今回も前回に引き続いて戦闘シーンを出来るだけ多めにしたつもりです。
楽しんでいただけたら幸いです‼
リーダー格を捕まえた。
そう思った上条達はとりあえずそのまま残党を捕まえるために迷宮区を走った。
すると、残った残党たちはリーダーが黒鉄宮にいると分かるとすぐに降参を認め上条達に同行することになる。
時間は今そこにあった。
「なあキリト、これからどうする?」
「どうするってこいつらを軍の奴等に引き渡すしかないだろ、実際これまでもお前はそうしていたんだろ?」
「まあそうなんだけどさ」
上条は何か悩むようにそう言い、思いついたように言葉を続ける。
「そうだな、とりあえず残党がこれだけだと分かったら後は回廊結晶で黒鉄宮に連れていけばいいか」
「うん、なら俺等はしばらく暇だな」
しばしの時間の空白。
互いにどちらが話し始めるのを探るような時間―――などほとんど起こらずに上条がキリトに対して切り出す。
「なあキリト、なんでお前一人で何時間もぶっ続けで迷宮区なんて挑んでたんだよ」
「んー、別に今までもそんなことはあった気がするんだが・・・・・・」
「なかったはずだぞ? でもいきなり今になってどうしたんだよ、お前らしくもない」
「ああ、そういう事か」
「?」
キリトは合点がいったような顔になりながら上条を見返して愛想笑いを浮かべる。
その表情に上条は何か底知れぬものを感じ取りながらキリトの言葉を待つ。
「誰にも言わな―――いや、お前が言うはずもないか」
「? 何か書く仕事でもしているのか?」
「いや、そうじゃない、いや実際そうか」
キリトは自分で言っていることを自分で否定しながらも口を動かし続ける。
「あまり大きな声では言えないんだが、ついこの前ユニークスキルが俺に発動したっぽくってさ・・・・・・」
「・・・・・・‼ それって」
「ああ、まだ大っぴらには上げてないんだが・・・・・・周りに知られたらそれなりに大変なことになると思う」
「だよな・・・・・・」
ついこの前血盟騎士団というギルドのリーダーであるヒースクリフという男がユニークスキルを発動させた時もかなりの騒ぎになったため、キリトがユニークスキルを宣言すればそちらもまたかなりの騒ぎになるだろう。
「それで? どんなスキルなんだ?」
「・・・・・・そりゃ誰だって気になるよな、まあいいけど」
キリトはそこで一度顔を上条の方に向けると静かに言葉を紡ぎ始める。
「二刀流ってスキルなんだ」
「二刀流か、って今までそういうスキル無かったっけ?」
「いや、俺の知る限りそんなスキルは存在しなかった。というか情報屋のスキルリストにものってないんだぜ?」
「そうか、じゃあやっぱりユニークスキルってことか」
上条は感慨深げに腕を組んでウンウン頷いているが、普通に考えて上条のイマジンブレイカーもユニークスキルである。
と、キリトはそんな事を考えていたが頭を振ってそのことを頭から追い出すと、別の話題を上条に振る。
「なあトウマ」
「ん? なんだよキリト、改まった感じでさ」
「少し頼みがある」
キリトは珍しく率直に物事を口に出した。
そのことと、キリトが頼みごとをしてきたということに上条はダブルで驚きながら話の続きを聞く。
「二刀流の練習・・・・・・特訓を一緒にやってくれないか?」
「・・・・・・⁉」
もしもこの場に上条ではなく昔からキリトを知っている人間がいればこの言葉を信じはしなかっただろう。
でも、上条はその言葉を聞いて何かが分かった気がした。このキリトという人物の思いや感情。たとえわかることのできたものが全体のほんの一部分だったとしても、その時の上条にはそれが分かった気がした。
「分かった。手伝うよ」
「ありがとう」
上条とキリトはそう言うとどちらが先ともわからずに笑い出した。
その笑い声は捕まえられた残党が人数確認を終え、全員そろっていることを大声で伝えるまで続く。
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残党を残らず黒鉄宮に送り込んだ後、上条とキリトは最前線であるフロアに行き、迷宮区をひたすらにマッピングしていった。
現れたモンスターのヘイトを全て上条が集め、キリトがスキをついて攻撃し、ヘイトがキリトに移ったところで上条がとどめを刺すという、ある意味単純作業とも言えることを延々繰り返していく。
「せあああっ‼」
キリトがソードスキルを発動させ理科室にありそうな人体模型に似たモンスターに横一線の跡をつける。
そして、すかさず上条がひるんだモンスターの腹部に右こぶしを叩き込んでいく。
すると、叩かれたモンスターは輪郭をぼやかせながら淡いポリゴン片となって空中に消えていった。
その直後に上条達二人の前に入手した経験値とコルが表示され、二人ともそれをろくに見ずに前に足を向けなおした。
そんな中、上条は歩きながらキリトに問いかける。
「なあ、いまふと思ったんだけど腕を切られた状態でウインドウって開けるのか?」
「わかんないな、でも左手で開けられるんじゃないのか? 左利きの人もいるだろうし」
「そんなもんなのかな」
上条とキリトは適当にぼやきながら先へと進んでいく。
もうすでにこの層の五分の一程度を二人だけでマッピングし終えていた。
それでもなお、上条とキリトは街に戻らずに延々とマッピングを続けている。
もちろん、キリトの特訓という名目を含めてだが。
「キリト、もうすぐ朝の六時になるぞ攻略組が上がってきてもおかしくない頃だし、後一時間くらいたったら街に戻ろう」
「分かった」
二人はそう告げると、新たに眼の前に出現した三体のモンスターに目を向ける。
二体は先ほど相手していた骸骨モンスターだが、もう一体の真ん中にいるモンスターは始めてみるモンスターだった。
「なんだありゃ、見た目はゾンビって所か?」
「多分な、でもなんか様子が違う。俺等の知ってるゾンビじゃないかもしれない」
「一応注意はしておく」
上条はそう言うと真ん中のゾンビに似たモンスターに焦点を合わせる。
見た目的にはほぼアニメや漫画で出てくるゾンビと変わらない。
だが、キリトに言われた通りそれをゾンビと称するには何かが違うような気がした。
「来るぞ!」
「つっ‼」
キリトに言われて意識を戻す。
そうすると言われた通り左右にいた骸骨モンスターが骨をガチャガチャいわせながらこちらに迫ってきていた。
「くっ‼」
こちらから見て右側の骸骨モンスターの振りかざしてきた剣をキリトは黒い愛剣で受けながらこちらに指示を飛ばす。
「ここは俺が前に出る、トウマは一反後ろに下がって機会を窺ってくれ」
「分かった!」
先ほどまでは敵が五体でも上条がヘイトを集めていたのだがキリトは未知数のゾンビモンスターを警戒して上条を後ろに下げたようだった。
キリトに言われた通りに上条は数歩後ろに下がりながらキリトと骸骨モンスターとの戦いを見る。
右から振りかざされた剣を右の剣で受け止め、続けてきた左からの剣を受け止めていた右側の骸骨モンスターの剣で守る。
そして、がら空きになった左の骸骨モンスターのひざの関節と思われる部位を切り裂く。
「ががががららら‼」
膝を切られて叫んだ左の骸骨モンスターをキリトはそのまま無視して右の骸骨モンスターを相手し始める。
そして、そこに上条はすかさず飛び込みモンスターの顔面に右こぶしを叩き込んだ。だが、一発では死んでくれず、二発ほど殴ったところで骸骨モンスターはポリゴン片となる。
上条が顔を上げると丁度キリトも骸骨モンスターを倒し終えたらしく、地面に刺さっていた剣を抜き取るところだった。
でも、どこかで油断していたのかもしれない。
マンガやアニメで出てくるゾンビは足が遅くて攻撃は噛みつくくらいしかないと。
「っ‼ ゾンビがいない‼」
「なっ‼」
キリトの叫びに上条はゾンビのいた方へ目を向けるが、確かにそこにゾンビはいなかった。
代わりに地面にはてんてんとした血の跡が残るだけ。
「どういう・・・・・・?」
「ッツ‼ トウマ上だ‼」
「はっ‼」
上条はキリトの叫びを聞きすぐにその場を飛び退いたが上からの攻撃を完全には躱せず左足首を少し切られる。
だが、上条はいきなり回避したため体勢が悪くその場に尻餅をついてしまう。
「しまっ‼」
「トウマ‼」
尻餅をついた状態から必死に左側に転がるが、その上条の意識から一瞬にして右腕の感覚が消える。
完全に食いちぎられた。
「くううっ・・・・・・‼」
「トウマ‼ 下がれ‼」
上条は情けない声を上げながらもバックステップを取って後ろに逃げる。
バックステップを取っている間にも上条の右腕の断面からは赤いポリゴン片が流れ出ている。
「くそっ‼ ポーションは・・・・・・ストレージの中か⁉」
「急げトウマ‼」
キリトは上下左右などの壁を変幻自在に使って攻撃してくるゾンビを対処するのが精いっぱいで攻撃には入れないようだった。
「分かってる‼」
上条は焦る口調でそう言うと左腕を右腕の時と同じように下に振る。
すると、キリトが言ったようにウインドウが表示され、アイテムストレージが開かれる。
と、
「⁉」
上条はあることに気が付きキリトに伝えようとしたが、そう思って顔を上げた瞬間上条の目の前にキリトが転がってくる。
「大丈夫か⁉」
「俺はいいから、とりあえず早くポーション飲めって‼」
「ああ」
上条は急いでウインドウに目を戻すとアイテムストレージに入っていたポーションを取りだすとポーチの中に入れつつ、その中の一つを口に咥える。
すると、ほんの少しずつだが上条のHPバーが上昇を始める。
その様子を見て上条は少し安心したがすぐにゾンビのことを思い出し、気を引き締める。
「キリト、そっちは大丈夫か?」
「俺のことは大丈夫だ、ただあのゾンビ何かおかしいぞ何かアインクラッドという枠を超えている気がする・・・・・・」
「それはどういう・・・・・・?」
上条がキリトに聞き返す前にゾンビは襲ってくる。
とんでもない速度で上下左右から勢いよく出てくるのだ。
そして今度は、
「うわああっ!」
「キリト‼」
突如として地中から現れた手によって地面の中にキリトが引き込まれ始める。
「うおおおお‼」
上条はキリトの両手を握り思いっきり引っ張るがキリトの体は沈むことはなくなったが代わりに浮かんでくることもなかった。
「ぐぬぬぬぬ・・・・・・‼」
「トウマ、すまない・・・・・・」
「気にすんなああ‼」
上条はキリトの不安そうな言葉に腕を引っ張りながら答えるがキリトが地面から抜ける気配は一向に見えない。
不安と焦りが上条を襲う中、更なる不幸が上条を襲った。
「トウマ‼ 後ろ‼」
「えっ?」
振り向いたらガブリ・・・・・・ということはなかったが、代わりに数十メートル離れた所にゾンビが数匹うろうろしていた。
「んな・・・・・・あほな」
上条は若干変な言葉遣いになりながらゾンビの群れを見た。
あれと同じものが数匹、せめてこれがここだけならいいがもしも他の場所でも起こっているとすれば。
「まずい・・・・・・どうすれば」
上条はキリトの腕を引っ張ることを止めずに考え続ける。
だが、やはり案は浮かんでこない。この状況を打破する案が。
すると、そんな時数十メートル離れた所にいたゾンビたちがいきなりこちらに目掛けて近寄り始める。
「まずい・・・・・・ばれた!」
「でも、おかしい・・・・・・なんでこいつみたいに突進してこないんだ?」
キリトは自分の足を今なお引きずり込もうとしている腕を見ながら疑問を口に出す。
「あ! そうだキリト剣を一本借りるぞ‼」
「ん? ああ構わないが、まさかお前一人であれに立ち向かうつもりか⁉ ソードスキルもなしで⁉」
「そうじゃない」
上条はきっぱりとそう告げると左腕でキリトを引っ張り続けながらも背中から黒い剣を取り少し屈む。
そして、上条は若干構えのようなものを取ると、
「キリト、足切れたらごめんな」
上条はキリトから借りた黒の剣で地面から伸びたゾンビの腕切り裂いた。
その剣筋はぎりぎりのところでキリトの足を切らず、皮一枚残してゾンビの肉を切り裂いた。
「キリト‼」
「つっ・・・・・・‼」
上条の叫びとともにキリトは勢いよく地面から足を引き抜くと上条から剣を受け取り、走り出す。
そんなキリトを見て上条もほんの少し笑いながら、近づいてくるゾンビの方へ走っていく。
『せああああああ‼』
二人の気合いの掛け声は見事にハモりながら迷宮区に響いていく。上条は右をキリトは左を、ソードスキルと拳で一撃のもとに倒していく。
かのゾンビも不意打ちには弱いのか上条とキリトは互いに一匹ずつ倒すとすかさず体を捻り、最後の一体を倒しにかかる。
だが、流石に先ほどの様な不意打ちは使えない。
さらに言えば先ほどまでキリトの足を掴んでいたゾンビもまだ残っているだろう。
しかし、
「はは、少しも落ち着けねえ状況なのになんか自然と顔がにやけるな」
「なんだ、トウマもか。実は俺もだ」
「そうか、じゃあもうひと踏ん張りだな」
「そうだな」
この二人は笑っていた。
先ほどの絶望的状況とは打って変わってここからはこちらのターンだと。まるで敵に対して宣言するかのように。
そして、二人の戦士は走り出した。
いかがだったでしょうか・・・・・・?
今回はほぼメインのキャラオンリーという形で書いてみました。
戦闘シーンに未だ面白さが欠ける気がしますが・・・・・・一応頑張ってはみたつもりです。
もちろんですが、これからも日々上達していけたらなと思います‼
誤字や脱字、よりよい表現などございましたら感想までよろしくお願いします‼