今回はかなり細切れの短編集のようになってしまいました・・・・・・。
それでも、楽しんでいただければ幸いです‼
―――――上条当麻は上機嫌だった。
「ふんふふーん、万年不幸な上条さんにも遂にこんな幸福な事が起こるなんて‼」
「とうま、上機嫌なのはいいんだけどそんなにニコニコしていると逆に気持ち悪いかも」
「何を言っているのですかインデックスさん、いつも不幸続きの上条さんにイタリア旅行のチケットが当たるなんて夢みたいじゃないですか‼」
上条はまるで欲しいおもちゃを親に買ってもらった子供のように嬉しくはしゃいでいた。
そんな上条を見てインデックスは少し引き気味の顔をしている。
「でも、イタリアに行けるのはちょっと嬉しいかも」
「どうして?」
上条は疑問に思った事を口にすると、インデックスは口をすぼめて言う。
「いっつもいっつも置いてけぼりにして私は家で暇してるんだよ?」
「それはどうもすみませんでした・・・・・・」
上条は浮かれきっていた顔をすぼめながらインデックスに対して謝罪の意を示す。
「まぁ、私は心優しいシスターさんだからその辺は許してあげるんだよ?」
「ありがとうございます・・・・・・」
「でも、私を置いて勝手に一人で魔術師と戦うのは許せないかも。とうまは一応一般人なんだからそういうことは私たちに任せてっていっつも言ってるのに・・・・・・」
「それは、まあ俺にはこの右手があるし? 今までだって一応生き残ってこれたわけだし・・・・・・」
「はあ・・・・・・とうまはやっぱりなんにもわかってないんだよ。いい? 本来魔術師との戦いに一般人は―――」
と、インデックスからの長そうなお説教が始まろうとしたとき、上条のポケットからケータイの着信音が響く。
「おっと、すまんインデックス。ちょっと待ってくれ」
「えっ、ちょっととうま⁉」
「はい、もしもし上条ですけど」
上条はケータイで誰からかかってきたかも見ずに通話に出る。
〈あっ、上条ちゃんですか~? 小萌先生なのですよー、上条ちゃんに一応重要なお知らせなのですー〉
「ああ、小萌先生ですか。重要なお知らせって何ですか?」
〈ええっとですね、この前に上条ちゃんに行ってもらった研究施設あるじゃないですか。あそこにイタリアから帰ってきたらすぐにむかってほしいのです。なんでも前回の実験の続きがしたくて研究者さんたちがうずうずしているらしいのですー〉
「まじですか・・・・・・」
上条的には何もしないでただ寝ているだけで実験が終わってしまうので楽なのだが、その後物凄く頭が眠気に襲われ家に帰ってからそのまま寝てしまい、翌朝隣で寝ていたインデックスに驚いてベットから転げ落ち、机の脚に鼻をぶつけて鼻血を出したところインデックスが起きて噛みつかれたというほうがインパクトがあった。
「まあいいですけど、もしかしてイタリアから帰ったら直ですか?」
〈んー、流石に一回くらい家に帰してもらえるとは思うんですけどー、どうなるかは分かりませんねー〉
「分かりました。とりあえずは帰ってきたらもう一度電話しますよ」
〈はいー、それじゃあ上条ちゃんイタリア旅行楽しんできてくださいねー〉
小萌先生は忙しいのかそこまで言うと電話を一方的に切ってしまった。
どうしたんだろう? と思っているのもつかの間、上条は身の危険を感じ取る。
「あのー、インデックスさん? 今のは別に上条さんは悪くないじゃないですか。ほら、電話だったんだし・・・・・・でないと相手に悪いし・・・・・・」
「とーうーまー‼」
「ぎゃあああああああああああ‼」
今日も今日とで学園都市には絶叫が響き渡る。
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「結局あれは何だったのでしょうか・・・・・・?」
学園都市のとあるビルから神裂は出てくる。
因みに服装はと言えばいつも道理のTシャツに左足だけ太ももの根元から切られたジーンズを着ている。
「か、上条当麻に会えると聞いてわざわざやってきたというのにとんだ誤算でしたか・・・・・・まあいいです。ひとまずは
神裂は一人でそう呟くと人目のない路地裏へと目を向け、人の流れに逆らわずに自然にそこに向かう。
「ったく、あいつはどこにいってんのよ・・・・・・罰ゲームはどうすんのよいったい・・・・・・」
ふと神裂は聞き覚えのある声を聞き後ろを振り返る。
だが、そこには神崎に見覚えのある人間はいなかった。
「? 何か今聞こえた気がしたのですが・・・・・・」
神裂はそこまで言いうと人の流れの妨げにならないようにそそくさと移動し、路地裏に辿り着く。
そして、その路地裏の奥の方に行き人がいないのを確認するとビルの屋上へと一気に飛ぶ。
だがそこには、
「ン? なンだお前は?」
髪は白色で瞳は赤、首にはアクセサリーのような黒い物体、身長は160センチから170センチ程度の男が立っていた。
「いや・・・・・・なんだといわれますと返答に困りますが、まずご自分の名前を名乗っていただけますか?」
「あン? お前誰にもの言ってンのか分かってンのか?」
白髪の少年はこちらを正面を向けながら話を続ける。
「俺は一応学園都市の第一位なンだが、おめエはそれも知らねエのか?」
「第一位というと
「ああン? ならどうしてお前はこンなところに一人でビルの間からでてきてンだ?」
「それをあなたに言う必要はありませんよ、
神裂はそこまで言うと腰に付けた二メートルもの長さの刀を当てないように気を付けて移動するとビルの屋上から別のビルへと移り始める。
「チッ、まーた変な奴と出会っちまった」
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「いやだー‼ 上条さんはまだイタリアを満喫していないんだ―――‼」
〈ほら大人しく帰ってくる。さっきから言ってるだろう? 諦めるんだ〉
「いやだ―――――‼」
上条はイタリアの病院で担架によって運ばれながら悲痛な声を上げる。
「しかもこれから十時間近くも飛行機に揺られなきゃいけないなんて‼」
〈ああ、そこは大丈夫だから〉
「えっ?」
上条は学園都市にいるいろいろとお世話になっているカエル顔のお医者さんの言葉に疑問を抱く。
〈学園都市製のジェット機が近くにあるみたいだね? あれに乗って帰ってくれば一時間くらいで帰ってこられるよ〉
「・・・・・・」
カエル顔のお医者さんはいつも通りの声で上条に地獄を告げる。
「いやだ――‼ それは絶対に吐き気とかその他もろもろで傷が悪化する‼」
〈いやね、そんなこと考えていられるのは最初のうちだけだと思うからね? しばらくたてば慣れるさ〉
上条はそんなお医者さんの宣告に頬を濡らしながら担架で静かに運ばれていくのであった。
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「・・・・・・じょうさん、上条さん!」
「んん?」
上条は聞き覚えのある声を聞いて目をこする。
そして、そこでようやく自分が寝てしまっていたということに気が付いた。
「よかった、イタリアから怪我をして帰ってきたと聞いて心配していたんですよ」
「は、はあ・・・・・・」
目の前にいるのはちょっと前にお世話になっていた鈴木さんなのだが、様子が明らかに慌てていた。
また、とても焦っている様にも見える。
「ところで、俺はどうしてここにいるんでしょう?」
「ええっとですね、イタリアから戻られた上条さんはとりあえず病院に連れていかれて、そこでの治療が終わった瞬間にこちらに運んでいただきました。麻酔が抜け切れていなかったので意識はなかったみたいですが」
「そうなんですか」
上条はそう言うと一応自分の記憶をさかのぼってみる。
上条はいやいや言いながらジェット機に乗り込み、気を失いそうになりながらも何とか学園都市に辿り着き、そのまま治療室へ運ばれた―――そこまでは覚えていたがその先の記憶はあいまいになり、あまり思い出せなかった。
「あの、インデ・・・・・・近くに女の子が一緒にいたはずなんですが」
「ああ、銀髪の少女であればあなたの担当の先生を呼んでおいたので大丈夫でしょう」
鈴木さんはそこまで言うと、前回同様ヘルメット型の機械を持ってきた。
「さあ、上条さん前回と同じようにお願いします。今我々は一刻を争っているのです」
「? そんなに重要なんですか?」
「ええ、急がないと失敗で終わってしまうかもしれません」
「そうですか、分かりました」
上条は鈴木さんからナ―ヴギアを受け取ると頭に装着し、手術台のような所に横になる。
「では上条さんよろしくお願いしますね」
「あっ、はい。分かりました」
「3、2、1、」
「リンクスタート‼」
上条はそう言って再び戻ってくる。
あの世界に。
だが今度の上条は外であったことを何一つ覚えていけなかった。
だから上条は気が付けなかった。
なぜ鈴木さんが焦っていたのかを、この実験が何のために行われているのかを・・・・・・。
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「っけは⁉」
上条は気が付いた。
まるで今まで自分が息をしていなかったかのように息苦しかったが上条は情報を整理した。
(今俺はオレンジを十人くらい黒鉄宮に行かせた・・・・・・そして、少し退却して休憩中・・・・・・)
上条はそこまで思うと深呼吸を一回して動悸をを落ち着かせる。
そして、それ以前のことを考える。
(神裂は大丈夫か・・・・・・? ? なにかもう一人一生に行動していたはずの人が・・・・・・あれ? 女性・・・・・・だったはずだ、でもそれ以外が思い出せない。まさか記憶が消された・・・・・・?)
上条はどんなに唸っても頭を捻ってもその女性のことは思い出せなかった。
まるで記憶を完全に消されたかのように。
「とりあえず、キリトを追いかけないとな・・・・・・」
上条は神妙そうにそう呟くと背中を預けていた斜面から背中をどけると周囲を窺う。
そして、誰もいないことを確認すると先ほど逃げてきた方向へと走る。
今度こそキリトを助けるために。
上条はオレンジの元へと向かう。
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「なあ、おい。俺はこれからどこに連れていかれるんだ?」
「ケッケッケッ、知ってたところでおめえに言う必要はねえよな~~?」
「っつ・・・・・・」
キリトは軽く唇を噛みながら悔しさを押し殺す。
自分がどこにいて、何時なのかもわからない状況だったが、キリトは慌てずにやるべきことを考える。
(今は目隠しをされ、両手を背中で棒状の物に縛られているな・・・・・・)
キリトはそこまで簡単に考えると、自分にある五感の全てを使って周りを探り始める。
(気温はそんなに低くない、匂いは若干土のにおいがするか)
キリトはそう分析して自分が今どこにいるかの見当を付けた。
だが、
「おい、黒の剣士さんよ。まさかとは思うが逃げ出せるとか思ってんじゃねえだろうな」
突如として聞こえてきたオレンジの声がキリトの思考を遮った。
「今は周りに俺だけしかいねえが、後十分もすりゃあリーダーが大勢の味方連れて帰って来るだろうよ。お前はもう無理だ、諦めろ」
「そうか」
キリトは聞こえてきたオレンジの言葉に対してぴしゃりと言い返すと静かに腕の中になぜか入っていた小型ナイフで縄を削り始める。
「ところでだ、リーダーがいない今俺はとてつもなく暇だ。何か話せ」
「何を話せばいいんだ?」
「なんでもいい、これまでに一緒にいた閃光の話しやら、オレンジキラーの話でもいいぞ」
「・・・・・・⁉」
キリトは凍り付いた。
オレンジキラーとはその名の通りオレンジプレイヤーを狙った行動をとる連中のことだが、その実態は上条達のことを指しているのである。
そして、キリトと上条達が二十階層近辺で一緒にいたことは人々には知られていないはずだったからである。
すると、キリトは声を小さくして、
「なんでお前等がそんなこと知ってるんだ?」
「・・・・・・そんな小声で話してたら俺が密談してるみたいじゃねえかよ。もっとはっきりしゃべれよな‼」
目の前にいるであろうオレンジはそう言うと、頭の後ろに手を持っていきポリポリと後頭部を掻く。
「直に分かるさ」
その言葉を聞いた直後、キリトの腕を拘束していた縄が切れる。
そして、瞬間で後方に回転して下がると目を覆っていた布を切り裂いて視界を確保する。
だが、そこまでしてもオレンジが動く気配はない。
「いいんだ、俺は。
「お前・・・・・・」
キリトはそこまで感慨深げに言うと、無言で頭を下げて静かに横を通り抜けた。
キリトがそこからいなくなって少しした後、オレンジは動いた。
「さあて、ここからが本番だな」
どっかりと椅子に座り込んでいたそのオレンジは腰を上げると、目の前にいた数人の元同僚たちに向かって呟いた。
「俺は負けない、あいつも負けない。負けるのはお前たちだ」
いかがだったでしょうか・・・・・・?
今回の話は細かくなりすぎたなと自分でも思っています・・・・・・。
これからもこういう話があるかもしれませんが、よろしくお願いします‼
誤字や脱字、よりよい表現などありましたら感想までよろしくお願いします‼