とある不幸なソードアートオンライン   作:煽伊依緒

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第九話(第十話)です‼

戦闘描写はあまりありませんが、色々と盛り込んでみたつもりなので楽しんでいただければ幸いです‼


第九話《為すべき事》~思い~

「・・・・・・へあっ・・・・・・はあっ・・・・・・」

「ふう・・・・・・ふう・・・・・・」

 

神崎と上条はそれぞれ変な息をつきながら近くに生えていた木に寄り掛かる。

因みに辺りは暗く、気温も心なしか冷えていた。

 

「なあ神裂・・・・・・さすがに撒いたよな・・・・・・」

「ええ、流石に撒けたことでしょう。ここでは私たちの方が足が速いようですし」

 

神裂はそう言うと肩にかかったポニーテイルを後ろに戻して上条の方を見つめた。

 

「それで、これからどうしましょうか・・・・・・? 流石にすぐに戻るわけにもいきませんし・・・・・・」

「うーん・・・・・・とりあえずこのあたり散策してみるか? コルとか経験値とかも稼いでおきたいし」

「わかりました。それでは行きましょうか」

 

そう言うと神裂は穏やかに微笑みながら一人先だって森の奥の方へと進んでいく。

 

「ああ、神裂・・・・・・」

「・・・・・・? どうかしましたか?」

「いや・・・・・・何でもない・・・・・・」

 

上条はあやふやにごまかすと先を急いだ。神裂の背中に天草式十字正教の影が見えたなんてことは口に出してはいけない気がしたからだ。

あいつらも今は何をしているのだろうか・・・・・・?

そんな事を上条は考えて―――止めた。

 

「・・・・・・なんだあれ・・・・・・」

「どうかしましたか・・・・・・?」

 

上条が指さした先には一人の少女が複数人の人間に剣の切っ先を向けられているところだった。

 

「おい・・・・・・あれってさ、かつあげみたいなのとおんなじって考えられるか・・・・・・?」

「・・・・・・状況を鑑みるにそうとは思えませんね・・・・・・」

 

上条達は切っ先を向けている人間に気付かれぬよう小さい声で話しながらゆっくりと近づいていく。

すると、少女から約二十メートルというところでようやく話し声が聞こえ始めた。

 

「おい、だからさっきから言ってんだけど! 金目の物全部出せってそうすりゃ見逃してやっからよ」

「そうだぜ嬢ちゃん、早く出しちまった方がいいと思うぜ? 最前線が一つ上になった以上ここに用がある奴なんてそうそういないだろうからな」

 

そんな事をゲラゲラと笑いながら切っ先を向けている人間は話を続ける。

 

「そういやさ、この前にもいたよなかわいそうな奴」

「ああ、いたなあの盾なしの片手剣野郎か?」

「最前線で戦うエリート様がなあ? お顔真っ青にしてふらついてるもんだからなあ、あれは笑えたなあ」

「フハハハハハハハハハハハハハ‼」

 

上条はそんな奴らを見て飛びかかりたい思いに駆られたが、横にいる神裂が今にも日本刀を片手に突進していくのを全力で阻止するのに精一杯だった。

 

「あの後どうしたんだっけ?」

「あの後なあ・・・・・・散々痛めつけたらなんか途中で閃光様が来ちゃってなあ・・・・・・こんなにもタイミング悪い人間がいるんだなあ」

「ああ、そうだったな。クソッ思い出したら腹が立ってきた。おい、お前等‼ とっととやっちまうぞ」

『りょーかい』

 

上条は神裂を全力で抑えながら敵の数を数える。

こんなにも自己中心的な考えを持つ奴がいるのかと思いながら・・・・・・。

 

(1、2、3、4、5・・・・・・5人か・・・・・・)

 

「神裂、お前は右の二人・・・・・・頼めるか?」

「ええ、むしろ全員私が倒してしまわないか心配なくらいです・・・・・・‼」

 

神裂はそう言うと上条の返事も聞かずに飛び出していく。

 

「うわあああ⁉なんだいきなり⁉」

「・・・・・・はあっ‼」

 

神裂は相手が驚いて動けないうちに日本刀で攻撃―――しなかった。

攻撃をしようとした腕の動きを強引に曲げて当たらないようにして、かつ足で相手の足をかけて転ばせた。

そしてそのまま真ん中で蹲っていた少女を腕に抱え走り出す。

そんな一瞬の出来事だった。

 

「・・・・・・撤退します‼」

「・・・・・・⁉ わ、わかった」

 

上条はそう言うと神裂と並走するように横に並んで走り出した。

 

「・・・・・・こうするつもりなら先に行ってくれればよかったのにさ・・・・・・」

「すみません・・・・・・状況をうまく説明できる気がわかなかったので・・・・・・」

「そっか、ならしゃーねえか・・・・・・まあ、気にすんな」

「ええ、はい・・・・・・」

 

申し訳なさそうにしょんぼりする神裂に上条はかける言葉がそれ以上なく、どことなく視線をずらす。

すると、神裂の腕に抱かれて顔を神裂の巨大なものに包まれている少女が目に留まった。

 

(まさかこれで呼吸困難で死ぬとかないよな・・・・・・)

 

そして上条はいらない心配と若干の羨ましい視線を込めて少女を見守り続けた・・・・・・。

但し、そのせいでこの後すぐに神裂にばれて羞恥心で顔が真っ赤になった神裂が上条を数メートル吹っ飛ばしたのは笑い話にしかならなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「・・・・・・ううっ・・・・・・上条さんだって不幸ってことは分かってるんだから少しくらいそういうご褒美的なのがあってもいいと思う・・・・・・ぐすっ・・・・・・」

「・・・・・・あなたはたまに何を言っているのかわからなくなるのですが・・・・・・結局何を言いたいんですか・・・・・・?」

 

今上条達は森で助けた少女を連れて一つ上の階層の先ほどとは違う料理屋にいた。

因みにキリト達からも連絡があり、もうすぐこちらに来るとのことだ。

 

「・・・・・・別になんでもねえよ・・・・・・」

 

上条は少し期待の目線を神裂に向けながら机に頭を突っ伏してうなだれた。

 

「そうですか・・・・・・まあ、あなたはたまによく分からないことがありますしね・・・・・・私が気にしても仕方がないでしょう」

 

そうして上条の切なる願いは軽々と打ち砕かれた・・・・・・。

そして神裂はうなだれている上条に対して首を傾げて分からないといった仕草をした後、反対側の席に座っている人に話しかける。

 

「それで、貴女は誰なのでしょうか・・・・・・? そしてなぜ襲われそうになっていたのですか・・・・・・?」

 

神裂は端的に自分の聞きたいことを伝えたようだが、目の前の少女にはそれすらも頭で処理できなくなっているらしく縮こまって必死に口をパクパクさせていた。

 

「あの・・・・・・? ならせめてお名前を聞かせてもらえますか・・・・・・?」

「ええっ⁉ ええっと・・・・・・私のこと・・・・・・覚えていらっしゃらないのですか・・・・・・?」

「・・・・・・? すみません、不本意ながら見覚えはありませんね・・・・・・すみません・・・・・・」

「そう・・・・・・ですか・・・・・・確かに私は少し影が薄かったかもしれませんが・・・・・・《女教皇様》‼ 最近は頑張ったつもりでいたんですよ・・・・・・?」

「・・・・・・⁉ 待ってください・・・・・・《女教皇様》⁉ なぜあなたがその呼び名を知っているのですか⁉」

 

神裂は信じられないというような顔をして目の前の少女の顔を見る。

対して、少女の顔は泣きそうな顔をしていた。

 

「《女教皇様》‼ 私です‼ 五和です‼ 覚えておいでではないのですか‼」

「ええっ⁉ 五和ですか⁉ 今の貴女をとてもそういうわけにはいかないのですが・・・・・・」

 

神裂は慌てたようにそう言うと上条の方へと目線を向けてきたのだが・・・・・・。

上条も目の前の少女には見覚えがなく、更にとてもではないが五和とは思えなかった。

 

「いや・・・・・・さ、たぶん『手鏡』・・・・・・だっけ? 使ってないだけなのは分かるんだけどさ・・・・・・流石にな・・・・・・神裂・・・・・・」

「ええ、これを五和と呼ぶのは失礼にもほどがあるでしょう・・・・・・」

 

その姿は、身長160センチメートル位・・・・・・ここまでは良かった。

だが、その風貌はまるでどこかのボディビルダーのように筋肉が隆々としていて、顔も幼い少女のような感じでは

全くなく、どこかの厳つい顔・・・・・・要するにゴリラを連想させるような顔だったのだ。

 

「・・・・・・まあ、いいです・・・・・・とりあえず五和、貴女は何も言わずにアイテムストレージから『手鏡』を取りだしなさい」

「ええっ・・・・・・分かりました」

 

五和? はそう言うと真剣な表情(怖い)になりながらアイテムストレージから『手鏡』を取りだした。

 

「これですか? ってうわっ・・・・・・‼」

 

五和がそう言うと『手鏡』が光り、五和がその中にのみ込まれた。

そして、光が晴れたところにいたのはよく見覚えのある五和だった・・・・・・。

 

「よかった・・・・・・」

「そうですね・・・・・・」

「・・・・・・? あの私どうかしたのでしょうか・・・・・・?」

 

五和は首を傾げながら上条達に問いかけていたが、もはやそれに答える力は残されていなかった。

もうすぐキリトたちが来る頃だろうか・・・・・・? そんな事を思いながら上条はキリト達にも見せたかったなと密かに思うのであった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「それで? 結局その人の名前は・・・・・・?」

 

数分後、キリトはアスナを隣に連れて上条達がいる料理屋さんにやってきた。

その後ここまでの事情を話したのだが、キリトは神妙そうな顔をしながらそう聞いてきた。

 

「・・・・・・ぼりです・・・・・・」

「え・・・・・・?」

「・・・・・・しぼりです・・・・・・」

「ええっと・・・・・・」

「おしぼりです‼」

「・・・・・・うん・・・・・・」

 

そう、五和は猛烈に顔を真っ赤にしながらそう叫んだ。

その形相にキリトは物凄く気まずそうにした。

 

「・・・・・・まあ、なんだ・・・・・・それの意味は分からないけど、とりあえずここに来ちゃったんだよな・・・・・・」

 

上条はこの場の重たい空気を取り払うべく、少し軽い雰囲気でそう言った。

 

「ええ、私もプリエ――――カオリ様と同じように鈴木と名乗る人に言われて・・・・・・ここに・・・・・・」

「鈴木か・・・・・・いったいどこの誰なんだ? そいつは・・・・・・」

「いや、んなこと聞かれてもな・・・・・・」

 

上条はキリトのぼやきのような疑問を適当に流しながらため息を吐いた。

そして、上条は先ほどから言いたかったことを言う。

 

「キリト、聞きたいことがある。少し着いて来てくれるか?」

「ん? いいけどここじゃダメなのか?」

「ああ、ちょっとここじゃあな・・・・・・流石に女性のいるところじゃ無理だな」

 

上条はヘッといった感じで笑うと、キリトは苦笑いして席を立ちあがった。

 

「分かった、とりあえず別の場所に行こう」

「おう」

 

上条はそう言うと立ち上がり、店の出入り口へと向かう。

その背中にひしひしと視線を感じながら・・・・・・。

 

「・・・・・・それで、どこに行くんだ?」

「ちょっと遠くまで行く。とは言っても町から出れればそれでいいさ」

 

そこまで言うと店の扉を押して外に出た。

そして、完全に店から自分たちが見えなくなってからキリトの腕を掴んで走りだす。

 

「うわっと・・・・・・いきなり何すんだよ・・・・・・」

「いいから走ってくれ、たぶんだけどあいつ等ついてくるぞ・・・・・・‼」

「それには同意だな‼」

 

上条とキリトはそう叫ぶと少し走って近場の門から外へと飛び出し、森の中へと入っていく。

そして、数分程走った後大きな木の所で止まった。

 

「それで、何の話だよ・・・・・・わざわざ俺だけを連れ出してさ。まさか本当に女性の前では話せないようなことなのか?」

「ちげえよ・・・・・・話っていうのはおしぼりちゃんがあっていたことだ・・・・・・」

「PKのことか・・・・・」

「・・・・・・そうだ・・・・・・」

 

上条は静かにそう言うと巨木に腰かけて自分の隣をキリトに進める。

キリトは上条が進めた所に静かに座ると、口を開いた。

 

「PKは確かに存在する・・・・・・略奪なんかがメインだとは思うけれど、中には人殺しが好きでやっている奴もいる・・・・・・」

「・・・・・・そうか、それでだキリト・・・・・・そいつらを取り締まっている奴はいるのか・・・・・・?」

 

上条がそう尋ねると、キリトは静かに首を横に振って悲しそうな顔をした。

 

「・・・・・・いない・・・・・それは奴等が神出鬼没だってことにも起因するし、非道な手を使うという事にも起因する・・・・・・奴等は人を殺すことを何とも思っていない・・・・・・だから恐ろしいんだ・・・・・・」

「そうか・・・・・・それでだキリト」

「ん? どうした? まさかトウマ・・・・・・そんな事ないよな・・・・・・」

「・・・・・・いや、俺はあいつ等が許せない。さらに言えば今も同じようにあっている人がいるかもしれない・・・・・・だから・・・・・・」

「だめだ‼」

 

キリトは上条の言葉を強引に遮り上条の両肩を掴む。

 

「相手は一人じゃないんだぞ? それに奴等は麻痺や睡眠なんかの状態異常攻撃なんかもしてくる殺しのプロに近づいてるんだ・・・・・・‼ お前一人でどうにか出来るはずがない‼」

 

キリトはそう言うと上条の肩を揺さぶった。

だが、

 

「キリト、それでも俺はやらなきゃいけない・・・・・・今この瞬間にも被害にあっている奴がいるかもしれないんだ・・・・・・そんな人を俺は放っておけない・・・・・・‼」

「トウマ・・・・・・」

 

キリトはそう何かを察したように呟いた。

 

「あなたならそう言うと思っていましたよ」

『えっ?』

 

上条とキリトは驚いたように後ろを振り向くとそこには神裂を始め、アスナと五和がそろっていた。

 

「どうして・・・・・・?」

「キリト君・・・・・・一応私とフレンド登録してるの忘れてないよね・・・・・・?」

「あっ・・・・・・追跡機能・・・・・・」

 

後悔先に立たず・・・・・・そんな風に思い、上条とキリトはうなだれた。

 

「私もあなたと一緒に行きましょう。あなた一人では心細いでしょうし、何より私の魔法名のこともありますしね」

「Salvareか・・・・・・」

「あの・・・・・・力にはなれないかもしれませんが・・・・・・私も・・・・・・」

「いつ―――おしぼり・・・・・・」

「できればその名前では呼ばれたくないです・・・・・・」

 

五和は首を落として暗くなりながらそう呟いた。

 

「でも―――」

「私たちはあなたが何と言おうとついていきますよ? あなた一人にさせておくと無謀に一人で突撃していきそうですしね」

 

神裂たちはそう言って、優しく手を伸ばしてきた。

 

「あなたについていきますよ、とても心配なので」

 

神裂は優しく微笑んだ。

その笑みは万人をも和ませてしまうようなおおらかな笑みだった。

そして、上条は覚悟を決めた。

戦うと。

ただ、そんな非道な行いをしている奴等を許しはしないと、上条は立ち上がる。

右手をきつく握りしめて・・・・・・立ち上がった。

 

 




どうだったでしょうか・・・・・・?

今回も新キャラが出てきてしまいました・・・・・・今後どこかでキャラ紹介話を作ろうかなと考えています・・・・・・。

さて、話しは全く変わってしまうのですが今後も一週間から二週間くらいのペースで更新するつもりです。時期によっては一か月間出せない場合もあるかもしれませんが・・・・・・どうぞよろしくお願いします‼

最後にですがいつも通りに、誤字や脱字、よりよい表現などありましたら感想までよろしくお願いします‼

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