横島の道   作:赤紗

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雪之丞初登場です。
小竜姫が初めて横島の才能を見出し
雪之丞が初めて横島を認めたんだと想思います。

次回は六道家を出したいかな


雪之丞

 

 

 

「俺は一体どうすれば …どうしたいんだよ」

 

「何グチグチ悩んでんだよ。」

その声とともに右頬に痛みが走り、気がつくと夜空が目に入ってきた。

 

「…雪之丞!!」

 

「よう? あまりにも情けない面していたから、思わず殴っちまった。」

 

「情けない?」

 

「ああ、いじけてるガキにしか見えないぜ!!」

 

「…イヤ違うな、悲劇の主人公ぶっているナルシストか?」

 

「ふざけんなー!!」

そう言いながら、先ほどやられたように右頬を殴り返す。

しかし雪之丞は倒れない。ガードもせずに直撃を受けたにも、かかわらず倒れなかった。

 

「効かねえよ、そんな軽い攻撃じゃあな!!」

 

逆に殴り飛ばされてしまった。魔装術も使っていない状態で!!

 

 

「急に現れて勝手なことばかり言いやがって 何がしたいんだよお前は!?」

 

「今のお前が気にいらねえだけだ!!」

 

そう言いながら今度は蹴りまでとんできた

(意味が解らねえ コイツ何がしたいんだよ?)

 

 

 

「なんで溜め込むんだ!! 何故話さない?」

 

「お前はそんなに仲間が…ダチが信用出来ないのかよー」

 

「そ、そんな事は」

 

「お前の行動はそういうことだっ言ってんだよ」

 

話しながらも雪之丞は手を緩めない。殴って蹴っての応酬。

そして抵抗がなくなった横島の襟を掴み持ち上げて

 

「俺たちはそんなに頼れないのかよ!!」

雪之丞は悔しそうに涙を流しながら語った。

「…雪之丞?」

 

 

雪之丞は横島の優しすぎる性格も心配していた

横島は優しすぎる…故に自分の中に全て抱え込んでしまう。

そして中途半端な同情が横島を救えないのを、雪之丞は理解していた

横島を救うには、本気の想いをぶつけるしかないのだ。

雪之丞は、かつて横島と出会い戦って、光の道に戻れた

横島に出会わなければ、勘九朗と同じ道を歩んでいたかもしれない…

そしてあの戦いで、横島が一番苦しんだ時、全く力になってやれなかった

あの時ほど自分の無力感に悔いた事はない。

かつての、過去の自分のように横島が今苦しんでいるなら、力になろう!!

 

 

 

「…ゴメン」

 

「俺、馬鹿で自分勝手で周りの事なんか見えていなかったんだ。」

 

「…横島何があったんだ ルシオラ穣ちゃんの件以外か?」

 

 

「俺さ、許せないんだ… 」

 

「勝手に全てを終わらせて、ハッピーエンドだと言った美神さん。」

 

「時間移動で歴史を変えてまで美神さんを助けた癖に、ルシオラは見捨てた美智恵さんも許せない」

 

戦後、美智恵の行動を思い返すと不審な点が多すぎた。

初めての干渉は中世に行く前の夢だ。美智恵はここで始めて横島に接触し令子に対して警告をしている。

夢とはいえ霊能力者なら他人の夢に干渉は可能で、以前パイパー事件で美神令子も横島の夢に干渉できている。令子に出来て美智恵に出来ないわけがないのだ

 

他にもいろいろ有るが決定的なのは『逆天号』対 USS空母インクレータブル戦の時だ

あの時、美智恵は逆天号の時間軸をずらして撃沈させるつもりだった。…横島がスパイで乗艦しているのを承知の上で!!

その後、美智恵から横島の潜入中の安全確保のための作戦だったと聞かされたが

戦後に全てを考え直した横島は、その言葉は嘘だったことに気が付いていた。

時間軸のズレを利用した攻撃は空母の莫大な電力を使うた微細なコントロールが不可能だし

断末魔砲の威力や逆天号の防御力を詳しく知らない美智恵が、横島の安全を死守出来るはずがないのだ。

結局、娘の令子を守ることしか考えていなかったのだ、

そして現代に戻った美智恵はこれ以上の干渉は令子を守るマイナス要素として行わなかった。

…ルシオラの死がわかっていながら見殺しにしたのだ。

 

 

 

「…けど一番許せないのは …ルシオラを犠牲にするしか出来なかった自分が許せないんだ。」

 

 

「…横島」

簡単に割り切れるはずはないのは解っていた。自身もかつて最愛の母親を亡くして苦しんだ経験があったのだから…

ましてコイツは目の前で失って、力があれば助けられた可能性があるのだから…

 

 

 

「…俺、今ルシオラ蘇生の方法を考えて、カオスに協力してもらっているんだ」

 

「っ!! 生き返れるのか?」

 

「…ああ、けど周りには言えなかった。 …成功しても俺は人間じゃあなくなるから」

 

「何?」

 

「足りない霊体を補うには、やっぱり俺の中の霊破片を使うのが一番成功率が高いんだ」

 

「…ただ人間の状態では分離する時に破損する可能性が高いから出来ないだけで、俺が人間の限界値を超えて耐えられるようになれば…」

 

「……カオス以外には話したのか?」

 

「イヤ、カオスとマリア以外にはまだ…」

 

「…俺も協力させろ」

 

「雪之丞!?」

 

「…イヤ、俺達に協力させてくれ」

 

「あの結末に後悔しているのは、お前だけじゃないんだ!!」

 

雪之丞は、あの時の後悔を忘れない。何も出来なかった自分自身

そしてその後悔は自分だけでない事にも気が付いていた。

 

「グチャグチャと文句はなしだ 今度こそハッピーエンドで終わらせてやる!!」

 

 

その言葉に横島は涙が出るほど嬉しかった。

 

 


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