とある不幸なソードアートオンライン   作:煽伊依緒

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第七話(第八話)です‼

前回からかなり時間が空いてしまいました・・・・・・すみません。
今回も全力で挑んだつもりなのでよろしくお願いします‼

注)第七話(第八話)を投稿する直前に第六話(第七話)の後半部分を大幅に変更しています。続きから読む場合はそちらを一度読み直してからでお願いします。


第七話《助け人》~現実と空想~

「・・・・・ん?」

 

「・・・カさん?」

 

「フェリカさん‼」

 

「ふぉえっ?」

「よかった・・・無事だった・・・」

目の前の人はそう言うと安堵の顔になり、その場に座り込んだ。

でも、私にはわからないことがあった。

「あの・・・・・・フェリカさんというのはどなたのことでしょう?」

 

 

~~~~~~~~~~

 

「あの・・・・・・フェリカさんというのはどなたのことでしょう?」

 

そう聞いた時上条は頭がついていかなかった。

しかし誰だってそうだろう、いないと言われた人物がフェリカという少女のはずなのだから見つけた人物もまたフェリカでなければつり合わない。

それなのに、目の前にいるのはフェリカではないというのだ。

意味が分からないのはこちらの方であろう。

 

「いや、でも同じPTメンバーの人にフェリカという人がいないと聞きまして・・・・・・」

「PT・・・・・・? PTってなんのことです?」

『・・・・・・』

 

その場にいる全員が押し黙った。

この世界に来ているのにPTを知らない、キリトのようなソロプレイヤーでも知っているような常識中の常識を目の前の人は知らないと言った。

さらに、今ここにいる人はフェリカさんではなく別人で、フェリカさんは別の所にいると。

 

 

「おい! キリトとりあえずさっきのPTの人に連絡してくれ‼」

「わ、わかった!」

 

上条が怒涛の勢いでそう言うとキリトはウインドウを開き急いでメッセージを飛ばした。

すると間髪入れずにメッセージが届いたらしくキリトは少し驚きながらもメッセージを開いた。

 

「えーと、何々? フェリカはなんだかボス部屋で一人残されてからぎりぎりで結晶を使って脱出したらしい。今は無事にこちらに帰ってきている。ありがとう――――――だってさ」

「・・・・・・まあ、一件落着ってことで・・・・・・いいかな?」

「・・・・・・納得はできないけどな・・・・・・」

 

だが、会話はそこで途切れ意味のない静寂が空間を満たした。

何か話し出すきっかけが欲しい、誰もがそう思っているからだろうか、誰一人一向にしゃべりだそうとしない。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・?」

 

沈黙と疑問符が続く中最初にそれを破ったのはくしくも二人いた。

 

『それで納得できるわけねえだろ‼』

 

二人――――上条とキリトは一字一句間違えずに完璧に言葉をはもらせた。

もちろん発した言葉はここに急いできた三人なら思わずにはいられない事だった。

 

「絶対裏があるだろ・・・・・・これ」

「そりゃあ・・・・・・な、こんなことがあればな・・・・・・そうも思うだろうよ・・・・・・」

 

上条とキリトは二人してため息をついて肩を落とした。

因みにアスナはというと男2人が出すがっかりムードに耐えきれなかったのか、しきりにボス部屋の中で何かを探している様だった。

 

「まあ、とりあえず・・・・・・あなたの名前は何ですか?」

 

キリトはここにいる皆の総意を代弁して言う。

すると、

 

「私は・・・・・・神裂火織と言います・・・・・・そこにいる上条当麻さんに話がありましてここまで来たのですが・・・・・・」

 

と、目の前の人はそう言った。

 

「ついでにいいますと・・・・・・先ほどまでの戦闘は体が極端に動かずなすすべがなかったのが原因であり、決して足がすくんでいたとかそういうことでは・・・・・・」

 

そこまで神裂が言うと上条は言葉を遮るように、

 

「いや、でもお前姿が神裂じゃねえだろ」

「えっ、いやそんなはずは・・・・・・鏡、鏡はありませんか⁉」

 

神裂はそう言って大慌てでキリトやアスナに視線を向ける。

その仕草事態はとても神裂らしいのだが、流石にそれだけで信じられるほど上条はお人好しではない。

 

「いや、ごめん持ってないな」

「私も持ってないの・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

「い、いえ大丈夫です。こうなったらあなたとの出来事を言えばいいのですから」

「っっ⁉‼‼‼」

 

神裂は何事もないように上条の方を見ながらそう言った。

だが、反して上条の心の中は不安でいっぱいである。

 

(やべえ・・・・・・記憶喪失だってことをばれたら・・・・・・どうする・・・・・・適当にごまかすか?)

 

上条はそんな風に考えながら神裂の出方を探る。

そんな神裂はキリトやアスナに現実世界での関係を話そうか迷っている様だったが、ある程度話して完全に二人が首を傾げたのを見て肩を落とすと、

 

「まあ、いいです。とりあえず貴方に事のあらましを言えばきっと信じてもらえるでしょうから」

 

と、神裂は自信たっぷりに口にした。

そして上条の方を向いて穏やかに話し始める。

 

「えーと、それじゃあ何から言えばいいでしょうか・・・・・・あの子のことで争った・・・・・・ということを言えば大丈夫でしょうか?」

「っ⁉ああ、大丈夫だ・・・・・・」

 

上条は思わず声に出しそうになるのを必死に抑え、平常を装う。

あの子・・・・・・インデックスの事が話題に上がるだけで驚いてしまう心を上条は必死に抑える。

 

(インデックスのためにもこんなとこで神裂にばれるのはまずい・・・・・・‼)

 

そして、額から冷や汗を流しながら上条は神裂に先を促す。

 

「思えば私もあなたと出会ったのはつい最近なのですね・・・・・・私があの子の背中を誤って切ってしまい、あなたがステイルと戦うことになって、なんとあなたが勝ってしまう・・・・・・そんな事でしたね」

 

神裂はそこで一拍おくと今度はキリトたちの方に向き直り、

 

「あの子っていうのは禁書目録・・・・・・インデックスっていうんですが・・・・・・まあ一般人にはわからないですよね」

 

神裂は憐れみや中傷といった意味ではなく単純に説明の仕方がわからないようだった。

 

「ええっと、話を戻しますとあなたはあの子の『首輪』を壊してあの子を救った。その代り、イギリス政教の指示に従わざるを得なくなった。あの子の『足枷』として」

 

上条は考えた。『首輪』や『足枷』のことはステイルから聞いていて知っている。だが、神裂がインデックスの背中を切ったということは知らない。覚えていないのではなく知らないのだ。

だが、今の上条にはそれを肯定する以外の方法はなかった。たとえ事実ではないにしろ、ここで肯定しなければ上条当麻は記憶を失っていると神崎に捉えられかねない。

 

「ああ、全部あっている。疑って悪かったな神裂」

「い、いえこれくらいのことは大丈夫ですよ・・・・・・(いろいろと借りもあることですし・・・・・・)」

 

神裂はなぜか慌てながら顔の前で手を振った。

だが、上条はそんな事が見えてはおらず、代わりに全く別のことを考えていた。

 

(とにかくだまし切れたか・・・・・・でも、今思うと少しおかしい。俺に続いて聖人である神裂までもが・・・・・・? どうなっているんだ? これは超能力の開発の一環であって魔術師である神裂が来たらいけない場所のはずなのに・・・・・・ここに来てからというもの鈴木さんとは連絡一つとれていないし・・・・・・俺は無事に帰れるだろうか・・・・・・早く帰らないとインデックスもたぶん小萌先生のとこに厄介になってるだろうしな・・・・・・それについては問題ないか・・・・・・?)

 

そんな事を考えていると神裂は少し心配そうな顔をしてこちらを見つめてくる。

大方自分の発言に不備があったかどうか気になっているのだろう。

そして、上条と神裂が互いに食い違いながら会話を進めていると当然置いてけぼりを食らう人間が出てくる。

 

「・・・・・・なあアスナ・・・・・・俺たちどうすればいいと思う・・・・・・?」

「・・・・・・黙って見守るしかないでしょう・・・・・・」

 

と、部外者二人は完全に蚊帳の外で話し合っている二人を見守ることしか出来ないでいた。

そして、会話の中心である上条と神裂はなぜここにいるのか、ということで話が始まっていた。

「それでだ神裂、どうしてこんなとこにまで来たんだ?」

「ああ、それでしたら鈴木と名乗る人が何だか頭に機会を付けてリンクスタート? でしたっけそれを言えばあなたに会えるとのことでしたので・・・・・・まあお礼をするのは早い方がいいかと思いまして」

 

神裂はそう言うと自分のポケットを探り始めた。

 

「あれ・・・・・・? 確かにここに入れたはずなのに・・・・・・?」

 

そう言うと神裂は大慌てでバタバタし始める。

その動作が起こるたびに神裂の大きな膨らみがバウンドを繰り返しているのだが当の本人は気が付かない。

 

(・・・・・・アバターなのに神裂のって大きいな・・・・・・)

 

上条はそんな事を思いながら神裂が動作を止めるのを見守る。

また、視界の隅っこで男が一人地面に伏しているのは気のせいだと思う事にした。

 

「ええっと、ああっと・・・・・・落としてしまったのでしょうか・・・・・・? いやでも、そんな感触ありませんでしたし・・・・・・」

「あのさ神裂? 今ここがどこだか分かるか?」

 

上条はそう神裂に問いかける。

すると、神裂から帰ってきた言葉は上条が予想していたものと同じだった。

 

「えっ? 学園都市のどこかの研究機関なのでは?」

「どうやら違うらしいんだ。おーいキリト、力尽きてないで答えてくれ。ここはVR空間・・・・・・アインクラッドっていうところでいいんだよな?」

「んん・・・・・・ああ、そうだが・・・・・・もしかして神裂さんも知らなかったのか?」

「そうらしいんだ」

 

するとキリトはこれが困惑している人の顔ですというような顔をして考え始めた。

また、アスナでさえも頭に人差指を付けて考え始めた。

そこまでいくと場違いな感覚さえ覚えた上条は何をどうすればいいのかわからず挙動不審になっている神裂に近づいて話しかける。

 

「それでさ神裂、神裂がここに来たのってどれくらい前なんだ?」

「確か三時間くらい前ですね。私の体内時計が狂っていなければの話ですが」

「そうか、じゃあさ鈴木って人に会ってここに入った時って外の世界はいつだったんだ?」

 

上条が普通にそう聞くと神裂は首を傾げて返してきた。

 

「? あなたは今日起きたことすら忘れてしまうのですか? つい先ほど頭の先から雷撃を飛ばしている人から逃げている最中に出会ったはずなのですが・・・・・・?」

「えっ? いやいや待ってくれ、上条さんはここに入ってからもう数日分の時間を過ごしているんだが・・・・・・?」

「そんなはずはありませんよ、私はあなたにお礼を言うために探していたら逃げられてしまったのですから」

 

神裂はそう言うと「あの雷撃を飛ばしている人さえいなければ追いかけたのですが」と小さく続けた。

 

「でもさ神裂、そうするとこの世界と外の世界は時間の流れが違うってことになるんだが・・・・・・」

「そうですね、私が知る限りではそのような魔術は聞いたことがありませんし、そもそも他の世界というもの自体が異質なものですし」

 

そこまで言うとキリトやアスナは一通り結論が出たらしくこちらの会話に参加してきた。

 

「ところで神裂さん・・・・・・? アイテムストレージに手鏡っていうものは入っていませんか・・・・・・?」

「あいてむすとれーじ? なんですかそれは?」

「そうか・・・・・・知らないんだったな」

 

そこでキリトは一拍おくと息を吸い込んで落ち着いてから口を開いた。

 

「とりあえず右手の指を二本まとめて振ってもらえるか?」

「こうですか?」

 

そう言って神裂は指を振り、目の前にウインドウが現れる。

そのことに神裂は若干驚き目を軽く見開いた。

 

「じゃあその中からアイテムストレージっていう欄をタップしてみてもらえるか?」

「えっと、これですね」

 

これですね、と言われても可視状態でないウインドウは上条達には見えないのだが・・・・・・神裂はそのことを知らないようだった。

そして、アイテムストレージの中身が見えたらしく神裂は首を傾げた。

 

「なんですか? ここに書かれている日本刀というものは・・・・・・?」

「ええっと、それは武器だから装備の欄から帯刀出来るんだけど、とりあえず先にその中に手鏡っていうアイテムないか?」

「手鏡ですか、ああ、ありましたよ。それで、これをどうすればいいのですか?」

 

神裂そう言うとウインドウが開いているであろうところを指さし、キリトに尋ねた。

 

「ええっとね、神裂さん。驚かないでほしいんだけど、あなたはこの世界で今別の姿なんだ。現実世界の姿になりたいか?」

「それはもちろんそうです。もうあの時のような屈辱は受けたくないので」

 

神裂は物凄く真剣な顔で言ったが、その真意が分かるのはくしくもここでは上条一人だけだった。

そのため、キリトとアスナは首を傾げながら何かあったんだろうなと感じていた。

 

「それで、元の姿に戻るにはどうすればいいのですか?」

「ああ、それはそこに入っている手鏡をアイテムストレージから出せば後は勝手に元の姿に戻るよ」

 

キリトはそう言うとアイテムストレージからのアイテムの取りだし方を丁寧に神裂に教えていく。

手持無沙汰になった上条はそんな二人をぼんやりと眺めていたのだが、とりあえずアイテム確認しておくかーと思い上条もウインドウを開く。

するとそこには見知らぬアイテムがずらりと並んでいた。

 

(ええっと、新しい武器があるけど・・・・・・装備できないしな・・・・・・うーん後は防具とかか)

 

詳しい情報は後で見るとして上条はいったんウインドウを閉じてキリトたちの方を向き直る。

すると丁度その時手鏡を出現させたらしく、神裂が光の中に飲まれていった。

 

「うっ・・・・・・」

 

そして光が晴れるとそこにはいつもの見慣れた服装の神裂がいた。

 

(・・・・・・アバターよりも実物の方が大きいのか・・・・・・)

 

するとキリトも同じことを思ったのか少し頬を赤くして顔をそむける。

だが、そむけた方が悪かった。

そこにはアスナがいたのである。

 

「あっ」

 

そしてアスナは顔を真っ赤にして手を握りしめて震えていた。

だが、不幸はそこで終わらない。

 

「ふう、やはり自分の体というものの方が落ち着きますね・・・・・・しかし、なんだか少し体が軽いような・・・・・・」

 

ブチリ

そんな音が聞こえた気がした。

よく考えてみれば軽いのはステータス補正がかかっているからとわかったはずなのに冷静さを欠いていたのかアスナは真っ赤にした顔をキリトに向けて拳を振りあげた。

 

「ちょっ、アスナ‼ 危ないって‼」

 

それをキリトはぎりぎりのところで躱す、躱してしまった。

アスナの全力パンチを躱す、つまり全力で振られた拳はキリトの後ろにいてキリトによってアスナが見えなかった上条の所に届くわけで。

 

「ぐぼげっっっ・・・・・・‼」

 

アスナの全力パンチをもろに食らった上条は思いっきり数メートルは吹き飛び地面に転がる。

上条の頬にはクッキリとした拳の跡が出来ていた。

 

「ご、ごめんなさい・・・・・・つい手が・・・・・・」

「つっ・・・・・・いいって大丈夫、いつもの噛みつきよりはましだ・・・・・・」

 

アスナは上条を殴ったことに対して物凄く慌てていたが、上条の落ち着きっぷりを見て少し安心した様だった。

 

「ったく、アスナ・・・・・・いきなり人を殴るなよ、危ないだろ・・・・・・」

 

しかし、キリトのこの発言によって再びスイッチが入ったのかアスナは目にも止まらぬ速さで上条の上を通り抜けると、真っ直ぐにキリトの頬をぶん殴った。

 

「ぐげえ・・・・・・‼」

 

キリトは上条が飛んだ数倍の距離を飛びボス部屋の壁に激突し、止まった。

そこでキリトは壁から崩れ落ち、地面に顔から突っ込んだ。

 

「ふんっ‼ キリト君のバカ・・・・・・‼」

 

そう言うとアスナは一人次の階層に続く階段目掛けて歩き始めた。

因みに神裂はというと首をやれやれという感じで振ってアスナの後を追いかけた。

 

「なあ・・・・・・トウマ、女の子って理不尽じゃないか・・・・・・?」

「・・・・・・否定はしないでおく・・・・・・」

 

そう言うと上条達二人は一斉に立ち上がり、顔を見合わせてから次の階層へと向かった。

 

 

 

 

 

 




どうだったでしょうか・・・・・・・?

ここに来てのあのキャラの登場です。とある魔術の禁書目録をお読みでない方にはわからないかもしれませんが、一応あのキャラは禁書目録の方でもそれなりの重要キャラ(作者の考え)だと思います。

誤字脱字などなど、よりよい表現などありましたら感想までよろしくお願いします‼

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