ハイスクールD×D ~ 堕ちた疾風迅雷と深淵を司る龍 ~   作:Mr.凸凹

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第04話

 

 

 

 

 

 雨が降りしきる黄昏時。

 俺の今の心情を表すかの様な大粒の雨模様だ。

 今日はミッテルトちゃんは用事があったらしく会えていない。

 それで何処か上の空で、手合わせ中にヴァーリに身が入っていないと怒れれてしまった。

 俺は己の不甲斐なさに思わずため息を吐いてしまう。

 

 少し歩きたい気分なので家から離れた場所に魔法陣で転移した。

 傘も差さずに雨に濡れて歩いていく。

 

 家の側まで帰ってくると違和感を感じた。

 敷地の中から複数人の気配が感じられる。

 しかもご丁寧に殺気や怒気まで感じられる。

 

 まっ、まさかっ!!?

 くそ!! 選りに選って今日が襲撃日かっ!!?

 

 俺は焦る気持ちを抑えられずに走り出した。

 

「待っていたぞ、穢れた異形の血を宿し者の片割れよ! 今ここで疾く果てよ!!」

 

 リーダー格の男が言い放つと周りの男達が呪符を散蒔く。

 すると呪符から護鬼達が魑魅魍魎の如く湧き出してきた。

 その様は正に百鬼夜行と呼ぶに相応しい光景だった。

 

 俺は一度深呼吸をしてから焦る気持ちを無理矢理落ち着かせた。

 

 落ち着け、姫島 綾人。

 まだ最悪の状態じゃない。

 焦って時間を取られるより、冷静に対処して最短時間で母さんや姉ちゃんを助けに行く。

 

『Count Down!』

 

 一応努力はしているがまだまだ修行不足と言えるので禁手化(バランスブレイク)するには少しばかり時間が掛かる。

 しかもその間は吸収無効化は使用できない。

 魔法や体術のみで敵を往なす必要がある。

 

 こんな時こそ闇の魔法(マギア・エレベア)が完全に習得できていればいいのだが、俺の前世は平凡なアラフォーの汚っさんだったので心の闇なんてご大層なものは持ち合わせていないし、全てを受け入れられる気概も持ち合わせていない。

 何とか形にするだけは出来ているが、殆ど見掛け倒しで使い物にならないどころか心身共に蝕まれてしまう。

 幾ら転生特典で使用出来る土台と十全に操るための知識を持っていてもこれでは宝の持ち腐れである。

 

 だが、今は無い物強請りはしても仕方が無い。

 俺の敗北は自身の死だけでなく、母さんや姉ちゃんの死へも直結するだろう。

 原作通りなら姉ちゃんだけは助かるかもしれないが、原作知識が役立つかどうかは甚だ疑問だ。

 参考程度ならいいが、原作知識を当てにしすぎると手痛いしっぺ返しを受けるだろう。

 何せ、男な筈のヴァーリが俺っ娘だったしね。

 まあ、ヴァーリはアレで俺にとって良い変更点と言えるけどね。

 

 思考に半ば埋没していると周囲を囲む様に護鬼達が跋扈してきている。

 術者達は俺の瞬動術の間合いの外から弓矢を構えている。

 

 護鬼達が一斉に襲いかかってきて、合間を縫う様に呪禁を込められた矢が打ち込まれてきた。

 

 直ぐ様、思考を戦闘モードへと切り替えていく。

 護鬼達の攻撃は如何せんヴァーリの攻撃に比べると練度が低くて魔法障壁を手に集中させた風楯(デフレクシオ)で簡単に防げる。

 俺はカウンター主体で桜華崩拳を打ち込んでいき、護鬼達を核となっている呪符ごと破壊して送還していく。

 呪禁を込めた矢は当たれば驚異だが、問題なく対処出来ている。

 問題があるとすれば、俺がここで足止めされている内に別働隊が母さんや姉ちゃんを害する事である。

 

 護鬼達は一撃で倒す事が出来るが、次から次へと新たに投入された呪符から召喚されていって限がない。

 

 ここは一つ大技で術者ごと倒す必要がある。

 俺に相手を殺す覚悟が持てなくて、生かしたまま無力化するの難しいと頭では分かっている。

 俺にそこまでの技量があるとも思えない。

 母さんと姉ちゃんの安全と俺が手を汚す事を天秤に掛けて思わず悩んでしまう。

 

 悩むな! 姫島 綾人!!

 殺らなくて手間取って母さんや姉ちゃんが害されるより、殺って直ぐ様に助けに行って母さんや姉ちゃんが明日も笑って生きられるなら、後者を選ぶべきだ!!

 

 神様。折角祝福をくれて魂を予約してくれたが、俺は修羅道へと堕ちるかもしれない。

 それでも見捨てないなら、蛮勇でも構わない。俺に一握りの勇気をくれ!!

 

「ナラカ……」

『ああ……私は綾人を否定はしない。罪は私も一緒に背負おう』

 

 生まれ変わった時から連れ添った相棒(ナラカ)が一緒なら、俺の心は荒まず壊れずにすむだろうか。

 

魔法の射手(サギタ・マギカ)!! 連弾(セリエス)光の97矢(ルーキス)!!」

 

 俺は詠唱破棄で光の矢を散蒔いて派手に攻撃して煙幕を張って自身の姿を隠した。

 そして堕天使の羽を背中から四枚出して上空へと一気に駆け上がった。

 俺は半ば罪悪感を押し殺して、炉端の石を見詰める様に眼前の敵を見下ろした。

 

 烏天狗等の羽を持った護鬼達が慌てた様子で俺に迫ってきている。

 弓矢も射程距離外だ。

 十分な間合いを持って呪文を唱える時間が稼げた。

 

「ハイティ・マイティ・ウェンディ! 契約により我に従え(ト・シュンポライオン・ディアコネートー)高殿(モイ・バシレク・)の王(ウーラニオーノーン)来れ巨神を滅ぼす(エピゲネーテートー・アイタルース)燃ゆる立つ(ケラウネ・ホス・ティテーナス・)雷霆(フテイレイン)遠隔補助(ヤクトゥム・エクステンデンテース)魔法陣展開(キルクリ・エクシスタント)第一から第十(カプテント・オブイェクタ・アー)目標捕捉(プリームム・アド・デキムム)範囲固定(アーレア・コンステット)域内(イントゥス・セー・)精霊圧力(プレ マント・スピリトゥス)臨界まで(アド・プレッスーラム・)加圧(クリティカーレム)(トリプス)……(ドゥオーブス)……臨界圧(モド)拘束(カプトゥラム・)解除(ディスユンゲンス)(オムネース・)(スピリトゥス・)(フルグラノレース)全力(フォルティッシメー・)解放(エーミッタム)!! 百重千重と(ヘカトンタキス・カイ)重なりて(キーリアキス)走れよ(アストラ)稲妻(プサトー)!! 千の(キーリプル・)(アストラペー)!!!!」

 

 堕天使の光力を混ぜ込んだ稲妻が敵全体を蹂躙する様に飲み込んだ。

 

 激しい爆音と稲光が収まると護鬼達は消え失せて、術者達は黒焦げで煙を吐きながら倒れ臥している。

 

 俺は一瞬眉を顰めたが、無表情でその光景を眼に焼き付けた。

 意識すると罪悪感が沸き起こり、嘔吐いてしまいそうだ。

 

『綾人、気にするなとは言わん。だが、あまり気に病むなよ……それと禁手化(バランスブレイク)の用意が出来た。何があるか分からんからな。禁手化(バランスブレイク)しておけ』

「ああ……禁手化(バランスブレイク)!!」

 

 俺は己の想いを込めて不安を吹き飛ばす様に叫んだ。

 

『Abyss Dragon Balance Breaker!!!!』

 

 淵龍王の盾(アブゾーブ・シールド)が一度漆黒の闇の如きオーラへと変化して全身を覆った。

 オーラは全身を隈無く包み込んで漆黒の鎧へと変化した。

 未完成時と違って胸元から腹に掛けて牙が噛み合った大きな顎門がデザインされている。

 

 禁手(バランスブレイカー)は亜種化しており、銘は淵龍王の喰種鎧(アブゾーブ・グール・メイル)である。

 通常能力は防御だけでなく攻撃でも対象の力を吸収して奪う。

 奪う力は触れていた時間や手数に応じて吸収率が変化する。

 更に亜種化の能力は弱らせた対象から奪った血肉を因子に変化させて吸収する事である。

 そして吸収した因子で対象の能力を複製して身に付ける事が出来る。

 その上、吸収した因子で己の力の限界値を引き上げられる。

 こちらも所有者の力量に寄って吸収限界値が上がる。

 

 俺は焼け焦げた術者達に手を触れた。

 

『drain!』

 

 姫島家所属の術者達の因子を吸収する。

 倒した相手を無駄にせずに文字通り己の糧し、その命を奪った罪諸共飲み込んでいく。

 

 短く黙祷を捧げた。

 そして気持ちを切り替えて母屋へと駆け出していった。

 

 その際、走りながら呪文を詠唱しておいて魔法を貯めておいた。

 

 

 

 

 

 母屋へと駆け込んだ俺が眼にしたのは血塗れの母さんを抱きしめながら泣いている姉ちゃんの姿であった。

 母さんは肩で荒く息をしていて瀕死の状態だ。

 痛々しい傷口から血を流して巫女装束を真っ赤に染めている。

 

 その傍らには血のこびりついた刀を持った男が佇んでいた。

 

 遅かったのかっ!!?

 くそ!! 俺は何の為に力を欲したんだ!!?

 何のためにこの手を血で汚したんだ!!?

 

 心に闇が巣食っていく感覚に陥っていきそうになる。

 俺は眼の前の現実に膝を折りそうになった。

 

 だがそれでも諦める訳にはいかない!

 まだ、母さんは死んでいない!

 だが、早く治療しないと命に関わる。

 

 俺は瞬動術を使って一気に母さんと姉ちゃんを庇う様に男の対峙した。

 

「あっ、綾人なのっ!? 母さまが私を庇って……!!」

 

 姉ちゃんが半狂乱になりながら母さんに縋っている。

 

「遅れてごめん、姉ちゃん……直ぐにこいつを倒すから母さんをお願いするよ」

 

 俺は男から視線を外さず睨みつけながら、姉ちゃんを落ち着かせる様に成るべく優しい声色で語りかけた。

 

 一応巻き込まない様に母さんと姉ちゃんを矛盾の檻(パラドックス・ケージ)で包み込んだ。

 

「その姿は……なる程、神器(セイクリッド・ギア)か。しかも、その年齢で既に禁手化(バランスブレイク)しているのか。末恐ろしいな。やはり驚異の芽は絶たねばなるまい」

 

 男は一瞬驚きに眼を見開いたが、直ぐに刀を中段に構えて隙のなくじりじりと間合いを測っている。

 

「悪いけど時間がないから手加減出来ないよ……開放(エーミッタム)魔法の射手(サギタ・マギカ)!! 連弾(セリエス)光の1001矢(ルーキス)!! 桜華乱舞!!」

 

 俺は予め貯めておいた魔法をオリジナルの乱打と共に開放した。

 

『absorb! absorb! absorb! absorb! absorb! absorb! absorb! absorb! absorb!absorb! absorb! absorb! absorb! absorb! absorb! absorb! absorb! absorb!』

 

 相手も霊力の篭った刀で防御するも乱打が当たる度に霊力を吸収していき、遂には罅が入って砕け散った。

 驚愕の表情に歪んだ男の身体に乱打を浴びせて更に霊力を吸収していった。

 

「がっはぁっ!!?」

 

 男は全身骨折を負いながら吹き飛んで気を失った。

 

『Limit Over!』

 

 相手の霊力が高かったせいか、吸収限界値を超えた霊力が刃となって俺の身体を傷つけた。

 俺は全身傷だらけになり血を流しながら膝をついた。

 さすがに禁手(バランスブレイカー)を維持出来なくなり淵龍王の喰種鎧(アブゾーブ・グール・メイル)は霧散する様に解けてしまった。

 母さんと姉ちゃんを包んでいた矛盾の檻(パラドックス・ケージ)も解けてしまっている。

 

「あっ、綾人!! 大丈夫っ!!?」

 

 母さんを抱き抱えたまま姉ちゃんが目尻に涙を溜めながら訊ねてきた。

 

「うん……なんとかね。俺の事より母さんだ!」

 

 俺は母さんの脈と呼吸を確認した。

 微弱だがまだ持ち堪えていた。

 だが残された時間は少ない。

 あまりにも血を流しすぎている。

 

「姉ちゃん……酷だけど、立てるかい? 母さんを病院に連れて行かないといけない。救急車を呼んでくれ」

 

 血を流している影響で俺も気を失いかねない。

 俺は術者から力を奪った際に序でに手に入れていた治療符で、母さんと俺自身を応急手当しながら頼んだ。

 

「うっ、うん! 分かったの!!」

 

 姉ちゃんは慌てた様子で駆け出していった。

 

 俺はその様子を見ながら余談を許さない状況に歯軋りをしていた。

 

 くそ!!

 詳しい時期は分かっていなかったが襲撃がある事は理解出来ていた。

 それなのに未然に防ぐ事は出来なかった。

 やはり、一人では出切る事が限られている。

 これからも襲撃はあるだろう。

 誰かに頼る勇気も必要か。

 だが、堕天使の血を引く俺や姉ちゃんが頼れる人物は限られている。

 神の子を見張る者(グリゴリ)に頼るのも手だが、それでは原作とあまりに乖離してしまう。

 俺のエゴだが折角転生したのだから成るべく原作の流れは踏襲したい気持ちも確かにある。

 まあ、俺だけで思い悩まずに姉ちゃんに相談しよう。

 問題は原作知識を説明せずに姉ちゃんを説得出来るかだよな。

 

 俺は思わず深い溜息を吐いていた。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと母さんは何とか一命を取り留めた。

 だが血を流しすぎていて意識が戻らなかった。

 

 俺は幸い流した血の量が少なかったからか輸血すると直ぐに動けた。

 だが心はどこか軋んでいて、憔悴した表情の姉ちゃんの手を握りながら一緒に母さんの側にいた。

 

「ねえ、綾人……?」

 

 姉ちゃんは憔悴から目尻に隈を作っていた。

 その表情は思い悩んでいる様で固かった。

 

「何、姉ちゃん?」

 

 俺は姉ちゃんを安心させるために抱きしめながら耳元で囁く様に聞き返した。

 

「姫島家の本家の人達が襲ってきたのは、私が堕天使の血を引いているからだよね?」

「うん……多分、間違いなくそうだろうね。姫島家の人達からしたら汚点……母さんは堕天使に奪われて手篭めにされて、俺と姉ちゃんは産み落とされた忌み子として認知されているだろうね」

 

 巫山戯るなよな!!

 母さん父さんは心の底から愛し合っていた。

 その愛の結晶が姉ちゃんと俺なんだ。

 まあ、お互いの愛情表現は世間一般から離れているけどね。

 

「私達って生まれてきちゃ駄目っだったのかな?」

 

 姉ちゃんは涙を流しながら呟くように訊ねてきた。

 

「そんな事はないよ、姉ちゃん……例え、姫島家の本家が俺達を否定しても、母さんが俺達を心の底から愛してくれているのは間違えじゃないんだから!」

 

 俺は力強く姉ちゃんを抱きしめながら答えた。

 

「そうだよね……母さまは愛してくれているんだよね。でも、私が堕天使の血を引いているから母さまは……」

 

 姉ちゃんはどんどん不安になって悪い方向へと精神が陥っていっている。

 

「姉ちゃんは俺の事嫌い?」

 

 俺は鬱に成りかけている姉ちゃんに酷なようだが訊ねた。

 

「綾人は大切で大好きな弟だよ!!」

 

 姉ちゃんは涙を流しながらもしっかりと俺の眼を見つめて力強く言った。

 

「うん。俺も大好きだよ、姉ちゃん。だから自分の事を嫌いにならないでね」

 

 俺は精一杯の笑みを浮かべて姉ちゃんの眼を見つめ返した。

 

 姉ちゃんはぎこちないながらも微笑み返してくれた。

 

 

 

 

 

 病院側の好意で今日は母さんの病室に泊まる事が出来た。

 簡易ベッドを二つ並べて姉ちゃんと寄り添うように横になる。

 さすがに病院には襲撃は来ないだろう。

 一応警戒はしておくに越した事はないが、休める時はしっかりと休息を取っておこう。

 

「ねえ、綾人? やっぱり母さまとは一緒に居れないよね。私達が一緒に居れば今度こそ母さまは死んじゃうかもしれない」

 

 姉ちゃんは俺の手を取り、幼いながらも瞳に決意を宿しながら訊ねてきた。

 

「そうだね。俺たちだけじゃそうかもしれない。でも、母さんは然るべき所……例えば、神の子を見張る者(グリゴリ)の施設に預けて、俺達も保護してもらうのが一番理想的だと思う」

 

 俺は自身も迷いながら姉ちゃんに意見の提案をした。

 

「確かにそれがいいのかもしれないね……でも、私の我儘かもしれないけど父には、堕天使には頼りたくない! 母さまや私が襲われているのに父は助けに来てくれなかった!! 助けに来てくれたのは綾人だけだった!! それに私が憎悪を向けれらたのは父の、堕天使の血を引いているせいなんだよ!!」

 

 姉ちゃんは己の心を守る様に胸中を吐露してぶちまける様に言い放った。

 

「落ち着いて、姉ちゃん……確かに俺達に流れている堕天使の血のせいで襲われたかもしれない。でも、俺が姉ちゃんを守れたのは堕天使の血を引き、神の子を見張る者(グリゴリ)で鍛えられたからだよ」

 

 まあ、それもあるが転生特典に因るところが大きい気もするけどね。

 

 俺は姉ちゃんを抱き寄せて頭を撫でている。

 

「でも……でも……」

 

 姉ちゃんは己の恐怖心と俺の言葉に板挟みになって混乱している。

 これ以上は姉ちゃんの精神が壊れるかもしれない。

 幼い心に負った傷は簡単には癒せない。

 

「安心して、俺は姉ちゃんの味方だから……絶対に守るからね。姉ちゃんが望むなら二人で生きていこう」

 

 俺は姉ちゃんを安心させる様にゆっくりと耳元で囁いた。

 

「ありがとう……ごめんね。ごめんね、綾人」

 

 姉ちゃんは涙を流しながら俺の胸元で蹲る様にしている。

 暫く無言で姉ちゃんの頭を撫でていると寝息が聞こえてきた。

 

「おやすみ、姉ちゃん……」

 

 俺も姉ちゃんを抱きしめたまま微睡んでいく。

 

 幼い俺達が放浪しながら生活するのは厳しいだろう。

 しかも堕天使から距離をおくと言う事はミッテルトちゃんやヴァーリと離れ離れになると言う事だ。

 心に傷を負った姉ちゃんを一人には出来ないから仕方ないか。

 俺が一緒にいないと姉ちゃんは本当に壊れてしまうだろう。

 少しの辛抱だ。

 リアスに出会って眷属となり、心が許せる仲間が増えれば姉ちゃんも弟離れしてくれるだろう。

 そうすれば、時間も取れてなんとかなるだろう。

 

 この時、俺は姉ちゃんと自分の気持ちを天秤に掛けて、迷いもあったが姉ちゃんを選んだ。

 後悔はなかったが、果たしてこの答えが正解なのかは今はまだ分からない。

 願わくば、姉ちゃんが心の底から笑える日々が再び来ると信じよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=69744&uid=1327

活動報告に朱乃をヒロイン化するかどうかのアンケートがあります。
ご意見お待ちしています。(終了しました)

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