なんとか5月中に投稿できて良かったです。
週に何回かの奉仕部への参加。
今週は親の仕事終わりが早く、俺達に用事が無いためほぼ毎日参加する羽目にないっている。
用事が無くても適当に誤魔化して帰ればいいものを、変に律儀な川崎は真面目に参加している。
もちろん俺を連れて。
しかし、変な女が居ることを除けばそこそこ過ごしやすい部活かもしれない。川崎の口数は少ないことは重々知っている。
そして雪ノ下もきっとそのタイプだ。つまり、奉仕部は読書するのには都合のいい部活なのだ。
今も軽い挨拶を済ませ、互いに思い思いに時間を潰している。
「結局、ほぼ毎日参加するのね。あなた、やっぱりマゾヒストでしょう」
しかし、予想に反して雪ノ下は口を開いた。
こいつ、やたら俺をマゾにしたがるな。ひょっとしてアレなの?自分がSだからこれからもどんどん虐めてやるって意思表示なの?
何それ怖い。
「ちげぇよ…」
「じゃあ、ストーカーなのかしら?」
おい、川崎。疑いの眼差しを向けるんじゃありません。
あなたちょっと雪ノ下さんの話を素直に受け止め過ぎじゃありませんこと?
「違う。なんで俺がおまえに好意ある前提で話が進んでんの?」
「違うの?」
「…その自意識過剰ぶりにはさすがの俺もひくぞ」
「そう、てっきり私のこと好きなのかと思ったわ」
川崎は今度は雪ノ下を見て若干ひいている。
いいぞ。そっちに対してならどんどんやってくれ。
「とんでもない自信家ぶりだな。どういう環境で育てばそうなるんだよ」
「あら、奇遇ね。私もどういう環境で育てば貴方みたいになるのか気になっていたところよ。
…まぁ、それはいいとして。私のとって至極当然な考え方よ。経験則というものね」
「あー、あんたモテそうだもんね」
そこで川崎が相槌をうつ。
「その通りよ川崎さん。昔から私に寄ってくる男子は大抵好意を寄せてきたわ」
短い息を吐き、呆れたように雪ノ下は事実だといわんばかりにそれを告げた。
実際事実なのだろう。しかし、こんなナチュラルに上から目線で人を見下す女の何処が良いのかね?
ふと、疑問に思ったことが口に出た。
「おまえさ、友達いんの?」
「……そうね。まずどこからどこまでが友達なのか定義してもらってていいかしら」
「あ、もういいわ。それ友達いない奴のセリフだわ」
ソースは俺。
つか、なんでこんなところにボッチ3人が一同に会しちゃってるのだろうか。惹かれあってるの?スタンド使いなの?
「あんたぐらい綺麗なら女子も寄ってきそうなもんだけどね」
そういうものなのだろうか?
しかし小中時代を思い返してみると確かに容姿が優れた者には取り巻きがいた気がする。
「えぇ、確かに女子も寄って来たわ。
けれども私が都合良い人間でないと知ると嫌がらせばかりしてきたわ」
「…そう」
川崎もそういう場面を目にしたことがあるのだろう。
苦虫を噛み潰したような表情だ。
「あげくには自分の好きな男子が私に告白したからなんてくだらない理由で嫌がらせをする人もいたわ。
今思い返してても酷く過ごしにくい学生生活だったわ」
「あー、その…なんだ。大変だったんだな」
「そうね。だって私、可愛いもの」
少しばかり沸いた同情心が一瞬で吹き飛ぶ。
その発言は大変可愛くないですよ雪ノ下さん。
「お、おう」
「…」
「優秀なものがその優秀さ故に妬まれる。そして攻撃される。
そんなことが当たり前なのよね。酷い世の中だわ」
言わんとしたいことはわからんでもない。
しかし、その攻撃される側も上手く付き合えば良かったのだ。
雪ノ下雪乃はきっと不器用なのだろう。
「そんなの当たり前じゃねぇか。出る杭は打たれるって言うだろう。
昔から能力のある人間は周囲に足を引っ張られるものなんだよ。それが嫌なら取り巻きでも作って周囲に合わせて折り合いをつけば良かったんだ。そうやって馴れ合えばおまえが攻撃されることも無かっただろう」
「そんなの欺瞞だわ」
…確かにその通りだ。
今、俺が言ったのは自分に対する欺瞞になる。
そして、それは俺は最も嫌うものだ。
「折り合いつけて馴れ合うだなんてどの口で言ってんの?
だいたいあんたは…」
あれ?あの流れから俺が説教されちゃうの?
勘弁して下さいよー。いや、本当にマジで。
「はぁ、夫婦喧嘩なら他所でやってくれないかしら?
犬も食わないというでしょう」
「ちげぇよ」
「ば、ばっかじゃないの!?」
ここ数日。雪ノ下は俺達のことを何度か夫婦と評した。
多分だが、川崎の反応が面白くてからかっているのだろう。川崎よ。そろそろ気付かないとまだまだ言われるぞ。
俺自身も言われている当事者なので、川崎に伝えにくいことでもある。心の中で願うばかりだ。
川崎は雪ノ下に詰め寄り、前言を撤回してもらうように講義している。そうやってむきにになるのが雪ノ下の嗜虐心を煽るのだろう。
そこに控え目なノック音が響く。平塚先生ではないだろう。あの人ノックしないしな。
「…どうぞ」
雪ノ下が応える。
静かに扉が開き、女子生徒が入ってくる。何処かで見たような、そうで無いような…
まぁ、何処にでもいそうなそれなりに容姿の整った女子だ。
「し、失礼しまーす。」
「…由比ヶ浜」
「沙希ちゃん!?
部活してたんだ。あっ、比企谷くんも一緒なんだね。やっはろー」
どうやら川崎の知り合いらしい。
俺のことを知っている口ぶりからして同じクラスのようだ。
ってか何今の?もしかしてして挨拶だった感じ?何それ頭悪そう。
「まぁ、そうだね」
「あれ?でも、この間までは一緒に帰ってるのよく見たけどなー?」
「あたしらここに入ったの最近だからね」
「そうなんだ、だからかー。
あっ、今日の調理実習ありがとうね沙希ちゃんに比企谷くん。私、どうも料理は苦手でさ」
「…うっす」
ん?調理実習?
サボろうとしたら川崎に阻止されたアレか。…もしかして同じ班にいた感じですか?
「ってか沙希ちゃんも比企谷くんも料理上手だよね。
2人揃ってなんか手際良くて慣れた感じでさー。なんかもう新婚さんみたいで感心しちゃったよ!」
「だ、だから違うって!」
本当に耐性ないのなこいつ。
そういうのは過剰に反応すると相手が面白がって続くぞ。
「またまたー、照れちゃって!
2人が付き合ってるのなんてクラスの皆1年の頃から知ってるよー」
「な、なっ…」
川崎はテンパって最早口から言葉すら出せずにいる。
仕方ない。ここは俺がバッチリと否定しておいてやろう。
「その2人。付き合ってないそうよ」
おまえが否定すんのかーい!
さっきまで夫婦喧嘩どうこうで弄ってませんでしたか雪ノ下さん?
これはアレなの?自分のおもちゃだから他人が遊ぶのは許しません的なやつですか。
「えっ!?そうなの?
ごめんね沙希ちゃん!勘違いしてた」
素直!
俺が言うのも何ですが、初対面の相手の言葉は間に受けちゃいけませんよ。
将来、壺とか買わされますよ。
「……わかってくれたなら良い」
「けど仲良いよねー。私1年の頃から2人は付き合ってるもんだと思ってたよ。
比企谷くんが誰かと一緒にいるのなんて沙希ちゃんくらいしか見かけなかったし…」
しかしこの女子生徒はいつになったらここを訪ねてきた目的を話すのだろう。
今だに川崎と世間話をしている。初対面だと分かりにくいかもしれませんが、そこで本読んでる人イライラしてますよ多分。
実を言うと俺も見ただけではわからんが、雪ノ下はそういうタイプだと短い付き合いの中で確信している。
えーと、何ガハマだっけ?…ガハマさんでいいか。ガハマさんよ。そろそろ要件を切り出さないとここの部長さんが怒るのは確定的に明らかですよ。
はやくしろっ!!間に合わなくなってもしらんぞーーっ!!
「あっ、そうだ。今日ここにきた件なんだけどね!
料理を教えて欲しいの!平塚先生に教えてもらったんだけど、ここって生徒のお願いを叶えてくれるんだよね」
心の中で心配していると、どうやら本来の目的を思いだしたようでそれが奉仕部の面々に伝えられる。
しかし、発言の中に気になる部分があった。ここって強制収容所みたいな所じゃなかったの?初耳だわー。
「そうなのか?」
「少し違うわ。あくまで手助けをするだけよ。願いが叶うかどうかはあなた次第」
「どう違うの?」
おそらく、この間言ってた飢えた人に魚を与えるのではなくどうこうの話に繋がるのだろう。
予想は当たっていたようでその説明を雪ノ下はガハマさんに行っている。
「な、なんかすごいね!」
あっ、これ多分わかってないやつだわ。目とか泳いじゃってるし。
「必ずしもあなたの願いが叶うわけではないけれども、できる限りの手助けわするわ」
「そ、それでね。り、料理を教えて欲しいんだけど…」
「そんなの友達に教わればいいだろ」
しまった。あまりの労働意欲の低さに最短ルートで拒否してしまった。しかも食い気味に。
「比企谷くん。依頼を受けるかどうかは私が判断するわ。
勝手に断らないでくれる?」
「そう…なんだけどさ。普段の友達とじゃ、こういう感じ合わないから」
唐突に思い出した。
こいつは今日の調理実習でやらかしたやつだ。ついでに葉山グループの一人で俺が唯一名前を知らない女子生徒でもある。
ほら、三浦とか海老名さんは強烈過ぎて一度みたら忘れられないタイプだし…決してこの女子生徒の影が薄いとかは思ってないですよ?
つか影の薄さなら俺が最強。頭一つ二つは軽く抜けてるレベル。
この女子生徒は今日は調理実習でカレーを作る最中に、隠し味としてインスタントコーヒーの粉をお玉一杯ぶち込もうとしてたやつだ。
その場はなんとか川崎にすぐに止められ事なきを得たのだが、そのレベルに料理を教えることになるとは…
この手のタイプはレシピ見ながらアレンジしないとおいしくないし?とか言って平気でセオリーを外すのだ。
どうやら奉仕部での初めての依頼は結構やっかいな依頼みたいだ。
「おまえ実習でお玉一杯のインスタントコーヒーをカレーにぶち込もうとした奴じゃん!」
「そ、それはもういいじゃん!
ってか今まで気付いて無かったの!?マジあり得ない!」
「はっ」
あのレベルしか出来なかったやつに何を言われても気にならん。と言う意味も込めて鼻で笑ってやる。
「うっ…あ、あははー、へ、変だよね。あたしみたいなのが手料理とかって…
ごめん、雪ノ下さん、やっぱいいや」
えー、それだけでヘタレちゃうの?働かなくていいことは良いことだけど、これだと俺が悪いみたいじゃん…
「あなたがそう言うのなら私は別に構わないのだけれど……ああ、この男のことなら気にしなくてもいいわ。強制的に手伝わせるから」
部長権限でと雪ノ下は続けた。
この3人しかいない部活に部長権限も何もないだろうと思うが、これは俺がどうこう言ってもどうにもならない流れだ。八幡覚えた。
「いやーいいのいいの!
だって似合わないし、おかしいよ…優美子とか姫菜とかんも聞いたんだけど、そんなの流行んないっていうし」
「まぁ、あんたのキャラじゃないとは思うけど…」
いいぞ川崎!その調子だ!これだと俺だけが悪い感じじゃないしな!
この感じでお引き取り願いたい。
「だよねー。キャラじゃないよね…」
少し落ち込んだ雰囲気のガハマさんは乾いた笑みを浮かべた。
その時に目があって何か言わなくてはという気になる。
「……いや別にキャラじゃないとか似合わないとか言いたいんじゃなくてだな。
純粋に興味がねぇんだ」
「もっと酷いよ!」
そう言ってガハマさんは机を叩いて立ち上がり、怒りを露わにする。
こらこら、ガハマさんよ。その音と勢いで川崎さんビックリしちゃってるから、その娘はそういうのに弱いから気をつけてね。
可哀想にビックリしたね。優しい視線を送ると川﨑を見ていると睨まれた。何故わかったし…
「比企谷くん酷くない!?あー、腹立ってきた。あたしだってやればできる子なんだからね!」
「そういうのは自分で言うもんじゃないぞ。母ちゃんがしみじみとため息混じりにこっち見ながら言うもんだ『あんたもやればできる子だと思ってたんだけどねぇ…』みたいな感じで」
「あんたのママ、もう諦めちゃってるじゃん!」
「妥当な判断ね」
「はぁ…」
コラそこ、川崎。溜め息つきながらこめかみを抑えるんじゃありません。
ネタだから。こういう芸風だからね。そうやって真剣に溜め息つかれると手遅れみたいじゃん。だ、大丈夫だよね?
しかし、先ほどとは一転。怒りのせいかやる気が出てきている。
本人がやる気になっているのなら手伝うしかなさそうだ。
そのほうが、いまさらあれこれいって諦めるように仕向けるより掛かる労力は少なくて済みそうだ。
「まぁ、カレーくらいなら作れるし手伝うよ」
「私も料理は嫌いじゃないから手伝うよ」
「あ…ありがとう」
「別にあなたの料理の腕には期待していないわ。味見だけお願い
こういのは女子の領分でしょう?」
…まぁ、いいか。働かなくていいということは良いことだ。
しかし、それなら俺いらないんじゃないですかね?はぁ、帰りたい…
葉山グループの三浦さんと海老名さんを知っていて由比ヶ浜さんを知らないっていうのは無理があったでしょうか?
原作より葉山グループと近い関係にあるヒッキーですが、積極的に関わってはいないので葉山を通して三浦さんと海老名さんとは面識があったって感じです。
葉山と二人でいると呼びに来るついでに説教かますこともある三浦さんと、葉山と二人でいる現場を見つけて興奮する海老名さん。
こんなのにあったら忘れられるわけねぇな!