とある不幸なソードアートオンライン   作:煽伊依緒

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第十九話(第二十話)です!

約一か月ぶりの投稿です・・・・・・待っていらした方、すみませんでした・・・・・・。

書かなきゃ! と思っていたのですが、あまり書く時間が取れず・・・・・・。

はい、では勝手に気を取り直して、第十九話楽しんでいただければ幸いです!


第十九話《記憶》~仮想世界と現実世界~

もし―――――〇〇〇が叶ったら―――――。

こんな願いは人間ならいくらでもするだろう。

そしてその願いは時に叶い、また時に叶わない。

―――では。

原点に返ろう。

魔術師と言う者たちがいる。

彼らは自分の望みを叶えるためならばどんなものにも縋るという考えを持った人間たちだ。

その願いは時に相手の不幸であったり、世界の平和であったりするだろう。

では、もう一度。

原点に戻ってみよう。

魔術師たちは自分の望みを叶えるためにどんなものにでも縋ろうとした結果、魔術に縋った。

それならば、その魔術師たちを魔術に縋らせるに至った願いは一体どういうものとして扱われるのであろうか。

魔術師の起原――――そうも言えるかもしれない。

だが、もしもそれ以外にもあるとするならば。

さらにそれがいくつも集まったとすると。

もしもの話が連なって、もしもの話はどうなるのだろうか。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「あれは・・・・・・」

 

少し開けた空間。

そこにいた―――いやそこにあったのはとんでもない大きさの銅像であった。

広さが縦、五十メートル×横、五十メートル×高さ三十メートルくらいある空間の中央に高さ十メートル位のそれが立っていたのだ。

そんな時に出てきた上条の言葉は、

 

「おっさんの像か・・・・・・」

 

そう、その像は筋骨隆々のひげを生やした何かと強そうなおっさんの像であった。

そして、その男の像は刀身が男の身長よりも長い何か部位ごとに刃が違う剣を掲げて立っている状態を表している。

そんな状態の像に上条は少し、いやかなりがっかりしながら洞窟の続きがあるかを探すため像の裏側に回るが、

 

「あれ? 洞窟ここで終わり?」

 

上条は期待を裏切られたようにそう漏らすと、頭をガシガシと掻いてうーむと唸る。

ここまで来ておっさんの像一つ見て帰るのはかなり悔しい。

とは言ってもそれ以上先があるわけでもなく、仕方がないので上条は像の観察に移った。

のだが、

 

「見れば見るほど・・・・・・おっさんだ」

 

上条はいつまで見てもその感想しか抱けないままでいた。

もっと、もっと他の事! と上条は心の中で思いながらも結局それ以外のことは何も見つからないのである。

 

「しかし! こんなところで諦めて今までの苦労を全てパーにするような上条さんではないのです! 絶対どっかに秘密の入り口とかボタンとかあるはずだって!」

 

まるでRPGの勇者になった気分になる上条は必死になってその広間の壁をペタペタと触り始める。

しかし上条は気が付かない。

自分が入ってきた所にまさか看板が一つ置かれていることなど・・・・・・。

 

「ここか⁉ ここか! そこかああああああああ!」

 

その後上条が気が付くのは数十分後。

広間の壁を全て探った後だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ポーション良し、武器の状態も降る状態まで回復させてある。よし!」

 

午後七時十分。

ギルド《風林火山》の全メンバーとキリト、エギルは第七十四層の主街区についていた。

 

「おめえら! 忘れもんはねえな! いくぜえ!」

『おー!』

 

主街区の門に集まった面々はクラインの掛け声に声を返しながら門から出ていく。

その姿は見る者によってはボス戦前の気迫と同等以上のものを感じ取れたであろう。

 

「待ってろよトウマ・・・・・・」

 

キリトは唸るようにそう呟くと上条が入ったという洞窟を探し始める。

幸い上条から大まかな場所をメッセージで聞いているのであまり時間を掛けることなく目印のついた洞窟を見つけることが出来た。

 

「ここか・・・・・・」

「しっかしすんげえ深そうだなぁおい」

「クライン・・・・・・お前が持ってきた情報だろ・・・・・・」

「そうは言ってもよおキリのじ、実際見るのとじゃ話が違うってもんだろ?」

「おい、二人とも急がなくていいのか?」

「わーってるってエギル。よし、行くか!」

 

クラインはエギルの言葉を聞いて気合を入れなおすと堂々と先陣を切って洞窟に入っていく。

午後七時三十分のことだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「えーと、何々? 『汝が力を示せるのならば青の壁を、示せぬのなら赤の壁を』・・・・・・? なんだこりゃ」

 

上条は数十分かけてようやく見つけた看板を疲れた様に見つめるとぼんやりとした頭で考える。

結局は青を押せばいいのだろうか?

 

「でも、なんか強いやつ出てきたらまずい気もしなくも・・・・・・」

 

上条はそんな風に怯えながら呟くと、次にキリトと来た時に青を押そうと決めてとりあえずは赤を押すことに決めなおす。

ふと、看板の横の壁を見れば手帳サイズの青色に塗られた壁と、赤色に塗られた壁があった。

そして、上条は左側にあった赤色の壁を押そうと腕を伸ばしたとき、

 

「キキキッ」

「うわっ⁉」

 

上条が赤色の壁に触れる僅か手前、いきなりコウモリに似た生き物が天井から飛んできて上条を脅かした。

 

「っと・・・・・・危ないな・・・・・・」

 

上条は壁に手を着きながらもう片方の手で額の汗を拭う。

拭いながらも「ふぅ・・・・・・」とため息を吐き、自分が手を着いたところを見てみる。

 

「ん・・・・・・っつ! 青じゃねえかよ!」

 

どうやら今度は赤を押そうとしてコウモリのせいで手元が狂い青色の壁を押してしまったようだった。

そして、上条がそう叫んだ直後。

ゴゴゴゴ・・・・・・という音を立てながら上条のいた場所が通ってきた通路よりも下に沈み始める。

 

「なんだ、なんだ⁉」

 

上条はいつもの通りに自分の不幸体質を悔やむ暇なく訪れた状況の変化に驚きながら辺りをきょろきょろと見る。

そうしているうちにも地面は沈み続け遂にはロープでもなければ登れないくらいの高さになってしまった。

 

「まじかよ・・・・・・普通に出られないのか・・・・・・?」

 

上条は高くなってしまい見上げなければ見えない通路を見上げて、ボソッと呟くと右こぶしを握り締めた。

絶対に何か来る。

これまでの戦いと同じように上条の体には目に見えない何かが覆うように襲っていた。

全身を刺すような、体をなぶられるような、そんな何か。

と、そんな事を考え全身をこわばらせていると突然中央に立っていた銅像が動き始める。

 

「な、なんだ・・・・・・⁉」

 

上条は最初目を見開いてそちらを見る。

だが、すぐに目を鋭くし銅像の方を見た。

そしてそれは――――。

 

「む、ここはどこであるか」

「・・・・・・はあ?」

 

上条はもともと茶色だった銅像が人間のように肌色をして服を着ている状態で動き始めたことに驚き、しゃべり始めたことによって二重に驚いた。

 

「あんた誰だ・・・・・・?」

「私のことであるか? ・・・・・・しかし、私の存在をどこまで一般人に言っていいものか」

「?」

 

その男は勝手に何かしらぶつぶつと呟くと少し考える様に腕を組んで悩み始める。

そんな男を上条は冷や汗だらだらな状態で見つめ続けていた。

 

(壁押して出てきたのがおっさんで、しかも名前聞いたら考え始める⁉ どういうことだ・・・・・・⁉)

 

上条はそんな事で頭がいっぱいになり頭をぐるぐると回すと頭を軽く振っておっさんを見る。

するとそのおっさんは先ほどと変わらず悩み続けている様だった。

 

「よし、名前くらいは良いだろう。私の名はアックアだ」

「ああ、俺は上―――トウマだ」

「・・・・・・トウマと言ったか?」

「? ああ、言ったが?」

 

上条がそう告げるとアックアと名乗ったおっさんは先ほど手に持っていたが、地面に突き刺した剣を引き抜くと両手で構える。

 

「え?」

「その実、貴様は上条当麻であろう?」

「・・・・・・っ⁉」

 

上条は目の前の男、アックアと名乗った人間にフロアボス以上の危険因子を感じ取る。

こいつはやばい。上条の本能がそう告げていた。

そもそもの話。

上条の本名を知っているのはこの世界ではキリトと・・・・・・だけだろう。もしくは元の世界で上条と会っている人物だが、上条の記憶にはない。もしかする現実世界で記憶を失う前に出会っていたのかもしれないがそんな事は上条には思い出せなかった。

 

「俺はお前とどこかで会っているのか・・・・・・?」

「あっているも何もこの前死闘を繰り広げたではないか・・・・・・まさか忘れたというのか」

「しとう・・・・・・?」

 

上条は一瞬死闘というのが日本語でなく別の言語のように聞こえた。

しかし、目の前の男は上条の知っている日本語の意味で言っている様だった。

 

「まあいい、見たところ私の体はなぜかベストの状態に戻っている様なのでな。ここがどこだとしても貴様の右腕を貰うことに変わりはない」

「・・・・・・俺の右腕・・・・・・?」

「そうだ、もともと貴様が右腕を差し出していれば私があそこまで出ていくことはなかったのだがな」

「どういうことだ・・・・・・?」

 

上条は問う。

自分の記憶には一切ないことを喋るアックアと名乗った男に。

 

「まさか貴様記憶がないのであるか? たった数日前の出来事だというのにか?」

「何を言ってんのか全然わかんねえよ・・・・・・」

 

上条が頬をポリポリと掻いて答えるとアックアは呆れたというように首を左右に振った。

 

「まあ構わん。記憶がないのであれば私の攻撃も解らないのであろうからな‼」

「・・・・・・っ‼」

 

アックアはそう言うと特大の剣を持ったまま上条に一気に接近してくる。

 

(・・・・・・速いっ‼)

「ふんっ‼」

 

上条が気が付いた時にはすでにアックアは剣を振るい上条の右腕を切り落とさんとしていた。

それを上条は間一髪のところで左に転がって避けるとカウンターとばかりに右腕をアックアの体に叩き込もうとする。

 

「ふむ、この前よりも体が俊敏になっている様だがまだ足りんな」

「・・・・・・⁉」

 

上条が殴ったと思った時にはすでにアックアの体はそこにはなく、上条の上から声が聞こえてくる。

そして、上条が上を見上げたと同時にアックアは巨大な剣の側面で上条の顔面を捉え、体全体の力を使って上条の体を吹き飛ばす。

 

「ぐああああ‼」

 

上条はものすごい勢いで壁にぶち当たりぼんやりとした頭で自分のHPバーが四割ほど消えていることを確認し、そのことに冷や汗を掻いた。

 

「ふむ、今の攻撃にその程度のダメージしかおっていない・・・・・・どういうことだ?」

「なん・・・・・・のことだ」

「今の勢いで吹き飛ばせば貴様は確実に骨の一本や二本折れているはずである」

「・・・・・・ここはアインクラッドだぞ、現実の骨が折れるわけがないだろうが」

「アインクラッド?」

 

男は真面目な顔でそう聞き返すと顔に皺を寄せてこちらを睨みつける。

 

「そうだ、ここは現実とは違う世界。仮想世界のアインクラッドだ」

「現実とは違う世界だと? しかしアインクラッドなどと言う世界は聞いたことがない」

「?」

 

上条は自分が言ったことに対するアックアの対応の意味が全く理解できず頭にはてなマークを浮かべ続ける。

この男は一体何を言っているんだ?

 

「まあいい、ひとまずは貴様の右腕をもらい受けてからにするとしよう。丁度貴様の仲間もいないようだしな」

「クソッ」

 

上条は悪態を吐きながら張り付いていた壁からもそりと動き出すとアックアの動きから目を離さずに身構える。

その様子を見てかアックアは少しムッとなりながら巨大な剣を構えた。

本当はこの状況でポーションを飲んでおきたかったが今はそんな状況ではないと上条の神経は告げる。

あの男から目を離してはいけない。

目を離せば死ぬ。

そんな風に神経は告げ続ける。

 

「行くぞ」

「ッ‼」

 

上条は短く息を吐くと体を前に倒して走りこむ様にしながらアックアに近づいていく。

その様子にアックアは少し驚いたように目を開くが、対応はさして変わらず巨大な剣を使って上条を圧倒していく。

 

「クッ・・・・・・!」

「貴様、この数日のうちに何があった・・・・・・? その身のこなし、明らかに数日の鍛錬で出来るようなものではない」

「だから! 何のこと言ってんだよ!」

 

上条は必死にアックアの剣筋を避けながらアックアの隙を伺うが、見事なことにアックアの動きに隙は見られなかった。

逆に言えば、上条に見せた隙こそが罠であることをうかがわせるものの様な気すらしてくる。

 

「せあっ!」

 

上条はアックアが振り下ろした剣を右に体を回しながら避けると、着地と同時に右腕をアックア目掛けて振りかざす。

 

「グヌッ・・・・・・」

 

その勢いに押されてアックアは数十センチ後ろに下がるが、大したことはないとでもいうかのように剣をすぐに構えなおして上条と相対する。

 

「なぜだ? 何故貴様に殴られた痛みを感じない?」

「・・・・・・お前、アインクラッドがどこだかわかっていないのか?」

「そんな世界は聞いたことがないというくらいしか分からん」

「なら分からなくても当然か!」

 

上条は止まっていた体を無理やり動かしてアックアに急接近するも、

 

「ふん‼」

「チッ!」

 

見事と言いざるをえない反射神経で剣を横に振るい上条が避けざるを得ない状況を作り出した。

そんな状況に上条は舌打ちをしながら後ろに下がるといつでもアックアの攻撃に対応できるようにすぐさま身構える。

だが、アックアはそんな上条の判断を上回る勢いで突撃を仕掛けてきた。

 

「クッ! 速い!」

「貴様が遅いのである」

 

淡々と、ただ淡々とアックアは告げる。

そして、

 

「ぐああああ!」

 

目にも止まらぬ速さで振りぬかれた剣が上条の左腕を切り飛ばしながら上条の胴体を一気に壁まで吹き飛ばす。

ドガッという音と同時に壁にぶつかった上条は自分の視界に見えるHPバーが残り六割ほどから一割を切るところまで見えた。

ゾクッ、と自分の身に死が近づいていることに恐れを抱く。

現実ではないこの世界。

アインクラッドでHPバーが全損すれば現実世界での自分の脳も焼き切られる。

初めてこの世界に上条が来たとき、自分の状況をキリトに説明し分かった事だ。

その死が、すぐそばまで来ていた。

 

「クソッ!」

 

上条はそう叫ぶとすぐさま壁から抜け出し自分のポーチからポーションを取りだして一気に呷る。

が、上条が飲み干した勢いとは相反するようにHPバーはゆっくりとだけ右側に増えていく。

 

「貴様、なぜ左腕が消えている」

「・・・・・・この世界では切れた腕とかはポリゴン片になって消えるんだよ。そんな事も知らなかったのか?」

「そうか・・・・・・」

 

アックアは少しため息を吐くと今度は目にしっかりと力を込めて上条を見返してくる。

その表情はまさに鬼の形相と言ってもいいほどに怒りや覚悟に似たものであふれかえっていた。

 

「元の世界であれば原形をとどめ、その場に残るはずの腕が消える・・・・・・か、出来れば無駄な殺傷はしたくなかったのであるがな」

「ツッ・・・・・・!」

 

気配が変わる。

この場を包み込んでいた空気の重みが段違いに変わった。

圧倒的な重圧。そんなものが上条の体にのしかかってきた。

 

「クッ・・・・・・!」

「ここからは本気で消しに行かせてもらうのである」

 

アックアはそう言うともはや上条には視認することも叶わない速度で襲い掛かってくる。

瞬きを一度しただけで目の前に現れ、目の前に現れたことを確認できた途端に猛烈なパンチが繰り出された。

 

「ぐああああああ!」

 

殴られた上条は何が起きたのか分からないままもう一度壁にぶつけられた。

殴られた衝撃とぶつかった衝撃によって生じたダメージは上条のHPを限界まで削り、残り数パーセントと言うところまで削っていく。

ふと、上条がアインクラッドに来たばかりのことを思い出す。《バトルヒーリングスキル》アインクラッドに来たばかりのころ、キリトはまず最初にそのスキルを習得することを上条に強制した。この先絶対にそのスキルは必要になると、その時キリトは上条に告げたのだった。

そして上条は心の中でキリトに感謝しつつ苦い顔をしながら壁から這い出てくる。

 

「・・・・・・今までの攻撃を食らってまだ立ち上がれるのであるか」

「ここでは痛みは感じない。お前だって分かっているんだろ? アックア」

「ああ、それくらいのことは私も分かっている。しかしそれではどうやってこの場を終わらせるのだ? まさか貴様は勝算なしに私に戦いを挑むほどの愚か者でもあるまい・・・・・・」

 

アックアは真面目そうな顔をしながらそう上条に問いかけてくる。

どうやらアックアはこの世界の事柄について詳しく知っているわけではないようだった。

そのため上条はポーチからポーションを一本取りだして一気にすべてを飲み干すと、アックアに対して目線を鋭くして叫ぶ。

 

「だからと言ってそれを教える筋合いはないよな!」

「確かに、その通りである。だが、そちらに活路があるのであれば状況からするに私も貴様を殺せないわけではなさそうだ」

「・・・・・・」

 

上条は息をのむ。こいつは違う、と。色々なオレンジプレイヤーと戦ってきた上条だったが、こいつは別の意味で違う。何か、一般人とは違う方向に、オレンジプレイヤーとも違う方向に抜きんでている気がすると感じ取った。

 

「さらに言えば、この世界。私の魔術がほとんど使えなくなっているのも何かの弊害なのだろうか?」

「⁉ まじゅ、つ・・・・・・だと⁉」

 

上条はアックアの言葉に驚きを見せながら言葉を返す。

それほどまでにこの世界で魔術と言う言葉は異質だった。

 

「ん? やはり貴様の記憶は欠落しているのであるか? 私は聖人である。魔術の一つや二つ使えて当然ではないか」

「せい、じん・・・・・・」

 

上条の体から徐々に力が抜けていく。

世界に二十人と居ない人間。確か上条の身近にも一人――――。

 

「貴様は記憶が欠落しているということにすら気が付いていないのか。ふむ、なら好都合だな。ならばここいらで貴様を殺すとしようか」

「あっ、クッ!」

 

上条は一瞬怖気そうになった顔を一瞬で戒めて険しくするとアックアを睨み付ける。

 

「あの《聖人崩し》も貴様一人では使えない。ならば貴様一人にはもう勝ち目はないのである」

「何を言ってんだか知らねえが、なんだかお前だけは許せない気がしてきたぞ・・・・・・」

「そうか、なら来るがいい。私の力、もう一度貴様に知らしめてやるのである」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「あれー? 完全にカットしたはずなんだけどなあ・・・・・・」

 

誰もいない部屋、誰もいない場所で、誰かわからない、もはや人なのかすらわからない音が響く。

しかし、うすぼんやりとした部屋にはいくつもの画面が空中に浮かんでいた。

 

「うーん、流石に科学の領分オンリーはきつかったかなあ?」

 

その音は無機質にその場に響いていく。

 

「まあ、いっか。これもまたせーちょーのうちだしねえ」

 

ふと、また別の音が響く。

 

「さあ、そろそろだから戻ってくれるかな? 他の人は変わってくれたからさ」

「えーいやだあ~なんで君だけがやってるのさ~」

 

少し幼い口調の音が響くと、後から来た大人しげな口調の音は告げる。

 

「僕が君たち全てから生まれた総体みたいなものだからだよ?」

「ふーん? まあいっか、もうずいぶんと楽しんだしねえ」

「そうかい、そりゃよかった」

 

大人しげな口調の音は人間でいえば笑うように幼い口調に言葉をかける。

そしてそこまで聞くと幼い口調の音はどこか遠ざかるように気配が消えていく。

 

「じゃあバイバイ、きっとまた会えるって信じているよ」

「うん、正確にはいつも会っているから大丈夫だよ。安心して眠るんだよ」

「うん!」

 

そう言うと幼い口調の音の気配は完全に消えた。

そのことを大人しげな口調の主は確認すると「ふぅ・・・・・・」と息をついて気合を入れなおす。

 

「さあ、ここからが本番だ!」

 

二人の知らないところで物語は静かに進んでいく・・・・・・。

 

 




いかがだったでしょうか・・・・・・?

今回はかなり上条中心で書いてみたつもりでしたが・・・・・・楽しんでいただけていれば幸いです。

では今回もいつも通り誤字や脱字、よりよい表現などありましたら感想までよろしくお願いします!


次回こそあの人が登場⁉

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