ハイスクールD×D ~ 堕ちた疾風迅雷と深淵を司る龍 ~   作:Mr.凸凹

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第03話

 

 

 

 

 

 夢を観ていた。

 その内容は朧気ではっきりと覚えていないが、先程眼に焼き付いたヴァーリの幼いながらも引き締まった芸術的な裸体を見た影響だろうか、淫夢の類だった気がする。

 画面越しにではなく己の眼で見た穢れのない幼いながらも引き締まった異性の肢体。

 未だ未成熟の愚息に血液が集まっている様に感じられるのは、前世からの精神年齢の高さからなんだろうか?

 まあ、未成熟な身体でも精神年齢の高さからか性欲が間違えなくあるからだろうな。

 前世なら間違えなく夢精してしまっていただろう。

 

 夢見心地から段々と覚醒していくと、自分が拘束されている事に気が付いた。

 手足や首元と腰にベルトが巻かれている。

 どうやら手術台に固定されている様だ。

 

「これは……?」

「よぉ、目が覚めたか? ……さてと、一応懺悔の時間はくれてやる。精々、己の罪深さを悔いるといいさ」

 

 声に視線を横に向けると仏頂面なアザゼルさんが佇んでいた。

 

「あっ、あのぉ~アザゼルさん? 聞くまでもない事ですけど、不可抗力とはいえヴァーリをひん剥いた事に怒ってます?」

 

 俺が尋ねるとアザゼルさんは蟀谷をひくつかせながら睨む様に見下してきている。

 

「嫁入り前の可愛い義理の娘を辱められたんだ……父親として断固としてお前を糾弾する!!」

 

 アザゼルさんって、こんな親馬鹿キャラっだったのかっ!!?

 拙い! 非常に拙い!!

 俺は血の気が引いた様に感じられる身体に魔力を流して身体強化を行おうとする。

 だが何故か小源(オド)を上手く錬れない。

 

「無駄だ。その拘束具はありとあらゆる力を阻害する。勿論、神器(セイクリッド・ギア)も例外じゃない」

 

 怒りに満ちながらもどこか自慢気なアザゼルさん。

 

「さあ、先ずはヴァーリに不埒な真似が出来ない様に去勢してやる!!」

 

 メスと注射器を手に持ちながら躙り寄ってくるアザゼルさん。

 その眼には狂気が宿っていた。

 

 じょっ、冗談じゃない!!

 犬猫じゃあるまいし、性交も経験しないまま終われるかぁ~!!

 

 焦る思考を無理矢理押さえ込んで、呼気を整えて全身の筋肉に力を入れていく。

 だが、やはり拘束具はびくともしない。

 

 徐々に距離が詰まってくる恐怖に思わず眼を瞑ってしまう。

 

 正に首筋に注射器の針が宛てがわれた瞬間、部屋の扉が蹴破られる様に開け放たれた。

 

「アザゼル、何をしているんだ?」

 

 聞き覚えのある声に眼を開けると、どこか呆れと安堵の表情が入り混じったヴァーリが仁王立ちしていた。

 

「いっ、いや……こっ、これは……そっ、その……」

 

 一転して狼狽えた様子のアザゼルさん。

 

 助かった。もう少しで物理的にお婿に行けない身体にされるところだった。

 

「やっぱり言えないか。仕方ない……()()()()()()()()!!」

 

 侮蔑の表情で一言一句吐き捨てる様に言い放ったヴァーリ。

 

「はぅ!!?」

 

 アザゼルさんはショックに打ち拉がれて気絶して倒れ込んでしまった様だ。

 そのアザゼルさんを無視するかの様に俺に歩み寄ってくるヴァーリ。

 

「大丈夫か、綾人? 今、拘束を解いてやるからな」

 

 頬を僅かに朱色に染めながら俺と目線を合わさない様にベルトを外していくヴァーリ。

 

 暫く続いた無言の空気に俺も思わずヴァーリから視線を逸らしてしまっていた。

 

 

 

 

 

 顔を合わせようとしないヴァーリに手を引かれて長い廊下をお互いに無言で歩いていく。

 

 暫く歩いているとヴァーリの私室らしい部屋の前にたどり着いた。

 扉には意外と乙女チックなネームプレートが付けられていた。

 

「小汚い部屋だけど、上がってくれ」

「ああ……お邪魔します」

 

 誘われるままヴァーリの私室へと入っていった。

 その部屋は殺風景とまではいかないものの、必要最低限の家具しか置かれていなかった。

 

 ヴァーリはベッドに腰掛けて、無言で隣を叩いて俺に座る様に促している。

 

 俺は生唾を飲み込みながら、ヴァーリから少し離れて腰を下ろした。

 

「「……あっ、あの!! そっ、そっちからどうぞ」」

 

 お互いに同時に振り向いて眼が合い、譲り合う俺とヴァーリ。

 

「…………」

「…………」

 

《コンコンコン》

 

 気まずさと恥ずかしさで黙り込んでしまった空気を払拭する様にノックが響き渡った。

 

「失礼するっす。飲み物をお持ちしたっすよ」

 

 扉越しにミッテルトちゃんの声が掛けられた。

 

「ありがとう、鍵は掛かってないから入ってきてくれ」

 

 ホッとした様な表情を浮かべながら促すヴァーリ。

 

「お邪魔するっすよ」

 

 お盆を片手に掲げて扉を開けて入ってきたミッテルトちゃんは若干怯えた様子で部屋に入ってきた。

 俺と眼が合うと安堵のため息を小さく吐いた。

 そして、俺とヴァーリの距離感を見て、嫉妬からか若干眉を顰めた気がした。

 

 

 

 

 

 

 ミッテルトちゃんが持ってきてくれたジュースを飲み干して一息吐くと、緊張も少しは和らいだようだ。

 それはヴァーリも同じな様で、中性的な笑みを浮かべながらミッテルトちゃんを後ろから抱きしめながら、向き合った俺を見詰めてきている。

 

「ああ……やっぱり女の子は良いね。暖かい上に柔らかいし、良い匂いで落ち着くよ」

 

 ミッテルトちゃんの首元に鼻を近づけながら恍惚の表情で匂いを嗅いでいるヴァーリ。

 そしてされるがまま、緊張で凝り固まっているミッテルトちゃん。

 

 俺は助けを求めてきているミッテルトちゃんの視線に、多少苦笑しながら頷き返した。

 

「ヴァーリ……ミッテルトちゃんが困っているから離してあげてくれないか?」

「嫉妬かい、綾人? もうちょっと堪能したいけど仕方ないか」

 

 俺の言葉に渋々といった表情でミッテルトちゃんを開放したヴァーリ。

 ミッテルトちゃんは直ぐ様ヴァーリから離れると、俺の背に隠れる様に凭れ掛かって肩越しにヴァーリの様子を伺っている。

 

「おや、羨ましい……まあ、あんな事を言って嫌われてしまったかな?」

 

 ヴァーリはおどける様に肩を竦めながら眼は楽しそうに笑っている。

 だが直ぐに真剣な表情をして身を正した。

 

「俺としては可愛い女の子とは仲良くしていきたいんだ……綾人を焚きつける為とは言え、君を出汁にして悪かった。本当にごめん」

 

 ヴァーリはしっかりと頭を下げながらミッテルトちゃんに謝ってきている。

 

「頭をあげて欲しいっす。確かに驚いたっすけどね……不甲斐ない綾人が悪かったって事で手打ちにするっすよ」

 

 ミッテルトちゃんは手を差し出しながら、若干ぎこちなさが残るものの笑みを浮かべている。

 

「ありがとう……」

 

 ヴァーリは嬉しそうな笑みを浮かべてミッテルトちゃんの手を握り返した。

 

 

 

 

 

「さてと……次は綾人の弾劾裁判を開廷するっすよ」

 

 暫く俺をほっといてヴァーリと談笑していたミッテルトちゃんが徐に俺に指を突きつけながら言い放ってきた。

 ヴァーリは一瞬きょとんとした表情を浮かべたものの、思い当たったのか若干頬を染めながら俺を上目遣いに見詰めてきている。

 

「罪状、被告人姫島 綾人……幼気なる少女をあろう事か無理矢理ひん剥いた罪は万死に値するっすよ!! 被害者ヴァーリ。被告人にどんな刑を執行するっすか?」

「えっと……確かに裸を見られたのはちょっと恥ずかしかったけど……まあ、悪気があった訳じゃなそうだし……」

 

 ヴァーリは俺をちらちらと盗み見る様に見てきている。

 

「甘い! 甘いっすよ、ヴァーリ!! 乙女の柔肌を晒してあろう事か眼を背けずに凝視したんっすよ!! せめて慰謝料をふんだくる事ぐらいはしないと駄目っすよ!!」

 

 腰に手を当てながらヴァーリに詰め寄るミッテルトちゃん。

 

「えっと……じゃあ、これからも俺と手合わせを欠かさずするって事で……」

 

 ヴァーリはミッテルトちゃんの勢いに押されながらも自分の意見を述べた。

 

「本当にそれだけでいいっすか? 何なら責任を取らせて婚約って事にしてもいいっすよ?」

 

 どこか面白そうにヴァーリに訊ねているミッテルトちゃん。

 

「あっ、それはいいさ……やっぱり結婚するとなると俺より強い奴じゃないとな。綾人は及第点はやれるが、まだまだ負ける気はしない」

 

 好戦的な笑みを浮かべながら俺を見下す様に見詰めてくるヴァーリ。

 

「確かに最終的には負けたさ……だが直ぐに追い抜いてやるよ、ヴァーリ!」

 

 俺は若干むっとしながらヴァーリをしっかりと見返して答えた。

 

「楽しみだ。俺を失望させてくれるなよ」

 

 何処か嬉しそうに微笑んでいるヴァーリ。

 俺はその笑みが戦いに飢えている獣の様に感じられたが、ミッテルトちゃんはどうやら違う意味で捉えていた様で、微笑ましい者を見る様に俺達を見詰めていた。

 

「さてと……じゃあ、これでお開きにするっすかね。送っていくっすよ、綾人」

 

 時計を一瞥して俺に手を差し出してくるミッテルトちゃん。

 俺はヴァーリに見られていて、何時もより照れながらもしっかりと手を握り返した。

 

「じゃあ、また明日な」

「ああ……待っているよ」

 

 俺とヴァーリはお互いに再戦の約束を言外に行いながら微笑みあった。

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 右腕を犠牲に支払い禁手(バランス・ブレイカー)に至った代償はやはり小さいものではなかった。

 気を抜けば右腕はドラゴンそのものとなって日常生活に支障を来す。

 まあ、家庭の事情で学校に碌に通っていない俺には些細な問題かな。

 だが姉ちゃんはそんな俺を何時も心配そうに眺めていた。

 幼い頃から自分を虐め抜いていき修行に明け暮れていて日頃から満身創痍な俺に何処か近寄りがたいものを感じていただろうに、姉ちゃんは最近は意を決して話しかけてきてくれている。

 まあ、眠っている性癖でそんな俺に熱を帯びた様な視線を向けているのはご愛嬌か。

 未だに覚醒してないのに仄かにSの気質を匂い立たせている。

 

「お帰りなさい、綾人……今日もお疲れ様」

 

 ドラゴンの氣に因って異形の腕になっている右手を愛おしそうに抱きしめながらほほ笑みかけてくる姉ちゃん。

 

「さあ、儀式の準備が出来ているよ。行こう」

 

 姉ちゃんは俺の腕を抱きしめながら引っ張る様に歩いていく。

 

 そうなのだ。

 高位の悪魔なら簡単にドラゴンの氣を散らせる様に、五代宗家の一つである姫島家にもその様な秘術が伝わっていた様だ。

 最初は母さんだけが儀式を行っていたが、最近は幼いながらも姉ちゃんがサポートに回って一緒になって術を行ってくれている。

 幼いながらもあどけなさと妖艶さが入り混じった表情で俺の指を舐めしゃぶる姿を見ていると、何故だが背筋が痺れていって何時しかそれが快感へと変わるのに時間は掛からなかった。

 今日もあの快感に抗わなければならないと思うと、嬉しい半面気が重くなる。

 我ながらシスコンの気があったのか、俺のために幼い姉ちゃんが危険と隣り合わせの儀式をしてくれる姿に感謝以外の感情も感じている。

 まあ、面と向かって姉ちゃんに好意を向けるのは気恥ずかしく、ついつい素っ気ない態度を取ってしまうのは前世から続く男の意地みたいなものかな。

 

 

 

 

 

 今日の儀式も一応無事終わった。

 包帯替わりの防水加工済みの護符が丸で俺を厨二病患者の様な風体に仕立て上げている。

 姉ちゃんが若干潤んだ眼で俺を見詰めていたので逃げる様に慌てず素早く母屋へとやってきた。

 今日も今日とてヴァーリとの模擬戦でかいた汗を流すために夕食前に風呂へと向かう。

 脱衣所で徐に服を脱ぎ捨てて、姿見の前で自分の身体を客観的に観察する。

 

 ふむ。年齢の割に筋肉が付いてきて引き締まっているかな。

 まだまだ鍛えていく余地は残っているので、亀の行進の様に緩やかだがじっくりと鍛えていこう。

 千里の道も一歩からと言うしな。

 努力で鍛えた身体は俺の想いを裏切らないからな。

 鍛えていって少しでも強くなっていく事は楽しい。

 まあ、生傷が絶えないのは俺の実力不足だから仕方がない。

 あまり血を流しすぎると成長にも悪影響を与えるから気を付けないとな。

 

 

 

 

 

 頭と顔を洗い終わって身体を洗うために手拭に石鹸を擦りつけて泡立てていると、脱衣所の方から見知った気配が感じられた。

 思わず振り返ると、扉越しに衣擦れの音が聞こえてきた。

 

 ちょっ!!? まっ、まさかっ!!?

 

 今まではそこまで過剰なスキンシップを取ってこないから油断していた。

 

 俺がパニックを起こして固まっていると、徐に扉が開け放たれて一糸纏わぬ姉ちゃんが入ってきた。

 

 引き締まったヴァーリとは違ったぽっこりとしたイカ腹や膨らみかけの胸と無毛の縦筋が丸で白い陶磁器の様な身体を形作っている。

 

 俺は思わず生唾を飲み込みながら姉ちゃんの肢体に魅入っている。

 

「あはぁ♪ そんなに見詰められると照れるの」

 

 僅かに朱色に染まった頬に手を添えながら、俺を愛おしそうに見詰めている姉ちゃん。

 

 俺は頭を振りかぶって煩悩を払い除けた。

 

「ねっ、姉ちゃん!!? 今、俺が入っているから後で……」

 

 俺は自分の股間を手拭で隠しながら姉ちゃんに背を向けながら縮こまっている。

 

「何を恥ずかしがっているの? 昔は一緒に入っていたのに……」

「幾つの時の話だよ! ……ってか、出て行ってよ!!」

 

 俺は思わず叫ぶ様に言い放った。

 

「酷いの、綾人……お姉ちゃんの事嫌いなの?」

 

 目尻に涙を溜めながら俺の背中に抱きついてきて、肩越しに俺の顔を見詰めてきている姉ちゃん。

 その手は抱きしめるかの様に俺の胸板に伸ばされている。

 

 はぅわぁ!!?

 小振りながらもしっかりと自己主張している胸が俺の背中に当たっている。

 いかん!!

 意識すると余計に胸や柔肌の感触や女の子特有のミルクの様な甘い香りが如実に感じられる。

 

「べっ、別に嫌いじゃない……」

 

 俺は心の中で般若心経を唱えながらぽつりと零す様に言った。

 

「良かった♪ じゃあ、お背中流すね」

 

 姉ちゃんは満面の笑みを浮かべながら股間の手拭へと、その細い指を伸ばしてきた。

 小振りな胸が更に背中に押し付けれれる。

 

「ちょっ!!? 手渡すから背中から離れてっ!!?」

 

 俺は身を捩りながら文字通り姉ちゃんの魔の手から少しでも逃れようとした。

 

 俺の抵抗が実ったのか、姉ちゃんは渋々といった感じで背中から離れてくれた。

 

 危なかった。

 今股間に触れられるとさすがに理性を保っていられる自信がない。

 いや、まあ、未だ勃起するほど身体は成長してないんだけれどね。

 精神は前世で既にアラフォーに近い年齢だった影響か、転生してから未だに二次性徴まで到てないのに性欲は既に溢れんばかりだしね。

 これで思春期を迎えたら一誠の事が悪く言えないぐらいエロい少年にならないだろうか。

 まあ、今から考えていても仕方がない。

 今はこの辛く嬉しい甘美な時間を乗り切る事に集中しよう。

 

「はい、姉ちゃん。よろしくお願いします」

 

 俺は成る可く振り向かない様にしながら、姉ちゃんに手拭を手渡した。

 

「はい、お任せあれだよ♪」

 

 姉ちゃんは鼻歌交じりに俺の背中を擦っていく。

 

 弱すぎず強すぎず心地いい感触。

 思わず感嘆のため息が吐いて出る。

 

「うふふふ♪ 気持ちよさそうで、良かったの。さあ、前も洗ってあげようか?」

 

 耳元で囁く様に尋ねてくる姉ちゃん。

 

「まっ、前は自分でするよ!!」

 

 俺は引っ手繰る様に手拭を受け取って胸やお腹、それと股間を洗っていく。

 そして足も忘れない様に洗っていった。

 

「はい、じっとしてね」

 

 洗い終わると姉ちゃんが湯桶でお湯を汲んで泡を洗い流してくれた。

 

 泡と共に湧き出た煩悩も流れていくんなら良かったのにな。

 

 俺はそっとため息を吐いた。

 

 

 

 

 

「じゃあ、今度は私の番だね。綾人、先ず髪を洗うのを手伝ってくれる?」

 

 俺は無言で頷いて、絹の様な姉ちゃんの髪を梳く様に洗っていく。

 俺の髪とは違って滑らかな手触りで思わず頬擦りしたり匂いを嗅いだりしたくなってしまう。

 まあ、さすがにそんな変態チックな性癖は持ち合わせてないので自重する。

 

 しなやかでボリュームのある姉ちゃんの髪を洗うのは一苦労だった。

 

 湯桶を持って姉ちゃんの頭からお湯を何度も被せて泡を洗い流していく。

 

「ふぅ……さっぱりしたの。次は背中をお願いするの」

 

 姉ちゃんは髪を結い上げて背中を露にする。

 

 俺は姉ちゃんの背中を傷付けない様に、そっと撫でる様に洗っていく。

 

「あん♪ 擽ったいよ。もっと、力を入れてもいいの」

 

 肩越しに振り向きながら力加減の要望を行ってくる姉ちゃん。

 

「分かった……」

 

 俺は成るべく無心になりながら力加減を調整していく。

 

「うん。これぐらいが丁度いいの」

 

 姉ちゃんは嬉しそうに微笑みながらゆっくりと感嘆のため息を吐いている。

 

「前も洗いたい、綾人?」

 

 背中を洗い終わり手拭を手渡そうとすると、あどけなさと妖艶さが入り混じった表情で尋ねてくる姉ちゃん。

 

 俺は逃げる様に湯船に浸かって顔を逸らした。

 

「残念……お姉ちゃんも直ぐに入るから待ってね♪」

 

 姉ちゃんは心なしか若干手早く身体を洗っていっている気がする。

 

 

 

 

 

 さすがに百を数えきる前に湯船から上がるわけにもいかず煩悩を振り切る様に一心不乱に数を数えていると、姉ちゃんが身体を流し終わって湯船に浸かってきた。

 母さんと姉ちゃんと俺とが一緒に入っても若干余裕が有る筈なのに、姉ちゃんは寄り添うようにぴったりと引っ付いて俺の肩に頭を預けながらご機嫌そうに鼻歌を歌っている。

 

 結局上がるタイミングを見失い、母さんが声を掛けてくるまで姉弟で湯中りしそうなぐらい湯船に浸かっていた。

 

 

 

 

 

 この日から姉ちゃんが風呂に乱入してくるのが日課となった。

 そして一緒の布団で寝る様になった。

 

 多分だが姉ちゃんは俺の話に出てくるミッテルトちゃんやヴァーリに嫉妬していたんだと思う。

 いや、俺自身にも嫉妬は向けられていたのかもしれない。

 弟の俺が友達、しかも女の子と過ごしているのに、姉ちゃん自身は外との交流が全く皆無と言っていい程だ。

 まあ、堕天使の血を引く俺と姉ちゃんが一般人と相容れないのは自明の理だ。

 姉ちゃんにとっては俺が唯一同年代の遊び相手となる筈なのに、俺は日中修行に明け暮れていて遊ぶ事は殆どない。

 自惚れるなら少しでも俺と居る時間を共有したい姉ちゃんは家に居る時間は成るべく一緒に過ごしたいのだろう。

 最初は恥ずかしがっていた俺も何時しか折れて、時間の許す限りは姉ちゃんと過ごすようになっていった。

 そんな俺と姉ちゃんの様子を母さんは微笑ましいものを見る様に見守ってくれていた。

 少し気恥ずかしいが心から安らげる時間は何時までも続いて欲しいものだと真摯に願っていたが、運命はそれを許さなかった。

 そうなのだ。

 原作準拠の姫島本家から襲撃の時は、俺の願いを打ち砕くかの様に着々と迫って来ていたのだった。

 

 

 

 

 




執筆している内に当初の予定よりヴァーリの乙女度が若干上がった気がします。
拙作のヴァーリ(♀)は戦闘狂なところは原作準拠ですが、両刀使い(バイセクシュアル)の気があります。
強い者も好きですが、可愛い者はもっと大好きです。
因みに髪型と普段着はFate/Apocryphaのモードレッド(赤のセイバー)をイメージしてます。
臍出しルックでホットパンツからすらりと伸びた太股(おみ足)は大好物です(*´﹃`*)

朱乃は小学生相当と言う事で口調を変えてみました。
一応数少ない原作の描写を参考にしましたが、今一しっくりときませんでした。
こちらも執筆している内にブラコン度がかなり上昇しました。
このまま原作開始時まで行くと、依存レベルまでブラコンが昇華しそうです。
一応朱乃は一誠ヒロインの予定ですが、原作並に一誠惚れる描写が書ききれるか少し心配になりました。
ですが紳士の皆様のご意見を参考しして朱乃も綾人(オリ主)のヒロインに大抜擢されました。
朱乃と綾人(オリ主)は一応血の繋がった姉弟です。
うん、背徳的ですな。

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