パンツ脱いだら通報された   作:烈火1919

48 / 143
48.英霊になったとしても誰にも呼ばれないと思う

「いまなら英霊を呼び出せる気がする」

 

「は? 英霊って、あの英霊?」

 

「そうそう、あの英霊」

 

 リビングで向かい合いながらPSPで英雄の霊を召喚して戦う格闘ゲームをしていると、彼が唐突に言い出した。 そろそろお薬の時間だっけ?

 

「いや、そもそも英霊呼び出してどうするの?」

 

「ドッキリのプラカードを掲げてそのまま帰らせる」

 

 

「最悪にもほどがある!? それ絶対怒られるよね!?」

 

「ランサー、自害せよ」

 

 「ちょっぴりうまい!?」

 

 流石暇人。

 

「でも呼び出すには媒体が必要だよ? それはどうやって調達してくるの?」

 

「俺のパンツでどうにかならないかな?」

 

「ならないよ! なにをどう間違ったらキミのパンツが宝具になるの!?」

 

「でも特A級ロストロギアだろ?」

 

「……そういえばそうだった」

 

 はやてちゃん以上に動くロストロギアだった。

 

「あれ? でも、キミの下着を媒体にするなら、未来のキミがくるんじゃない?」

 

「ふっ……士郎VSアーチャーの完全再現か」

 

「パンツ片手に大人が本気で戦ってる姿とかシュールすぎて泣きたくなってくるんだけど」

 

「何度も見てきた…… 香水の臭いがきつい45歳独身女性渡辺さんの裸も 加齢臭のする50歳独身女性青山さんの裸も 自称18歳実年齢40歳の板垣さんの裸も 俺自身が拒んでも見せられた……! 俺が望んだものはそんなことではなかった……! 俺はそんなものの為に……! 守護者になどなったのではない……!!」

 

「アーチャー お前、後悔してるのか。 ──お前には負けない! 誰かに負けるのはいい……、けど、自分には負けられない!!」

 

「もうやめて!! わたしの好きなシーンをこれ以上汚さないで!!」

 

 いいよ! どっちが勝ってもむなしい勝利しか残らないよ! この戦い!

 

「こういう設定にすると、これがとても悲しくなってくるよな」

 

 それは本当に小さな願いで

 

 それさえも世界は叶えることはなくて

 

 それでもキミは理想を夢見て

 

 馬鹿みたいに夢を語って

 

 最後は裏切り続ける世界に絶望したのでした

 

「それただ単にモテなかっただけだから!? 世界のせいしちゃダメだから!?」

 

「先代たちから託されたユメがある。 童貞卒業というユメだ。 それを目指して続けていれば、いつか世界の全てを救う事が出来るだろう、と思い込んでいた」

 

「自意識過剰も甚だしいよ!! それで救える世界なんてキミの世界だけでしょ!? 管理局バカにしてんの!?」

 

「そんな愚かな自分が、酷く滑稽に思えて…… その愚かな自分の人生を消そうと思ったんだ」

 

「そのまま死んでよ!」

 

「全てを救うことができれば自分の童貞も救われると思ったんだ──」

 

「なに恰好つけてんの!? 全然恰好よくないからね!?」

 

「こんな世界を夢見たんじゃない……」

 

「もうやめて!?」

 

「結局誰一人、会うことがなかった……」

 

「会う人全員に避けられたんだね」

 

「童貞の末路がこれか―― どこで間違ったのだろう」

 

「たぶん小学校に上がるくらいじゃないかな」

 

「どこで想ってしまったのだろう」

 

「いや……想うのはいいと思うけど……」

 

「過ちが生まれた場所 始まりの思いが――あの時の誓いこそが、全ての過ち──それは、叶うはずのない望みなのに──また願ってしまった。 30歳にして、願ってし

まった」

 

「もうやめてよぉ……。 心が折れそうだよ……」

 

「奇跡があるとするならば、童貞を否定することは可能なのだろうか。 傾く下腹部、ゴムか生かの選択肢……。 年を経るごとに遠ざかる理想郷。 世界はそれほど残酷で、いつも嘲笑しながら見ていた。 自分はそれほど愚かだった。 貫くことはなく、ただただ股間と右手を擦り切れるほどコスっていた。 嘆き、苦しみ、モニターをじっと見つめ、やがて精子は枯れていった」

 

「もうゲームの続きしよ。 ね? 今度は私がアーチャー使おうかな~? なんて言ってみたり」

 

 股間にはオナホが装着されている

 

 オナ禁はせずに 一日3回は当たり前

 

 幾たびの戦場を妄想して16年

 

 ただの一度の前進はなく

 

 ただ一度のピストンでラブドールは無残にも破裂する

 

 彼の者は常に独り USB連動オナホを片手に勝利に酔う。

 

 故にソープに意味はなく、その股間は──きっとインポになっていた。

 

 固有結界──“不能な股間と無限のオナホ”

 

「………………言うべきことは?」

 

「答えは得たよ、なのは。 オレ、謝ってくる」

 

「いってらっしゃい」

 

 彼の頭が本気で心配になってきた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。