壊剣の妖精   作:山雀

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▼前回のあらすじ

 クレオさんやらかす。


010. 銘名拝領

――――――

 

 

 ――それは、ライガットさんがシギュン様に軽い調子で提案を持ち出したことから始まりました。

 

「――名前? この子の?」

 

 そう、未だに名無しの権兵衛扱いだった私の名前のお話です。

 以前の男性としての名前は脳内から完全に消え去ってしまいましたし、この世界流の新しい名前を貰おうという魂胆である。

 シギュン様はライガットさんから話を聞いて「それもそうね」とか呟いてた。あまり興味が無かったのでしょうか? 単に忙しくて私にかまけてばかりいられなかったせいだと思いたい。でないと流石に悲しいです。

 

「何時迄も『あの子』とか『ひっつき虫』じゃなんだし、この子の保護者に伝える架空の事情をでっち上げるにしても、名前くらいは無いとあからさまに不自然かしらね」

「おう、勝手に俺が付けるのもどうかと思ったしな、いっちょいいヤツ考えてやろうぜ」

 

 うんうん、早々にお願いしますね。

 

(ん? 保護者?)

 

 そうして三人(私は是非だけ)で始まった名付け談義だったのですが、思いの外紛糾しました。

 

「――ってのはどうよ?」

「却下よ」

「――(コクリ)」

「うーむ、これも駄目かぁ……」

「どう考えても女の子につけるものじゃないでしょう」

「――(コクコク)」

 

 どういう訳かライガットさんはやたら格好良い名前か、やたら変な名前を中心に思いついて私をげんなりさせるし、シギュン様はシギュン様で――

 

「いくつか新型ゴゥレムのコードネーム用に温存されているものが――」

 

 とか、いつもの仏頂面で言い出す始末である。別にそれでもいいかなーと最初は思ったのですが、ユベルとかフレイヤとかゲルーズとか読み上げられた時点で謹んで遠慮しておきました。別に悪いという訳ではないんですが、なんかやたら仰仰しい気がしたので。

 

「いざ決めるとなると、なかなか決まらないものね……」

「そういや、名付けなんてグラムの時以来か……あの時はどうやって決めたんだっけな……」

 

 古い記憶を掘り起こしているのか、遠い目で窓の外を眺めながら呟くライガットさん。こうしているのを見ると男前で通る人なんですけどねえ……典型的な二枚目半である。

 

「ああ、そうだ……俺の出した名前がホズルとゼスに尽く却下されて、結局三人で決めたっけな……」

 

 あ、ゼスさんの事を思い出してまたナーバスになっちゃうのは困る。早々に意識を別の所に逸らさねばなりません。

 こうなったらホズル陛下にもお知恵を拝借して頂くようにお願いするべきだろうか? 生憎、私の乏しい人脈なんてこの二人を除くとホズル陛下か、あとは繋がり薄いですがバルド将軍としか無いのです。

 

(でも、流石にそれはなあ……)

 

 ちなみにシギュン様曰く、私の裏事情たる『古代人の可能性』について知っているのもこの四人のみであるとのこと。ああ、だからあの視線だったのかと納得しました。私が普通に起きて動いているところを近くで見るの、バルド将軍はあの時が初めてだったのでしょう。

 そんな事情、他の人には話せない。しかしあまり時間を掛け過ぎるのも色々宜しくない。私以外の人達は現在このクリシュナの命運を担っている重要人物達であり、その人達から貴重な自由時間を奪っているのは私の方でも自覚しているのだ。

 

(さりとて個人的にいい名前は欲しいし――難しい悩みどころです……)

 

 ――結局、区切りのいい時間まで顔をつき合わせていてもいい名前は出てこないまま時間が過ぎました。

 

「……駄目ね、私達こういうの向いてないのかも。開発計画の出来たゴゥレムとかのコードネームを付けるのは皆が一斉に同意してくれたりするから苦労しなくて済むのに……」

 

 そりゃあ、敬愛するシギュン様に試作ゴーレムの名前くらいで楯突く人なんて、わざわざ数えるまでもなくいないでしょうね……

 

「とりあえず各々で二~三日ほど考えてみましょうか? ふとした拍子に思い付くか、誰かからいいアイディアが手に入るかもしれないし、それまでは今まで通りで構わないでしょう」

「そんなもんか?」

「ええ」

「――(コクリ)」

 

 ひとまず保留ということになりました。赤ちゃんの名付け手引書とか誰か持っていないでしょうか……

 

「……そうだわ。貴方、今夜は私の寝室まで来なさい。夕食もそこで摂って、そのまま私のベッドで眠って構わないから」

(――なん……ですと……)

 

 思わず心の目を見開いてしまいましたが、当然淫靡なお誘いなどではありませぬよ。

 クレオさんの尋問というか説得要員として顔合わせしろ、ということなのでしょう。思っていたよりも早かったですが、ついにこの時が来たという感じです。

 

「……だけどよ、脱走しようとしたのがつい昨日の話だろ? いいのか? 今度はこの子を人質にとられるかもよ?」

「私達を人質にとったとしても、彼女に城の守備網を突破する技術は無いと昨日の件で分かっている。……あとは他人を傷つける意思が希薄という見立てもあるわ。推測でしかないけど、ほぼ間違い無い」

 

 ふーむ、いつの間にそんな精神分析を実施したのでしょうか? それにライガットさんを撃とうとしたのは――まあ取り分けこの人を敵視していると見るべきでしょうかね。お仲間の仇として……

 

「逆に昨日の件はそれでいいのよ。それに脱走しようとしたという負い目が彼女の中にあるし、一度失敗した以上、今は慎重に様子を見るべきだと考えているかもしれない。どっちにしても、彼女の思考が完全に落ち着く前――ここで一気に畳み掛けて、反抗意識を根刮ぎに取り除いておくべきよ。私達が彼女をどうこうする意思が無いということも分かってもらえるといいけど……」

 

 畳み掛けるって、いつに無く積極的な姿勢ですねーシギュン様。

 理由としては……あのエルテーミスとかいう新型ゴーレムについての話を早めに聞き出したい、とかでしょうか。彼女はその搭乗士でしたし、メンテナンスに関する知識とか開発にあたっての裏話を知ってる可能性も大です。その辺りの知識は鹵獲した損傷機体を調べるだけでは推測することしか出来ませんからね。

 

「……本当はこの子の存在自体、他国の人間の目に触れさせるのを防ぐべきなのでしょうけど――」

 

 ええ、色々手遅れですものね。でも仕方無いじゃないですか! あの時は私が出ないともっとまずいことになってましたし!

 

「では決定ね、時間になったら貴方の部屋まで迎えに行くから待っていなさい」

 

 という訳で、私は彼女のお部屋にお呼ばれすることになりました。

 ……念の為、武器になりそうな物品は持っていかないようにしよう。これ以上脱走騒ぎを起こして、城の人達からのクレオさんへの心象を悪くする必要もありませんしね。

 

 

―――――

 

 

 

「――今夜は星が綺麗ね……」

 

 自室に戻ったシギュン様の一発目のセリフである。とりあえず出す話題としては、天気の話題はハズレがありませんね。心得ています。

 ……はー、流石は王妃様の寝室、天然のプラネタリウム仕様の天井ですか。部屋も広いし、いろいろとこれはお金掛かってますね。

 

「……別に……」

 

 反抗期の子供みたいな言葉をシギュン様に返すのは、赤リボンで襟袖にワンポイントつけているネグリジェ姿のクレオさんでした。特に拘束などはされていないご様子です。むっつり不満気な表情ですが元気そうです。

 

(おー……)

 

 軍服を着ていた姿を目にした時点で分かっていましたが、クレオさんは将来相当美人さんになる人ですよね。というか、今でも立派な美人さんである。

 あどけない顔立ちといい、綺麗な肌といい、艶やかな長い黒髪といい……おっといけないいけない。ネグリジェを着用して佇んでいる彼女に思わず見とれてしまいましたよ。

 

(しかし、どうにも視線を逸したくない、無視しがたい人ですね――)

 

 ……でもこれで十二歳って。ライガットさんではありませんが、アテネスの女性はどうなっているのでしょう? 私は今、人体の神秘を目の当たりにしています。

 

(それにしても、盛大に散らかしてるなー)

 

 ちらりと視線を部屋の中に向ける。

 本棚にこれでもかと押し込められた書物、紙くずの溢れたゴミ箱、雑多に置かれている書類や筆記具、訳の分からない小型のパーツ……

 部屋の面積がとても広いので、足の踏み場も無いというレベルでは無いのが救いですけれど、確実にマッドサイエンティストの部屋である。作りかけのぬいぐるみがあるのが唯一微笑ましい。シギュン様のご趣味だろうか?

 

「……ここにあるのはゴゥレムの設計図なんだけど、貴方……敵の機密書類とかチェックしないのね……」

 

 そんなものを敵の捕虜が居る部屋に放置するのはともかく、キッチリ全部の書類の配置を覚えているらしい貴方に私は内心ドン引きです……

 これは、散らかっているようで彼女の中では片付いている部屋……なのでしょうね。汚いからと言って了解も得ずに片付けるのは止めた方がよさそうです。

 

「ど、どうせ見ても分かりませんし……それに、今……そういうの漁ったりするのは、何か……その、違う……ような……」

「フッ」

 

 しどろもどろなクレオさんに思わず吹き出したのは断じて私ではない。

 やっぱり、彼女は心根がとても優しい人のようです。軍人としては迷い無く確認する物の筈なのに、無意識に罪悪感と良心の間に挟まれて行動に移せないほどの。

 

「そ、それより! 銃を奪おうとした私を何故ここにおくのですかッ!!」

「……? 拷問室の方がお好み?」

 

 ……あったんですか、拷問部屋。個人的に興味が無い訳じゃないので、頼んだら見せてくれるだろうか?

 若干的はずれな事を口にしたシギュン様は、おもむろに服を脱ぎ始めました。

 

(その、非常にお綺麗です……)

 

 普段露わにしない長く綺麗な金髪、インドア研究生活で培われた白い肌――くぅー、この部屋に女神様が降臨しています! それと天使も!

 

(ふむ、この世界の下着ってああいう――くっ、失敗しました。見てはいけないものです、あれは!)

 

 内心慌てながらも、私はさりげなくシギュン様から視線を外します。表情には出ていませんが、顔色が緊張で赤くなっているかもしれません。ああ、恥ずかしい……

 

「違います!! 私は貴方の好意を裏切って仲間を殺そうとしたんですよ!?」

 

 吐き捨てるように反論するのは結構ですが、今のクレオさんの怒り顔は正直怖くない。むしろ可愛いと思います。

 

「そうね……でもあの一件で分かった。先日の戦いでも、貴方はあえて誰も殺さなかった。いいえ、むしろ貴方は実戦で人を撃ったことがない……違う?」

「――!?(ビクッ)」

 

 私は彼女の優しさもそうですが、あの荒野でクレオさんにしっちゃかめっちゃかにされた方達が全員生きてるという事実に――そしてそれを為したクレオさんの力に驚いています。

 どれだけ実力差があれば、あれだけのゴーレムを相手に犠牲者を出さずに暴れられるものなんでしょう? 相応の努力と経験の結果かと考えましたが、彼女の年齢を考えると――純粋にゴーレム操縦の天才という奴でしょうか? どちらにせよ凄いです。

 

「貴方がここにいても構いませんし……この部屋で何をしても構いません……でも――」

 

 いつの間にかクレオさんの着ているものとはリボンの色が違うネグリジェに着替え終えていたシギュン様は、クレオさんに近付いて頬に手を沿えました。俗に言う、キスする五秒前の格好です。

 非常に蠱惑的なシーンかと一見思えるのですが、表情を見れば絶対違うと分かりますね。

 

「……今度ライガットを傷付けようとしたら……許さない!」

 

 だって、今のシギュン様めっちゃ怖いんですもん。クレオさんも顔には出てませんが怯えてませんか?

 

「……貴方も、お願いね?」

「――!(びしッ)」

 

 思わず敬礼していましたよ……だって、いきなり私の顔見てそう呟いたんです……背筋が凍る思いしましたよ。

 ……はあ、これは先日ライガットさんを護るよう動いていて正解でした。もし彼が大怪我でもしていたら、容赦無く私にトラウマ確定のオシオキをしていたことでしょう。今後も肝に命じておかなければ……

 

「――さて貴方達、魚はいける?」

「……あ…………あ……は、はい」

「――?」

 

 ――はい? さ、魚ですか? 好きな魚は金魚と鯖とシーラカンスですが……

 

「食事にしましょう、星を見ながら……」

 

 夕食の主菜のことでした。

 

 

 ………

 

 

「――あの……」

「……何?」

 

 黙々と口と食器を動かしていた私達でしたが、クレオさんが恐る恐ると言った感じでシギュン様に尋ねます。

 実は私も衣装変えしています。いつも着ている白ローブをキャストオフして、リボンだけ色違いのクレオさんとお揃いのネグリジェ(お子様サイズ)を着ています。一緒に用意させていたらしいですよ。恥ずかしいですが、今までずっと下着姿か裸で寝ていたので素直にありがたいです。大切にしましょう。

 

「あの、この女の子は……」

「……ああ、そう言えば紹介がまだだったわね」

 

 ……そう言えば私、まだ紹介されてませんでしたね。話の流れで食事に入ってしまいましたけれど。

 とりあえず、顔を上げてクレオさんの方を向く私。あとはシギュン様にお任せで大丈夫なはずで――

 

「……この子は少し前に、何らかの事情で故郷と家族を失っているみたいなの」

「え……」

「私も詳しくは知らないのだけれど、酷く怖ろしい思いをしたらしくて……その時のショックで記憶や声を失ってしまっているみたいだし、感情も希薄に……」

「え、え……?」

「クリシュナ国境付近の荒野でボロボロになって彷徨っていたところを、たまたま通りかかった軍の人間が発見しました。その時の後遺症で身体も不自由にしていて……」

「――!?」

「……紆余曲折あった後でビノンテンまで連れて来られて、現在は私達が保護しています」

「…………」

 

 あ、曖昧過ぎー! 特に最初と最後! シギュン様、そんなの誰にも絶対に通じ……って、おや?

 

「ひ、ひぐ……」

 

 お、おぅふ……しっかりくっきりクレオさん信じちゃったみたいです。顔を青ざめさせて、私とシギュン様の顔を交互に見ています。

 どれだけ人を疑うことを知らないのでしょうか……紛れも無く天使ですね。

 

「無論、私達が保護するに足る理由も彼女にあるのですが……貴方、大丈夫?」

「は、はいぃ……」

 

 わー……、遂に涙目になってしまいましたよ。

 

「……あとは、この子が魔力無者(アン・ソーサラー)であることも分かっています。その、おそらくは、彼女の親に……」

「そ、それって……まさか……そんなぁ……」

 

 シギュン様の追い撃ちはまだまだ続いています。アン・ソーサラーってなんなんでしょうね? 不穏な空気しか感じません。

 よし、ここはシギュン様に教えてくれるようアピールしてみましょう。あざとく首を傾げて見せます。

 

「……貴方が気にする事ではないわ。ここに貴方を傷付ける人はいないから、安心なさい」

 

 そう言って私の頭を撫でながら、シギュン様は慈愛の女神並みの笑顔をこちらに向けてきてくれるではありませんか。ああ、もう死んでもいいかも……――って、そうではなくてですね!

 うーん、この場ではどうやら教えてはくれないみたいですね。また今度誰かに尋ねてみるとしましょうか……

 

「ひぐっ、ひっく、ひっく……」

 

 どうしましょう、クレオさん本気で泣いてます。思わず歩み寄って慰めるくらいに罪悪感が私の中でとんでもないことになってます。だって嘘なんだもの。そして杖をついて歩く私見てますますクレオさん泣き出すし、悪循環……

 

「ひっく、こ、この子……」

「……ん?」

「この子の、名前は……?」

 

 目元を赤くしながらシギュン様に尋ねるクレオさん。可愛い。

 ――って、これアカン流れですわ。

 

「……実は、名前が分かるような物も所持していなくて……良かったら、一緒にこの子の名前を考えてあげてくれないかしら? きっとこの子も喜ぶわ……」

 

 その後のことは敢えて詳しく語るまでも無いでしょう。

 ただお二人に挟まれて、さらにクレオさんには抱き締めてもらって一晩過ごした、とだけ申しておきます。ええ、幸せ過ぎて天国に逝きかけました。おかげで女体への耐性が完璧になったのは不幸中の幸いです。

 

 ……後にシギュン様は私に言います。

 

「あの時の貴方の動きは完璧だったわね。別に貴方を利用するつもりもする予定も無かったのだけれど、あの日以来クレオも随分私達に打ち解けてくれたし、想定以上というものね」

 

 ――だ、そうですよ。お役に立てて何よりです。

 

 

 

―――――

 

 

 

「――以上を認め、クリシュナ9世国王陛下に忠誠! そして国民の生命と財産を守るとこの礼剣(レガツイン)に誓うのならば――7歩前にいでよ!!」

 

 儀礼の間での一幕。

 前回は捕虜になったクレオさんの立会いで、前々回はライガットさんの任命式という場面でしたが――今日はなんと私が主役です。

 いつぞやのちょび髭貴族様の仰せに従い、杖をつきながら一歩二歩と踏み出します。歩幅短い上に杖をつきながらですから、大人の七歩分を移動するのは見逃してもらいます。でもこの為にリハビリにも熱を入れていたのは内緒です。

 私の為に特注されたお子様サイズの外套を翻し、膝丈のブーツで床を叩きます。ちなみに薄手の短パンの上にスカート履いてます。ちゃんとしたズボンも貰いましたが、こっちのほうが私の性に合っているように思えましたから。

 

「第1827号三等重騎士、セフィ・ルトナ!」

 

 ふふふふ、ええついに私もゴーレム乗りたる重騎士の地位に就く事になりました。

 階級は三等重騎士――ライガットさんの任命時は二等重騎士でしたから、それより一段低い位からのスタートとなります。

 三等重騎士という立場は、「ゴーレムには乗れるけど、教育も訓練も不十分な見習い」とのこと。ライガットさんのように士官学校も軍養成学校にも通っていない、これといって敵の撃破といった大きな武勲も立てていない私にしてみれば十分立派な肩書です。納得できます。

 それどころかこの世界では学歴無しという有り様。前回の戦いの有って無いような功績で、辛うじてなれたってレベルですよね、ええ。

 実はライガットさんはこの前の功績で一等重騎士に昇進していますので、現在二階級差――いくらなんでも昇進、早くないですか?

 ――ええ、分かっていますとも。ライガットさんと比較して明らかに見劣りするでしょうね、私ってば。何だか周りの人達の反応もおかしいし、たぶん「なんだこのガキんちょ」って感じの視線なんでしょうが……心が痛い。あとでクレオさんに慰めてもらいましょう

 

 この『セフィ・ルトゥナ』という名前はあの晩、クレオさんが一生懸命考えてくれました。彼女の好きなものをヒントに考えたそうですよ。素晴らしいです。光栄です。将来結婚してくれないかな……

 実は当初考えていた名前はもう少し長かったのですが、最終的には今の名前に落ち着きました。縮める前の名前を知っているのは、私とクレオさんとシギュン様だけです。

 

「配属はバルド将軍旗下! 古代(アンダー)ゴゥレムの専属副搭乗士として――クリシュナを防衛せよ!! 跪いて重騎士の証――礼剣(レガツイン)を受け取れ!」

 

 副搭乗士……ぶっちゃけるとライガットさんの補佐兼予備ということです。

 定位置に付いたので大人しくその場に跪き、恭しく貴族の方から礼剣(レガツイン)を受け取ります。ライガットさんの時みたいに直接陛下から剣を手渡されるというのも憧れますが、我慢我慢……

 横目でチラリと見ちゃいましたが、ライガットさんがなんか「しょうがねえな」って感じの笑顔で私を見ています。ちなみに、始まる前までは「ヘマすんなよ」とか言ってくれてました。うるへー。

 シギュン様はいつも通りの仏頂面、だと思う――よく見えませんが。一応お祝いしてくれてると嬉しいです。

 あとは……おっ、バルド将軍とは部屋の対称位置に立っているトゥル将軍が胸を張ってちょっとだけ誇らしげです。

 ……え、何故将軍なんてご大層な人物が二人もここにいるのか? バルド将軍はともかく? ええと、その詳細は後日お話をするとしましょうか。長くなりそうですので。

 そして私を見るホズル陛下は苦笑いっと……すいません、もう泣いていいですか?

 

 

「期待している。クリシュナの騎士として、力を貸してくれ」

 

 跪く私にホズル陛下からお言葉がかかりました。何故か周りの人驚いてます。なんで?

 ……でもまあ、この場で私が返す意思はもう固まってますし、問題ありませんよね。

 

 

 

「――(コクリ)」

 

 謹んでお受けいたします、陛下。

 

 

 ――こうして沢山の人達に見守られながら、私はこの国を護る騎士(見習い)となりました。

 

 




▼今回のまとめ・追記事項

1.美味しい場面には顔を突っ込む運命
2.うちのクレオさんチョロい
3.クレオさんに懐きました
4.クレオさんが懐きました
5.やっと名前を貰えました


次回、宜しくお願いします。

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