1
学園都市の『裏』、とくに『学園都市の闇』は統括理事会がコントロールしている。その中でも子飼いの個人、集団を『暗部』と呼ぶ。そうして『暗部』は学園都市の意志の下運用され、管理されている。
そんな『暗部』の中でも『アイテム』は理事会の直属に位置する組織である。学園都市の不穏分子の排除、『暗部』組織や上層部の暴走を防ぐことを任とする武力行使集団『アイテム』であるが、その構成員は僅かに四名、しかもその全員が女となっている。もちろん構成員は超能力者が一人に大能力者が二人、電気工学のエキスパートが一人と軍隊の縮小版のような戦力であり、配下に多数のバックアップ組織を持ってはいるのだが。
そんな『アイテム』のリーダーこと麦野沈利は上機嫌に同構成員のフレンダ=セイヴェルンのこめかみに拳を押しつけていた。
「いたい、いたい、いたいたいたい! それちょー痛いんだってば麦野!」
「あぁ? 使わなかった爆弾は回収しとけっていつも言ってるよな?」
「ごめんなさい、反省してます! だから許して麦野様!」
「前も確かそう言ってたよな、フ、レ、ン、ダー?」
「ぎゃー⁉」
金髪碧眼の美少女、フレンダの悲鳴が個室サロン内に響く。
現在フレンダは、先日の作戦において未使用の爆弾を回収せずに撤退したためリーダーである麦野に折檻を受けていた。
頭蓋が割れるかと思うほどのきついお仕置きではあるが、これでもまだ軽い方だ。機嫌の悪い時の麦野ならば、今頃フレンダの上半身は下半身とさよならしている可能性もなくはないのだから。
(何かいいことでもあったんだろうか?)
ぐりぐりから解放された頭を抱えながらながら、フレンダはふと疑問に思う。一向に引く気配のない頭痛から逃れるためだったのだが、それでもやっぱり痛い訳よ、とフレンダは心の中で叫ぶ。
フレンダと同じ疑問を残りの構成員二人も抱えていた。
先日、『アイテム』はとある実験施設の防衛任務をおび、襲撃者御坂美琴と対峙した。
御坂美琴。超電磁砲の名を持つ、超能力者序列第三位。原子崩したる麦野沈利の上位に位置する、“ぴっちぴち”の中学生だ。あらゆる面において麦野は御坂にコンプレックスを感じる要素があり、事実麦野は先日の作戦において美琴を殺すつもりであった。
しかし実際対面してみれば、美琴は連日の破壊活動で疲労困憊、だというのに麦野は決定打を決めれず逆に情けを掛けられる始末。プライドの高い麦野が当然それを許せるはずがなく、美琴にしてやられた原因がフレンダが現場に残した『置き土産』ならば尚更である。
けれども現在、麦野の機嫌は悪くない。むしろ良いと言ってもいい。
当然、それを仲間たちは皆不思議に思った。
そんな仲間内の様子など知らず、麦野は再びフレンダの頭を掴む。フレンダがお得意の嘘泣きで助けてアピールをしで涙を溜め始めたところで、個室サロン内に電子音が響いた。
途端、四人全員が真顔になる。フレンダは涙を引っ込め、ピンクジャージの少女は閉じていた目を開ける。映画雑誌を読んでいた少女はそれを閉じ、麦野はフレンダを離してテーブルの上のノートパソコンに手を伸ばす。
通信コールを鳴らしていた『暗部』用のパソコン画面に電源が入り、そこに見慣れた女のシルエットが映し出された。
上司からの通信。『暗部』組織『アイテム』の仕事の時間である。
『よし、全員そろってるね』
決して姿を見せない、音声だけの女上司が麦野たち『アイテム』を見回して確認する。
「なんだ? 昨日の今日だぞ」
麦野が怪訝そうに尋ねた。
『アイテム』は『暗部』における上位組織である。裏切り者の粛清を主とする『アイテム』ではあるが、毎日毎日仕事があるわけではない。学園都市の『裏』は広大ではあるが、それは同時に多数の『暗部』組織が存在するということでもある。超能力者である麦野を有する『アイテム』が動くのは、超能力者クラスが必要な場合、もしくはかなりの重要機密に関わる場合だけなのだ。それ以外では、下部組織が日々動き回っている。
『仕事の依頼よ。理事会直々の』
画面の女はため息をつきながら答える。その声色は何やら依頼内容に不安があるようだった。
『いい? 十七学区の操車場で午後八時三十分からある実験が行われる。あんたたちの仕事は、そこに妨害に来るであろう『回転方向』を死なさずに追い返すこと。但し、それ以外の乱入者には絶対に手を出すんじゃないわよ』
「はあ? なんだそれは?」
麦野はその依頼内容を訝しむ。
妨害者の排除。それは納得できる。つい先日請け負った仕事も同じようなものだった。しかし、その妨害者を殺すでも捕縛でもなく、死なさずに追い返せとはあまりにも依頼内容が異質すぎる。
(何か裏がある。厄介事か、もしくは……)
麦野は先日の事を思い返す。
研究所を襲ってきた御坂美琴。その目的は自身の妹達が生贄にされている『絶対能力進化』を止めること。
(そういえば、あの時襲撃者は御坂美琴だと最初から分かってたみたいだったな。今回も相手は判明しているようだしこれはもしかしたら……)
「なあ、その実験ていうのは、『絶対能力進化』なのか?」
『なに、あんた知ってたわけ? どうやらそうらしいわよ』
麦野が一人納得している後ろで、残りの三人は首を捻っていた。
『アイテム』の中で『絶対能力進化』を知っているのは先日研究所撤退前に研究員を締め上げた麦野だけだ。麦野は誰にも話していないので、三人が知らないのは当然である。
「分かった。受けるわ」
麦野が了承の意を伝えると、映画雑誌を左手に持っていた十二歳くらいの少女、絹旗最愛が声を荒げた。
「正気ですか⁉ どっからどう考えても超怪しいんですけど」
「――お前は黙ってろ」
麦野にそう言われて、絹旗は納得のいかない顔をしながらも引き下がる。
『アイテム』の決定権は全て、リーダーである麦野沈利にある。そして麦野はキレやすく、そうなれば仲間だろうが何だろうが自分に従わないのならそれだけの理由で簡単に殺すだろう。
麦野がその依頼を受けるというのなら絹旗は何も言わない。言ったところで聞き入れるはずがないからだ。
けれども、絹旗は思う。
(それで死ぬのは、超わたしたちなんですけど)
麦野沈利は超能力者であるが、絹旗歳愛は大能力者なのだ。もう一人の大能力者は直接戦闘に疎く、フレンダ=セイヴェルンは肉弾戦闘が可能とはいえ無能力者。絶対の安全などなく、何かの拍子に死ぬ可能性は大いにあり得る。もちろん、『暗部』組織に属しているのだからそれは当たり前のことではあるが、それでも死の危険を出来るだけ回避するにこしたことはない。しかし、麦野は恐らくそのことに気づかないだろう。かといって絹旗がそれを告げることはない。自身の能力は防御性能に秀でているし、そもそもそのような弱気な発言を麦野は許さないからだ。そして結局絹旗が残りの二人を守ることになる。
『学園都市の闇』の中なのだから、自分の身は自分で守るのが当然。途中で死ぬ者がいれば、所詮そいつはそこまでの奴だっただけだ。それなのに『アイテム』のメンバーに関してそんな考えが出てこないのは、絹旗が今の『アイテム』を気に入っているからか、それとも弱くなったからか。
そんな答えのない問答を抱えながら、絹旗は作戦会議に加わった。
2
道長昨也が目覚めると、見覚えのある病室の中にいた。
体を起こし窓に目を向ける。
カーテンの向こうから感じられる温もりは既になく、部屋に置かれたデジタル時計が午後七時を表示していた。
道長は病室を見渡し、何故自分がここにいるのか思い出した。
結標淡希と共にミサカ一00三一号の死体を発見した道長は、淡希が入手した警備員がやってくるという情報に従って路地を出た。その際淡希が色々と話していたが、ミサカ一00三二号の死体にあてられていた道長は、二度目の嘔吐と共に意識を失ってしまった。恐らくは倒れた道長に気づいた誰かが救急車を呼んでくれたのだろう。あの場には警備員がいたのだから彼らに助けられたのかもしれないし、たぶん有り得ないだろうが淡希が気を利かせたのかもしれない。
大して意味のない疑問であり、大切なのは道長が今、第七学区の縁ある病院にいることだ。
現在時刻は午後七時三分。
『絶対能力進化』第一00三二次実験開始時刻は午後八時三十分。
そして、御坂美琴が一方通行と衝突するまで残り一時間三十分。
結標淡希曰わく、御坂美琴は一方通行との戦闘によって殺されることで、『絶対能力進化』を事実上の廃止に追い込むつもりだという。
一方通行をまだ見ぬ絶対能力者へと至らせる『絶対能力進化』。その計画は欠陥電気との二万通りの実戦経験を積むことで能力成長を促すというもの。その前提は、『最強の超能力者一方通行が序列第三位の超電磁砲と一二八種類の戦闘経験を積むことで絶対能力者に至れるというものである。
美琴は、『樹形図の設計者』の想定よりも超電磁砲に価値がないことを示すことで、『絶対能力進化』の基盤そのものを破壊しようというのだ。
しかし、素人目に見ても荒だらけの作戦である。事実、道長はこの計画を聞いただけでそれを指摘することができた。
仮に超電磁砲にそれほど価値がないと認められたとしても、それを踏まえた上で『樹形図の設計者』で再計算すればいいだけのことであるし、『絶対能力進化』を通して一方通行が強くなることはあっても、弱くなることはないのだから『絶対能力進化』が中止になることはまずないだろう。
そんなことを美琴が分からないはずがなく、それはつまりそれだけ彼女が追い詰められているということ。
何に?
当然、美琴のクローンである妹達の虐殺にである。
美琴が『絶対能力進化』に自身のクローンが使われていることを知ったのはつい最近のことだと、淡希は言っていた。
御坂美琴という少女は、クローンたちを憂い、その扱いに嘆き、そして彼女たちを救おうと行動している。
対して道長昨也という少年は、クローンたちのことを知っていながらも何もせず、見殺しにしている。
そんな道長がこのような感情を抱くのは、甚だ滑稽なことであろう。それでも彼は、美琴に死んで欲しくないと思った。
今まで一万回もの殺人を許容し、一万人もの人間を見捨ててきた少年が、殺されてきた少女たちと同じ顔の、同じ体の、同じ人間の少女を救いたいと思う。
それは妹達がクローンであり、御坂美琴がオリジナルだからか。
それはクローンを一万人も殺しておきながらそのオリジナルが殺されそうになっていることに、今更ながら罪悪感を覚えたからか。
けれど、どれだけ取り繕うと、どれだけ挽回しようと、道長昨也が一万人のクローンを見殺しにしてきた事実は変わらない。
それでも、道長が美琴を、妹達を助けたいと思ったのは、恐らく。
これが最後のチャンスだと思ったから。
欠陥電気試行検体を殺してしまった八ヶ月前のあの日から、道長はずっと思っていた。
そもそも道長昨也という人物はただの高校生に過ぎない。その精神は十七歳の子供のそれであり、人殺しを許容できるような器であるはずがないのだ。道長が『絶対能力進化』を阻止したいと考えるのは当然の帰論である。
しかし、欠陥電気試行検体との戦闘は一瞬のうちに終わってしまい、その後道長は能力を喪失。一方通行を止める力も、学園都市に抗う力もなくした道長に、できることなどなかった。
けれども、状況は一変。御坂美琴が反旗を翻し、冥土帰しの手により道長の能力は回復可能となった。学園都市と敵対したとしても、少なくとも学園都市序列第三位との接点、そして結標淡希が率いる反乱分子の一員という居場所は確保されているのだ。
そしてなにより、回転方向と超電磁砲の共闘には一方通行を破る可能性がある。
一方通行がベクトル操作能力を使ってその身に纏う『反射』の膜。それにより一方通行は最強の盾を手にし何人たりとも傷つけることは叶わないとされている。戦闘面において一方通行が優遇されているのは、この『反射』があるからである。いかに超電磁砲の一撃であろうと、この盾を破ることはできない。
しかし、何事にも例外はある。
一方通行と同じベクトル操作能力を持つ回転方向ならば、一時的に一方通行の『反射』の膜を解除することができる。『超能力進化』によって一方通行の『反射』の膜を擬似的にとはいえ手にしている回転方向ならば、一方通行の不意をつきその盾を掻き消すことが可能だ。
もちろん、一方通行の能力は回転方向の能力の上位互換であり、ベクトル操作能力において断然一方通行の方が優っている。けれども、回転方向の知名度は序列第一位の一方通行に比べれば無いにも等しいものであり、何より道長の能力は現在使用不可能ということになっている。一度の敗北も苦戦も経験したことのない、戦闘時における身の防護は全て『反射』に頼ってきた一方通行ならば、回転方向が突きいる隙はある。
そして回転方向はその能力を以て一方通行の力を封じることができる。
一方通行の能力の本質が『未知の法則を逆算、解析』することだというのならば、回転方向の能力の本質は『既知の法則を限定、固定』することである。八ヶ月前、錯乱した道長は最終的に自身の『AIM拡散力場』を『限定』、能力を発動させようとするAIM拡散力場の動きを捻じ曲げ『作動』→『中止』の円に『固定』した。これにより道長は能力を失ったのだ(道長は知らないことだが、この時のデータを元に『能力者の演算を何度も強制的にやり直させ、その演算を失敗させる』という『AIMジャマー』なる対能力者用兵器が生み出されていたりする)。
更に、『絶対能力進化』は最強である一方通行のみが絶対能力者に至れるという前提から生み出されている。そして、序列第一位、第二位の二名と、第三位との差は超能力者と無能力者よりも離れているといわれ、第一位が第三位と強能力者の二人組に負けることなどあってはならない。絶対能力者に至れるのが“最強”である一方通行“だけ”である以上、一方通行が第二位以外に敗れることは、一方通行が絶対能力者に至れるという前提までもが崩壊しかねない。超電磁砲に価値がないことをいくら示しても『絶対能力進化』は止まらないが、一方通行自体にその価値がないと示すことができれば実験そのものに意味がなくなる。
御坂美琴一人で『絶対能力進化』を止めようとするよりも、それに道長昨也が加わった方が遥かにその可能性は上がる。
道長昨也はここにきて、始めて自分の思いに素直になることにした。
だがら道長は手を伸ばし。
冥土帰しに渡りを付けるべくナースコールを押した。
3
学園都市第十七学区。
学園都市の西の外れの大きな工場地帯であるそこで、『絶対能力進化』の第一00三二次実験が行われようとしていた。
時刻は午後八時十四分。実験開始まで残り十六分。
実験場となる操車場より数キロ離れた場所で、絹旗最愛は道長昨也と相対していた。
「もしもし、絹旗です。当たりでした」
絹旗は通信機を使って、ここら一体に散開している『アイテム』の残りのメンバーに回転方向《ターゲット》が来たことを伝える。
『アイテム』に任された『絶対能力進化』の実験場は広大である。しかし、周囲には民間人どころか誰もいないので、人目を気にする必要はない。防衛ラインにはフレンダによる爆弾が仕掛けられており、衛星カメラと監視カメラでターゲットを確認したら遠隔操作による爆破で足止めし、『アイテム』のメンバーが直接取り押さえに行く。その予定だったのだが、肝心のターゲットは幸か不幸か『アイテム』のメンバーの前に直接現れた。
絹旗は事前に手に入れていた顔写真の記憶と目の前の人物を再び確認し、本人と断定する。
「回転方向、道長昨也で、超合ってますよね?」
口で確認しながらも、絹旗は能力演算を開始する。
身元を問うたことには意味がない。動揺してくれればそれでいいし、本人であるかどうかを確認する術は姿形しかないのだ。言葉自体に意味はない。
すぐには動かず、絹旗は仲間が来るのを待ちながら道長を観察する。
情報では元強能力者のベクトル操作系能力者。現在は能力が使えない無能力者であるらしいが、早計は禁物。相手は超能力者の実験に横槍を入れようとしているのだ。能力の代わりになる何かを持っているのか、もしくは能力が元に戻っている可能性もある。
絹旗最愛は大能力者であり、その能力は窒素を自在に操る『窒素装甲』である。窒素を展開し、その窒素が物を持ち上げたり物を受け止めたりする。但し、能力射程が短く、展開した窒素は装甲のように絹旗を覆うぐらいしか外に出れない。故に、絹旗は窒素の装甲を纏った怪力戦士のような戦い方をする。
そんな絹旗だが、かつて実験により一方通行の“『反射』の膜の機能”を得ることに成功しており、一定レベル以上の負荷が体に掛るとき、自動的に『窒素装甲』が展開するように、AIM拡散力場に記録されている。絹旗の身を守る機能がこれであり、強度は規格外、その精度も一方通行の『反射』に及ぶほどの自動防御機能となっている。
絹旗は回転方向を見つめる。
夏だというのに耳を覆い隠す深さまでニット帽を被り、こちらを睨みつけてくる男。
一方通行という成功例に至れなかった、失敗作の烙印を押された一人。
少しの間沈黙していた回転方向は、膝を折り、そして前方に跳躍した。
その加速力に驚きながらも、絹旗は途中で止めていた演算を完成させる。
能力者が、能力を使うとき、“演算”を必ず行う。『自分だけの現実』を確立することでミクロの世界の可能性を手に入れる能力者であるが、能力はその時その時の状況を踏まえた上で発動するものであり、現実の情報の入力とその現実と自身の起こす非現実を一致させるための計算、つまりは“演算”が必要となる。それは視界かもしれないし、それは音かもしれないし、それは匂いかもしれないが、とにかく、自分自身で認識した現実情報を元に、能力者は『自分だけの現実』を被せていく。科学知識のある者はそれを元に“世界の法則”を理解し、“演算”速度を早めることができるし、感受性の強い者は経験と直感で“世界の法則”を理解し、“演算”を省略することができる。どちらにせよ、能力の行使には“世界の把握”が必要となる。
既に“場”の情報は入力し終えていた絹旗であったが、近接格闘を主眼とするその戦闘スタイルにより能力効率的発動のためには対象の情報が特に大切となる。超能力者でもない限り、無駄打ちをする余力などないのだ。どのような方法を採るにせよ、“演算”を行うのは脳であり、疲労は脳の回転を遅くするのだから。
絹旗は回転方向の身長と体つきから、大まかな身体データを予測する。記録してあるデータベースから引き出してきたそれと、その身体の現在の傾きから予測される範囲内の身体の動きを元に回転方向との接触時に掛る負荷を計算、窒素展開の必要量の範囲を弾き出し、それをカバーできるように窒素展開の構成、配置を決める。そうして算出された“答え”が豪腕を生み出し、絹旗に宿る。
能力者同士の戦いは最初の一撃が肝心である。傷を負えば痛みを感じ、“演算”の集中に支障がでる。中途半端な“演算”での能力行使は大変危険であり、半分以上の確立で自身に害を及ぼす。
そして今。
ーーーー衝突。
かくして最初の接触は、絹旗が巻き込まれるように弾き飛ばされる結果に終わった。