今更ですが、この作品はアニメ版を基に制作しています。原作小説との差異が多く見られますので、ご了承ください。
「なあ、一夏?」
「ん?」
「なんで、そんなに疲れてるんだ?」
「お前が教室を出た後、セシリアに怒鳴られっぱなしだったから」
「セシリア?」
「さっき、俺たちに声をかけた人」
「ああ。いたなぁ」
「今もいるから」
三時間目が始まる直前。最愛の人が三組にいなかった為一組に戻った翔は、一夏の疲れの原因を聞き、それを他人事の様に聞き流した。
「というか、よく無視できたなぁ」
「あいつに興味が無いから」
「はあ。そういや気になってたけど、探してる人って恋人?」
「ああ」
「え!?お前の恋人、IS学園にいるのかよ!?」
「ああ」
「すごいな」
「そっか?」
「だって、恋人がISがく「織斑・・・」え?」
一夏の頭に織斑先生の
「もう授業は始まっているぞ」
「・・・はい」
一夏は翔に彼女がIS学園にいることに驚きながらも、授業に参加した。猫と戯れてる翔を気にしながら。
「お前はいつまで猫と戯れてるんだ?」
「こいつが勝手に来ただけだ」
彼は猫バカであった。
三時間目が終わり、翔は四組の教室へ向かって行った。
猫は、山田先生が面倒を見ているのだが、
「はあぁ~ん」
「ニャー」
「にゃ~ん」
「ニャー」
「にゃん?」
「ニャー」
「にゃんにゃん!」
「ニャー」
「にゃにゃん。にゃ~「・・・山田先生」は、はい!?」
教師の面影など微塵も無かった。
「ここが、四組か・・・」
若干の疲れを残しながら、ドアを開けようとした時、
「君が、佐山翔君?」
「ん?」
扇子を持った女性が呼び止めた。
「なんですか?用はないんで、いいですか?」
「お姉さんは用があるんだけど」
「はあ」
黄色のリボンに水色のセミロング。外側に向いた癖毛に抜群のプロポーションを持った女性がそこに立っていたが、翔は全く関心を持ってなかった。
「ここで話すのもなんだし、屋上で話したいんだけど」
「そういや、あんた誰?」
「私は、二年生の楯無よ」
そう言い、彼女は自分の口元で「生徒会長」と達筆に書かれた扇子を広げた。
「へぇ。お前が生徒会長ねぇ」
「そうよ」
「じゃ、そういうことで」
「ちょっと待って」
「んあ?」
興味無くドアを開けようとした時、楯無に強く腕を掴まれた
「話があるって言ったでしょ?」
「俺は無い」
「お姉さんを困らせないでよ?」
「知るか」
四組に入って、最愛の人を探す。見つかなければ、一組に戻る。ただそれだけのことを止められてることに翔はイラついていた。
「挨拶で十分じゃねえか」
「いいえ。君に言っておきたいことがあるの」
「じゃあ、四組に入ったあとでいいじゃねぇか」
「それじゃダメ」
「なんでだよ?」
「時間が無いから」
「・・・だったら、ここで済ませろ」
観念したのか、翔は楯無の要件を聞くことにした。楯無はやっと話を聞いてくれることに安堵した。
「ありがとね。それじゃ要件は「・・・翔?」ん?」
楯無は要件を伝えようとした時、四組の戸が開きそこには、
「・・・お姉ちゃん」
「お姉ちゃん?ってことは、こいつ簪の姉?」
「簪ちゃん・・・」
翔は驚き、楯無は複雑な表情を浮かべていた。だが簪の表情は暗く、目に薄く隈ができていた。まるで転校当初を思い起こすかのような姿であった。
「何の用・・・」
「翔君に軽く挨拶しに来ただけ」
「・・・」
「簪ちゃん。あの「だったら・・・なんで廊下で騒いでいたの?」それは・・・」
その時授業開始のチャイムが三人の会話を終わらせた。
「やべっ!授業じゃねえか。簪、また会いに来るから」
そう言い、翔は全速力で一組の教室へ向かった。この一か月の間、簪の身に何があったのか。そんな疑問を持ち、教室に着いた矢先、織斑先生の
結局あの休み時間以降、簪と会うことは無かった。教室へ行っても簪は席を外しており、昼休みになって探しても、結局見つからなかった。
そして、放課後
(簪・・・一体どうしちまったんだ?)
そんな疑問を抱きつつ、翔は学生寮の廊下を歩いていた。
入学から一週間はホテルからの通学になっていたが、安全面を配慮し、急遽学生寮での生活を余儀なくされた。ホテルにあった荷物等は、織斑先生が全て寮に送られた言う。
(荷物って本と太刀しかなかったけど)
彼の荷物は、未読の参考書と自分の背丈ぐらいある巨大な太刀だけである。
結局一夏と同じくバカだった。
「えっと、1034はここか・・・」
翔は自分が止まる寮の部屋の前にいた。
「すいません。今日からこの部屋に住むことにな・・・り・・・」
そして、ノックもせずに部屋に入ったその先には、
「・・・翔?」
簪がいた。
その後、荷物の整理や風呂の時間帯を決め終えた翔は、一心不乱にキーボードを打ち続けている簪を見ていた。
「なあ、簪」
「何?」
「一か月の間に何があったんだ?」
「・・・」
「俺、今の簪が不安で不安で仕方がないんだ」
「・・・ごめん」
「何があったのか、教えてくれないか?」
「これを・・・見て」
簪が指したモニターには、ISが映っていた。
「これ、ISじゃねえか」
「私の・・・専用機」
「専用機!?じゃあ、簪が作ってるのは自分専用のIS!?」
「うん・・・」
翔は驚きを隠せなかったが、簪の表情を見て一変した。
簪が笑っていなかったから。
「本当は・・・倉持技術研究所が開発してたんだけど・・・世界で初めて・・・ISを動かした男性の、データ収集と解析のために・・・技術者全員・・・持ってかれちゃって・・・」
「それで、お前が残りを全部作ることになったってわけか・・・」
「・・・うん」
簪の悲しい顔に、翔は怒りを抑えるので精一杯だった。
『物を作るときに大切なことは、物を最後まで作り終える事』
両親が勤めてる会社の社訓である。
翔の両親はISの「武装・兵装」を専門に開発する会社に勤めている。どんな時でも、物づくりに妥協することなく、要求通りのものを作り上げるプロとしての誇りを持っている。たまにおかしなものを開発して、周りを困らせることもあるが、翔にとって両親は「誇り」そのものであった。
だが、倉持技研がやった行為は、その「誇り」を否定する行動であった。
その行動で、倉持技研が背負うべきものを、簪が背負わなければならなかった。
それが原因で、簪は苦しい目に遭っている。
「簪、お前の専用機がちゃんと作れればいいんだろ?」
「でも・・・もう作ってくれる所は「心当たりがある」あるの?」
翔は、携帯電話を取り出し、ある所に連絡をした。
―はい、こちら株式会社ブレイブカンパニーでございます。―
やる気が無い、低い女性の声が、翔の耳に響いた。
「お袋」
―どうした?翔ちゃんが連絡するなんて珍しいな。彼女の調教の仕方を聞きに来たのか?―
「そうじゃねえ。頼みがあるんだ」
声の主は翔の母親の佐山成美。ブレイブカンパニーの、IS「武装・兵装」開発チームのリーダー。数々の多くのIS武装や兵装を開発し、世界中で多く採用されている。有名な変態科学者兼変態技術者であり、変態である。
―なんだ、言ってみろ―
「ISを作って欲しいんだ」
―翔ちゃんの専用機なら作り始めてるぞ―
「そうじゃなくて」
専用機の話をスルーし、翔は簪の専用機の話を話した。
―なるほど―
「で、どうなんだ?」
―簪に変わってくれ―
「分かった」
携帯電話を渡された簪は、恐る恐る耳を傾けた。
―久しぶりだな、簪―
「お久しぶりです。」
二人は過去に何度か顔を合わせているが、そのお話は別の機会に。
―翔ちゃんとは、初夜を迎えたのか?―
「・・・」
―・・・冗談だ。本題に入るぞ―
「分かりました」
簪は、成美の冗談を好ましく思っていなかった。
―お前のIS、どこまで完成している?―
「全体の20%未満・・・武器も全部・・・未完成」
―分かった。倉持の奴らは技術者としての自覚を持ってんのか?―
倉持の行動に文句を言いながらも、その声は嬉しさに満ちていた。
―待機状態にはできるか?―
「できます」
―だったら来週の土日に本社に来い。そこで、お前の専用機の開発と、翔ちゃんの専用機の開発について話をする。急用ができたら連絡をしろ。後、翔ちゃんも一緒に連れてこい―
「分かりました。あの、翔にも・・・専用機が来るんですか?」
―ああ。作り始めたばっかりだから、完成にはニ、三カ月は掛かるけどな。詳しい話は、本社で話す―
「分かりました」
―じゃあ、翔ちゃんと夜のいとな―
下ネタを言い切る前に、簪は電話を切った。
「で、どうだった?」
「来週の土日・・・会社に行くことになった」
「俺も一緒にか?」
「うん。専用機について・・・話したいことがあるって」
「・・・そうか」
「・・・どうしたの?」
「俺・・・ISっていうものが、どうも好きになれねえんだ」
「え?」
翔は窓側のベットに座り、語り始めた。
「あんな訳の分からねえヨロイもどきに執着する理由が分からねえんだよ。何が世界最強の兵器だ。あんな女にしか扱えない兵器、戦いに放り込んでみろ。蜂の巣にされるのが目に見えてるぞ。それに俺たち男が使えるからって、世界は良くならねえ、悪くなっていく一方だ。大体開発者もそうだ。発表して注目できなかったか「翔の悪い癖・・・出てる」・・・すまねえ」
翔の暗い顔に耐えられなかった簪は、話を中断させ翔の隣に座った。
「理解ができない物に・・・拒絶するのは・・・やめて」
「すまねえ・・・つい・・・」
「分かってる・・・翔が言いたいことは。でも・・・それを一人で悩んで苦しむ所なんて、私・・・見たくない。ワガママなのは・・・分かってる。でも、昔の私みたいに・・・一人で背負わないで」
そう言い、翔の両手をそっと握った簪は宣言した。
「私にも、翔の背負ってるものを・・・背負わせて」
さっきまでの根暗なところはどこへ行ったのかと思うぐらい覚悟を決めた顔をした簪に、翔の顔は笑顔になった。
「簪。さっきまでの根暗な部分は、どこ行ったんだ?」
「翔のおかげで・・・吹き飛んだ」
些細な事であったが、翔は簪に救われたことに感謝をしていた。
「そっか。ありがと・・・簪」
「翔・・・」
二人は顔を赤くしながらも顔を近づけ、唇を重ね合わせた
「助けてくれえ!翔!」
「待てぇ!一夏!」
・・・訳も無く、
「あ・・・いや・・・翔・・・その・・・すまない。なんと言うか・・・」
「な・・・」
一夏は、言い訳を考え、箒は絶句をしていた。
その一方で、翔は顔を俯かせたまま動かず、簪は枕に真っ赤な顔を沈めさせていた。
一夏は悪い事をしたと思い、部屋を出ようとしが・・・
「なんて、ふふ、ふしだらな事をしてるんだ!」
「箒!?」
箒の一言で状況が悪化した。
「お、お前が女を襲うなど、じょ、常識外れにもほどがあるぞ!こ、このことは、おお、織斑先生に報告し「やめろ、箒!」邪魔をするのか一夏!お前も、あんなことを他の女にしていたのか!?」
箒は錯乱していた。
「そうじゃない。ただ、謝って部屋に戻った方がいいよ」
「な、何を言っている!この男には少し頭を「ああ?」ひや・・・そ・・・」
二人は声がした方を見てみると、二人を睨みつけてる人外がいた。
「てめえら・・・俺と少し付き合え・・・」
「「あ・・・」」
二人は悟った。触れてはいけない物に触れてしまったということを・・・
「チェェェーストォォォッ!!」
「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」」
オリジナル笑顔をした人外は、二人に何のためらいも無く巨大な太刀を振り下ろした。
次回から、クラス代表決めの口論が始まります。
ここで、人物と企業紹介
佐山成美
佐山翔の母で、株式会社ブレイブカンパニーのIS「武装・兵装」開発チームのリーダー。独自の理論で様々な武装や兵装を開発し、数々の賞を取った変態。趣味は、製造、研究、解析、女子高生の観察。
常に開発、研究、解析以外に関してはやる気が無く、口調は悪い。さらに生活力は壊滅的のため、いつも部屋はゴミ屋敷状態。また、実用性があまりないものを平然とたくさん造るため、会社内では問題児扱いされている。しかし、科学者兼技術者なのか、それなりの常識と良心を持ち合わせている。
しかし、変態である。
株式会社 ブレイブカンパニー
創立50年を迎えるIS「武装・兵装」開発会社。かつては、様々な兵器を開発していた大手企業だったが、ISの登場により業績は悪化。現在は、何とか倒産から逃れてる中小企業に落ちてしまった。しかし、ブレイブカンパニー制の兵器が、世界の消滅を阻止したことがあるため、小規模ながらも毎年イベントを開催している。
キャッチコピーは、「夢とロマンに、正義と勇気を乗せて」