今回は前作よりも頑張って書いたつもりです‼
誤字や脱字などありましたら感想までよろしくお願いします‼
「はあっ・・・はあっ・・・」
肩を上下させて荒い息をして呼吸を整えていく。
それはボス部屋から一目散に逃げ出したレイドメンバーたちも同じ様で、地面に大の字になっている人までいた。
「トウマ、アスナ無事か・・・?」
キリトが荒い息を無理やり押えながら聞いてくる。
その問いかけに対し上条とアスナは首を縦に振って答えた。
そして、その返事を受け取るとキリトは何も言わずに周りの人がいない場所に移動し始めた。
「トウマ、アスナちょっとこっちに来てくれ」
上条とアスナは互いに顔を見合ってから、キリトの方へと向かった。
上条達がキリトの傍まで来るとキリトは小声になってしゃべり始めた。
「どうも今回のボス攻略戦は何かがおかしい」
「えっ?キリト君どういうこと?」
キリトの言葉にアスナが疑問を投げかけるとキリトは少し暗い顔になって話し始めた。
「まず、ボス攻略の情報の少なさだ」
「いや、でもそれは仕方のないことなんじゃ・・・?」
「今回のは異例すぎる。あくまで仮定だが、もしかするとこの中で意図的に情報を隠し持っている奴がいるかもしれない・・・」
「そんな・・・みんなが協力しないとこのゲームはクリアできないのに・・・」
アスナの悲痛な声を聞きながらキリトは話を進める。
「次にボスとの戦い方だ・・・あまりにも雑すぎるとは思わなかったか?」
キリトのその問いに上条はボス戦での出来事を思い出す。
動かないボス目掛けて、自分たち以外のPTが全部ボスを攻撃していた。
「確かにおかしい、いくらボスが動かなかったからって全員で切りかかるのはPTの意味がない」
「トウマもそう思うか。なら、次に考えるのはもうわかるよな」
「・・・誰かがボスの情報を隠して持ってる・・・だけじゃないな・・・誰かを殺そうとしてる・・・?」
「そう考えるのが普通だろう」
今回のボス戦のことには誰か首謀者がいる・・・でも誰だかはまだわからない・・・
すると人だかりの中から声が聞こえてきた。
「おい!・・・フェリカを見なかったか?・・・」
「フェリカ?いやあんたの所の女なら見てないぞ」
「そんな・・・おい‼誰かフェリカを見なかったか‼」
周りの人たちはそんな叫びを聞いて周囲を探し始めた。
するとキリトはいきなり声を張り上げて言った。
「フレンド登録してるんだろ、どこにいるかなんてすぐわからないのか?」
「・・・そうだった・・・すまない・・・」
そう言うと男はウインドウを操作して居場所を探り始めた。
そして、ものの数秒とかからずに男は場所を探り当てた。
「・・・いたぞ・・・」
「どこにいた?大方武器屋とかじゃね?」
周囲が和気あいあいと話し始める中男だけは震えていた。
「違う・・・いまだにボス部屋に残ってる・・・‼」
周囲の空気が一変する。
普通の空気から絶対零度の空気になったかのように辺りが静まり返り動きが止まる。
「・・・そんな・・・馬鹿な・・・」
「くっ・・・‼」
そんな空気の中上条は一人走り出した。
「おい‼トウマ‼どこ行くんだ‼」
キリトが後ろから声をかけてくるが答えている余裕はない。
物凄い速度で上条は主街区の門を通り抜けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はあっ・・・はあっ・・・」
今日二度目の全力疾走・・・現実の自分の体だったらとっくに力尽きているだろう距離を走った。
迷宮区の地図を上条は覚えきれていない。
そのために迷宮区の中を行き帰りの中で見た風景を思い出しながら進むしかなかった。
まさか自分が通った道がマッピングされているとも知らずに。
「くそっ‼どこなんだよボス部屋‼」
上条は叫びながら迷宮区の中を右往左往する。
もうどれだけの距離を走ってきたか覚えていない。
それだけ上条の精神は擦り減っていた。
「ここは右・・・いや左か」
曲がり角で左に右にを繰り返す。
途中で何度もモンスターとエンカウントし、右手で殴りつけてきた。
もう上条は助けることしか頭になかった。
「はあっ・・・はあっっ・・・・・・」
何度も何度も立ち止まりそうになり、そのたびに自分を叱咤する。
助けられる命がそこにあるのなら走らなければ・・・
だが、上条の意志に反して精神は持ってくれなかった。
T字路を曲がろうとしたところ上条は足を滑らせて倒れた。
「・・・くっ・・・」
本来なら痛みを感じるであろうその行動は―――全くと言っていいほど痛みがなかった。
「はは・・・ここは現実じゃないんだもんな・・・」
現実でもないのに死んでいく人たち。
ましてや、その人たちが不本意にとらわれているとすれば、上条がとる行動は簡単だった―――
―――助ける。
殺されるなんてことは許せない。
上条は決意とともに手を地面に着く。
体はまだ動く、それだけで十分だった。
「くっ・・・」
立ち上がると少し立ちくらみがした。
でも、構っている暇はない。
一刻も早くボス部屋につかなければ・・・
そして、上条は気付く目の前の道が開けていてその奥に開いたままの扉があることを。
「おい‼無事か⁉」
ボス部屋に目掛けて走りながら叫ぶ。
だが気が付いた。扉の入り口にいたのは・・・
人じゃなく幻獣だったことに。
「はっ・・・」
上条はボス部屋の少し手前で立ち止まり、中を見た。
ボス部屋全体が火の海と化し、粉塵が宙を舞う。
ボス部屋にそびえていた柱の何本かは折れてぼろぼろになりボス部屋に破片が散っていた。
煙がもうもうと立ち込めボス部屋の外まで伸びている。
「うそ・・・だろ・・・」
幻獣がこちらを向く。次はお前かといわんばかりに口を開け、牙をむき出した。
上条は静かに歩き出した。
ただ前を向いて、後ろなどは振り返らずにただ前を向いて。
「誰が仕組んだかなんてわからねえ・・・でも今はまず俺が
上条は目を細めて幻獣を睨み、駆ける。
たった一つの武器となる右手を握りしめて・・・
~~~~~~~~~~~~~
トウマが走り出した時、俺はトウマを止められなかった。
それは追いつくとかそういうことではなく、ただ単純に足が動かなかった。
怖い・・・また以前のように死にかけるのが・・・他人が死んで自分だけ死なずに帰ってきた時の他人の視線が・・・
怖かった。
だから俺は下をうつむいたままその場を動けなくなった。
ふと、誰かに手を握られた。
「怖いの?」
そう聞かれて答えることは出来なかった。
「手が震えているよ?」
もっとも可憐で美しかった彼女に弱さを向けたくなかった。
だから―――――
「ちょっと俺必需品買いに行ってくるはすぐに戻るからちょっと待っててくれ」
そう言って走り出した。
「・・・バカ・・・」
小さく紡がれたその言葉はキリトの心を浅く切り裂いた。
必需品を買いに行くというのは嘘ではない。
だが、そんなのは偽善だとわかりきっていた。
本当に自分が善ならば危険を顧みず走って行ったあの男を追うはずだから・・・
「くそっ‼くそっ‼くそっ‼・・・」
自分を叱咤しながら走る。
赤の他人を助けるためにいち早く行動を起こしたあの男に追いつくために・・・
キリトは走った。もう自分のせいで誰かが死ぬのは嫌だから・・・
キリトは路地裏を抜ける。そして目的地が見えた。
その目的地は―――
「エギルいるか‼」
店に飛び込むようにして入ると、そこには大柄の男が立っていた。
「どうした?そんなに慌てて、女にでも振られたか?」
「クラインじゃあるまいし・・・ってそんなことより、まだあの剣残ってるか?」
「ん?あの剣って・・・ああ、あれのことか。ちょっと待ってろ」
そう言うとエギルは店の中に入っていき少ししてすぐに出てきた。
「はいよ、武器でも壊れちまったのか?」
「いや、違うよ」
「じゃあどうしてだ?どうせ次の階層で強いのが出るかもって言ってただろうに」
キリトは支払いボタンを右手で押し、背中の剣を変えながら答えた。
「誰かを助けるためさ」
その眼は決意に満ちた眼だった。
~~~~~~~~~~~~~
「くっ・・・」
煙が視界を遮る。さらにはあちこちに炎が上っていた。
だが、前を見る。炎の中を悠々と歩いてくる幻獣を睨みつける。
そして、幻獣の口に明かりが灯ったかと思うと上条は叫んだ。
「フェリカ‼下がれ‼」
上条の言葉とともに後ろに下がる音が聞こえる。
その直後、上条とフェリカ目掛け雷炎が走る。
フェリカは有効射程圏外、上条は右手でその攻撃を受ける。
(くそっ・・・‼このままじゃいずれこっちの体力が尽きる・・・どこかで形勢逆転したい・・・)
上条はそう思いつつも四角いボス部屋をぐるぐると後退しながら回り続ける。
(扉から出ようとすると叫びをあげて眷属を呼び、かといって近づけば灼熱の地獄・・・どうする・・・?)
上条は幻獣の翼の先から発せられた雷を右手でいなしながら考える。
(やっぱりここは突っ込むしかないな・・・もうこれ以上フェリカの体力が持たない・・・)
チラリと後ろを見ると激しく肩を上下させている女の子の姿があった。
「フェリカ‼ボス部屋の左サイドの真ん中で防御姿勢で待機‼」
そう言うとフェリカは目を見開いてこちらを見た。
その目を上条は決意を持った瞳で見返すと、彼女は急いで移動を開始した。
そして、上条が前を向き直ると幻獣はそれが終わるのを待っていたかのようにその場に存在していた。
「・・・っ‼行くぞ‼」
上条はその声を響かせて幻獣へと突進する。
幻獣もそれを待っていたかのように走り出し、雷を出す。
上条はそれを右手でいなしながら幻獣に走り寄る。
「これでどうだ‼」
幻獣と交錯する時にわずかに体を回転させすれ違う。
そしてすれ違いざまに右手で幻獣の胴を殴る。
幻獣の残りのHPバーは2本、そして2本目のHPバーも8割まで減らした。
(一発当てれば約0.5割といったところか・・・)
上条は目測でそう判断し、体を反転させて幻獣目掛けて再び加速する。
(やってやる‼)
その決意を含んだ眼はもう一人の少年と同じ色をしていた。
いかがだったでしょうか・・・?
今回は次回とセットでやっていきたいと考えていますので、
もっと頭を捻っていきたいと思います‼
相変わらず文章が変かもしれませんが、これからもよろしくお願いします‼