とある不幸なソードアートオンライン   作:煽伊依緒

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第十一話(第十二話)です‼

今回も、前回までの作品と同様に全力で書いたつもりなので楽しんでいただければ幸いです‼




第十一話《時の流れ》~リアルとVR~

バタッ。

そんな何かが倒れるような短い音が迷宮区に広がる。

周り、比較的近いところに剣劇の音がするためプレイヤーはいると思われた。

だが、その音は小さく他のプレイヤーには届かない。

プレイヤーには届かない・・・・・・。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ドタドタという音が聞こえる。

夜間の監視から交代で帰ってきた上条はその階層にあった宿で一番外周に近い所に泊まっていた。

だが、今は朝の六時前である。

普通に考えてこの時間にうるさくするのはマナー違反なのでは? と上条は考えながら眠りにつこうとする。

 

「トウマさん‼ トウマさん‼ いるんですよね⁉ 開けてください‼ お願いします‼」

「・・・・・・? えっ? アスナさん・・・・・・?」

 

上条は声の特徴からドアを叩く人をアスナだと推測するとベットからもぞもぞと起き上がるとドアの方へと歩いていく。

 

「こんな朝に何の用事なんだ?」

 

上条はそんな事をぼやきながらドアノブを回しドアの外へと顔を出した。

そこにはアスナがいた。

しかしその顔はすごく必死で今にも泣きだしそうでそれをこらえようとしている―――そんな顔だった。

 

「アスナさん? どうかしたんですか?」

「キリト君が、キリト君が・・・・・・」

「キリトがどうかしたのか?」

 

アスナはそこで耐えられなくなったというように涙をぽたぽたとこぼしながら言葉を繋げる。

 

「迷宮区に入ったまま帰ってこないの・・・・・・」

「は・・・・・・?」

 

―――迷宮区、次の階層へ繋がる唯一の通路でありボス部屋への道でもある。

さらには宝箱や隠し部屋などがあるが、その中には安全地帯と呼ばれる場所もありモンスターが絶対に入ってこられない場所もある。

 

「いやいやあいつのことだ、きっと安全地帯にでもいるんじゃないのか・・・・・・?」

 

上条がそう言うとアスナは静かに首を横に振り言葉を継ぎたした。

 

「キリト君は前に私に対してそんなところでよく眠れるなって言ってた・・・・・・だからどんなことがあってもキリト君なら帰ってくると思うの」

「睡眠をとるなら、か・・・・・・」

 

上条はそこまで言うと考えた。

なぜ、と。

キリトならばこのゲームがどんなものか、またどんな奴がいるのかも容易に想像することが出来るであろうに、少なくともキリトがそんな愚行をするとは上条には想像できなかった。

 

「とりあえず俺も行こう。今の最前線まで道案内頼めるか?」

 

上条がそう言うとアスナは目に涙を溜めながら大きく頷いた。

 

そこからの動きは迅速だった。

アイテムストレージから必要なものだけを持ち、走り出す。

走りながら神裂や五和に対しての謝罪のメールを打ち、転移門に入る。

すると瞬時にして到着した最前線はまだ早朝だというのにそれなりの人で埋まっていた。

 

「・・・・・・こっちです」

 

そんな中、アスナは人と人の間をすり抜ける様に滑らかに走り迷宮区へと向かう。

その速度は尋常ではなく、上条でも気を抜けば見失うのでは? と思うほどであった。

そしてアスナと上条はキリトがいるであろう迷宮区へと入っていく。

すると、すぐそばにあった岩の影から小さいモンスターが一匹出てきた。

だが、エンカウントしてしまったモンスターをいちいち倒している暇はないと、アスナは言い上条もそれに倣う。

 

「それで? キリトがどの辺にいるのかおおよその狙いはついているのか?」

「キリト君のマッピングの仕方は前に聞いたことがあります。それを後ろから追う形で行けば、きっと・・・・・・」

「わかった、なら急がないとなあいつがまだ歩いていたら追いつくのがいつになるかわかったもんじゃない」

「そう・・・・・・ですね」

 

アスナは途切れ途切れに言葉を発すると目の辺りを手の甲で拭き、更に速度を上げて走り出した。

その姿を見て上条はどうしようもない気持ちに襲われた。それでも、今の上条にアスナに対してかけられる言葉は何一つとして思いつかなかった。

 

どれくらい走っただろうか?

迷宮区を隅から隅まで探したかのような疲労度が上条の脳にあったが、それを無視してでも前へ進み続ける。

 

「キリトどこにいるんだ?」

「そう・・・・・・ね・・・・・・」

「ああっ、いやそういう意味で言ったんじゃなくてさ」

「フレンドリストから消えてはいないわ大丈夫よ・・・・・・」

「ああ、ならいいんだが・・・・・・」

 

上条としては安否を疑うキリトよりも目の前で今にも死にそうですという顔をしているアスナの方が心配だったのだが、それは心の中にとどめておく。

そして、長い長い走りの末に遂に上条達はたどり着いた。

それは残酷だった。

 

「きひゃっはああ‼」

「おらおら‼ おめえらももっとやっちまえ‼」

 

そこそこ広いエリアの中の真ん中にキリトはいた。

そして、それを囲むように数十人のオレンジプレイヤーが存在していた。

 

「オレンジがあんなにたくさん⁉」

「キリト君・・・・・・‼」

 

上条達は息を殺してその光景を見ていた。

だが、キリトがいつまでたっても死ぬことはなく、ましてやHPが減っている様にも見えなかった。

すると、比較的上条達に近い所にいたオレンジプレイヤーの話し声が聞こえてくる。

 

「いやはやまさか本当にいるとはなぁ、驚きだったぜ」

「だよな! まさか最前線のソロプレイヤー黒の剣士様が毎日ヘロヘロになって迷宮区をさまよってるなんてよ」

「それで? こいつこの後どうするんだっけ?」

「ん? しばらくここで鬱憤晴らしした後、リーダーがカイタイショーするってよ。そしたらとりあえず防具もみんな剥いてパン一で街の門に吊るすんだってよ、そして毒に浸して動けなくしてからチリチリHPけづってなくなったところを俺等が回収すると」

「オッケーオッケー、相変わらずリーダーもすごいこと考えるよな? 俺等には考え付かねえよそんな事w」

「だよなーwww」

 

このことを聞いてまず上条がいなければアスナは突撃していただろう、そしてキリトがピクリとでも動いていれば上条もまた走り込んでいただろう。

だが、キリトは動かなかった。

一ミリたりとも動かなかった。

否、目だけは動いていた。目だけはしっかりと上条の目を見ていた。あの中でただ一人、生き残るという選択肢を選んだ。乱戦になれば助けられる自信がないと、そういう事だろうと、上条もまた気付いた。

だからこそ、上条はアスナを取り押さえてじっと我慢し続けた。

数十分後、ようやく鬱憤晴らしが終わったのか、リーダーらしきプレイヤーが前に出てくる。

 

「これからアジトに移る。尾行されないように各自散らばってくるようにしろ、吊り下げの決行時刻は今日の午後九時、場所は追って連絡する。以上だ」

『了解です』

「いや、まだあったな」

 

―――ドクンと、心臓のはねる音が聞こえた。

万物を射殺すような鋭い眼、それが上条の脳を支配した。

アレはまずいと、素直に相対すれば負ける可能性の方が高いと。

 

「そこの影に隠れている奴を今すぐ殺せ」

 

問答無用で走り出す。

いつかキリトを救うにしても今はだめだ。

あれだけはまともに戦ってはいけない。上条の肌がそう感じ取っていた。

 

「キリト君は‼ どうするんですか‼」

「今は諦めて撤退する‼ 俺が牽制するからアスナは先に戻ってくれ‼」

「でも――――‼」

 

上条は直も反論し続けようとするアスナに転移結晶の片方を持たせ、かつ自分がもう片方を持ちながら町の名前を叫んだ。

そして、光が体を包む前にアスナに結晶を押し付ける。

「そんな―――‼」

 

そして、その場には十人ほどのオレンジと上条だけが残った。

 

「残念だったな、あんなところに来ちまうなんてよ、だがそれがお前の運の尽きだ。諦めてくれよな」

「一つ聞きたいことがある」

「ん? なんだよ、死人に語ることなんざねえんだが」

「彼は、真ん中に立っていたあの人はなぜあんなことを受けたんだ?」

 

上条がそう言うとオレンジたちはへらへらと笑って答えた。

 

「おめえは知らねえのか? あいつはこのアインクラッドで忌むべき存在のビーターだぞ? 金やら装備やらが潤沢に決まってんだろうが、そいつを俺様達がありがたーく貰ってやろうってんだよ」

 

なおもオレンジたちはへらへらと笑い続ける。

嘲るように、見下すように。

 

「そうか、なら来いよ。お前らの価値観がその程度ってんならさ」

「あん? 今なんつった? もう一ぺん言ってみろや‼」

 

そこで、上条は大きく息を吸い込んで叫ぶ。

 

「俺が今からお前ら全員ぶっ潰すから覚悟しておけよ‼」

 

先に動いたのはオレンジたちだった。

目を開き、口を半開きにして一見無防備な上条の体へと剣を振りかざそうとしてくる。

しかし、その体は途中で止まった。

否、上条の拳がオレンジの腹部へと突き刺さっていた。

瞬間、そのオレンジは五、六メートル程吹き飛び地面に転がった。

 

『んな・・・・・・馬鹿な』

 

オレンジたちはあり得ないといった顔を上条へと向ける。

そして、上条は言い放つ。

 

「おめえら全員、死にたくなけりゃ大人しく黒鉄宮へこい」

「ヘッ‼ まぐれかなんか知らねえがそんな脅しが俺等に通用する――――」

 

最後まで言わせなかった。

瞬発力にものを言わせ、全力で話したやつの懐へ潜り込み拳を入れる。

簡単なことだった。ただ殴っただけ、その行為だけでオレンジは軽々と吹っ飛び地面に転がる。

 

「もう一度言うぞ」

 

上条は言い放つ。

 

「死にたくなけりゃ大人しく黒鉄宮へこい、それだけだ」

 

上条のその言葉に従わないものはいなかった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「・・・・・・じょうさん、上条さん」

「はえっ・・・・・・?」

 

上条は間抜けな声を上げながら目を覚ました。

 

「ええっと、俺何してましたっけ?」

「ただの実験ですよ上条さん? もうお忘れになられたのですか?」

「ああ、そうでしたね。鈴木さん」

 

上条はそう言うと自分が横になっていたベットから起き上がり、ナ―ヴギアを頭から外す。

そして、頭を何回かひねったり回したりした。

 

「でも、俺あんま実験中の事覚えていないんですが?」

「ええ、熟睡されていましたからね」

「そうですか」

 

上条はそう言うと頭の後ろの方をポリポリと掻いた。

ふと、その時何か違和感を感じたのだが上条は無視して言葉を続ける。

 

「ええっと、とりあえず俺はこれからどうすれば?」

「しばらくした後にもう何度かお呼びすることがあると思いますので、その時にまた来ていただければと思います」

「は、はあ。分かりました」

「はい、ではお疲れさまでした」

「お、お疲れ様でした」

 

上条はそう言うと奥の扉へ案内される。

そこには入り口よりも少し幅が広い通路があった。

 

「そこから出て右に曲がってもらい、その後突き当りを左へ行けばエレベーターがありますので、そこから一階に戻ってください」

「あ、ありがとうございます」

「はい、では次回もよろしくお願いします」

「ありがとうございました」

 

上条はそう言って頭を下げると、出口に向かって歩き出す。

そして、言われた通りの順路を通ってエレベーターへと向かい、一階に戻る。

外に出ると、辺りは暗くなっておりちらほらとアンチスキルの影も見えた。

 

「ん――さっさと食材でも買って帰るか。 インデックスも待ってるしな」

 

上条はそう呟くと、スーパーの方へと歩き出す。

 

「ええっと、今日は卵が安かったっけ?」

 

そして、上条はいつもの日常へと戻っていく。

何一つ中でのことを覚えていないまま・・・・・・。

 

 

 




いかがだったでしょうか・・・・・・?

今回はほとんど、というか全くキリトの出番はありませんでしたが、次回からはきちんと活躍してくれると思いますので、よろしくお願いします。

書く書くといってキャラ紹介話をいっこうにかけていません。
ごめんなさい。
次回作か次々回作と同時にキャラ紹介話を入れたいと思いますので、よろしくお願いします‼

いつも通り誤字や脱字よりよい表現などありましたら、感想までよろしくお願いします‼

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