Dies irae ーcredo quia absurdumー   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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推奨BGM:Juggernaut

※よりDisce libens

▼よりOmnia Vanltas


第六章 求められる選択

 

「さてと、ここらへんね。魔力反応があった場所の一つは」

 

「はい、この辺りに間違いないですね」

 

「そう」

 

 ティアナはホロウィンドウに浮かぶ地図とキャロからの確認を受けて、周囲のビル街を見回す。

 銭湯から上がった後、海鳴市の三か所に魔力反応が三つ発生した。海鳴の主街区、海鳴公園、神社だ。聖王教会から受け取ったロストロギアの情報ではダミーを作るとの事だったので、主街区にティアナたち新人メンバー、公園にライトニング二人、神社にスターズの二人が配置された。はやてやシャマルは臨時拠点のアリサの別荘だ。

 

「……特になにもありませんけど」

 

「気を抜かないでよ、エリオ。ていうか、カイトはどこいったのよ。アイツ銭湯から見てないんだけど」

 

「……わ、わわわ私はなにも知らないよっ!?」

 

「なんでそんなにアンタがどもるのよ」

 

 顔を赤くしたスバルが高速で首を振っているがなにかあったのだろうか。銭湯の時はなにか凄い叫びと水音がしていたけど。

 

「……でも、ホントに何にもない気がするけどねぇ」

 

 周囲を見回しても、何もない。シャマルが張ってくれた結界は海鳴全域に展開されており、視界は僅かに黄緑色だ。視界の中にはなにか特別な事はないし、クロスミラージュからの検索でも特に反応はない。ロングアーチからも同じだ。

 

 これではただの都市観光だ。

 

「どうしましょうね……間違いってことはないでしょうし」

 

「一度戻りますか?」

 

「うーん、そうね。それよりも他の場所の隊長たちに連絡しましょうか。私たちに何もなくても隊長たちにならなにかあるかもしれないし」

 

「あ、じゃあ、なのは隊長たちには私がするね」

 

「おーけい、じゃあフェイト隊長には」

 

「あ、僕がします」

 

「お願いね、エリオ」

 

 スバルとエリオが同時にホロウインドウを展開し、各隊長陣へコール。それを見て自体が進めばいいいなぁ、と思い、

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーーそれはだめだよ、うんだめだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!!」

 

 暴力的なまで魔力と重圧が四人を襲った。

 

「……んな……!」

 

 体が動かない、全身を鎖かなにかで雁字搦めにされたかのように動作不可能だ。指先一本ですら動けず、僅かに動いたのは口と目だけ

 

だ。

 理解ができない、なにが起きてるかわからない。今自分の胸の内に占める感情が何なのか理解不能だ。

 それでもなんとか視線を動かす。向けたのは、自分たちの正面のビル。可能な限り視線を上げて、見た。

 

 

「あ、あれー、なんか反応してくれないのー?」

 

 

 目算で五、六階程度のビルの屋上の縁ギリギリに彼女は立っていた。

 黒緑の軍服の少女。無手で困ったようい頭をかいている。

 それが今自分たちを縛りつけている重圧の正体。

 

「…………!!」

 

 二度目の驚愕はエリオとキャロに大ききかった。なぜならばその少女があまりにも似ていたからだ。彼女たちの養母であるフェイト・T・ハラオウンに。

 年の頃がティアナとスバルと同じで十五、六程度だろう。髪の色金はなく青でありツインテールであり、言葉使いも若干幼い。

 だがそれだけ。

 言葉にすればその程度の違いしかない。それほどまでに酷似しているのだ。

 まるで生き写しにしか見えないほどに。

 

「えっと…………困ったな、どうすればいんだっけ。たしか………」

 

 驚愕している四人とは反対に困ったように頭をかいている少女は懐からなにかメモ書きを取り出し眺め、数度頷く。

 ビルから飛び降りた。かなりの高さからあったにも関わらず、着地の音は限りなく小さく、彼女自身なんの痛みもないように見えた。

 そして、そのまま四人に向かって歩いてくる。一歩ずつ近づいてくるたびに彼女から発せられる重圧は増してくる。外見上はただの少女にしか見えない。だが、なぜか。まるでその少女に何十人、何百人、あるいはそれ以上にも及ぶ存在感を感じる。

 

「はじまして、でいいよね」

 

 身から発せられる重圧には似つかわしい可憐な笑みを浮かべ、そして。

 

 

「****** *** ******」

 

 

 もはや消え去った世界の音と言葉でだれかの咒を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!」

 

「ヴィータ副隊長っ!」

 

 鉄槌を振りかぶったヴィータに赤紫の炎弾がぶつかり、階段から転げ落ちる。大きさとしては小さい。速度もそれほどなかったはずだ。なにも関わらず、彼女が展開した障壁は一瞬で燃やし尽くされ消える。

 そう、燃やされるのだ。破壊されるのではなく、炎弾が触れたところから燃やされて消えるのだ。

 それは障壁だけでなくこちらの攻撃も変わらない、魔力弾も砲撃も同じように燃え尽くされる。

 障壁を燃やされ、弾き飛ばされるように階段を転げ落ちるヴィータに一瞬意識が向けられ、

 

「よそ見している暇がありますか?」

 

「く……!」

 

 頭上からの声と共になのはにも滅却の炎弾が落ちる。誘導弾ではない直線弾だから、階段を飛びおりる事で回避する。同時に自分は誘

 

導弾を生みだし、

 

「アクセル……シュートッ!」

 

『accele shoot』

 

 桃色の誘導弾の数は十六。なのは自身にリミッターが掛けられているとはいえ、その威力や誘導性能はピカイチ。空中を疾走し、階段の頂上、神社の社に仁王立ちする少女へと向かう。

 その少女は驚くほど顔立ちがなのはに似ていた。年はいくつか下、恐らくスバルたちと変わらないであろう。髪は濃い茶色でショートカット、瞳は凍えるようなアイスブルーではあるがそれ以外は酷似している。

 あとは身につけているのが無傷の軍服か、ところどころ燃え落ちたバリアジャケットの差しかない。

 そして、迫りくる誘導弾に対し

 

「ふむ」

 

 なにもせずに受けた。防御の仕草も障壁を張る事すらなくそのまま受けたのだ。爆発により土煙が上がり、

 

「ヴィータ副隊長!」

 

「おう!」

 

 復帰していたヴィータが階段を駆けあがりながら鉄槌を振りかぶる。いや、駆けるというよりも、超低空の飛行魔法か。それにグラーフアイゼンの後部ジェットによる加速も追加。未だ残る土煙に飛びこみ、

 

「ラーケンハンマァーー!」

 

 大気を打撃しながら、ぶち込み、

 

「ぬるい」

 

「なっ……!」

 

「そんなっ!」

 

 土煙が晴れる。

 そこで見たのは、無傷でグラーフアイゼンの一撃を手のひらで受け止める少女の姿。

 

「ぬるいです。その程度ですか」

 

 言葉と共に放たれたのは音速を軽く超えた右の蹴りだ。

 

「がっ!」

 

 それはヴィータの腹に突き刺さり、彼女は血の塊を吐き出しながら階段を転がり落ちる。

 

「ヴィータちゃん!」

 

「……っう……すまねぇ、なのは」

 

 なんとか途中で受け止める。もはや二人ともバリアジャケットはボロボロであり、いたるところにも火傷がある。特にヴィータは今の蹴りにより腹にかなり酷い火傷を受けた。

 

「やれやれその程度ですか」

 

 頭上から失望したような声が落ちてくる。アイスブルーの瞳は言っていた。この程度かと。

 

「あなた……何ものなの?」

 

 神社に到着したなのはとヴィータに突然襲い掛かって来た軍服の少女。魔導師かも不明だ。なにせ、エース級魔導師であるなのはとヴィータ二人でも傷一つ付けられないのはいくらなんでもおかしい。なにせこの少女はデバイスすら使っていないのに。それに滅却の炎もだ。通常の魔力変換資質の類ではない。

 

「なにものか……ですか、それはこちらが聞きたいのですがね」

 

「どういう、意味だ!」

 

「さぁ、どうでしょうか。ただ」

 

 少女は高みからなのはたちを見降ろして言う。

 

「あなたたちが彼の愛にふさわしいかどうか。彼の守護の慕情に包まれる価値があるのか見極めたいのですよ」

 

「え……?」

 

 彼の愛。守護の慕情。

 その言葉がどうしようもなく、なぜだかわからないけど二人の心を、魂を揺さぶる。

 

「だから、早く起きなさい。いつまで遊んでいるのですか?」

 

 僅かに気を緩ませれば動けなくなりそうな重圧を発し、さらには巨大な炎弾を二人に放ちつつ、

 

 

「**** ***」

 

 

 もはや消え去った世界の音と言葉でだれかの咒を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハハハーーーー!!」

 

 夜の海鳴公園に哄笑の叫びが響く。

 その出所は一人の少女だ。

 銀の短髪に緑の双眼。他の二か所にいる少女と同じ黒翠の軍服。

 そして、彼女も他の二人と同じように、年と色は違っても八神はやてと酷似している。

 

「ホラホラ、どうした。貴様ら! 閃光と烈火の名が泣いておるぞ!」

 

 些か古めかしい言葉を向けられたのは、

 

「くっ……!」

 

「貴様ぁ……!」

 

 怒りを滲ませた声をあげるのはフェイトとシグナムの二人。神社のなのはたちと同じようにすでに満身創痍に近い。だが、それでも、

 

「ハアッ!」

 

「ゼアッ!」

 

 裂帛の叫びと共に、戦斧と長剣を振い少女へと走る。

 雷撃と炎撃を纏った一閃。どちらも魔力変換資質という稀有なレアスキル持ちの二人。

 だが、それらに少女は顔色一つ変えず、むしろ笑みを濃くし、

 

「やれやれ、そう焦るでない」

 

 手の平から闇色の球体が生まれる。一つ生まれたそれは二つに分かれ、フェイトとシグナムの斬撃の軌道上に割り込むように飛ぶ。

 

「っ!」

 

 闇球は斬れる。だが、斬れた瞬間に拡大するのだ。それぞれの刃が触れた瞬間に直径数メートルにまで拡大し、二人を飲み込む。彼女

 

たちの足場でされ球体に削り取ってだ。

 

「む……ちとやりすぎたか?」

 

 同時に、球体が雷柱と炎柱を上げて弾き飛ばされた。

 

「バルディッシュ!」

 

「レヴァンティン!」

 

『load cartridge』

 

 バルディッシュとレヴァンティンから空のカートリッジが三つずつ排出され、バルディッシュはサイスフォームに移行、レヴァンティ

 

ンは鞘に納められる。同時に、二人の魔力が劇的の高まり、

 

「ハーケン--スラッシュッ!!」

 

「紫電--一閃!」

 

 雷光と炎熱の双閃。大気を震わし、焦がしながら迫る。どちらもただ単に変換した魔力で刀身、一閃を強化して放つという基本にして奥義。フェイトやシグナムの技量でやれば十分に必殺になりうる。

 だが、

 

「ハッ」

 

 必殺になりうるはずの双閃は、少女の指のみで受け止められていた。

 

「そん、な……」

 

「ばか、な……」

 

「残念ながら、今の貴様たちでは我は傷つけられぬよ」

 

 言葉と共に彼女の身体から魔力が放たれ、二人の身体が弾き飛ばされる。数メートル転がり、起き上がるが追撃はない。

 あきらかに舐められている。当然だ、これまでの攻防でこちらは傷一つ与えていないのだから。デバイスすら使っていない相手にも関

 

わらず。

 

「あり得ない……なにか、あるはず」

 

「応とも。ちゃんとタネも仕掛けもある。もっとも例えそれを解いたとしても貴様らにはどうしようもないがな」

 

「くっ……!」

 

「貴様は一体なにものだ。なぜ……主はやてと同じ姿をしている」

 

「さぁ? それは我が聞きたいくらいだよ」

 

「ふざっ……!」

 

「ふざけてなどおらん。実際我とて望んでこのような容姿になったわけではない。それに貴様の主と我は別人だ。顔と声が似ているだけにすぎん」

 

 僅かに嘆息しながら少女は言う。確かに、目の前の少女は似ているがはやてとは違うようだ。

 だが、しかし。ならば余計に理解ができない。

 

「理解できぬか? そうであろうな。できぬはずだ。だがしてもらわないと困る。なぁ、いい加減思いだしたらどうだ?」

 

「え……?」

 

「何を……?」

 

 僅かに重圧を緩ませながら、それでも凄惨と言える笑みを浮かべ、さらなる闇球を生みだしながら、

 

 

「**** *******」

 

 

 もはや消え去った世界の音と言葉でだれかの咒を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「****** *** ****** *** **** **** ******」

 

 海鳴の街、その遥か上空。海鳴全域に張られた結界よりもさらに高い所にユーノ・スクライアはいた。その身に纏うのは白の軍服の上からさらに黒緑の軍服を袖を通さずに羽織っている。

 彼が呟いたのはこの世界の言葉ではなかった。

 それはすでに消え去った世界の残滓。もう使われなくなり、今となっては理解できるのも数人のみとなってしまった旧世界の言語だ。

 その言語で呟かれたのは名前、だろうか。

 悼むように、慈しむように、溢れる愛と共にその名は紡がれていた。

 

「ああ……」

 

 今の彼の気配は驚くほど薄い。本来の魂の質から考えれば、その場所にあったとしても誰もが気付いてもおかしくはない。いや、弱い魂なら彼の余波で押しつぶされ消えることさえありえるだろう。

 だから、今の彼は極限までに弱体化している。  

  

 例え、それでも眼下の部下とも言える少女たち三人を楽にねじ伏せられるとしてもだ。

 

 彼の目は今劣勢に立たされ、あるいは何もできずに固まった彼女たちへ。

 かつての咒を呼ばれ、回帰しかけている彼女たちへ向けられており、

 

「そう。思い出してくれ、その魂の輝きを。それは潰えてはならぬ、砕けてはならない閃光だ」

 

 かつて、共に駆け抜けた何よりも輝かしい世界。ぶつかり合い、戦い、魂を燃焼させた疾走。

 それは今もまだ彼女たちの内に眠っている。

 

「だから思いだし、その上で選んでくれ。かつてを継承か解脱かどちらかを」

 

 かつての魂を継承しろ。

 かつての魂から解脱しろ。

 どちらでもいい。

 どちらかを選べ。

 

「今この瞬間を生きている矜持があるのならば」

 

 決してかつてにそのまま塗りつぶされるな。

 確かに回帰と黄昏の魂は素晴らしい。誰にも穢させはしない。

 だが、

 

「君たち自身の輝きもまた、負けず劣らぬと信じているから」

 

 そうだ。君たちは僕の宝石だ。この新月の世界での輝きとて本物なのだ。

 

「その輝きを僕が必ず守るから。我が愛は守護の慕情。このくそったれの世界でその輝きを守りきろう。君たちのその生を弄ばせたりなどしない」

 

 そして、緩やかに右手を上げる。

 

「頼むよ。先駆者として、魅せるものを見せてくれ。ディオスクロイ、ファタル、ガウス」

 

 振り下ろし。

 

 

 

了解しました、我が主(ヤヴォール・マインヘル)

 

 

 

 無限の物語の中、最も翡翠の加護を受けた三つの物語が紐解かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 青髪の少女が四人に近づいていく。別段なにかしらの攻撃行動をとっているわけではない。

 ただ近づいているだけ。それだけでティアナたちの動きは封じられている。

 いや、それ以上にかつて失ったはずの咒を呼ばれて、動けない。だから、彼女たちには何もできなかった。

 それには少女はなにもしない。もとより回帰を促すのが少女たちの役目だ。

 だから動きを見せたのは新たな介入者。

 

「ん?」

 

 少女がティアナたちか目を離し、道路の先を見る。よく見れば、こちらへとかなりの速度で走る単車が迫ってきて。

 

「……ん?」

 

「ハッハー!」

 

 おもいきり引かれた。

 

「へぶぅっ!!」

 

 およそ少女にあるまじき呻き声を上げながらぶっ飛ぶ、地面を転がって大根おろしの気分を味わった。それでもすぐに復帰し、

 

「な、なんだぁ!」

 

「通りすがりのイケメンだよ」

 

 数メートルドリフトして降り立った彼は事も何気に言い放った。 

 

 赤いジャケットにダメージに入ったジーンズで腰にはシルバーチェーン、首にはネックレス。

髪は一体どういう風に染めたのか黒髪と白髪が半々に混じっていて、体は針金を束ねたかのように細い。筋肉の類が無駄なく絞り込まれている。

 

 言うまでもなく、カイト・S・クォルトリーズだ。

 

「よう、レヴィ。相変わらずアホ面晒してんな」

 

「なにすんだコラー!」

 

「いやだって、お前がコイツらに手出してるかと思ったからよ」

 

「まだなにもしてないよーだっ! それにしたって普通轢く!?」

 

「まー、いいだろ? そんくらいじゃあ傷1つつかないんだらからよ」

 

「そういう問題じゃなーい!」

 

 顔を真っ赤にして叫ぶレヴィと呼ばれた少女とケラケラ笑うカイト。

 レヴィはともかくカイトはあまりにもいつも通りだ。

 

「………カイト」

 

 ぽつりと、ティアナもエリオもキャロも名前を呼ぶが反応はなく。スバルはなにも言わなかった。

 

「それにほら、他の連中がいい空気吸ってたからな。こっちも盛り上げようと思ってよ」

 

「余計なお世話だぁ! もう怒ったもんねーー!」

 

「はっ! そうそう。最初からそうしろよ。元々やる事はそれしかないだろ」

 

 二人からさらなる魔力が溢れだす。

 それの余波で再びティアナたちは動けなくなるほどの魔力。少なくともティアナたちのデバイスでは計測不能なほどだ。

 

 

 

 

『ーーーー形成』 

    Yetzirah

 

 

 

 

 二つの幻想が形を成す。

 レヴィのはフェイトの持つバルディッシュの色違いであるがそこに込められた神秘は桁が違う。

  

 カイトのそれは二丁の大型の自動拳銃。それぞれの銃身に分厚い刃を備えた短剣。灰色の双銃剣だ。同時にカイトの手から鎖が生み出され腕に巻きつく。

 刃は即ち狼の爪であり、銃口という名の顎から吐き出させるであう弾丸は牙。鎖は狼の尾だ。

 主の命を受けた雷光が大気を轟かし、灰色狼が牙をむく。

 

 

 そして、幻想を形成させたのはこの二人だけではない。

 

 

 全く同時に神社と海鳴公園の二か所でもそれは起きた。

 

 

 神社では巨大な炎弾を軽い手の払いのみでかき消したアリサ・バニングス。

 海鳴公園では闇玉を己の身で吸い消した月村すずか。

 

 なのはとヴィータ、フェイトとシグナムを守るように現れた少女たちと同じ軍服姿のアリサとすずかだ。

 

 そして彼女二人に相対する少女もまた同じだ。

 二人の少女は前に手を突き出し、アリサは右手を頭上に左手を腹の前に構え、すずかは右腕を掲げる。

 そして、四者四様に、

 

『ーーーー形成』 

    Yetzirah

 

 それぞれの幻想を形成す。

 

 滅却の劫火と共にレイジングハートとの色違いの魔杖が。

 深淵の闇と共にシュベルトクロイツとの色違いの十字杖が。

 灼熱の双焔と共に二振りの大太刀が。

 夜への咲き誇りと共に爪刃と鋭牙、赤眼が。

 

 彼女たちがそれぞれその身に宿す幻想が形成されそして。

 

 

 

 

 

 

「聖槍十三騎士団黒円卓第七位、カイト・クォルトリーズ=ガウス」

 

「同じく第十位、レヴィ・ザ・スラッシャー」

 

 

 

 

 

 

「聖槍十三騎士団黒円卓第五位、アリサ・ローウェル・バニングス=デュオスクロイ」

 

「同じく第九位、シュテル・ザ・デストラクター」

 

 

 

 

 

「聖槍十三騎士団黒円卓第四位、月村すずか=ファム・ファタル」

 

「同じく第八位、ロード・ディアーチェ」

 

 

 

 

 

 

 

 それぞれお互いに己の名と魔名を誇らしげに、謳うように名乗り合い、

 

 

 

 

 

「いくぞぉぉぉぉっっっっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




マテリアル組は名前がそのまま魔名ですよ。

感想という魂を分けてくれ……カメラードたちよ。
感想大歓迎中ですよ!

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