今回はバトルシーンがメインなのであまり自信はありませんが・・・
楽しんで読んでもらえれば嬉しいです‼
怖かった・・・
誰かと居たかった・・・
そんな理由かもしれない・・・丸腰のまま森を歩いていたあの男にあの時話しかけたのは・・・
あいつと出会う数日前俺はとあるギルドを全滅させた。
自分のレベルを偽ってでも安心できる場所が欲しかった・・・
朝起きてダンジョンに潜り、モンスターを狩って帰ってくる。
そんな単純な作業に精神がすり減っていたのかもしれない・・・
だから俺はあの言葉に反応した。
「キリト、もしよかったら俺たちのギルドに入らないか?――――――」
この時、俺はどのように対応すればよかったのだろうか・・・
素直に自分のレベルを明かし、そのうえで入らせてもらうように頼むべきだったのだろうか・・・
だが、今となってはそんなことは確かめようがなかった。
「キリト君‼次は右だよ‼」
唐突の声に従い右に曲がる。
思考を回想から呼び覚まし、戦闘へと切り替える。
崩れかけた壁や柱が視界に広がり、そこが迷宮区の通路だということを思い出させる。
「悪いアスナ・・・少し考え事してて・・・」
「もうっ‼少しは緊張感持ってよね・・・」
アスナのそんな言葉に俺は苦笑して返す。
ボス部屋まで入り口から考えて半分というところまで来た。
「トウマさん大丈夫かな・・・?」
「大丈夫だろう・・・と思う、人を一人連れて帰ってくるだけだしな・・・」
俺は走りながらそう答えた。俺はトウマなら大丈夫だろうと思っていたが、何かが心の隅に引っかかっていた。
そして、アスナはそんな俺の気持ちを察したのか少し暗い顔をした。
「まあ、トウマのことだし平気だろう。少しの間だけど見ててそう思ったよ」
「・・・うん」
「どうかしたか・・・?」
「・・・えっとね・・・キリト君の言葉は嬉しいんだけど・・・やっぱり心配だなって・・・」
「意外だな・・・そこまであいつのことが気になるなんて・・・」
俺がそう言うとアスナはこちらを向きながら顔を少し赤くして首を横に振った。
「えっ⁉ えっ⁉ そんなわけないよ・・・だって私はキリト君のことが・・・」
「ん? 俺のことが何?」
俺がアスナの言葉を聞き返すと、アスナは顔をさらに赤くしてそっぽを向いてしまった。
「もうっ‼ 知らない‼」
そう言うとアスナは俺よりも少し速い敏捷力にものをものをいわせ、先に行ってしまう。
「なんだったんだ・・・?」
キリトはそうぼやくが、その質問に答えてくれる敏感な人間はその場にいなかった。
(次はしばらくステータスを敏捷力にふろうかな・・・)
そんなことを考えながらキリトは迷宮区の中をアスナを追うためさらに加速した。
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熱い。
ただひたすらに熱い。
もう幾度となく幻獣との交錯をした。
その中でこのボス部屋がだんだんと炎に包まれていくのを肌で感じていた。
(フェリカは無事か―――って今はそれどころじゃねえか)
大量の煙と炎の中にやつの殺気を感じ取る。
上条は右手を握りしめて構えをとる。
ここまで視界が悪いとなると、やみくもに動くよりもカウンターを狙ったほうがまだ勝機がある。
(どこだ・・・?いつ来る・・・?感覚を研ぎ澄ませろ・・・集中しろ・・・)
上条は呪文のように口の中で言葉を紡ぐ。
一秒一秒がとてつもなく長く感じられる。
そして―――
「そこかっ‼」
一気に上から飛び込んできた幻獣をバックステップで躱し、足を地面に付けたところで力を溜める。
幻獣が降り立ちこちらを振り向こうとしたとき、そこから一気に飛び出し、カウンターを幻獣の角目掛けて叩き込んむ‼
「おりゃあああああ―――――‼‼」
すると見事に右手は角に当たり、幻獣に大ダメージを与えた。
が、与えただけだった。
角を殴られた幻獣はすぐさま身をひるがえしこちらに突進をしてきた。
「うわっと⁉」
上条は変な声を出しながら、体を捻って避けようとするが幻獣の角に腹が抉られ赤い筋が生まれた。
するとHPバーが緩やかに減少し、3割ほど削り止まった。
上条は苦々しい顔を作りながらポーチを探りポーションを取り出す。
(残りポーションの数は2個、あとどれくらい耐えられるか・・・)
上条はそう思いながら幻獣の攻撃をバックステップで躱し、それと同時に手に持っていたポーションの栓を開けて一気に飲み込む。
そうすると徐々にだがHPバーが回復していく。
(このままじゃいずれ負ける・・・さてどうするか・・・)
上条は幻獣に打ち勝つ方法を模索しながらも幻獣の攻撃を避けるために走る。
(いろいろと攻撃してわかったがやつの弱点はたぶん角だ・・・そこをいかに狙っていくかだな・・・)
上条はそう思うと部屋の中央目掛けて走り出した。
(やつのことだたぶん俺が中央に来ればすぐにどこかから顔を出すだろう・・・その時に近接戦に持ちこむしかないな・・・)
そうして上条は中央に着くとそこで立ち止まり周囲を見る。
かなりの量の煙が部屋の中に立ち込め、視界は半径1メートルがいいところ、濃いところを見れば腕を伸ばすとその先が見えなくなる。
どうやら幻獣は煙を生成する炎などを生み出せるらしく、煙がいつまでたっても晴れなかった。
(やつはこんな視界内でも行動できんのか・・・さすがは幻獣ってところか・・・)
上条はそう考えると周りに意識を向けなおす。自分を射抜く殺意の目がどこから来るのかを探る。
(・・・次は前から来るのか・・・?)
上条がそう思った瞬間、周りの煙が一斉に晴れ目の前に炎ブレスのチャージが終わりかけた幻獣が姿を現す。
「やばっ・・・‼」
上条は慌てて回避行動をとろうとする、だが出来なかった。
否、することが出来なかった。
なぜなら――――――――
「トウマ‼」
「トウマさん‼」
幻獣、上条、キリトたちは一直線上に並び、キリトたちは余裕で炎ブレスの射程圏内に入っていたからだ。
「お前等‼今すぐ避けろ―――――‼」
上条の声が届いた直後チャージを完璧に終えた幻獣がブレスを放ってきた。
上条は右手を後ろに突き出しながらキリトたちの方へ走った。
だが、右手を突き出したところで炎は防ぎきれない、上条の体は回り込んできた灼熱の炎によって燃やされた。
「ぐはっ・・・‼」
痛みはないが爆風によって後ろに飛ばされる。
その感覚が奇妙だったがそんな余韻に浸っている間もなく地面に墜落した。
「くそっ・・・‼」
上条のHPバーは緩やかに減少し、残り一割の所で止まった。
そして、上条のHPバーの下にあるキリトとアスナのHPバーもまた三割近くまで減らされていた。
「キリト‼アスナ‼無事か⁉」
「なんとかな・・・」
「私も大丈夫・・・」
上条はキリトたちが無事なのにひとまず安心し、ポーチから最後のポーション二本を取り出して無理やり飲み込む。
上条のHPバーが本当に緩やかに上昇し始めた。
(ひとまずはキリトたちと合流しよう・・・)
そう思い上条はキリトたちの方へ走り出した。
だが、それがいけなかった。
簡単な話だ。今まで狙っていた獲物がいきなり背中を向けて逃げ出したらどうなるか。
「トウマ‼後ろだ‼」
「はっ‼・・・」
気付いた時には手遅れだった。幻獣は上条目掛けてとびかかり、牙をむいていた。
それでも上条は躱そうと全力で左に飛んだ。
だが、やはり間に合わなかった。
「しまっ・・・‼」
右手の辺りに嫌な感触を覚えた。肉が抉られ引きちぎられる感触。
「なっ・・・‼」
上条の右腕が幻獣に食われていた。
「うぐっっ・・・‼」
右肩から先が赤く発光し、ポリゴンがそこから覗いていた。
「トウマ‼」
その事態に真っ先に気が付いたキリトが勢いよくこちらに突っ込んでくるが、幻獣がそれを許さない。
キリトが走り出すなり口に赤い光を溜めてチャージを始めたのだ。
「ちっ・・・‼トウマ逃げろ‼」
「言われなくてもな‼」
上条はそう言うとあらん限りの力を使って右に走った。
チャージが終わる。そしてその炎ブレスは上条目掛けて放射された。
「なに・・・‼」
イマジンブレイカーを持っていない上条は何の武器も持たないため、防ぐものがない。
遮蔽物のない平坦な場所を灼熱の炎が通りぬける。
「うぐっっ・・・」
すると、一瞬のうちに上条の体は炎に包まれ、HPバーが減少し始めた。
「うがあああ・・・‼」
「トウマ‼」
「トウマさん‼」
キリトとアスナは上条のもとへ行こうとするが幻獣が首を振るいうかつに近寄れない。
「だったら・・・‼」
キリトは幻獣目掛けて走り出した。背に担いだ一振りの真新しい剣を鞘から引き抜き構える。
「うおおおおおっっ・・・‼」
淡く、青い光が剣から発せられ一直線に幻獣へと向かう。
当然炎ブレスをしている幻獣が避けられるはずもなくキリトのソードスキルは難なく幻獣の体に吸い込まれていった。
「せやあっ・・・‼」
キリトはそのまま続けざまにソードスキルをヒットさせる。が、キリトの連撃が終わるのと、幻獣の炎ブレスが終わるのはほぼ同時だった。
「やばっ・・・‼」
ソードスキル直後の硬直状態。そのほんの数秒は短い時間だったが、今の戦闘では致命的だった。キリトは勢いよく突き出された爪によって体に裂傷を負い、弾き飛ばされる。
しかし不幸中の幸いか、先ほど体力を回復していたので死にはしなかった。
「ぐはっ・・・‼」
だが、そんな考えも虚しくキリトは壁にかなりの速度でぶつかった。
キリトのHPバーが急激に減少し、残り二割といったところで止まった。
しかし当のキリトに自分の事を思っているほどの思考的余裕はなかった。
「トウマ‼無事か‼」
キリトはそう叫ぶと上条がいた方を見る。
だが、その言葉をもはや上条は聞いていなかった。
否、聞えてはいた。だが、上条の頭では処理しきれなかった
死ぬ・・・・・・その感覚が自分の神経を貫いた。
普段、いつも死にかけている上条だが今回のは感覚が違った。
死んでしまったら何も残らないようなそんな虚無感さえ浮かび上がらせる・・・・・・そんな感覚だった。
「トウマ‼逃げろ――――‼」
「っ⁉」
本能的に横に飛ぶ。すると上条の元いた場所に幻獣が突進を繰り出したところだった。
「・・・・・・」
「なにぼけっとしてるんだ‼早く走れ‼」
「あ、ああ・・・・・・」
今回はキリトに救われた。
だが、次はないかもしれない。
右腕が再生するまで後二、三分だが、上条にはその数分がとてつもない長さの時間に感じたられた。
そう思うと上条はフラフラと歩き出し、幻獣から逃走する。
「トウマ‼走れ‼」
「っつ・・・・・・‼」
キリトの声に合わせて走り出す。ただひたすらに縦横無尽に走り続けた。
遠く、十数メートル程離れたところから肉を切り裂くような音が響く。
見ればキリトが果敢にもソードスキルを放ち、硬直状態に陥る。だが、敵に反撃の余地を与える間もなくアスナがそこに割り込み注意を引き付ける。
完璧の構えだった。二人の攻防は無駄がほとんどなかった。それに引き換え上条はキリトに助け貰わなければいけないほどの足の引っ張りようだ。
拳を握りしめる。
次こそは負けない、そう思い上条当麻は立ち上がる。
右腕はもう元に戻った。
これで戦える。
上条はしっかりと前を見据えて走り出す。
「キリト‼アスナ‼」
上条はそう叫ぶと一気に幻獣の懐に潜りこむ。
そして、こちらに一切意識が向いていない幻獣の顔面目掛け右腕を振るう。
〈グゲアアアアアアアア――――‼〉
幻獣は雄叫びを上げながら真横にスライドしていく。
上条は振るった右腕を引き戻し、しっかりと立った。
目を細め幻獣を睨みつける。
だが、幻獣はそんな上条の意志を気にもせず、チャージを始める。
「くそっ‼」
上条は叫びながらもしっかりと幻獣目掛けて近づいていく。
上条の残りHPは四割といったところだった。
手持ちのポーションは零個。キリトやアスナならポーションを持っているかもしれないが、キリトたちの所まで行ける距離ではない。
(結局カウンターで狙ってしかないってことだな・・・・・・‼)
上条はそう思うと更に加速して幻獣に近づく。
「うおおおおお・・・・・・‼」
上条は拳を握った。その拳に力を込める。ただ助けるために、敵を倒すために拳に力を込めた。
だが、それは失策だった。
幻獣がチャージを終えた時上条は自分の間合いの外にいた。後数秒の所で間に合わなかった。
「くっ・・・・・・‼」
仕方なく上条は進行方向を斜め右に変えブレスから逃げようとする。
だが、そのブレスは上条の所にはこなかった。なぜなら、離れたところにいたキリトたちにブレスが吐かれたからだ。
「っしまっ・・・・・・‼」
上条は咄嗟に飛び込み無理やりでも幻獣の狙いを逸らそうとした。でも、上条がいたのは間合いの外、どんなにやっても攻撃は届かない。
ブレスが放射される。
無慈悲なまでの火力がキリトたちを飲み込んでいく。
「キリト‼アスナ‼」
慌てて飛び込んでいこうとするのを上条は本能で止めた。
背中を向けてはいけないと、本能が叫んでいる。
「つっっ・・・・・・‼」
上条は走っている中いきなり屈み込み、足先だけでターンする。
そしてすぐ後ろに迫っていた幻獣の顎を蹴りあげる。
〈グゲエエエ⁉〉
上条は蹴り上げた足をそのまま後ろに倒し一回転を決める。
そして、上条は着地した足にそのまま力を溜め、浮き上がったままの幻獣の顎に再び拳を振るう。
〈ギエエエエエ・・・・・・‼〉
幻獣はそう叫ぶと、一目散に走り出す。
見れば、幻獣の顎が砕けて牙が欠けていたようだった。
牙が欠けると錯乱するようにプログラムされているのか幻獣は上条から離れていく。
だが、
「そっち行ったぞ、キリト」
そう言うと上条は足を止めて幻獣を眺めた。
すると幻獣の胴体を横に真っ二つにするかのような青白い光が見え、幻獣が淡い青色のポリゴン片となって消えた。
そして、そのポリゴン片の中で黒の剣士は静かに剣を鞘に納めた。
「終わったな」
「ああ、終わった」
中空にはコングラチュレーションズの文字。
上条とキリトは無言で手を上げ、互いに手を叩いた。
そんな様子をアスナは微笑んで見つめていた。
短いような長かったようなそんな戦いが幕を閉じた。
どうだったでしょうか・・・?
文章力などはまだまだだとは思いますが、楽しんでいただけたでしょうか・・・?
楽しんでいただければ幸いです。
誤字や脱字、もっといい表現などありましたら感想までよろしくお願いします‼