ハイスクールD×D ~ 堕ちた疾風迅雷と深淵を司る龍 ~ 作:Mr.凸凹
うん。皆さんの紳士っぷりにオイラも感銘しました。
意外と同好の士がいて嬉しい限りです。
姉ちゃんと二人で各地を放浪して早一年半程の月日が流れた。
やはり二人で生きていくには様々な苦労が待ち受けていた。
幼い二人だけではまともな宿舎に泊まる事も出来ず、路銀の持ち合わせも心許なかった。
何事にもお金が要る。
世知辛い事だが仕方ない。
さすがに幼い俺や姉ちゃんを雇ってくれる奇特な人物はいなかった。
俺と姉ちゃんは路銀を稼ぐために原作通りに潜りの拝み屋していく事となっていった。
姉ちゃんは持ち前の優しさから幽霊達の話を聞いてもっぱら成仏出来るように導いている。
鈴を鳴らしながら神楽を舞って浄霊を行う際の姉ちゃんは神秘的で魅力的だ。
思わず見惚れてしまう。
話が通じない程理性が摩耗している悪霊は俺が力尽くで除霊していった。
以前姫島家の術者から複製した霊能関係の技が役に立った。
除霊の依頼者達とはそれっきりの関係が殆どだったが、中には俺と姉ちゃんの境遇を聞いて引き取りたいと申し出る人達もいた。
まあ、大概は下心全開で怪しい眼付きと荒い息で言い寄ってくる奴らだった。
さすがに貞操を売り渡すわけにはいかなかったので、
極少数だが善意で俺と姉ちゃんに接してくれる人も中には居たが、堕天使との
その際、まず間違えなく教会の関係者にしれてしまい、命を狙われもした。
俺は無条件に討伐されるつもりはないので、その都度に返り討ちにしていった。
まあ、大概は管轄外まで逃げ切ればそれ以上追っては来ないので、痛めつける程度ですんだ。
だが、姫島家からの追っ手達は痛めつければいい程甘くはなかった。
俺と姉ちゃんの命を狙って執拗に襲ってくる。
回数を重ねる毎に手強くなっていく刺客達。
俺は弥が上にも再び手を血で染めていく事しか出来なかった。
俺が血で手を染め上げる度に募っていく罪悪感は、何時しか闇となって少しずつ泥の様に心の底に積もっていった。
姉ちゃんが居なければ、俺はとっくに心が闇に飲み込まれて心身共に化物になっていたかもしれない。
はぐれ悪魔のテリトリーに侵入した事も何度かあった。
寝床を探して偶然に出会った事もあれば、除霊の延長として依頼された事もあった。
まあ、既に主の悪魔から離反したはぐれ悪魔を倒すだけなら戦争の引き金にはならないだろう。
既にそこいらのはぐれ悪魔程度なら苦戦せずに倒せるから問題はなかった。
問題があったとすれば、力を欲して倒したはぐれ悪魔の因子を吸収していった事である。
数体程度なら問題なかっただろうが、倒す度に吸収していたのは拙かった。
何時しか俺は堕天使の羽だけではなく悪魔の羽まで背中から生やしていた。
俺の背中からは四対の堕天使の羽と悪魔の羽、計八枚の羽を生やしていた。
最早俺は
俺は狼狽えた。
姉ちゃんと共に転生悪魔となるなら問題はなかった。
姉ちゃんは未だ堕天使と人間の
俺は姉ちゃんに罵倒される覚悟をしたが、逆に抱きしめられて困惑した。
姉ちゃん曰く、俺はどんな姿になっても愛しい弟だとの事だった。
俺が姉ちゃんに嫌われるのが怖くて無意識に避けていたのが辛かったと泣かれてしまい、自分の馬鹿さ加減に嫌気がさした。
日に日にお互いに依存し合っていく俺と姉ちゃん。
俺の方が姉ちゃんより幼い事は事実だが、俺は前世を覚えていて精神年齢も高くて、事実を知らなくても姉ちゃんにとっては頼り甲斐があったのはある意味誤算だったと言えるかもしれない。
四六時中一緒に行動しないと姉ちゃんは不安で情緒不安定となってしまう程に俺に依存していった。
幼いながらも何時しかそれは姉弟の愛情と言うより男女間のソレに近いものに変化していったと知った時には既に遅かった。
姉ちゃんは俺に過剰なまでのスキンシップを求めてきて、俺も最初は抵抗していたが姉ちゃんの涙には勝てずに何時しか流される様にそれを受け入れていった。
まあ、最後の一線は死守しているが時間の問題かもしれない。
俺の初体験は血の繋がった姉からの逆レ○プなんて、前世では二次元の話としては大好物な部類だった。
だが、いざ当事者になると洒落にならない。
誰か姉ちゃんを止めてくれ!!
ああ……ミッテルトちゃん、ヴァーリ。こんな事なら君達と経験しておくべきだったよ。
まあ、俺が童貞を捨てても姉ちゃんは諦めてくれないだろうけどね。
助けて、神様!!
俺が転生させてくれた神様に祈ると、にこやかに笑いながらビデオカメラ片手に手を振っているイメージが脳裏に浮かんだ。
ジーザス!!
神様なのに俗世に染まりすぎだろう!!
この世界の聖書の神に祈ろうにも既に死んでいるし、他の勢力の神にも知り合いはいない。
俺が胃痛で倒れるのが先か、はたまた姉ちゃんに喰われるのが先か、俺自身にも分からない。
まだ、姉ちゃんは俺が心底嫌がる事をしないから何とか紙一重で貞操は守られている。
だが、欲望が倫理観を超えればどうなるか分からない。
俺の貞操は風前の灯火と言えよう。
転生した理由も神様がうっかりと俺の魂の蝋燭の灯りを消してしまった事だったし、直ぐに吹き消えるイメージしか浮かばない。
少しでも時間を稼ぐために姉ちゃんと二人っきりの現状を打破しないといけない。
さすがに姉ちゃんも周囲の眼があれば自重するよね?
そうだよね?
誰か、そうだと言ってよ!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
そして、待ちに待っていた運命の時がやって来た。
T県のとある町で、悪魔と契約を交わして一時的に幽霊と話せる様になった人間と接触した。
その人間も最初は好奇心から始まった事だろう。
だが、己の力量を鑑みずに悪霊に話しかけたのは頂けない。
優しい姉ちゃんは案の定見て見ぬ振りは出来ずに悪霊をその人間から引き剥がして、俺が悪霊を現界を保てないぐらい痛めつけて除霊した。
大分衰弱していたが、その人間はお礼がしたいと申し出てきた。
だが、堕天使の血を引く姉ちゃんは首を縦に振らず、逃げる様に去っていった。
まあ、現実的に考えれば、悪魔の契約者とは相容れないからね。
俺もここで進んでグレモリー眷属の悪魔と接触するのはおかしいと思って姉ちゃんと共に去っていった。
町の打ち捨てられた寺で姉弟肩を寄せ合って雨露を凌いで行く。
「ごめんね、綾人……堕天使の血を引く私が悪魔と事を構える訳にはいかないよね」
姉ちゃんは俺にもたれ掛かりながら謝ってきた。
「気にする事ないよ、姉ちゃん……姉ちゃんはあの人間を救ったんだ。胸を張ってもいいさ」
俺は姉ちゃんを抱きしめながら耳元で囁いた。
「ありがとう、綾人……ねえ、
姉ちゃんは潤んだ瞳で見上げる様に俺の瞳を覗き込みながら訊ねてきた。
俺は無言で頷いて眼を瞑った。
「はむ……クチュ……チュバチュバ…‥」
俺を押し倒して口内を蹂躙する様に姉ちゃんの舌が侵入してくる。
静かな寺に深いディープキスの水音が響き渡った。
寺に潜って数日が数日が経った頃、寺に近づく悪魔の気配に気が付いた。
隠しきれない程の潜在能力が感じられる気配。
俺は畏怖しながら知らず知らずの内に生唾を飲み込んでいた。
寺の戸から息を殺しながら外の気配に眼を向けると美しい紅が映り込んだ。
今は俺以下の力しか発揮出来ていないかもしれない。
だが、幼いながらも彼女からは従うに値する気品や
姉ちゃんが俺を袖を引っ張る感覚に我に返った。
俺は無言で頷いて姉ちゃんの手を取って、足音と気配を殺して雑木林の陰に身を潜めた。
「もしここにいるならば、出てきてちょだい。私のお父様の眷属のテリトリーに侵入した事についてきちんと説明してくれるなら、咎める事なんてしないわ」
気高い
悪魔の貴族としては甘いのだろうが好感が持てた。
見る限り少しの打算が見て取れるが、下心らしきものは一切感じられない。
俺は姉ちゃんに頷いて一人で彼女の前に現れようとすると、姉ちゃんは瞳に強い意志を宿しながら俺の手を握って離さなかった。
俺は溜息を吐きながらも、姉ちゃんに微笑みかけながら一緒に立ち上がって彼女の前に現れた。
敵意がない事を示すために両手を頭の上に掲げながら歩いて行った。
「よかった……出てきてくれてありがとう。私は七十二柱が一柱のグレモリー家のリアスと言うわ。堕天使の血を引くと見受けられる貴方達の名前を尋ねてもいいかしら?」
名乗られたからにはこちらも答えなければならない。
俺は姉ちゃんに眼をやると、姉ちゃんは頷き返してきた。
「お初にお目にかかります、リアス姫……俺は姫島 綾人と申します。こちらは姉の朱乃……共に堕天使幹部のバラキエルの血を宿す者です」
俺の答えに一瞬眼を見開いたリアスさん。
だが、直ぐに納得したように頷いていた。
「なる程……だからあの修験者達は血眼になって貴方達を探しているのね……事情を聞いてもいいかしら? それで取引しましょう。悪魔に取って契約は絶対だから悪いようにはしないわ」
リアスさんは右手を差し出しながら微笑みかけてきた。
俺と姉ちゃんは一瞬見詰合ってからその手を握り返した。
寺の境内に不似合いのテーブルセットが用意されて、執事風の悪魔が甲斐甲斐しく給仕をしている。
紅茶で喉を潤しながら俺はリアスに全ての事情を話した。
無論、
その際、論より証拠とばかりに背中から羽を出しながら説明を行った。
まあ、転生者云々の事は黙っておいたけどね。
「まさか、堕天使の血を引く者が
頬杖をつきながら興味深そうに俺を見詰めてきているリアス。
行儀悪いと執事の悪魔に窘められて、バツが悪そうに姿勢を正した。
「しかも変則的とは言え、悪魔の血をも宿しているなんて……姉の朱乃だけじゃなくて貴方も私の眷属にしたいぐらいだわ♪」
リアスさんは眼をキラキラと輝かせながら俺の手を取りながら微笑んでいる。
「おほん! ……一つ聞いていいかな?」
姉ちゃんは一見にっこり微笑みながら俺とリアスさんを交互に見ながら訊ねている。
まあ、眼がちっとも笑ってなく背に怒りの
「なっ、何かしら?」
リアスさんは少し身を引きながら訊ね返した。
その際、リアスさんが俺の手を離した事で姉ちゃんの
「……何故、私達を眷属に迎え入れたいのかしら? 私達が堕天使の血をひいているから?」
「質問を返すようで悪いけど、貴方は悪霊に取り憑かれた人間を助けたでしょう? それはどうしてかしら?」
「……助けてって、言われたから、つい」
リアスさんは姉ちゃんの答えに大きく頷いて微笑んでいる。
「そう、それ! 優しい堕天使! 絶対に眷属にしたいと思ったわ!」
その台詞に呆気に取られている姉ちゃん。
だが、その表情は直ぐに笑顔へと変わった。
「うふふ♪」
姉ちゃんの笑い声に怪訝な表情で首を傾げているリアス。
助けを求める様に俺に視線を向けてきた。
「私……へっ、変な事いったかしら?」
「ええ、まあ……いくら今は三大勢力が疲弊していて三竦みの状態で事実上停戦状態でも、敵対勢力の堕天使の血を引く者を眷属に迎え入れるには大きなリスクを伴います。一悪魔の貴女の判断で戦争の引き金を再び引くつもりですか?」
俺は原作を読んでから常々疑問に思っていた事を真剣な表情で訊ねた。
「確かに、私の一存では決められない事かもしれない……でも、私が見捨てれば貴方達は姫島家の本家の者達に殺されてしまうかもしれない。そんなの出来ないわ!!」
一瞬たじろいだリアスさんは瞳に決意を宿して言った。
「それに貴方達が襲われているのにちっとも手助けしてない
極論だが一理あるか。
まあ、陰ではアザゼルさんが窮地を救ってくれているらしいけどね。
実際にその事を目の当たりにしていないから何とも言えない。
納得しきれないが、あまり警戒しすぎるのも馬鹿らしい。
原作でもそれ程問題にはならなかったから抜け道があるんだろう。
俺は溜息を吐きながらも姉ちゃんを訊ねる様に見詰めた。
「私は綾人と同じ存在になれるなら眷属になってもいいよ……綾人はどうするの?」
姉ちゃんは俺を抱きしめながら覗き込む様に見詰めてきている。
リアスさんは俺の答えを息を飲んで待っている。
「リアス姫……悪魔の貴女と契約を交わします。俺と姉ちゃんを貴方達、グレモリー家の縁者として迎え入れて下さい。そして俺達の出生を丸ごと迎え入れた事を姫島家に伝えて下さい。俺達が姫島家に狙われなくなったら、喜んで貴女の眷属悪魔になりましょう」
「契約成立ね! 改めてよろしく、朱乃、綾人。今日から貴方達は私の家族よ!」
リアスさんは嬉しそうに俺と姉ちゃんを抱きしめながら小躍りをしている。
姉ちゃんも嬉しそうにそれを受け入れている。
俺も苦笑と言えるが笑みを浮かべながら受け入れた。
原作通りに姫島家が二つの条件を出してきて、俺と姉ちゃんの身柄をグレモリー家預かりと認めて手を出さなくなった。
そして俺と姉ちゃんはリアスさんに連れられて冥界の煌びやかで豪華絢爛なお城のグレモリー家に特別待遇で迎え入れられた。
そこからは各地を放浪していた約一年半程の苦労が立ち消えるほど、再び暖かい愛に包まれて生活していけた。
懸念していた悪魔と堕天使の戦争の引き金も引かれる事はなかった。
特に暫く顔を出していなかったが俺の身柄は一応
リアスさんの実兄で魔王であるサーゼクス様がアザゼルさんと裏で交渉を行ってくれたようだ。
旧魔王家の血を引くヴァーリの事を俺が漏らしてしまったために、表向きは人質交換の体を取ったらしい。
それだけでなく俺と姉ちゃんの身柄を引き受けるために莫大な移籍金と将来リアスが受け継ぐ領地の一部が、
後は定期的に、ヴァーリの懇願として非公式にだが手合わせを再開する事も義務付けられた。
お互いに堕天使や悪魔の上位の者達の監視の元だが再開出来た事は素直に嬉しかった。
ヴァーリの付き添いにはミッテルトちゃんもやって来ていた。
ミッテルトちゃんは俺が悪魔所属になった事は複雑な気持ちだった上に、ツンデレを遺憾無く発揮して素直じゃなかった。
だが、以前よりは仲が深まった気がしている。
まあ、姉ちゃんがミッテルトちゃんやヴァーリと意気投合したのは嬉しい誤算だったかな?
でも姉ちゃんが事有る毎に俺に過激なスキンシップを取るのに触発されたのか、ミッテルトちゃんとヴァーリが俺に今まで以上に過激なスキンシップと言える程のセクハラをしてくる様になったのは勘弁して欲しい。
俺だって健全な男の子だ。
好意を抱いている相手にそんな事をされては、理性を保てる自信がない。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
リアスさんがジュニアハイスクールに入学した頃、
リアスさんが
これは異例中の異例と言える事で、四大魔王の一柱であるアジュカ様も大変興味を持ったようだ。
まあ、
姉ちゃんは原作通りに
これでは駄目だと姉ちゃんは俺から魔法を習って防御の魔法を中心に習得していく事になった。
そして、未だに堕天使の血の事は毛嫌いしているが、俺が光力を惜しげもなく使っている事に影響されてか光力も徐々に扱える様になっていっている。
願わくばこの事が一日でも早い父さんとの和解の切っ掛けとなる様に祈ろう。
俺は勿論
劇的に上がった力と防御力に最初は振り回されていたが、直ぐに慣れていった。
誤算があるとすればランダムで俺が堕天使の血を引くことになって、魔法に無意識に光力が自然と混ざり込めてしまう事だ。
悪魔となった俺に取っては光力は弱点となり、
対策は思いついてはいるが、暫くは実行は難しいだろう。
これは暫く
まあ、一応色々あって以前よりは心に闇が巣食っていると言えるから、制御出来る可能性は出て来ているので無理に行使しなくてもいいか。
今は持てる力を少しでも効率よく使用できる様に修行を重ねて行こう。
幸いにも姉ちゃんに魔法を教えていく事になって、一から魔法の事を考え直す機会が出来た。
いくら転生位特典で十全に操れる知識を有していても研鑽していかなければ宝の持ち腐れだ。
この世界のパワーインフレは甚だしい。
自身の能力の向上や、仲間達のパワーアップも必須である。
今一度、心に深く刻んで今生をより良いものに出来るように努力を重ねていこう。
いくら原作知識を有しているからと言っても思い通りなるとは限らない。
意志を貫くには力が要る。
それも唯の力ではなく心の底から湧き出した意思が篭ったものが必要だ。
しかも、自分一人の力で変えられるものは少ない。
驕らず仲間を頼ってこれからの困難に立ち向かって行こう。