バカとIS   作:陸のトリントン

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皆さんお久しぶりです。

現在スランプ状態の作者でございます。

今回は黒兎との喧嘩の後で起こった事件の話です。


第十六話 バカと「前触れ」

「俺はラウラっていう奴が戦えって言うから戦っただけで、俺から殴りになんか行ってねぇって!」

 

「だが、ボーデヴィッヒが攻撃をした痕跡が残っていないのはどういう事だ?」

 

翔は生徒指導室で千冬に事情聴取をされていた。翔はアリーナでの出来事を説明しているが、千冬は顔色一つ変えず翔の行動に問題があると言い続けた。

 

「佐山、お前の言動は前々から問題視されていた。今まで私と山田先生でフォローをしていたが、今回の件はさすがの私もフォローは出来ない」

 

そう言いながら、千冬は机の上にある書類を置いた。

 

「佐山、クラスリーグマッチが終わるまで特別保護観察を続けることが決定された」

 

「で、その紙は?」

 

「佐山翔専用 特別保護観察の概要だ」

 

佐山翔専用 特別保護観察

 

佐山翔の言動に頭を悩ませた学園が生み出した、特別保護観察と言う名の監視である。

 

教員が24時間体制の監視を受けながら学園生活を送るという内容である

 

「ただの監視じゃねえか」

 

「こうでもしないと、お前を止める事が出来ないと周りが騒いでるからだ。佐山、お「断る」自分が何を言ってい「分かってる。だが断る」・・・はぁ」

 

千冬がため息をするほど、佐山は自分の今いる立場を理解していない。

 

「佐山、お前は自分がどういう状況に立たされているのが分かっているのか?」

 

「分からん」

 

「退学させるか、在学させるかでいつも議論が繰り広げられている程、お前の状況は悪化の一途を辿ってる。それに・・・」

 

「それに?」

 

千冬は一旦息を整えてから佐山にある事を言った。

 

「お前の悪い噂が学園内に広まっている。それを防ぐた「どういう事だ」今から説明するから、落ち着け」

 

そして千冬は学園内に広まっている心にもない悪い噂を翔に話したが・・・

 

 

 

「ふーん」

 

 

 

翔は特に気にすることは無かった。

 

「お前が気にしなくても教師である私と山田先生は「なんで気にする必要がある?噂なら無視すればいいだけだろ?」そういう訳にもいかない」

 

そして千冬は翔にある事を告げた。

 

「それが原因で更識簪がクラスで孤立し始めている」

 

「どういう意味だ?」

 

翔は顔を険しくし千冬を睨みつけた。千冬はそれを気にする事無く説明を続けた。

 

「佐山、お前が簪と付き合ってる事は学園中に知れ渡っている。生徒のみならず教員達も知っている。ボーデヴィッヒが今朝言ったようにお前は彼女を守るためにあらゆる組織と戦ってきたが、今回はそれが裏目に出た」

 

「だから、いったいなんだよ?」

 

「その強さ故に周りが簪から離れる。簪と絡まなければお前が出てくることは無いからな。その結果、簪はクラスから孤立し始めている訳だ」

 

「それをどうにかするのが教師じゃねえのか!?」

 

「私たち教師にも限界はある。佐山、これ以上騒ぎを起こせば簪は孤立する。それでいいのか?」

 

千冬は翔に簪の現実を叩き付けた。

 

(教師としてあまり好ましくない行動だが、これ以上騒ぎを起こしたら取り返しのつかないことになりかねない。それに・・・)

 

教師として苦渋の決断。そうでもしなければ翔がおとなしく

 

 

 

「断る!」

 

 

 

・・・ならなかった。むしろ、翔の決意を揺るぎ無いものにさせてしまった。

 

「佐山!お前が一体何をやろうとしてるのか、分かって言ってるのか!?」

 

「分かってるも何も、俺はここ(IS学園)に来る前から決めてたからな。何があっても簪を守り抜く!」

 

「だが現実はその逆のこ「だったら俺が守らなければならねぇんだよ!簪を守るために簪から離れるなんて、俺は死んでもやらない!」・・・はぁ」

 

もはや翔を止めるのはできないのかと諦めかけた瞬間・・・

 

「翔?」

 

簪がドアを開けてやって来た。

 

「簪、今千鶴先生と話してるから待っててく「織斑先生だ」名前って千鶴じゃ「千冬だ。教師の名前ぐらいいい加減憶えろ」じゃあ、千冬せ「織斑先生と言っただろ・・・」すいません」

 

もはや担任の名前も憶えてないことに、怒る気力すら湧かないブリュンヒルデであるが・・・

 

「ご、ごめんなさい。私、部屋で「更識、入って来い」・・・え?」

 

「もう一回言う。更識、入って来い。会話の全容を聞いてたはずだ」

 

千冬に見抜かれたことに簪は驚きを隠せていない。まるで自分がいることを前提に話をしていたのかと推測してしまった。

 

「簪・・・」

 

千冬の言ってる事は全部本当の事である。セシリアを倒した辺りから不穏な噂を耳にした。

 

 

 

「紅茶に薬を盛って、イギリス代表候補生を倒した」

 

 

 

最初はすぐに消える噂だと思っていたが、段々と噂が悪質になっていく一方であった。

 

 

 

「教師を脅しIS学園に入学」

 

「代表候補生を奴隷にして学園生活を送っている」

 

「テロリストの一味」

 

 

 

気付けば根拠のない噂が学園中に流れ渡っていた。

 

どうして翔の事を悪人扱いするのか簪には理解できなかった。確かに一夏と比べれば容姿と中身は正反対であるが、翔は翔なりに頑張って学園に溶け込もうとしている。

 

だが現実は違った・・・周りが翔を拒絶していく。

 

その現実に心を痛めながらも、簪はできる限りの最善を尽くした。

 

だが、クラスメイトや教員達が翔に対する見方を変える事はなかった。

 

 

 

「織斑先生、その・・・翔は別に悪い事はしてません」

 

「分かってる。だが、このまま放って置く訳にもいかない」

 

「だからって、一日中翔を「誰も紙に書いてある事を忠実に行うとは言ってない」・・・え!?」

 

「プライバシーの侵害をしてまで、翔のプライベートを監視するつもりはない」

 

「じゃ、じゃあ「ただし、それ以外の監視は行わせてもらう」そんな・・・」

 

「クラスリーグマッチが終わるまでの辛抱だ。後、佐山はクラスリーグマッチが始まるまで、ISの使用を禁止する」

 

「はい」

 

「それでは二人共部屋に戻れ」

 

そう言われ翔はやっと解放されたと言わんばかりに体を伸ばし、簪はそんな翔を首輪を付けられた犬のように引っ張って部屋に戻った。

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

千冬は二人が部屋を出た後、一人で考え事をしていた。

 

(何故学園はあの二人の恋を邪魔する?簪の努力があってこそ、佐山は楽しく学園生活を送っている)

 

千冬は学園全体に広まっている佐山の悪評に一人頭を悩ませていた。だが、それ以上の疑問が千冬の頭を駆け巡っていた。

 

(オルコット、ボーデヴィッヒとの戦闘データを見たが、佐山のISスーツは異常だ。通常のISスーツは体を動かす際に筋肉から出る電気信号などを増幅してISに伝達するのだが、佐山のISスーツは脳神経から流れる電気信号を増幅、感知することでその思考を読み取り遅延の少ない動作を行う。それなら佐山の動きにISが反応しきれない部分がでるのも納得はいく。だが・・・)

 

千冬は視線を天井に移し、一人脱力する。

 

(どうやって脳神経からの電気信号で思考を感知する技術を開発した?まだ理論も完成してない代物を・・・もしかして!)

 

千冬はすぐさま立ち上がり、情報室へ向かった。

 

「まさか・・・30年前の・・・」

 

千冬の胸騒ぎは、後に起こる大参事の前触れである事を知る由も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、一夏。なんで俺達を呼んだんだ?」

 

「いや、簪は呼んでいないんだが」

 

翔と簪は部屋に戻る途中、一夏が大慌てで相談したいことがあると言ってきた。二人は一夏が慌てる程の問題が起こったと思い、そこら辺にいたマドカを連れて一夏の部屋の前に着いた。

 

「簪は邪魔なのか?」

 

「いや、そうじゃ「兄さん。こいつに何を言っても無駄だ」マドカはちょっと口がキツくないか?」

 

「それぐらい言わなければこいつは黙らない」

 

「マドギワはあいか「マドカだ」すいません。で、一夏は俺達を呼んだ理由って何だ?」

 

「それは・・・部屋に入れば分かる」

 

一夏は複雑な表情を浮かべながら部屋のドアを開けた。そこには・・・

 

「え・・・シャルルさん・・・」

 

「そういうことか」

 

胸に二つの膨らみがあるシャルル・デュノアが・・・

 

 

 

「お前、男装が趣味なのか?」

 

 

 

翔の言葉で轟沈したのである。

 

 

 

 

 

 

「シャルル、別に翔は悪気あって言ったわけじゃないから」

 

「分かってる・・・分かってるけど・・・」

 

一夏は轟沈したシャルルのフォローをし、翔は・・・

 

「昨日言ったことが正しくても、あの言葉は・・・酷い!」

 

「やはり貴様は、人の気持ちを踏みにじる事は優れているな・・・」

 

「・・・すいません。本当にすいません」

 

二人(簪とマドカ)の説教を正座して聞いていた。

 

「簪、マドカ。翔も反省してるから、許してもいいと思うが」

 

一夏の言葉に簪は若干の不満を残しつつ、説教を辞めた。マドカは初めから不満など無くシャルルを見つめた。

 

「で、一夏。なんでシャルルが男としてIS学園に来たんだ?」

 

「あっ!そうだったな。実は・・・」

 

翔の問いかけに一夏は本題を思い出し、三人にシャルルの出生、男装した理由を話した。

 

 

 

「つまり・・・経営危機のデュノア社が世間にアピールするために・・・」

 

「お前を男としてIS学園に入学させ、白式のデータを盗む」

 

「うん・・・でも、それも失敗に終わっちゃた・・・でも・・・」

 

簪とマドカの分かりやすい説明を聞いたシャルルの顔は妙に清々しかった。

 

「楽しかったよ。ここの学園の生徒達は皆優しくて、生き生きとしてて・・・」

 

一夏と簪、マドカは黙ってシャルルの独白を聞くことしかできなかった。

 

「僕、忘れないよ。今日までIS学園の生徒でい「お前、本当はどうしたいんだ?」・・・え?」

 

(バカ)を除いては・・・

 

「だから、本当はどうしたいんだ?」

 

「僕に何かを選ぶけ「一夏、お前はどうしたいんだ?」ちょ、ちょっと!」

 

「お、俺!?俺は・・・シャルルには学園にいて欲しい。今日まで一緒にいたクラスメイトが突然いなくなるのは、嫌だからな。マドカはどうなんだ?」

 

突然のフリに一夏は戸惑いながらも自分の意見を言い、マドカにふったが・・・

 

「本人の意見を尊重する」

 

どこか距離を置いた意見であった。

 

「私は・・・シャルルさんを助けたい・・・こんなの酷過ぎる!」

 

簪は自分の境遇を重ねたのか、シャルルを助けたい思いがあった。

 

だがシャルルの顔は暗くなっていく一方である。

 

「でも・・・僕にはどう「どうすれば、お前は助かるんだ?」助からな「だから、どうすればお前は助かるかって聞いてるんだが」だから無理なんだって!知ってるでしょ、デュノア社はISの「関係ないだろ、デュノア社なんてぶっ潰せばいい話だし」関係ある!」

 

翔の発言にシャルルは今まで溜めてた感情を爆発させた。

 

「君はバカなの!?デュノア社を潰せるわけないじゃないか!潰してどうにかなるとでも言うの!?僕は君みたいに強くないし、信念を持ってないし、恋人だっていない!僕の持ってない物を持ってる君が何を言ったて、ただの自慢話にしか聞こえないよ!それに、僕は望まれて産まれたわけじゃ「それは違うな」・・・何が?」

 

「お前は望まれて産まれたんじゃないって言うが、お前は望まれて産まれたんだ」

 

「何言ってるの・・・僕は父さんとあ「お前がお袋と一緒にいたかったのはお前が望んだんじゃないのか?」え・・・」

 

「話はよく分からねえけど、お前はお袋が大好きだってのは分かった。つまり、お前はそれほどお袋に愛されてたってことだ」

 

翔の言葉にシャルルの頬に一筋の雫が流れた。

 

「それに俺以上に心配してる奴がいるから、後はそいつに任せる。じゃあな、一夏」

 

「ええっ!?」

 

そう言い、翔はさっさと一夏の部屋から出て行き、簪とマドカも後を追うように部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その情報は本当か?」

 

―ああ。少なくとも、マドカの情報と照らし合わせると辻褄が合うんだ―

 

「だからお前は自分の息子にそれを託したのか」

 

―だが、扱える奴が息子しかいないんだよ―

 

情報室で千冬は佐山成美と電話をしていた。

 

内容は佐山翔の専用機の話であるが・・・

 

―束はこの事について知ってるのか?―

 

「あいつが興味を持つとは想像もできない」

 

―こりゃあ、白騎士事件以上の事件が起こるな―

 

「あまり、その話題を振らないで欲しい。だが、情報を提供してくれたことに感謝する」

 

―まっ、息子が世話になってるんだ。専用機について聞きたいことがあるなら、そっちに行ったって構わないんだぞ―

 

「そこまでする必要はない。そろそろ時間だ、切るぞ」

 

―あいよ。お前もいい加減、一夏の貞そ―

 

下ネタを言い切る前に千冬は電話を切った。

 

「まさか、30年前の遺産が残っていたとは・・・」

 

千冬も30年前の事件については耳にしたことはあるが、にわかに信じられる内容ではなかった。

 

衛星兵器、巨大機動兵器、世界の破滅

 

ISが活躍してる世界で生きてる千冬にとって、それは作り話ではないかと疑う内容であったが・・・

 

「佐山、お前の専用機はとんでもない化け物らしいな」

 

千冬の操作しているディスプレイに映っているのは、30年前の衛星兵器をIS用に改造している画像であった。

 

「ISで対抗できるのか?」

 

ブリュンヒルデから見ても、その衛星兵器はIS以上の存在だと認識させている。

 

「どうなるんだこの世界は・・・」

 

嘗て、天災と共に世界を変えた者の問いかけに答える者は誰一人いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいの・・・翔?」

 

「いいんだよ。あいつがお袋の事を大事に思ってるってのが分かれば十分だ」

 

簪は翔が他人の事を心配している事に内心安心したが・・・

 

「どういう話なのか、理解していないの間違いではないか?」

 

「・・・お前、鋭いところ突くよな」

 

マドカは変わらずキツイ意見を言うのである。

 

「貴様がバカなだけだ。デュノア社を潰すと言う時点で正気ではないからな」

 

「俺は正気だ」

 

「お前の正気は異常だ」

 

そんな他愛のない会話続けてる内に、1034号室の前に着いた。

 

「じゃあマドっち、また明日」

 

「貴様はどうして変な所を覚えているんだ」

 

「それは・・・佐山翔だから」

 

「・・・なるほど」

 

「おいっ!」

 

マドカと簪のコンビネーション(?)に戸惑いつつも、マドカと別れた翔と簪は部屋に入ったが・・・

 

 

 

「何でてめぇがいんだよ?」

 

「言いたい事があるからよ」

 

 

 

そこにいたのは・・・

 

 

 

「翔君。生徒会長としではなく、当主として言いたい事があるのよ」

 

 

 

IS学園最強の称号を持つ・・・

 

 

 

「簪ちゃんと付き合うのは終わりにしてくれない?」

 

 

 

17代目更識当主

 

更識楯無がそこにいた。




次回・・・何を執筆しようか未定です。

とりあえず、ご期待ください。

ご意見、ご感想、お待ちしております。

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