ハイスクールD×D ~ 堕ちた疾風迅雷と深淵を司る龍 ~ 作:Mr.凸凹
このところ、休日は用事がないと寝て過ごしてしまい、執筆の時間が取れませんでした。
いやはや、もう既にアラフォーの汚っさんなので疲れが溜まりやすくなっているんでしょうかね?
桜吹雪が舞う新生活が始まる季節。
晴れて俺は駒王学園高等部に入学と相成った。
一応文武両道を心掛けているので、気がついたら新入生代表と言う大役に祭り上げられていた。
鍛えれば鍛える程成長する心技体の副産物で発生した努力フェチとまではいかないものの向上心の塊と言えるぐらい染まった精神で、勉学にも全力で取り組んだ結果入試で一位を取ったとは言えど気恥ずかしいものがある。
差し障りのない俺の宣誓を新入生や在校生と校長を始めとした先生方が聞いている。
ふと俺に向けられている視線の中で他のものと僅かに違いのある視線に気が付いた。
不自然にならない程度にその視線の出処に眼を向けると、俺は思わず息を飲んだ。
そこに居たのは俺を転生させた神様と似通った
何処となく神様の面影がある様にも見えるその姿は、朧げになってきた前世の記憶に照らし合わせると魔法先生ネギま!のキャラである神楽坂 明日菜に酷似している様だ。
彼女は俺の視線に気が付くとにっこりと微笑んでウィンクをしてきた。
俺は思わず頬を僅かに染めてしまった。
その後、どこか上の空で参加していた入学式が滞りなく終わった。
俺は人込みを掻き分けて目的の人物へと向かっていく。
彼女を後を付ける様に進んでいくと、俺は徐々に人気の少ない校舎裏へと足を向けていた。
何処か近寄りがたい雰囲気の一本の桜の樹の下で彼女はゆっくりと振り返って微笑んだ。
「初めまして、姫島 綾人くん。私は
俺は差し出された手を握り返しながら殆ど反射的に自己紹介をした。
「初めまして……ご存知でしょうが、悪魔勢力のリアス・グレモリー眷属の姫島 綾人です。一応今代の淵龍王です。そして……」
俺が自身の転生の事まで話そうとすると彼女は俺の唇に人差し指を当てていた。
「そこからの説明は不要だよ。君が薄々お察しの通り、私はあの
明日菜さんは見惚れる程の笑みを浮かべている。
「さてと……ちょっと良いかしら、
明日菜さんが俺の右腕に言い聞かせる様に話しかけると右腕の下肢に宝玉が浮かび上がった。
『何だ、娘よ? それに同胞とはどういう意味だ?』
ナラカは少し警戒した声色で訊ねている。
「貴方も元は異世界の女神様がその魂魄の一部から生み出した
明日菜さんは真剣なそれでいて慈愛に満ちた眼をして宝玉に触れている。
『……こっ、これはっ!!? 私の知らない……いや、忘れていた原初の記憶かっ!!?』
俺の意志とは無関係に
そして、真円の盾の形が一度不定形に崩れて太極図を象った。
その上、上下左右に付いていた龍の爪の如き四本の突起が更に増えて倍の計八本となった。
『Dragon Absorption second Liberation!!!!』
ナラカが原初の記憶を取り戻した事で
脳裏に吸収無効化に続く新たな能力の詳細が浮かび上がった。
俺も前世の記憶が薄れてきていて忘れかけていたが、この能力も思いついていたんだよな。
確かに
drainは亜種化能力だし、それ以外に基本能力としてabsorb以外にも考えていたんだよな。
しかし、我ながらちょっとチート過ぎる気もしないでもない。
うん、これは正に成人しても厨二病を患っていた証拠だよな。
俺は思わず乾いた笑みを浮かべてしまっていた。
『どうした、綾人?』
「いや、まあ…‥我ながら無茶な能力を思いついていたんだなって少し呆れていた」
『確かに我が能力の一旦だが、その能力も綾人の前世の空想の産物だと思うと何やら感慨深いものがあるな。つまり私は深淵から生まれたのではなく、かの女神様が母親で綾人の前世が父親の様なものか』
「…………」
ナラカの物言いに俺は無言で頬を掻いている。
いや、まあ、確かにそうとも取れるけれどさ。
女神様と夫婦なんて恐れ多い。
「うふふ♪ かの女神様は綾人くんの事を大層気に入っていますからね。勿論、女神様の
明日菜さんは何時の間にか俺の左腕を抱きしめて胸を押し付けるようにしている。
「この感情は植えつけられたものではなく、一種の憧れから湧き出たもの……これから綾人くんの為人を確かめて育んでいきたいわね」
明日菜さんは俺の耳元で丸で自分自身に言い聞かせる様に囁いていた。
駒王学園の旧校舎にあるオカルト研究部。
そこに招かれざる客と言える明日菜さんを伴って俺はやって来た。
部室には部長のリアスさんと副部長の姉ちゃんが待っていた。
同じ高等部新入生の祐美ちゃんは剣道部の方へと見学に行っているとの事で不在である。
中等部所属の白音ちゃんとギャスパーちゃんも今は不在の様だ。
「どうぞ、粗茶ですが……」
姉ちゃんが笑顔で明日菜さんに湯気の立ち上ったカップ&ソーサーを差し出している。
まあ、顔は満面の笑みだが眼がちっとも笑っていない。
ちゃっかりと俺の横に寄り添う様に座っている明日菜さんの事をあまり良く思っていない様だ。
「ありがとう」
明日菜さんは優雅にカップを傾けて紅茶に口を付けている。
「あら、美味しい」
「お口に合ってなによりですわ」
姉ちゃんは一礼をしてからリアスさんの傍らに控えた。
「それで今日のご要件は何かしら、“黄昏の姫御子”殿?」
リアスさんは探る様な眼差しで訊ねている。
「単刀直入に申します。淵龍王たる綾人くんを風紀委員会に所属させる許可が欲しいのです」
明日菜さんは姿勢を正して眼に胆力を込めて淡々と要件を述べた。
「……ふぅ。それは私達悪魔の牽制ないし取締のためかしら?」
溜息を吐きながら話の真相を探る様に訊ねるリアスさん。
「確かにそれも若干否めませんけれどね……歴史の転換期に幾度となく調停者として現れていた淵龍王の歴代達同様、綾人くんにもその使命の重圧が重く伸し掛る事が考えられます。これは悪魔勢力を始め三大勢力内だけとは言えますが、我ら日本神話勢力も淵龍王たる綾人くんに微力ながら協力したいと考えています。そのために中立的立場で取り締まる風紀委員会に所属して欲しいのよ。駒王学園は悪魔主体とは言え、我ら日本神話勢力も少なからず所属しているからね」
明日菜さんは真剣な眼差しでリアスさんを見詰める様に一気に語った。
「成程ね。確かに伝承だと歴代の淵龍王達の大半は調停者の様な役割を担っていたわね。私も綾人の主と言ってもいち上級悪魔にしかすぎないから決定権はないに等しいわね。お兄様……魔王サーゼクス様を始め四大魔王様達に打診する必要があるから即諾は出来ないけれど、私としては一つ条件を飲んでくれれば問題ないわ」
「えっと……その条件とは何でしょうか?」
明日菜さんは顎に小指を当てながら小首を傾げている。
「綾人……委員会は風紀委員で構わないけれど、部活はオカルト研究部に所属して頂戴。それが条件よ」
リアスさんは俺にほほ笑みかけながらお願いをしてきた。
「はい、それは勿論……俺もリアス・グレモリー眷属の一員ですからね」
俺はゆっくりと頷きながら答えた。
「よかったわ。断られたらどうしようかと思ったわ……例えば、綾人の隠し持っているエッチな本をジャンル分けして机の上に並べてしまったかも知れないわね♪」
リアスさんが冗談交じりの死刑宣告に等しい脅し文句を言ってきた。
姉ちゃんも頬に手を当てながら獲物を見るような眼で俺を見詰めている。
アレは洒落にならない。
一度姉ちゃんが俺の部屋を掃除した後にされた事がある。
猫耳と尻尾装備のコスプレモノや比較的幼気な外見のゴスロリモノにボーイッシュな感じのグラビアに混じって、俺が他の物より厳重に封印並みに隠していた姉弟モノの近親相姦な小説が中心のグラビアが整然と並べられていて死にたくなった。
まあ、その後に自慰するくらいならと性的に襲われたけれどね。
途中から白音ちゃんも混じっていたし、腹上死するかと思った出来事だった。
「アハハ……」
俺は乾いた笑みを浮かべながら外方を向いた。
その視線の先には頬を若干染めながらも興味深そうに俺を見詰めている明日菜さんの姿があった。
おっ、おぅ!!?
正に四面楚歌とはこの事かっ!!?
このままだと俺の性癖暴露大会になりかねない!!
なっ、何か話題を変えて話を逸らさないとっ!!
うん? 何か甘い香りがするな。
よし!これだっ!!
「とっ、ところで先程から良い匂いしてますけれど……」
俺は鼻をヒクヒクさせながら訊ねた。
「あっと、そうだったわね……綾人と祐美の入学祝いにケーキを焼いたのよ」
リアスさんが両手を合掌の様に揃えてにっこりと微笑んでいる。
「へぇ~リアスさんのケーキーですか。俺、好きですよ」
俺は安堵の溜息を飲み込みながら頷いた。
「取り敢えず皆揃ってから食べましょう。よかったら明日菜さんも食べていって頂戴」
「では、お相伴にあずかります」
リアスさんの提案に嬉しそうに頷く明日菜さん。
その表情は年頃の女子高生そのもので、先程の真剣な眼差しの明日菜さんと同一人物とは思えない。
まあ、好感がもてる事は間違いないけれどね。
明日菜さんが俺の為人を確かめるように、俺も明日菜さんの為人を確かめていこう。
出来れば仲良くしていきたいもんな。
その後、他の眷属達が集まってちょっとしたお茶会が開催された。
相変わらず俺の膝の上には白音ちゃんが鎮座していて、俺の両隣を姉ちゃんと明日菜さんが固めていた。
それを苦笑交じりに眺めているリアスさんと祐美ちゃん。
ギャスパーちゃんは羨ましそうにこちらをチラチラと眺めていた。
ケーキは確かに美味しかった。
姉ちゃん程ではないが俺の好みを擽ぐる味付けやアクセントになるフルーツがトッピングされていた。
しかも、砂糖を殆ど使用せず果汁で甘味をつけていてカロリー控えめな上に、栄養バランスにまで気を使っているのは脱帽する思いである。
まあ、俺が普段から健康な心身を形作るのは見た目も然る事ながら美味しいだけでなく栄養のバランスが取れた料理であると、洗n(ry……ごほん、口を酸っぱく言っていたからだろう。
医食同源とまでは言わないものの、食事は大切なものである。
美味しく食べれて健康になれれば言う事なしである。
うん、現実逃避と言えるけれどね。
然りげ無くポーカーフェースをしているものの、内心はテンパってます。
何度か経験していても女の子特有の甘い香りと体温は俺の理性を奪うには十分過ぎるんだよな。
彼女らにその気はなく、ただ俺に甘える様に触れ合っているだけだと理性では理解出来ている。
幾ら前世がアラフォーだったので精神年齢が高いとは言え、肉体に精神が引っ張られて思春期特有の異性に対する興味は高い。
周りが美少女だらけだから我慢するのも大変である。
今まで以上に誘惑が増えそうだが、転生悪魔とは言えども欲望のままに行動する訳にもいかない。
原作が開始されるまでに後一年ちょっとしかない。
今までも不覚的要素が多いために、今後原作知識が常に役立つとは限らない。
既に原作と乖離している事柄が大きすぎる。
大まかな流れは世界の修正力が働いており変わらないだろうが、逆に細かな点は俺の行動次第で変わってくるだろう。
つまり、俺が努力を怠れば不幸は具現化して襲って来るだろう。
出来ればハッピーエンドを迎えるために精進していく必要がある。
まあ、適度な息抜きは必要である。
あまり張り詰めていると破裂してしまう。
せめて俺の手の届く範囲だけでも笑顔が溢れる様にしていきたい。
そうなのだ。自己満足だけではいけない。
きちんと相手の事を想って行動する事が肝要である。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
駒王学園高等部の入学式が終わって数日後、ほっと一息吐きたい気分だったがそうは問屋が卸さなかった。
俺や眷属仲間達をサーゼクス様とグレイフィアさんがお忍も同然で訪ねてきた。
「いや、済まないね。出来れば驚かせたくて、アポイントなしで訪ねてきてしまった」
魔王としての仮面を脱ぎ捨ててフランクに話してくるサーゼクス様。
グレイフィアさんがメイド服姿で控えているから完全にオフでは無い様だ。
いくら駒王町がリアスさんの管理地とはいえ、四大魔王の一角であるルシファーの称号を持つサーゼクス様が気軽に来訪しないでもらいたい。
和平を結ぶ前の今の段階ではちょっとした事も争いの火種になる事を考慮して欲しい。
「まあ、楽にしてくれたまえ」
臣下の礼を取っていた俺達に頭を上げる様に促すサーゼクス様。
立ち上がった俺達を代表してリアスさんが訊ねた。
「それで、お兄様? ……今日、わざわざお越しになられた理由をお聞かせ下さい」
あっ!!?
冷静に見えてリアスさんの蟀谷がひくついている。
まあ、今のところ大きな問題も発生してないのに気軽に人間界に来たサーゼクス様に怒りたくなる気持ちもわかる。
リアスさんは俺の影響で原作以上にリアリストな考えのところがあるからね。
サーゼクス様が気軽に人間界に来るリスクを考えて頭痛がしているんだろうな。
「先ずは姫島 綾人くん、並びに木場 祐美くん、両名の駒王学園高等部入学に対して祝辞をおくらせてもらおう。おめでとう、二人共」
人好きのする笑みを浮かべているサーゼクス様。
「もったいないお言葉……」
「ありがとうございます」
俺と祐美ちゃんは再び頭を下げた。
「それで、本題はなんでしょうか、お兄様?」
「うっ!!? 何か、気に障ることしたかな、リーアたん?」
リアスさんの冷たい対応に、冷や汗を流しながら狼狽えているサーゼクス様。
「いえ……何でもありません。お話を続けて下さい」
不機嫌な表情を隠そうともせずに、少し苛立ちげに先を促すリアスさん。
サーゼクス様は目元を潤ませながら固まっている。
「サーゼクス様……」
「はっ!!? すっ、済まない……」
グレイフィアさんに声を掛けられて再起動を果たすかの様にサーゼクス様の瞳に生気が戻った。
生粋のシスコンなサーゼクス様には先程のリアスさんの態度は大ダメージだった様だ。
サーゼクス様は気を取り直して魔王としての
「当代の淵龍王たる姫島 綾人くん。君に昇格の推薦がある。私を含めた四大魔王と上層部の決定のもとに、中級悪魔の昇格試験を受けてもらいたい」
はい?
俺が中級悪魔?
えっ!!?
幾ら何でも話が早すぎないんじゃないですかっ!!?
俺が眼を丸くしていると更に衝撃の事実が打ち明けられた。
「昇格なのだが、本当は一気に中級を飛び越えて、上級悪魔相当が実力的に妥当だと思う。けれど、昇格のシステム上の理由と功績がまだはぐれ悪魔討伐が殆どだからね。先ずは中級悪魔試験を受けてもらいたい」
話を聞いて俺は冷静に自分の立場を客観的に考えた。
この話には裏がありそうだ。
「謹んでお受けしますと言いたいところですが……一つ、確認させてもらっても良いでしょうか?」
俺の真剣な表情にサーゼクス様は頷いた。
「ああ、構わないよ。綾人くんが思っている事を遠慮なく訊ねてくれ」
「では……今回の昇格の件ですが、些か先走りすぎな事を否めません。俺が歴代の淵龍王達と同様に三大勢力の調停者となる事を前提として、悪魔勢力の一角にしっかりと基盤を固めさせる狙いがありますよね?」
俺が訝し気に訊ねると肩を竦めながらサーゼクス様が苦笑している。
「その通りだよ……徒でさえ悪魔勢力は疲弊しきっている。そこに堕天使の血を引く
そうなのだ。
その神々は自然現象などの信仰や畏怖の対象でもある。
また、荒神も祀り上げられている。
祟りを与えるのも神々の側面であるとの考えである。
堕天使の血を引く上に転生悪魔となった俺でも、下手をすると祀り上げる事は可能だろう。
実に恐ろしきは狂信的に信仰が抗えない程集まると、俺の意思とは無縁に祀り上げられる可能性があるだろう事である。
聖書の神の教えは一神教でその辺は正反対とも言える。
聖書の神にその様な思惑はなかったとしても他の多神教の神や土着の信仰の対象であった神霊達をも堕とした狂信的な信仰も怖いが、勝手に神の一柱に祭り上げられる
そうならない為にも己の悪魔としての基盤をしっかりと構築する事は肝要であるのは理解出来る。
まあ、和平を結ぶ前に引き抜かれたらそれこそ戦争の火種となりそうだ。
今の悪魔勢力に戦争に耐えられる程の余力は無いに等しいから、下手をすると日本神話勢力に一方的に滅ぼされる可能性が大きい。
俺自身としても、調停者たる淵龍王としても、それは避けなければいけない事案だ。
前世で妄想して愉悦に浸っていた頃の自分に少し戻りたくなった。
現世の俺は無責任に行動する訳にはいかない。
俺の行動一つで下手をすると悪魔勢力が滅ぶかもしれないと思うと気が重い。
それは愛着のある冥界のみならず、親しく愛しい者達にも害が及ぶという事だ。
「その表情を見るに最悪のシナリオまで想像したようだね……だが、手を拱いているとそれは現実となってしまう恐れがある。そうならない為にも綾人くんには今回の昇格を受けてもらいたい」
サーゼクス様は一切の愁いを断ち切る様に懇願する様に頭を下げた。
グレイフィアさんを除く皆は息を飲んでいる。
それ程魔王であるサーゼクス様がいち悪魔である俺に頭を下げる意味合いは重いのである。
「リアス姫が眷属の一角の『
俺は臣下の礼を取ってサーゼクス様の思いに応えた。
その後、暗い雰囲気を払拭してちょっとしたお祝いムードとなった。
俺を肴に燥ぐサーゼクス様はグレイフィアさんにハリセンで突っ込まれるまで楽しんでいた様だ。
相変わらず公私のギャップが凄まじい。
リアスさんも恥ずかし気に顔を顰めていた。
でも、悪い気はしない。
願わくばこんな明るく楽しい一時が続く様に、何時までも皆と一緒に笑っていたい。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
試験当日。
俺はセラフォルー様が用意した服装で試験会場にやって来た。
この服装は昇格の応援を込めてセラフォルーからプレゼントされた物である。
一応は燕尾服を基調とした戦闘も熟せる優れた物で随所にセラフォルー様のデザインが施されている。
グレモリー眷属のいち悪魔に過ぎない俺に四大魔王の一柱でレヴィアタンの称号を持つセラフォルー様が肩入れしているのは傍から見れば異常な事であるが、何でも早く俺が上級悪魔になってお婿さんに来て欲しいとのお達しだった。
四大魔王の一角に求婚される事は栄誉のことだろうが、如何せん普段の芝居掛かったセラフォルー様の態度を見ていると気後れする。
いや、嫌いではないんだよ。
問題はその感情はLoveじゃなくてLike止まりのところだろう。
相も変わらず愛の囁きでは済まない攻勢に若干疲弊している事は否めない。
俺が溜息を吐いているとあちらこちらからヒソヒソと話し声が聞こえてくる。
「……アレって確かグレモリー眷属の?」
「ああ、淵龍王だろう」
「けっ!! あんな堕天使崩れの野郎のどこが良いんだか!! 俺の方がレヴィアたん様の相手に相応しいさ!!」
あまり好意的ではない視線も向けられている。
まあ、仕方ないか。
俺は堕天使の血を引く
三大勢力が和平を結ぶ前だから尚更に、四大魔王様達なら兎も角一介の悪魔達には受け入れ難いだろう。
まあその点、『魔法少女マジカル✩レヴィアたん』の視聴者の年齢層の子達に好かれているのは幸福なことだろう。
良くも悪くもこの年齢層の子達は純粋だ。
俺の存在を切っ掛けに堕天使にも興味をもって欲しい。
俺が良い印象を与えておけば、その事が和平への後押しとなるだろう。
筆記も実技も問題なく実力を発揮出来た。
まあ、実技に関してはある意味に置いて問題があったかも知れないけれどね。
如何せん、試合の相手との実力差があり過ぎた。
獅子が兎を狩る様に全力を出さないのは失礼だと思って
まあ、
堕天使の光力を込めた一撃は下手をしなくても悪魔にとって致命傷となり得るからね。
それでも努力をして鍛えた功夫は一撃必殺となり得た。
一般の悪魔は己を虐め抜いて修行なんてしないからね。
うん。ちょっと悪魔勢力の未来が不安に思えてきた。
だが、相手は各勢力の過激派が集まっているテロ組織で、決して一枚岩とは言えずに複数の派閥が生じている。
その目的に応じて一般の悪魔達も標的になり得るだろう。
その際に、俺達だけでは明らかに手が足りない。
俺達以外の悪魔達の実力の底上げが急務と言える。
だがしかし、旧体制の貴族社会を維持したい老害とも言える上層部の悪魔達は、一般の悪魔達が力を付ける事を嫌うだろう。
サーゼクス様も頑張ってはいるが、老害とも言える上層部を一新できていない。
確かにサーゼクス様は慈愛に満ちたグレモリー家出身で良い為政者かもしれない。
だが、為政者たる者は時には非情となって改革を推し進めなければならない。
一応具申はしておくが、頭では理解して下さっても感情はままならないだろう。
一層の事、俺がクーデターを起こして魔王を襲名して改革を行いたいがそうもいかない。
難しい問題だが少しずつでも賛同者を集めて世論を動かして、旧体制である貴族社会を壊す勢いで改革を進めるしかなさそうだ。
全く、こんな事は中級悪魔昇格試験を受けに来たいち悪魔が考えることじゃないな。
だが、この世界は最早小説に書かれたものではなく、紛れもなく俺が生きている世界である。
物語の様に都合良く話は進みはしない。
今を生きる一人一人の積み重ねが世界を形作っていく。
俺一人では小さな力でも数が集まれば、それはうねりとなって世界を変革していくだろう。
願わくば、それがより良い世界の礎とならん事を望む。
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