バカとIS   作:陸のトリントン

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セシリアとの口論回です。

オルコッ党の方々には不快になる文章が、所々あります。

それらに嫌悪感を抱く読者は、閲覧を推奨いたしません。


第六話 バカと「貴族」

人外()の鉄槌から・・・翌日。

 

教室では織斑先生が教壇に立ち、クラス代表者の選出が行われていた。

 

「これより、再来週行われるクラス代表選の代表者を決める。クラス代表者とは、対抗戦だけでなく、生徒会の会議や委員会への出席など、まあ、クラス長と考えてもらっていい。自薦他薦は問わない。誰かいないか?」

 

「はい。織斑君を・・・推薦します」

 

一人のクラスメイトが一夏を推薦したが、一夏の姿に困惑した。

 

 

 

二人(一夏と箒)の姿が包帯まみれだった。

 

 

 

一夏の頭はターバンのように包帯が巻かれており、顔は絆創膏と痣だらけ。包帯と湿布が体中に張られているため、体から、湿布特有の臭いが散漫していた。

 

一方の箒は、顔の怪我は少ないが、両腕両手、両脚両足を中心に体中が包帯で巻かれていた。

 

しかも二人の表情は、生気を感じない顔つきであった。

 

「織斑、篠ノ之。一体何があった?」

 

「いろいろありました・・・」

 

「自分が自惚れてることに気付きました・・・」

 

「・・・他にクラス代表で自薦他薦する者はいないか?」

 

無駄だと判断した織斑先生は、クラス代表の選出を進めた。

 

 

「あまり強く抱きしめずに・・・」

 

「おりむ~・・・織斑君を推薦します」

 

「織斑君を推薦します!」

 

「ねこじゃらしはあまり強くふらないで・・・」

 

「他にはいないのか?いないなら無投票当選だぞ」

 

一夏はいつの間にか自分がクラス代表に選ばれてる事に気付き、慌てて反論した。

 

「ちょっと待ってくれ!俺はそんなの「納得がいきませんわ!」」

 

が、一夏の主張を遮るように机をたたき、声を荒げたのはイギリス代表候補生のセシリア・オルコットだった。

 

「そのような選出は認められません!男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ!このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」なっ……!?あなた!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

 

二人の間に沈黙が走り、セシリアは息を整えた。

 

「決闘ですわ!」

 

「おお、いいぜ。四の五の言うより分かりやすい」

 

「逆なではあまり良くないから、毛並みに沿って・・・」

 

「あなたは、いつまで猫と戯れてるんですか!」

 

「ん?」

 

セシリアは、一夏が祖国を侮辱する以上に、教室の窓側で行われている、「佐山翔による山田先生懐柔術(猫の触れ合いコーナー)」の方がよっぽど気になっていた。

 

「貴方みたいな人がこのIS学園にいること自体、女性達の屈辱なのですのよ!」

 

「え?そうなんですか?山田先生」

 

いつものようにやる気のない口調で、山田先生に問いかけた。

 

「オルコットさん。それは言い過ぎでは「お黙りなさい!」あぅ・・・」

 

 

 

 

 

 

山田先生の威厳は皆無であった。

 

「大体、貴方に彼女がいるなどおかしい話ですわ!弱みを握り、自分の欲求を満たすために道具のようにこき使って「するわけねえだろ・・・」話を最後まで聞きなさい!」

 

我慢をしつつも、動かに証拠を持っていると言わんばかりの態度でセシリアは反撃に出た。

 

「それに、あなたは昨夜、ルームメイトを襲ったと聞きました。それが動かぬ「そのルームメイト、俺の彼女だし、襲ってない」な・・・!?」

 

話を遮られ、さらには自分の勘違いという屈辱が入りまじり、我慢の限界に達したセシリアは、「禁句」放ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だとしても!貴方の彼女は、随分と『無能』な女性みたいですね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・どういう意味だ」

 

彼女を侮辱された瞬間、顔を険しくした翔に気付くことも無く、セシリアはしゃべり続けた。

 

「向上心も無く、誠意も無く、女に媚びへつらうような真似しかできない猿に、寄り掛かる女が無能でなければ、なんと仰りますの!?」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉に全てを壊され、生きる事さえ放棄しようした彼女の苦しみを、彼が一番知っている。

 

自分の力で、新しい居場所を見つけた彼女の喜びを、彼が一番知っている。

 

一緒に勉強したり、一緒にお弁当を食べたり、一緒に帰ったりしてくれる彼女の優しさを、彼が一番知っている。

 

そして、「学校で一番バカ」と呼ばれた男を愛する彼女を、彼は愛している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「ちょっと、聞いていますの!」

 

「・・・ああ、聞いてる」

 

「では、お聞きします。向上心も無く、誠意も無く、女に媚びへつらうような真似しかできない猿に、寄り掛かる女が無能でなければ、なんと仰りますの?」

 

「知らねえな。ただ分かることは・・・」

 

「なんですの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、(彼女)を傷つけるものは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てめえをぶっ倒さなきゃならねえってことだ!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰であろうと倒す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、貴方!このわたくしに勝て「うるせえ!このドリル野郎!」ド、ドリル!?」

 

「てめえみたい奴はな、口だけで大した実力なんて持ってねえんだよ!」

 

「このイギリス代表候補であるセシリア・オルコットになん「ガキなんだよ!てめえは!」ガ、ガキですって!」

 

「ああ、そうだ。じゃあ逆に聞くが、イギリス代表候補ってのは、織斑先生よりすげえのか!?」

 

「そ・・・それは・・・」

 

クラスメイト達は驚愕していた。あの、いつも気怠そうにして、「興味ない」の一言で話を終わらせる彼が、代表候補生を黙らせている。

 

「結局てめえは、オモチャを貰って喜んでるガキと同じなんだよ!」

 

「あ、あなたにわたくしの「てめえの過去なんて興味ねえ!」な・・・」

 

とうとう、セシリアは黙り込んでしまった。だが、それでもお構いなしと翔は怒鳴り続ける。

 

「てめえは、ISっていう訳の分からねえ力を、自分の力だと思い込んでるバカなんだよ!」

 

「わたくしは、実力でここまで上り詰めてきたのです!貴方みたいに、ISを動かしただけの「ISが無ければ実力は出せねえのか!?」そ・・・それは・・・」

 

「答えられねえのか。結局、自分が馬鹿だと気付かず、他人を見下すことしかできねえ救いようのないバカなんだよ!」

 

「バカと言ってる方がバカなんです!」

 

そして、翔は自分の背丈ぐらいの大きな太刀をどこからか取り出し、構えた。

 

「分からねえんなら、力ずくで「そこまでだ、佐山」ああ?」

 

この後やろうとしてることを察したのか、織斑先生は佐山の言葉を遮った。

 

「お前がやろうとしていることは、その彼女に迷惑を掛けることだと分からないのか?」

 

「・・・」

 

「分かってるなら、席に座れ」

 

代表候補生を黙らせた翔を黙らせた織斑先生を見て、一組は改めて先生がどれ程すごい人物なのか改めて思い知らされた。

 

「それでは、勝負は来週の月曜。第三アリーナで行う。織斑と佐山、オルコットはそれぞれ準備をしおくように」

 

何故佐山が入ってるのか、クラスメイト達はそれを聞かずに授業へ参加した。

 

なぜか、二人(一夏と箒)はセシリアに合掌していたが、誰も気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・って、ことがあったんだ」

 

「翔・・・言い過ぎ」

 

昼休み、翔は簪と一緒に食堂で昼食を摂りながら、今朝の出来事を話していた。簪は、日替わり定食を食べつつ、翔の言動を注意した。ちなみに翔は、肉まんという名のK○Cのツイスターを食べていた。

 

「仕方がねえだろ。あそこまで簪を侮辱されたら、さすがの俺も怒るに決まってるだろ」

 

「みんなに彼女がいるって・・・言ったのは誰?」

 

「・・・すいません」

 

「・・・バカ」

 

簪は頬を膨らませながら定食を食べながらも、少し嬉しそうな顔をしていた。たとえ、相手が国家代表候補であっても、敢然と立ち向かう翔の姿を想像して、惚れ惚れしていた。

 

「どうした?飯、冷めるぞ」

 

「え!?あ、うん・・・」

 

翔の言葉で我に帰った簪は、話題を変えた。

 

「ところで翔・・・オルコットさんの対策、考えているの?」

 

「そりゃあ、戦う前につぶ「ダメ・・・」万策尽きた」

 

やはり彼はバカだった。

 

「今夜、一緒にオルコットさんの・・・対策会議をしよう」

 

「できんのか!?」

 

「うん。イギリスの代表候補の試合映像なら・・・あるかもしれないし、ISのデータなら・・・公開されている部分だけなら・・・皆、観れるから。それに・・・」

 

一旦、息を整えて、簪は翔を見つめて言った。

 

「今度は私が・・・翔を助ける番だから」

 

昨日の発言といい、今回の発言といい、簪は強くなっていた。翔は簪の手を優しく握り、感謝した。

 

「ありがとう、簪」

 

「翔・・・」

 

二人の甘い(?)雰囲気に周りの女子生徒達は、にやけてたり、げっそりしてたり、「爆発しろ」と念じてたり、混沌とした状態になっていた。

 

「で、放課後どうする?」

 

「第二アリーナが使えるから・・・ISの練習したいけど・・・大丈夫?」

 

「大丈夫だが、お袋が作ったISスーツが届いたから、そっち先にしていいか?」

 

「・・・いいよ」

 

こうして、翔のIS特訓が始まった。

 

 

 

 

 

 

「アリーナに、猫連れていいか?」

 

「・・・ダメ」

 

特訓より猫を優先するバカであった。




次回は、放課後の特訓回です。

放課後の特訓に深い意味はありません。

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