではないし。

 武略も経済も統率も宗教も出来る万能な人だし、中身が俺でもどうにか生き残る事は出来るでしょ。

 

「迷いがないようなら確定!それじゃあさっきの制限時間プラス30分を知識の収集時間としてプレゼント!ここで得た知識は転生しても残り続けるから、効率良く調べてね!」

 

 えっ、それ超重要情報じゃん。

 

「うん、だからちょっぱやで決めた君は超有利! 誰に対して有利って事はないけどね!」

 

 ん?その言い方だと、俺以外に転生者はいないのか?

 

「うんうん、いないよー。それじゃあ時間も無駄に出来ないし、残り59分でスタート! 理解しなくても、とりあえず目に入れるだけで全然構わないからね!」

 

 急な展開にちょっとわくわくしてきた。俺の妄想力、見直したぜ。

 

 

 真っ先に調べるべきは医食住だろう。

 戦い方に関しては上杉謙信の補正があるだろうから後回しでもかまわない。まあ補正ってのがどこまでかかるか分からないから、後回しにするだけで全く調べないって訳にはいかないだろうけど。

 ググル大先生を開いて、真っ先に検索をかけたのは音楽である。一応耳に入れても記憶されるかもしれないので、音楽の原点と言われているクラシックのメドレーを流す。

 音楽を聴きながら心を落ち着けて、いざ検索。

 

 医については何が何に作用してという学術的な部分を省いて、実用的な部分だけを抜き出していく。家庭の医学、薬学、整体、効率的なトレーニングといった部分だ。

 リンクで飛び、タブを大量に使いつつ、文字をぎりぎり目で追える速度でスクロールしつつ、出来る限り効率的に調べたのだが、時間の半分近くを使ってしまった。が、生きるという点ではもっとも大事な部分だ。おろそかに出来ない。

 

 食。料理としての食より、農業について調べる。稲、小麦、野菜の育成方法、醤油味噌の作り方、虫害の回避法、肥料の作り方等である。作物に関しては医学について触れて知った栄養価が高く、作り易そうな物をいくつかピックアップ。それ以上となると時間が足りない。

 

 住。日曜大工とサバイバル術的な物を調べる。コンクリ、石鹸、船、コンパス、武器、火薬等々。製作方法を知っていて決して損はない物を思いつく限り検索する。

 

 

 他に良い知識はないかと頭を捻りつつ、適当に思いついたものを検索しては読み飛ばして行く。戦術戦略論であったり、政経であったり、人心掌握術であったり。中には必要なの? と思うものもあったが、とにかく詰めに詰め込んでいけば。

 

「しゅーりょーーー! 時間いっぱいでござい!」

 

 ふぅ、つかりたー。

 俺はぐったりとした体を背もたれに預け、真っ白な天を仰いだ。

 

「すっごい集中力だったね! それじゃあ君にこれから転生をしてもらいます! 用意はいいですか?」

 

 えっ、ちょっと早すぎません?!

 

「言ったでしょ、時間いっぱいだって! それだけ君の時間として融通したって事なんだからね!」

 

 あ、マジすか、あざっす。この恩は一生忘れません。

 

「いいよいいよ、無理だろうけど全然忘れてもらって構わないよ! それじゃあどういう形で向こうに飛ぶか分からないけど、お達者で!

 最後の独り言だけど、君には果たさなきゃいけない使命があるから。それを果たさない限り外史に縛られ続けるのでよろしく。それ以外は好き勝手に生きるといいよ」

 

 えっ、なにそれ?ちょちょちょ!そこんとこ詳っ!!

 

 PCが消え去り、直後に浮遊感。

 驚きのあまり意識に空白が生まれ、妙に冷静になる。

 

 こういう展開はアニメでよく見たなぁ、ギャグアニメなんかでさ、キャラクターが崖なんかから飛び出して、空中を走る真似をするんだよ。それで、

 ……

 …

 ぎゃぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっ!!!

 

 古典的なノリである。お約束が大好きな俺が生み出した夢なのだ、こういう終わり方は非常に正しいと言える。

 しかし正しいからと言って受け入れられるかどうかは別である。

 まさか高所から落ち続けるというのがこれほど怖いとは。

 ギャグ担当のキャラ達よ、気軽に笑ってすまんかった。




地の文での描写が足りない。

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