横島の道   作:赤紗

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それぞれの

 

「お主の願い承知した。 そのために用意して貰いたいものがある。」

 

「1つ目は文珠」

『肉体』『若返』『記憶』『容量』『増大』『補填』の計12個

「これにより肉体を若返らせ、記憶容量を増やす。で欠けた部分を補填する事が出来る」

 

 

「もう1つは『場所』」

「研究施設がないと実験すら出来ぬ」

 

「研究所か、探してみるよ」

 

「他の奴らには頼らんのか?」

 

「…ああ、迷惑をかけたくないから。」

「場所については発見しだい連絡を入れるよ。」

 

 

そう言いながら横島は帰って行った。

「あれは囚われて周りが見えておらんのう …いや見たくないのだろうな」

 

「イエス・ドクターカオス・今の横島さん危険」

マリアが危険という言葉を使うほど横島の危うさが解ったのだろう

横島に対し感情をみせたことを喜べばいいやら、横島の現状に悲しむべきか

 

…ともあれ今は横島の願いを叶えてやることが、小僧にとっての救い

ならこの老骨の身であろうともやれることをやるのみよ

 

 

 

 

 

 

「もう少しだけ待っていてくれよ。必ずお前を救ってみせる」

 

 

…自身の心の傷が癒えぬうちにルシオラを無かったことにする仲間

そして自分に向けられる周囲の冷たい視線

横島の精神は追い詰められていた。ルシオラ復活という希望だけが今の横島を支えていた。

それがなければ最悪後を追って逝った可能性のが高かったのだ

ルシオラ復活以外眼中になく、そのためなら自分を犠牲にする事も厭わない覚悟だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな横島を見つめる二つの視線

 

「「横島さん」」

 

 

2人の神族は今の横島を見て痛ましくなった。

 

彼はエッチでおバカだが他の人にはない魅力があった

 

彼は何者も差別せず、ありのままを見てくれた

それがどれだけ得難い心根であるのか…

 

人一倍痛がりで、人一倍臆病で、人一倍女好きで

そして、分かり難くい優しと分かり難くい勇気を持つ彼が…

 

そんな彼が何故こんな目に…

 

決まっている、神魔の問題を押し付けた自分達のせいだ。

 

 

魔神アシュタロスは、自らが悪という存在であることに耐えられないがゆえに反乱を起こした

だが彼を巻き込むきっかけは作ったのは神族側だ

美神令子の前世を調べるため美神の時間移動能力を強制的に発動

その結果、同じ魂をもつ美神令子と魔族メフィストが同じ時代に存在したことを不審に思った

魔神アシュタロスが介入してしまい、そして魔族メフィストと争いに発展し横島の前世高島は死亡

その後、魔神を時間移動で退けるも結晶はメフィストの体内に残り、生まれ変わりの美神令子に引き継がれることになる。

アシュタロスと美神令子の因縁、メフィストと高島の絆、これはらヒャクメの介入があったから起こったことでもある。

その後、アシュタロス一派のメドーサが起こした月の事件などは美神だけでなく横島も巻き込んでいる。

 

…そして事件が起こってしまい、対応にあたらなければいけない私達ができたのは結末の最後を見守ることだけ

 

事件以降、彼は笑わなくなった

 

そんな余裕はないのだろう

 

彼の笑顔はみんなを明るくさせてくれた

 

そんな彼の笑顔を奪ったのは私達だ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小笠原エミ除霊事務所

エミは結局ピートの頼みを無碍にできず、愛子を事務員として採用し身元保証人になっていた

そんな愛子だが、長く生きてるだけあって知識が豊富であり、最低限のマナーなどは熟知していた

無論GS事務所特有の細かな点は教えることは必要だったが、エミの予想よりも遥かに使える人材である

 

「まさか妖怪の私が除霊事務所で働くようになるなんてね……」

 

「難しく考える必要はないワケ。 普通に仕事してくれればいいのよ」

 

初めは愛子の言うように妖怪を事務所に働かせることに抵抗がないわけでなかったが

仕事ぶりを見て考えを改めていた

電話での受け答えや最低限の書類の作り方など基礎が出来ており、なにより本人のやる気と飲み込みの速さは評価に値していた。

 

「来客の対応にも問題ないワケ …本当に学校にしか居なかったワケ?」

 

「以前横島君のお手伝いをしたことがあるんです」

 

「横島? なんでアイツのお手伝いが関係あるワケ?」

 

「実は…」

 

愛子は以前美神が一時期オカルトGメンに出向した際に横島が事務所の指揮を執ったこと

そのさい自分を含む知人らを集めて陣頭指揮を執り、大幅な黒字を叩き出したことを話した。

ちみに美神がストレスでGメンを辞め事務所に戻ったが横島ほどの黒字は出なかった。

(復帰後、経営を横島に任せなかったのはプライドのためである)

 

「…無名の横島がGS事務所経営を成功させるなんて」

GSは信用商売である。そんな中で大規模な黒字を出したという横島の商才にエミは呆れながらも納得していた。

以前、令子への切り札と当てつけに引き抜いた横島だが、

エミは公安絡みの仕事も請け負っているため、人を雇う時は事前調査をするのが当然であり

横島も例外ではなく身辺調査はしていて、そのさい『村枝の紅百合』の息子であることも掴んでいたのだった。

最もその時には紅百合は引退しており、半ば都市伝説のようなあやふやな噂ばかりだったで、ほとんど信じていなかった。

だが今の愛子の話を聞いて横島の商才が親譲りのものだとしたら…

そして横島の才能が商才だけだったらと…

 

「そういえば横島まだ学校に来ていないの」

 

「…はい」

 

「…そう」

 

…横島の現状を思い、苦々しい思いになるエミだった。

 

 




遅くなりました。

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