人生二回目でヒーロー目指します   作:74

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お気に入り数300越えに戦慄しました。
多くの方に読んでいただけてとてもありがたいです!


10.ごめんなさいありがとう

 

現れたオールマイト(希望)にみんなが喜ぶ中私はこの隙に出久くんと峰田くんを糸で引き寄せる。

 

 

無理をして2人同時に引っ張った為凄まじく傷が痛んだが堪える。

 

「あ、石さんありがとう!」

 

「石~!マジ助かったぜ!!ありがとうな!!」

 

「どういたしまして。でもまだ、終わってないよ。」

 

2人のお礼に軽く答えて死柄木弔達をとにかく見つめる。

ここに来て何か起きないなんて保証がないからだ。

 

 

敵をきつく睨み付けネクタイを千切り取るオールマイトは笑っていなかった。

 

一瞬動いたかと思えば敵は倒されオールマイトが目の前にいた。

速い!目で追うなんて不可能だ。オールマイトの速さに私が脳無の攻撃を避けれたのは本当に幸運だったのだと改めて思う。

 

 

オールマイトは私達を庇うように背中を向ける。

 

 

その背中には平和の象徴故か不思議な安心感があった。

 

 

「皆入り口へ。相澤くんも私に任せて、早く!!」

 

 

「・・・分かりました。お願いします。行くぞ。」

 

よろりと立ち上がる相澤さんはどこか悔やんでいる様な雰囲気をしていた。

 

 

とてもオールマイトのことが心配そうな出久くんは大丈夫の一言を聞いて不安そうだが相澤さんに肩を貸して入り口へと歩き出す。背後からの戦闘音に足が止まりそうになるが相澤さんが声をかけてそれを防ぐ。

移動中も峰田くんが応援していたり梅雨ちゃんが何か話していたが私はそれどころではなかった。

 

脳無との戦闘時に負った脇腹の傷の痛みが増していてさらに呼吸も苦しくなってきていた。

折れた肋骨が肺に刺さったのだろうかと考える頭にも大分もやが掛かってきて既に周囲の音が聞こえない。

 

まだ・・・倒れ・・・る、な!!

 

ここで倒れたら足手まといにしかならないと思い、気合いで足を動かした。

 

 

ふとみんなが足を止めていた事に気づいて振り返ると出久くんが死柄木弔へと飛びかかっていた。

 

 

痛みなんて痛いを通り越してなくなっていた。

思考は頭にもやが掛かっていてまるでぼうっとテレビを見ている様な状態で何も考えてなんかいなかった。

 

 

あえて言うならその時の行動は無意識。

 

 

ただ気づいたら動いていた。

 

 

突っ込んだ出久くんの足に糸を貼り付けて引っ張った。

 

 

最後に出久くんが死柄木弔の手から逃れたのを最後に私は意識を失った。

 

 

 

 

noside

 

 

死柄木弔などの敵は去り相澤、13号、緑谷、石の怪我人は速やかに搬送された。

 

警察が残された敵を連行し生徒の数を確認する。全員いるのを確認し終え移動するように声をかける。

 

「刑事さん、弦ちゃんは・・・」

 

今回の事件での怪我人の1人石弦の事を友人の蛙吹梅雨が心配そうに訪ねる。

 

『肋骨3本骨折、折れた肋骨が肺に傷をつけ肺の一部分に血がたまっていれ血胸になっています。内臓にもいくつかダメージはありましたがこちらはそれほど酷い損傷はなく後遺症が残る心配もありません。』

だそうだ・・・。」

 

「ケロ・・・。」

 

1Aの面々は石の容態を聞き後遺症が残らない事にホッとする者、自分のせいではと自責の念を感じる者、止められなかったと悔やむ者などそれぞれだった。

 

 

翌日は臨時休校となり生徒達は思いを胸にそれぞれの帰路に着いた。

 

 

 

noside end

 

 

 

意識が戻ると知らない天井だった。

 

 

口にはドラマとかで見る呼吸器がついていて自分が病院にいることを自覚した。

 

そうか、私は気絶したんだ・・・。みんなは、相澤さんは無事なんだろうか・・・?

ぼんやりとする意識の中で首を横に向けると扉が開いていて驚いたように目を見開く人使が立っていた。

 

「ひ・・・とし・・・。」

 

名前を呼ぶと驚いていた人使の表情が歪む。どこか苦しそうで悲しそうな表情で目を逸らす人使に手を伸ばそうとするけど私の意思に反して手は動かず指先がぴくりと動いただけだった。

 

病室を出て行く人使の背中を私は見送る事しか出来なかった。

 

 

人使はナースさんを呼んできてくれた。医者もやってきて診察された。気絶してる間に日をまたいでいたらしく事件があったから今日は臨時休校だとも聞いた。処置は終わっているそうで今日にでも退院していいそうだ。1週間もすれば完治すると聞いてホッとした。体育祭に参加出来ないという事態にはならなくって良かった。両親には人使が連絡してくれた様ですぐに迎えに来てくれるらしく病室で待つことになった。

 

人使も私も黙り沈黙が流れた。

 

正直とても気まずい。人使の雰囲気がなんか怖い。眉間にすごく皺が寄っている。

めっちゃ気まずいが状況を打破すべく頭を回転させる。

 

①指で眉間をぐりぐりして物理的に皺をなくす

②とにかく気の向くままに口を開く

③理由を尋ねる

④寝る

 

ひとまず④はないね。この状況で寝れる程私のメンタルは強くはないのだよ!内心で心の眼鏡をくいっと上げる。え?リアルではかけてないのかって?両目とも2.0ですがなにか?②は大事故必須だね☆確実に部屋の空気が凍るを通り越してなくなるわー。となると①か③だけどまぁここは無難に①だよね!!決定!

 

 

「弦・・・。」

 

!!!

 

 

タイミング良く名前を呼ばれて驚く。バレた!?おそるおそる人使を見るとうつむいてゆっくりと私の右手を両手で握った。どどど、どうしよう!?やっぱ気づいてるよね!?これは暗にやらせねえよって事なんでしょうか!?割とソフトに握ってるから痛くもないしこれなら逃れるのも容易だけどきっと人使のことだから罠だね!とかふざけたことを考えてると握っている人使の手の力が強くなって、そこでようやく私は人使の手が震えていることに気がついた。

 

 

「人使・・・?」

 

名前を呼ぶとさらに手の力が強まって少し痛いくらいに握られた。抗議しようとしたときに人使が先に口を開いた。

 

 

「良かった・・・目を、覚まして・・・!寝てる弦が、死んでるみたいで・・・っもう、起きないんじゃないかと思ったっ!本当に、良かった・・・!!」

 

「!!」

 

 

絞り出す様にとても苦しげに話す人使の姿に本当に心配していたのだと知り胸が締め付けられた。

痛いくらいに握られてる手の抗議もすることが出来る訳なかった。人使は普段からきつい口調だったりするが根はヒーローを志すだけにとても思いやりがあって優しい。親友が怪我をして病院に運ばれて約1日死んだように寝ていたら人使が心配しない筈がない。気づかなかった自分の馬鹿さが嫌になる。

 

「馬鹿弦っ!心配させんなよ・・・!!」

 

強がるようにそう言った人使の目からは涙がこぼれていた。

 

「ごめん。本当にごめん・・・!!」

 

自然と私は謝っていた。苦しそうに震える人使の姿にどれだけ心配をかけたかを強く理解する。心配をかけて本当に本当に悪いと思った。だからこそ私は人使に言う。言わなければいけない。そう思った。

握られる人使の手に左手でそっと触れる。

 

「人使。」

 

人使が顔を上げて涙に濡れた目で私を見る。私は真っ直ぐと人使の目を見た。

 

「心配かけてごめん。今回の事で人使にすごく心配かけて本当に悪いと思ってる。

・・・でも、でも私はこれからも一杯無茶すると、思う・・・ていうかする!だから!私はヒーローになるから!これから一杯無茶も怪我もするから!一杯一杯心配かける事になる!だから!えと、その・・・だから、だから!心配かけるからごめんなさい!!」

 

感情が高ぶって涙が出てきた。言葉も支離滅裂になってしまった。それでもそんな私の言葉を人使は聞いててくれた。笑ったりしないで真っ直ぐに聞いてくれた。

 

人使はぐっと唇を噛み締めて片手を話して涙を拭った。そして笑って言った。

 

「馬鹿。謝るくらいなら、そこは怪我もしないくらいすごいヒーローになるって言えよ。」

 

そんな人使の言葉に私も涙を拭って言った。

 

「オールマイトですら怪我したのに無茶ぶりじゃん・・・。」

 

思わず出たのは肯定ではなく否定。嘘でも怪我したヒーローを思い出しそうだねとは言えなかった。胸がまた苦しくなって目線が手に下がった。この場面で肯定出来ない私の情けなさに嫌になる。

 

 

「オールマイトよりすごいヒーローになればいいだけだろ。」

 

 

事も無げに答える人使を思わず驚き凝視した。オールマイトよりすごいヒーローなんて・・・。そんな驚き黙った私に人使は挑戦的な目で言った。

 

 

「俺はなるつもりだけど弦はならないの?」

 

その言葉に私の心に火がついた。同じ夢を追う親友にここまで言われて、無理なんて言うわけがなかった。

挑戦的な目で見ながら挑発するように笑って言う人使の姿に自然と苦しかった胸の痛みもなくなりむしろ不思議なくらいに心は高ぶり私は笑っていた。

 

「なるよ!No1ヒーローに!!」

 

人使は強くそれでいて嬉しそうに笑って拳を私に向けた。

 

 

「なら競争だ!」

 

「うん!負けないから!!」

 

 

お互いに笑って拳を突き合わせた。

 

 

 

その後に両親が迎えに来て両親に心配かけたことを謝った。それから怪我もしないくらいすごいNo1ヒーローになると宣言した。両親は涙で潤んだ瞳を細めて笑って優しく抱きしめてくれた。2人はとても温かくて本当に2人が私の両親であることに心から感謝した。

 

 

 

 

車での帰り中に人使と後部座席で座っている時に私は窓の外の景色を見ながらぽつりと言った。

 

 

「人使、今更だけど心配してくれて、嬉しかった・・・ありがとう。」

 

「あっそ・・・。」

 

 

すっかり調子を取り戻しそっけなく答えた人使も反対の窓から景色を見ていた。

 

 

 

 

お互いの頬が赤いのに気づく事はなかった。

 

 

 





肋骨の骨折って結構調べたら危険で驚きました。
そんな状態で無理したら悪化しますよね・・・(・・`)

一緒にいた1Aのみんなもですが両親や人使くんも心配するよねと思っていたら自然と人使くんが出ました。彼はなんだかんだヒーロー志望だし優しいと私は思っています。
時間がかかりましたが何とか書けてホッとしてます。


感想質問お待ちしております。

今話も読んでいただきありがとうございました!

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