ハイスクールD×D ~ 堕ちた疾風迅雷と深淵を司る龍 ~ 作:Mr.凸凹
第01話
転生してから早幾年。
今日も今日とて鍛錬している。
当初は三日坊主にならないか心配だった。
何せ、前世では熱しやすく冷めやすい性格だったので何事も長続きしなかった。
だが転生特典で鍛えれば鍛えるほど強くなる心技体をもらったので、最初は牛歩の歩みだったが着実に強くなっている。
現実世界では主に八極拳の型や八卦掌の歩法や技法を中心に身体を鍛えている。
まだ、身体が出来上がっていないからか、最初は筋肉痛や骨が軋んで痛みが酷かった。
あまりの痛みにのたうち回るので、母さんや姉ちゃんに心配されたりこっ酷く怒られたりもした。
だが、母さんは俺の熱心に型を反芻する姿にその内小言を言う事を諦めて救急箱を用意して見守ってくれている。
その際、「やっぱり、あの人の息子ね」と背筋が寒くなる様な声色で、恍惚笑みを浮かべながら俺をまるで獲物を見詰める様な眼で見ていたのは気のせいだと思いたい。
いえ、あの、その、母さん?
俺は多分Mじゃないですよ?
身体を虐め抜くのは快感を得るためではなくて、己を鍛えるためだからね。
近頃は姉ちゃんまで同じ様な眼で俺を見詰めてきている。
あれ? もしかして俺ってば無自覚に地雷を思いっきり踏み抜いているのかな?
うん。深く考えないでおこう。
考えたら負けだ。
逃げても負けな様な気がしないでもないけどね。
精神世界では肉体的疲労は無いし、精神力の続く限り己を虐め抜ける。
同じく転生特典で得た知識を活かして魔法を重点的に習得していった。
最初は全く手応えがなく歯軋りをよくしたものだったが、徐々に物になっていく事は嬉しかった。
何故だかネギま!の魔法を使える歴代淵龍王も居たので、その人に手取り足取り教わった。
神様が気を利かせてくれたんだろうか?
まあ、多分
まあ、これで俺が魔法を扱える理由を聞かれても誤魔化せるな。
並行してナラカから
只管炎のブレスを吐いてくるナラカの攻撃を
最初の頃は直ぐにリミットオーバーしてしまい、全身大火傷を負った。
ここは精神世界だから心が折れない限り死にはしないが、何度諦めかけた事か。
その度にまだ見ぬミッテルトたんや小猫たんとレイヴェルたんに逢う為に心を奮い立たせて頑張った。
そしてある程度実戦に耐えうるレベルになると、歴代の淵龍王を相手に実戦形式の組手を行っていった。
殆どが狂気に侵された者達の中で比較的真面な性格の方々が相手とは言え、少しでも気を抜けばまだまだひよっこレベルの俺は
戦いを重ねていく内に戦術も学んで行き、この頃は少しは善戦出来るレベルになってきた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
蒸し暑い日。
今日は迎えの者を縁側で待っている。
今まで成るべく
相手は一人で、子供相手だと油断していたから何とか撃退できた。
まだまだ修練不足だと実感した出来事だった。
そんな事があって
俺はアザゼルさんの部下の息子だからと、こちらから伺うと筋を通した形だ。
一応部下の息子なのだから無茶な事はしてこないと思いたいが、あの自他共に認める神器マニアのアザゼルさんが暴走せずにいられるのだろうか?
まあ、案ずるより産むが易しっていうから、考えすぎないでおこう。
約束の時間が近づいて来ると、遠くからゴスロリ姿の少女がやって来た。
あっ、あの姿はまさかっ!!?
俺は少女の姿を眼に留めてから期待に胸が高鳴った。
「こんにちわっす。アンタがバラキエル様の息子の綾人っすね?」
画面越しか見た事がなかった憧れの少女は少し仏頂面で俺を見詰めている。
「はっ、はい! 俺が綾人です! あっ、あの~お姉ちゃんのお名前は……」
俺は搾り出す様に訊ねた。
「うちっすか? うちはミッテルトっす。しがない下っ端堕天使っすよ」
ミッテルトたんは肩を竦めて自己紹介をしながら漆黒に染まった羽を広げた。
あっと……さすがにミッテルトたんは拙いか。
ここは無難にお姉ちゃんがいいかな?
「よろしくお願いします、ミッテルトお姉ちゃん」
俺は照れながらも何とか頭を下げて挨拶を行った。
「お姉ちゃんはこそばゆいから止めてくれると嬉しいっす。それと敬語も必要ないっす」
「じゃあ……ミッテルトちゃんでいいかな?」
俺は頬を染めながら上目遣いに訊ねた。
「それで良いっすよ……全くいくら命令とはいえ、子守りなんて貧乏籤引いたっすね」
ミッテルトちゃんはあからさまにため息を吐いている。
やっぱりまだ子供だから相手にはしてくれないか。
だが、しかし!!
ここで諦めたら男が廃る!!
ニコポやナデポは装備してないけど少しでもミッテルトちゃんにアピールするぞ。
「じゃあ、行くっすよ」
ミッテルトちゃんは面倒臭そうに手を差し出してきた。
「うん♪」
俺はちゃっかりと恋人繋ぎでミッテルトちゃんの手を握った。
はわぁ~柔らかし、すべすべだぁ~♪
それに良い匂いがするよぉ~♪
「マセガキっすね……」
ミッテルトちゃんは一瞬驚いた表情をしたが、直ぐに苦笑しながら俺の頭をデコピンしてきた。
やっぱり子供扱いされてるよね。
だけど、手を振り解かないのは少しは心を許してくれているのかな?
千里の道も一歩からって言うし、ミッテルトちゃんの牙城を少しづつ攻め落としていこう。
魔法陣を通って冥界にある
ミッテルトちゃんに連れられて徐々に奥へと足を運んでいく。
どうやら父親のバラキエルは不在らしい。
嫌いではないのだが母親の朱璃とSMプレイに興じているのを目撃して以来どう接していいのか分からないんだよな。
幸い姉ちゃんの朱乃にはバレていないようだが時間の問題だろう。
今でも姉ちゃんはSの性癖を微かに醸し出しているのに、知ってしまったら一気に開花してしまいそうで怖い。
そして、その毒牙の標的は十中八九の確率で俺となるだろう。
俺は内面では色々と考えていたが、ミッテルトちゃんに手を引かれているから上機嫌だ。
だが、至福の時間は突然終わりを告げた。
ミッテルトちゃんは仰々しい扉の前に立つと手を離して徐にノックをした。
「失礼するっす、アザゼル様。バラキエル様の息子の綾人をお連れしたっす」
ミッテルトちゃんは緊張の面持ちで扉越しに報告を行っている。
さすがに下っ端堕天使のミッテルトちゃんが総督のアザゼルさんにお目通りするのは厳しいみたいだな。
おれも幹部の父さんの息子なだけだから、普通なら中々会えないだろう。
しかし、俺は
堕天使の血を引く俺が所有者なので、アザゼルさんには興味の対象であるんだろうな。
「ご苦労さん……鍵は開いてるから入ってこいよ、綾人」
俺は捨てられた子犬の様な表情でミッテルトちゃんを見詰めている。
ミッテルトちゃんは苦笑しながら手を振っている。
俺が目尻に涙を溜めながら上目遣いにミッテルトちゃんを更に見詰めると、ミッテルトちゃんは思い掛けず生唾を飲み込む様な表情をした様だ。
これって脈アリかな?
よし! 先ずは一歩前進だな!
「失礼します……」
俺は意を決して扉を開けて部屋の中へと入っていった。
「よう! わざわざ足を運んでもらって悪いな……早速だが
眼をキラキラさせて子供の様に微笑んでいるアザゼルさんが促してくる。
「分かりました。いくぞ、ナラカ!
俺は右手を胸の前に掲げて意識を集中させた。
一瞬の間もなく
「おおっ!!? マジで
一瞬で間合いを詰めて
俺の眼には残像しか映らなかった。
やっぱり幼い俺とアザゼルさんとでは埋められない差が壁となってが存在しているようだ。
今は無理でも何時かはその高みへと登ってやるぞ!
「ええ……ナラカ? 積もる話もあるだろうし、語り合うといいよ」
俺が話し掛けると盾の中央に収められている宝玉が明暗しながら声を発した。
『久しいな、アザゼル……私が
「ああ……改めて礼を言わせてくれ、ナラカ。二天龍の衝突の際は俺達を守ってくれてありがとう」
アザゼルさんは深々と頭を下げている。
『気にするな。お前達は俺に良くしてくれていたからな。知己の友を助けるのは当たり前だ』
どこか照れ臭そうな声色のナラカ。
暫く過去の話に花を咲かせてアザゼルさんとナラカは楽しそうに語り合っていた。
出された紅茶を飲み干して茶菓子を食べきる頃にはアザゼルさんとナラカの積もる話も終わったようだ。
「そう言えばバラキエルが心配して愚痴っていたぞ、綾人。お前、我武者羅に鍛えているみたいだな。何故だ?」
アザゼルさんが俺の真意を確かめる様に眼を覗き込んできながら訊ねてきた。
「色々と理由があるけど、先ずは強くなりたいから……俺や姉ちゃんは堕天使の血を引いているって理由で姫島家の本家から煙たがられている。今は静観されているけど何時襲撃されるか分からないですからね。それに龍、
俺はアザゼルさんの眼をしっかりと見つめ返して一気に語った。
「お前、本当に早熟過ぎるな。本当は幾つなんだか……たまには肩の力を抜いて遊んでも罰は当たらんと思うぞ?」
アザゼルさんは自身の頭を掻きながら嘆息している。
「俺だけが襲われるならいいです……でも、母さんや姉ちゃんが襲われるなら全力で贖ってやりますよ。男なら大切な者達を守れるくらい強くないと駄目です」
そうだ。原作通りに進めば母さんは殺されてしまう。
最初は物語の登場人物というフィルターを通して見ていて、どこか他人行儀に接していた。
だが母さんは無償の愛を俺と姉ちゃんに注いでくれた。
何時しか俺は心の底から母さんを好きになっていた。
出来ることなら母さんには天寿を全うしてほしい。
俺や姉ちゃんの子供を抱かせてやりたい。
母さんが生き残れば姉ちゃんと俺が悪魔に転生する理由がなくなるかもしれないが構わない。
母さんが死んで姉ちゃんが悲しむなら違う方法を模索するだけだ。
「そうか……お前も一端の男、いや漢なんだな。分かった、俺も協力させてもらおう。自己鍛錬だけでは自ずと壁にぶち当たるだろうからな。それに一人だと限界を見極められずにオーバーワークしているだろうしな」
アザゼルさんは俺を愛おしそうに見詰めながら頭を撫でてきた。
俺は眼を瞑りされるがままに、大きな手の感触を感じている。
アザゼルさんは親戚の小父さんの様に感じられた。
「遅かったっすね」
部屋から出るとミッテルトちゃんが壁を背にして佇んでいた。
「待っててくれたの?」
僕は思わず頬を緩めながら訊ねた。
「一応、アンタの子守りを命じられているっすからね。最後まで面倒みるっすよ。べっ、別にアンタのためじゃんないっすよ! 命令だから仕方なしにっすからね!」
ミッテルトちゃんは若干頬を染めながら眼を逸らして捲し立てる様に言い放った。
ツンデレ乙。
はわぁ~♪ きゃわええ!!
なにこの萌えっ娘はっ!!
このご褒美があれば俺はまだまだ頑張れるよ!!
「じゃあ、帰るっすか?」
眼を逸らしながら手を差し出してくるミッテルトちゃん。
「うん。今日のところは帰るよ。でも、これからちょくちょくとトレーニングしにここに来るから、また一緒に来てくれると嬉しいな」
俺はミッテルトちゃんの手を両手で握り締めながら上目遣いで微笑みかけた。
「えっ!!? アンタも物好きっすね。自分から改造手術を受けたいなんて……」
ミッテルトちゃんは眼を見開きながら驚いている。
転生してから幾年が経って、原作知識の大まかな流れは何とか覚えているが、細かいところは大部分曖昧になっていて忘れていた。
そう言えば、そんな描写もあったかな。
いや、まあ、俺は幹部の
ないよね?
「えっと……さすがに改造手術は遠慮したいかな」
俺は冷や汗を流しながら乾いた笑みを浮かべていた。
「まあ、骨は拾ってやるっすから精々頑張るといいっすよ」
ミッテルトちゃんは同情の混じった眼で俺を見詰めている。
俺は不安を抱えたまま家へと帰っていった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
それから
一応一人でも魔法陣を通って通えるが、毎回ミッテルトちゃんが迎えに来てくれた。
ミッテルトちゃんにその気はないだろうが丸でデートみたいで嬉しかった。
トレーニングは専ら巨大な鉄球クレーンの一撃を受けていた。
しかも
いや、これで本当に強くなれるのかな?
肉体的には耐久力が上がっている気はするんだけれどね。
最初の頃は痛みで気絶しそうになったが気合で乗り越えた。
気絶すると治療と称して改造手術されそうになるから気が抜けない。
唯一の癒しはミッテルトたんが付きっ切りでマネジャーの真似事をしてくれていた事である。
臍出しタンクトップとスッパツ姿で甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれるから堪らない。
しかもオーバーワーク気味になると膝枕で癒してくれる。
良い匂いのすべすべむちむちな太股が堪りません。
転生してから未だ精通していないから勃起する事がないのが幸いか。
さすがに軽蔑の眼で見られてしまうと新たな扉を開けそうで怖いんだよな。
ある程度鉄球に耐えられる様になってくると実戦訓練が行われる事になった。
最初は鷹だか鷲だかのデザインされた全身タイツを着込んだ者達、所謂戦闘員達との多対一だった。
囲まれない様に八卦掌の歩法や技法を駆使して攻撃を避けたり、
そして隙を見つけて魔法を放って迎撃していった。
全て無傷で倒しきると拍手が聞こえてきた。
《パチパチパチ》
拍手の方に眼を向けると銀髪の見た目同年代の子が佇んでいた。
「雑魚が相手とは言え、無傷で倒しきるなんて凄いな。君が今代の淵龍王か。確かバラキエルの息子の綾人だったかな? どうだい、俺と一戦交えてみないか?」
その子は楽しげな笑みを浮かべながら提案してきた。
「いいけど、君は?」
俺は予想が付いていたが敢えて訊ねた。
「これは失礼した。俺はアザゼルの養子のヴァーリだ。今代の白龍皇さ」
ヴァーリは仰々しく会釈をしながら答えた。
『久しいな、アルビオン。中々良い宿主に出会えた様だな』
『ああ、ナラカ。貴様こそ宿主には恵まれたようだな』
二体の龍はお互いの宿主を褒め合ってはいるが、その言葉の端には刺が感じられる。
丸で自分の宿主の方が優れていると暗に言い合っている様だ。
「ほぉ~面白い組み合わせだな。どれ、俺が見届け人をしてやろう」
狡猾そうな笑みを浮かべた堕天使がやって来て言い放った。
「コカビエル様!!? あっ、あの……そっ、その……差し出がましいでしょうが、一応アザゼル様の許可を取った方が良いと思われますっす」
見学していたミッテルトちゃんが震えながらも俺を庇う様に進言している。
「下級堕天使が俺に意見するのか?」
「ひぃっ!!? もっ、申し訳ないっす……」
コカビエルがひと睨みするとミッテルトちゃんは腰が抜けた様に座り込んでしまった。
「ありがとう、ミッテルトちゃん。俺なら大丈夫だからね。向こうで応援していてね」
俺は座り込んでいるミッテルトちゃんを背負ってガラス越しの廊下へと運んでいった。
「待たせたね、ヴァーリ。それじゃあ、対戦方法はどうする?」
「そうだな。折角お互いに
俺の質問に
「分かった……手加減して出し惜しみなんか出来ないだろうしね」
俺も無意識にヴァーリと戦える事を喜んでいる自分に気がついた。
「双方、準備はいいか?」
「「ああ、問題ない」」
俺とヴァーリはお互いに
さあ、俺がどれだけ強くなったか試す絶好の機会だ。
俺の今持ちうる全てを出し切ってこの戦いを楽しもう。
活動報告にてヴァーリの性別についてのアンケートがあります。
ご意見お要望お待ちしています。(終了しました)