そのため、話の量はいつもより少ないです。
私の名前は織斑マドカ。
私は今、アリーナの廊下で時間を無駄に消費している。
フィールドではクラスリーグマッチが開かれているが、そんなことはどうでもいい。
私の出番は当分先だ。カギ爪の男の手掛かりは未だに見つからない。各地で不穏な動きが現れてい事件が起きているのに、カギ爪の男に関する情報が見つからない。恐らく情報規制が掛けられてあるんだろう。それほどあの男が持っている技術はかなりのオーバーテクノロジーがあるのだろう・・・
「マドカ、どうしたの?」
だが、相川清香と言う女は何者なんだ?事あるごとに私に笑顔で話しかけてくる。周りの生徒達も釣られるかの様に話しかけてくる。目障りだ。
「別にどうもしない」
「ええっ!ずっと考え事してたのにどうもしないなんて・・・怪しいなぁ」
「ストーカーまがいの事をしてるお前が怪しい」
「だって、マドカは何にも教えてくれないじゃん。趣味とか特技とか」
「そんなものはない」
「じゃあ、好きな食べ物は?」
「ない」
「嫌いな食べ物は?」
「ない」
「好きなスポーツは?」
「ない」
「マドカ・・・意外と無趣味なんだね」
「このやり取りをいつまで続けるつもりだ?」
「マドカが笑ってくれるまでかな?」
そう言って2週間以上は経過している。これ以上相手をする気は湧かない。早くカギ爪を・・・
「どうしたのマドカ?」
「・・・!!」
いた・・・
カギ爪の男!
光のない濁った瞳の妖艶な美女を連れてどこかに行こうとしてる。
「ちょっとマドカ!?」
「ん?」
清香の声でカギ爪の男は私の方を向いた。好都合だ!
「あら?あなたは・・・あの時の人ではありませんか」
女は近づく私を警戒しているが、カギ爪の男はそんな事を気にせずに私に話しかけてくる。
「ところで・・・夢は見つかりましたか?見つかったのなら、教えてくれませんか?」
「ああ・・・」
これで私の夢は叶う・・・
「私の夢・・・それは・・・」
「お前を八つ裂きにすることだ!」
私は制服の中に隠してあったサブマシンガンを取り出し、カギ爪の男に向けて撃った。
次の瞬間、女の手から自分の背丈より長い三棍棒が出現し、全ての弾を弾き返した。生身の人間でも武器の量子化ができるとは聞いたことは無い。だとすればあれは・・・
「なるほど、私を八つ裂きに・・・」
カギ爪め・・・平然な顔をして!
「マドカ・・・何やってるの?」
清香が私を止めに割り込んできたが邪魔だ。
「邪魔だ」
「何言ってるの!?マドカがやろうとしてることは、ただの人殺しだよ!?」
「それの何が悪い」
「・・・え」
「こいつを殺せるのなら、人殺しの人でなしで十分だ!」
「・・・マドカ」
こいつの顔が段々青ざめているが、目はまだ諦めていない。どこからその根性が生み出せる。
「素晴らしい。あなたは実に素晴らしい。聞きましたか、お嬢さん。これが夢です。夢に準ずる者の姿です。なんと崇高で、何と力強い」
カギ爪の言葉が私の神経を逆なでする。ふざけるな・・・貴様はスコールとオータムを殺したんだぞ!
「ならば今・・・この場で!私の手で死ね!」
「ええどうぞ」
「!!」
隣の女が動揺するほどあっさりと承諾した。
「それがあなたの夢なら、私は構いません」
「ほう・・・」
ならば今すぐ・・・
「しかし、今はダメです。先ほども言った様に、私にはやるべきことがある。それに比べればあなたの夢は小さい」
・・・何?
「矮小と言って良い。だから私を殺せないのです。周りを不幸にさせてしまうのです。」
「そんな・・・」
清香は一体何が起こってるのか混乱しているが、簡単な話だ。私の夢を侮辱した。
「ああ、それとお恥ずかしいのですが・・・」
カギ爪の男はカギ爪の義手で器用に頭を掻きながら、私に問いかけた。
「あなたが何故私を殺したがっているのか、教えていただけませんか?」
「っ!?・・・憶えてないのか!?私の・・・」
「申し訳ございません」
「スコールとオータムを殺したことを!」
「ああ、あなたは大切な仲間を失った。しかし、私がその人達を殺した事がそれほど重大なことですか?」
・・・何?
「その人達はあなたの胸の中で生きているでしょ?なら、それで十分じゃないですか?」
・・・ふざけるな
「しかし、あなたがどうしてもその喪失感を埋められないというなら、私がそれに代わる喜びを用意しましょう。オリジナルセブンに入りませんか?そして、私を助けてください。それが私とあなた、双方の幸せです」
何が代わりの喜びだ。何が双方の幸せだ。・・・スコールとオータムを殺した事を忘れたお前が言うべき台詞か
「・・・・・・もういい」
「ん?」
「もう分かった・・・」
コイツには常識というものは存在しない。だったら・・・
「今すぐ・・・死ねぇ!」
私は両膝を着く素振りをし、そこからカギ爪の男との距離を縮めるために一気にダッシュをしたが女には感付かれ、手持ちのマシンガンを三棍棒で吹き飛ばされた。
だが好都合だ。カギ爪の男は自衛用の武器は持っていない。この女さえいなければカギ爪を殺すなど容易い。
「どけ!」
三棍棒を掴み、女ごと引っ張ってカギ爪を孤立状態にさせた。手持ちのマシンガンはさっきの攻撃で吹き飛ばされたが問題ない。
私は靴底に手を伸ばし小型の銃を取り出した。緊急時用として常に携帯していたが、こんな所で役立つとは。一発しか撃てないがそれで殺せれば本望だ。
「・・・あらぁ」
「ふふっ」
「同志!」
これで終わりだ、カギ爪!
一発の銃声がアリーナに響き渡った。
この一発で私の夢は叶うはずだった。
スコールとオータムの敵がとれると信じていた。
なのに・・・
何故、邪魔をする・・・
「何故・・・お前が・・・」
相川清香・・・どうしてだ!?
腕から血を流し、言葉にならない痛みが襲っているのに、清香は笑顔を崩さなかった。
「だって・・・マドカを人殺しに・・・・・・」
清香は何かを言いかけ、倒れた。
「清香さん!」
簪の叫びがアリーナに虚しく響き渡る。だがその叫びはフィールドの歓声にかき消され、観客席に届くことはなかった。
次回はバカとカギ爪の遭遇からクラスリーグマッチ終了後の話を執筆する予定です。
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