とある不幸なソードアートオンライン   作:煽伊依緒

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第十八話(第十九話)です!

今回は今まであまり登場する機会のなかったキャラを出してみたつもりです‼

楽しんでいただければ幸いです‼


第十八話《心》~幕開け~

もし、もしもの話だ。

十二月二十四日、この日を聞くと大体のことは考え付くだろうと思う。

その日は大前提として、デートの日ではなくキリストの生誕日である。

そして、その日を祝うために町には様々なイルミネーションが施されたりしているだろう。

そのうちの一つ、クリスマスツリーというものも例外ではないと思う。

その日までにクリスマスツリーは世界中いたるところで鈴や星、靴下などの装飾を施されたり、誰かの待ち合わせ場所に使われたり、願い事をかけられたりする。

では、もし。

その願い事が多種多様、何千何万、いや何十億以上も集まったものはどうなるのだろうか。

叶ったり、叶わなかったりした願い事は時に、どうなるのだろうか?

本当に誰にも気づかれず、誰にも見つからず、ただその場に現れるようなものは・・・・・・。

 

 

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「ここらへんだよな、言われた森ってのは」

 

上条は一人森の中の茂みをがさがさと割って入っていく。

時刻は四時になる少し前ごろ、大きなクリスマスツリーが印象的な店を後にしてキリトと別れた後上条は一人で森の中に入りクエストを遂行していた。

因みにキリトとは予定が済んだ後合流することになっている。

 

「しっかし、三日前から帰ってこない兄って相当危険な状況だよな・・・・・・」

 

上条は一人で呟きながら茂みの中を急ぐ。

そして、上条は頭の中で先ほどまで会話していたNPCの店員の言葉を思い出す。

 

「街からも認められるほどの狩りの名手である兄が三日も帰ってこないのは絶対に何か問題がある。か」

 

上条は考えていたことを口に出して、しっかりと頭の中で整理していく。

まず、兄が三日も帰ってこない理由として挙げられるのは三つ。

一つ目に事故に巻き込まれたりモンスターに襲われて死亡したという理由。

二つ目にどこかで動けない状態にあるという状況だという理由。

三つ目にただ単に狩りが上手くいき、帰るのを忘れているという理由。

 

「流石に三つめはないと思うけど」

 

上条はそう言いながらがさがさと茂みの中を歩いていく。店員さん曰く、兄は茂みの中で機会を窺ったり木のうろに潜んでいたりするらしい。

だからこうして茂みの中をがさがさと歩いているわけだが、一向に見つかる気配がしない。

 

「クッソ・・・・・・流石に何の手がかりもないのはきついな」

 

そう、店員さんが教えてくれたのは兄の狩りのスタイルだけでそれ以外の手がかりなどは何一つ教えてくれなかったのだ。

 

「せめてもうもう何人か一緒に探してくれる奴がいればな」

 

上条はそうぼやくが上条がこの世界で知っている人とすればキリトと、アスナ・・・・・・ぐらいだろう。キリトは用事があると言っていたし、アスナにこのことで手間を取らせるのはなにか違う気がしたため止めて置いた。

かれこれ数時間は探し続けただろうか? ふとそう思った上条は指を振るってウインドウを表示させ時刻を確認する。

 

「今午後六時三十分か、三時間くらいかな?」

 

上条はそう言うとウインドウを閉じて辺りを見渡す。若干暗くなり始めている状況はこの世界に夜が訪れようとしているのを表している。

 

「そろそろ帰るべきかな?」

 

上条はそう口にすると街の方向に歩き出す。すると、上条の耳が突如として聞こえてきた唸り声のようなものを捉える。

 

「⁉ 今のは・・・・・・⁉」

 

上条は慌てて辺りを見渡すと、少し離れた所に洞窟があるのを見つける。

 

「・・・・・・行ってみるか」

 

上条はそう呟くとなるべく足音を立てないように洞窟に入っていった。

 

 

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「で、話したいことっていうのは何なんだよクライン」

「いやよ、この前のパーティメンバーといいお前さんも変わったんだなって思ってよ」

「はぁ、そんな事で呼び出したのか?」

「いや、本当の理由は別にあるけどよ」

 

クラインはそう言うとニッと笑って辺りを指さす。

ここは第74層のおしゃれな喫茶店だった。最近開いたばかりの最前線だとあって観光に来ているプレイヤーも多く、当然この店にも人はたくさんいる。

 

「ここじゃあチョット話せねえ内容でよ」

「・・・・・・じゃあ、なんで集合場所をここにしたんだよ」

「一回入ってみたかったんでよ、ここって女性プレイヤーも多いしなっ!」

「今すぐ黒鉄宮に送り込んだ方がいい気がしてきた・・・・・・」

 

最高に素敵な笑顔になっているクラインを連れて店の外に出ると、どこに行くんだとクラインに問いかける。

 

「うーむ、圏外に行くって手もあるがモンスターにおびえながら話すのはちょっとなあ」

「盗み聞ぎされる可能性もあるしな」

「そうそう」

 

クラインは顎に手を置きながら頭を上下に動かす。

キリトはそんなクラインを見て「はぁ・・・・・・」とため息を吐いて案を提案する。

 

「エギルの店なんてどうだ? あそこなら人もあまりいないだろうし」

「キリのじ、そいつはちょっと失礼じゃねえか?」

「いや、事実だしな・・・・・・」

「まあ、そうなんだがよぉ」

 

クラインは言葉を濁しながらそう言うとうーむと唸りながら考え、結局打開案が出なかったためにエギルの店に行くことにした。

 

「でもよぉ、キリのじ。もし人がいたらどうすんだよ」

「中で話させてもらえばいいだろ? それくらいはさせてくれるだろ」

「まあ、そうだろうがよ」

 

そんなことを話しながら歩いていると、転移門に着き二人で50層の名前を叫ぶ。

叫んだ瞬間にクラインとキリトの体は青白い光に包まれ50層に到着した。

 

「さてと、ここに来るのもなんだか久しぶりだな」

「ん? お前さんの家って50層じゃなかったか?」

「いや、最近帰れてないんだよ。ずっと最前線でレベリングやらしてたからな」

「そうかい、でもあんまり根を詰めすぎんなよ?」

「分かってるって」

 

キリトとクラインはそんな風に会話をしながらエギルの店に向かって歩き出す。

時刻は六時頃なので辺りは若干暗く、人通りも多い。そんな中をキリトとクラインは歩いていくが、

 

「おい、見ろよ。あれってビーターのキリトじゃね?」

「本当だ。一緒にいるあいつは・・・・・・誰だ?」

「しっ! 聞こえるぞ」

 

歩くたびにそんな言葉をかけられていく。キリト的にはもう何回も受けたことなので気にならないが、隣を歩くクラインにとってはそうではない。

 

「キリト、お前さん人気者だな」

「クライン、皮肉だとしても笑えないぞ・・・・・・」

「すまんすまん。だがな、お前さん大丈夫なのか? こんなん俺様じゃ本当のことを口にしちまうかもしれねえんだが」

「アインクラッド攻略のためだし、もう気にならなくなったよ」

「キリのじ・・・・・・」

 

クラインが泣きそうな声でそう言うと、キリトは複雑な顔をしてクラインに言葉をかける。

 

「まあ、いいから早くエギルの店に行こうぜ? 早くしないとエギルの店も人が入り始めるからな」

「へいへい、わーったよ」

 

クラインは無理に笑うと、キリトの横に並んで歩き出す。

すると、ほどなくしてエギルの店と思われる店が見えてきた。

 

「おー、あったあった。前と大して変わってねえなあ」

「大してどころじゃなく全く変わってない気がするが・・・・・・」

 

二人は思い思いのことを口にしながらエギルの店に近づいてくる。

 

「おっ? キリトとクラインじゃねえか。どうした二人で、もしかしてなにか売るもんとかできたか?」

「よおエギル。悪いけど今日はそういうために来たんじゃなくて、場所を借りに来たんだ」

「場所? 何か話し合いでもすんのか?」

 

店の窓から頭を出して先に話しかけてきたエギルはキリトたちの回答に疑問を抱きながらドアの方を指し示す。

 

「まあ、話は中に入ってから聞こう。ほら入った入った」

 

エギルのその言葉に従うようにキリトとクラインは店の中に入っていく。

ガチャリ、という音を立てながら店のドアを開けるとそこにはそれなりに片付いているRPGでよく見かける武器屋と言う感じの店が広がっていた。

 

「それで? 話ってのはなんだ? 客は今いねえから安心しな」

「ありがとう、でも俺もまだ知らないんだよ。クラインが人のいないところで話すって言ってな」

 

キリトはそう言うと視線をエギルからキリトに続いて店に入ってきたクラインに移す。

すると、クラインは咳ばらいを一度してキリトを見る。

 

「やばいクエストの情報を手に入れちまったんだよ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「クソッ、一体どこまで続くんだ⁉」

 

上条は少し焦りながらも洞窟の中を進んでいく。

その額からは嫌な汗が吹き出し、上条の表情からして緊張しているのがうかがえる。

先ほど洞窟に入ってからもう数十分は歩き続けているはずなのに階段も分かれ道もなく真っ直ぐな道が続いていた。

 

「どうなってるんだ? そろそろ一回くらい分かれ道があってもおかしくないはずなのに・・・・・・」

 

一応道はくねくね曲がったり、上下に高さ移動しているためアインクラッドの地形内には収まっていると思うが、それにしても洞窟が長すぎる。

さらに、洞窟内では光源となるものが上条の持っているランプしかなかったためよく周りが見えず、緊張が増していた。

いつ、モンスターが現れても対処できるように細心の注意を払いながら進んでいくのは上条の神経をすり減らしていく。

 

(いつ来る・・・・・・? 今か? それとも十分後か?)

 

上条は生唾を飲み込みながら恐る恐る前進し続ける。

よくよく洞窟を観察すると、洞窟は縦六メートル横五メートルの半円形をしていた。

そのくらいある洞窟の大きさ的に大パーティでも移動できるほどの広さを持っている。

 

「そろそろ、開けるところに出てくれないかな・・・・・・」

 

上条が少し弱気な言葉を口にしながら進むと少し先にぼんやりとした青い光が見えた。

 

「ん? なんだあれは」

 

上条が目を凝らしてみるとそこには―――――――

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「すごいクエストの情報ってなんだよ」

「まぁまぁ落ち着けってキリのじ、そんな焦ることでもないだろ?」

 

クラインはそう言うと店の椅子に座って反対側にあった椅子をキリトに勧める。

その動作を見てキリトは椅子に座ると、クラインはしゃべり始めた。

 

「俺たちのギルド、《風林火山》のメンバーでちょっと前にクエストを受けて帰ってきたらよ、その報酬で別のクエストのことを教えてもらったんだがよ」

「それで?」

「それがさ、くっそつええモンスターが出るクエストらしくてよ。受けてみてえなあって思ってよ」

「受ければいいじゃないか」

 

キリトはさも当然というような声を上げると、それにエギルも同意するという感じで首を上下に振る。

 

「いやでもな報酬の情報によるとよ、そのクエストには十人まで参加できてそれ以上は参加できねえっぽいんだよな」

「それで、《風林火山》のメンバーだけじゃなく俺にも声をかけたと」

「そういうことだ」

 

クラインは頷きながらそう言うとエギルの方に目を向ける。

 

「エギルもどうだ? 戦力は多い方がいいんだが」

「うーん、店もあるしな。まあ時間があるときならいいぜ」

 

エギルはニッと笑いながらクラインの質問に答える。

 

「それで、そのクエストの名前は何なんだ?」

「ん? 報酬で教えてもらったほうか?」

「そうだが」

「いや、流石に名前までは分かんないけどよ」

 

そこでクラインは一回言葉を切ると顎に手を置いて決め顔をしながら続きを口にする。

 

「どんなクエストの内容かどうかなら言えるぜ?」

「早く教えろよ・・・・・・」

「わーったわーった、言うからよ」

 

クラインは焦ったようにそう言うともう一度咳払いをして言う。

 

「なんか狩りに行って帰ってこねえ兄を探してこいっつうクエストらしいぜ」

 

ガタン、とキリトは立ち上がった。

 

「ん? どうしたキリのじ」

「やばい」

「何がだよ」

 

キリトの顔面が青くなっていく。

 

「どうしたキリのじ、トイレでも行きたくなったのか?」

 

クラインは笑いながらそう言うとエギルの方を見る。

エギルもまた両手を上げて分からないといった感じを示して少し笑みを浮かべる。

 

「俺の、さっきまでパーティを組んでいたやつが、そのクエストを受けてる」

「なっ」

「ちょっ、何人でだ⁉」

「一人でだ」

 

キリトのその言葉にエギルとクラインは顔を見合わせて絶句する。

そして、再びキリトの方に顔を向けた。

 

「行かないと、今すぐ助けに行かないと!」

「行くっつっても場所わかんなくてもう宿にいるかもしんねえぞ?」

「クライン、その強いボスがいるって場所どこだかわかるか?」

 

キリトは顔を暗くしながら淡々とクラインに質問をする。

 

「えーと、確かどっかの長ったらしい洞窟の最深部だったはずだが・・・・・・」

「さっきメールでちょっと変な洞窟を見つけたから入る。キリトも予定が終わったら来てくれ。ってメールが届いた」

「なっ・・・・・・」

 

三人は店の中で言葉を出さずに固まった。圏外の洞窟の奥深くに行ってしまうとメッセージは届かない。助けるためにはその場に行かなければならない。

 

「一応出口に目印っぽいものを置いておいたらしいから見つけるのはそう難しくない気がするけど・・・・・・」

 

キリトは顔を絶望で埋め尽くしながら考える。そして、

 

「クライン、エギル。悪い、俺今から助けに向かう」

「・・・・・・分かった。なら俺も行こう、っていうか《風林火山》のメンバーを連れて行こう」

「いや、でも危険にさらすのはちょっと」

 

キリトがそう口にすると、クラインはおどけたように笑いながら口を開く。

 

「もとより受けようとしていたクエストだ、構いやしねえよ」

 

クラインがそう言うと、エギルも同意するといった感じで首を上下に振る。

 

「・・・・・・ありがとう」

「いいってことよ、さあ、そうと決まれば速攻で準備しねえとな」

 

クラインの声かけと同時に全員が立ち上がる。

トウマを救うという目的のために。

――――――午後六時四十分の出来事であった。




いかがだったでしょうか・・・・・・?

今回も前回に引き続き戦闘シーンはほとんどないような展開になってしまいました・・・・・・。

日常シーンでも楽しんでいただけていれば幸いです!

いつも通りに、誤字や脱字、よりよい表現などありましたら感想までよろしくお願いします‼



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