バカとIS   作:陸のトリントン

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今回は黒兎が登場します。


第十五話 バカと「黒兎」

放課後、第一アリーナのピットで翔と簪はある作業を進めながら会話をしていた。

 

「簪の家に行った事ないのに、どうして俺の事知ってんだ?」

 

「お姉ちゃんが・・・翔の事を・・・調べたからだと思う」

 

「なんで調べるんだ?」

 

「多分・・・私が翔と・・・付き合ってるのが・・・嫌だと思うから」

 

「ふーん」

 

簪は暗い顔をしながら作業を進めていた。家族が翔との付き合いを認めなかった。理由はどうであれ、自分が更識家の中で浮いた存在になってるのは分かった。このまま付き合えば更識家から追い出されるか、翔と私のどちらかが社会から消される。

 

(翔と離れるのは・・・嫌)

 

簪の想いが変わることは無かった。

 

「まあ、あいつ自身から聞かなきゃならねえって事は分かったけどよ・・・」

 

簪が考えてることも気にせず、翔はある疑問をぶつけた。

 

「どうしたの?」

 

「なんで俺がISの整備方法を教わってるんだ」

 

「ISを・・・たくさん壊すから・・・こうなる」

 

「壊れる方が悪くないか?」

 

「壊す方が・・・悪い」

 

二人が行っていたある作業・・・

 

 

 

翔が乗った打鉄の修理である。

 

翔が乗るたびに打鉄が壊れ、整備班の怒りが頂点へ達してしまい

 

「次壊したら、自分で直しなさい!」

 

と、お叱りの通達を貰い簪と一緒に打鉄の修理をしている。

 

ちなみにその日の特訓メニューはISの飛行訓練を行っていたが、瞬時加速(イグニッションブースト)中に瞬時加速(イグニッションブースト)を使ってしまい、開始10分で壊してしまった。

 

「翔・・・ISは太刀と同じくらい・・・大事に扱わないとダメ」

 

「いや、ISは太刀と「翔・・・」無理に「約束して・・・大事に扱うって」いや「ダメ?」・・・大事に扱います」

 

簪の上目遣いでのお願いに翔は渋々誓って、打鉄の修理を始めた。

 

 

 

「ここの回路は・・・」

 

「こうか?」

 

「うん・・・それでここの部品は・・・」

 

「これは?」

 

「これは・・・そのパーツに組み込んで・・・」

 

簪の指示の下、翔は打鉄の破損個所を工具で不器用ながらも直していく。

 

元々簪の教えの上手さもあってか、翔は整備のイロハを理解しながら順調に修理を進めた。

 

 

 

一時間後

 

「ふぅ。やっと終わった」

 

「翔・・・お疲れ」

 

そこには修理を終えた綺麗な打鉄があった。

 

「はぁ。ISの修理なんかもうするもんか・・・」

 

「だったら・・・ちゃんとISを・・・大事に扱わないとね」

 

「どう大事に扱えっていうんだ?乗ってすぐに壊れる物なんか、誰も扱いもしたくねえだろ」

 

「練習しかない・・・次からはちゃんと丁寧に・・・ISを扱って」

 

「いや、そんなこ「翔・・・約束したでしょ?」・・・二度と整備なんかやるか」

 

二度と整備をしないために、ISを丁寧に扱うことを誓った(?)翔である。

 

 

 

 

 

 

翌日の教室、放課後の出来事を一夏に話したが・・・

 

「翔がISを丁寧に扱えばいいだけだろ?」

 

無難な回答に翔は落胆した。

 

「まじかよ」

 

「そうだろ」

 

「あれでも丁寧に扱ってるんだが・・・」

 

瞬時加速 (イグニッションブースト)中に瞬時加速 (イグニッションブースト)をずっとやってたら、さすがに壊れるって」

 

「お前のISでもか?」

 

「まず、俺が耐えられないから」

 

「そっか。で、なんで疲れた顔をしてるんだ?」

 

「まぁ・・・いろいろと」

 

昨日の夜、一夏はシャルルが部屋にいない間、楯無に遊ばれていた。

 

だが楯無の顔はどこか無理をしていると感じたが、その事を指摘してもはぐらかされさらに激しく遊ばれたのであった。

 

(楯無さん・・・一体何があったんだろう?)

 

一夏の疑問の答えは隣にいるバカだということを知らないまま、朝のSHRが始まる。

 

 

 

「えっとぉ。き、今日も嬉しいお知らせがあります。また一人クラスにお友達が増えました。ドイツから来た転校生、ラウラ・ボーデヴィッヒさんです」」

 

山田先生の隣に小柄で眼帯を付けた銀髪の少女「ラウラ・ボーデヴィッヒ」が佇んでいた。

 

「どういうこと?」

 

「二日連続で転校生だなんて」

 

「いくらなんでも変じゃない?」

 

「み、みなさんお静かに!まだ自己紹介が終わってませんから!」

 

様々な疑問が教室を飛び交う中、山田先生はラウラの自己紹介を進めたがラウラは無言を貫いていた。

 

「挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

(教官って・・・千冬姉がドイツにいた頃の・・・)

 

一夏が内心驚いてる中、ラウラの自己紹介が始まった。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ!」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「あ、あの・・・以上ですか?」

 

「以上だ」

 

ラウラの自己紹介は3秒で終わった。誰もが唖然とし教室が静寂に包まれる中、最初に静寂を打ち破ったのは・・・

 

 

 

 

 

 

「よろしく、ラグナさん」

 

 

 

(バカ)であった。

 

 

 

 

 

 

「ラグナではない。ラウラだ」

 

「すいません」

 

翔の名前違いにも動じることなく、ラウラは翔の所へ近づいた。

 

「貴様が佐山翔か・・・」

 

「俺のこと知ってるのか?」

 

「勿論だ。数々のテログループや犯罪組織をたった一人で壊滅させた『世界で一番危険な男』だからな」

 

自慢気に翔の事を語りだすラウラにクラスが戸惑う中、翔は過去に自分が何をしたのか全くわかっていなかった。

 

「え?そうなの、俺?」

 

「そうだ。もし貴様にその気があるならば『シュヴァルツェ・ハーゼ』に入隊させて「断る」・・・そうか」

 

部隊勧誘をあっさり断られたラウラは落ち込みながら一夏の所へ近づき平手打ちをかました。

 

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなどと・・・認めぬものか!」

 

突然の事にクラスが騒然とした。転校生が一夏をはたいた。どう見ても勧誘を断られ、腹いせに一夏をはたいたように見えるがそれでもクラス中に衝撃が走った。

 

 

 

 

 

 

「へえ、お前(一夏)にも兄か姉がいるんだ」

 

(バカ)の発言にクラスはズッコケた。

 

 

 

 

 

 

「・・・ということがあったんだ」

 

「翔・・・それはさすがに」

 

「ど忘れだから大丈夫だ」

 

「全然・・・大丈夫じゃない」

 

放課後、第一アリーナでISの基礎練習をするために簪と一緒に歩いてる時に、今朝の出来事を話したら簪は若干引いていた。

 

あの発言の後、翔は千冬のコークスクリューパンチをもろに喰らい、放課後まで睡眠をとっていた。

 

「そのおかげで一日中寝れたから良かったけど」

 

「良くない・・・また補習を受けるんだよ」

 

「あ・・・」

 

それに気付いた翔の顔から、滝の如く汗が吹き出てきた。

 

「どうすればいいんだ・・・簪」

 

「補習を・・・受けるしかないよ」

 

「ぐおぉ・・・」

 

(バカ)にとって最大の敵は千冬でも束でも楯無でもなく、補習である。

 

「分からないところがあったら・・・私が教えるから」

 

「頼む・・・」

 

「うん」

 

補習を受ける事に落胆している翔は、そのままISの基礎練習を行おうとしたが・・・

 

 

 

「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話は早い、私と戦え」

 

「嫌だ。理由はねえよ」

 

「貴様に無くても、私にはある」

 

一夏とラウラが先にアリーナにいた。

 

アリーナの貸し出しは予約制で翔と簪が放課後の貸し出しを予約していたが、なぜか一夏達の予約が通っていた。

 

「今でなくてもいいだろ。もうすぐクラスリーグマッチだから、その時でいい」

 

「なら・・・」

 

シュヴァルツェア・レーゲンの大型レールカノンが一夏に照準を絞り撃とうとした時・・・

 

 

 

「おい!ここのアリーナ、俺と簪が予約してたけど!」

 

「え?」

 

「貴様は・・・」

 

(バカ)の一声で中断された。

 

 

 

「そうなのか、翔?」

 

「ああ。俺もちゃんと予約申請書を持ってるから」

 

そう言い、翔はISスーツのポケットからアリーナの予約申請書を一夏に見せた。そこには一夏達が使っているアリーナの時間帯は翔と簪が使っている時間帯とかぶっていた。

 

「本当だ。でも、俺が来たときには翔の名前は書かれてなかったぜ」

 

「え?どういうことなんだ簪?」

 

「わ、わからない。アリーナの受付に・・・行ってみるから」

 

「おう。気をつけてな」

 

簪は急いでアリーナの受付に向かったが、こうなった原因は分かっている。

 

一夏と翔。二人の評判は天と地の差がある。

 

優しく、格好良く、女性をときめかせる言動をする一夏に対し翔は、常にやる気が無く、物覚えが悪く、皆を引かせる言動しかしなければ、アリーナの貸し出しで被った時は誰もが一夏を優先する。

 

その事実に心を痛めながらも、簪はアリーナの受付へ走っていった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・」

 

アリーナの受付に着いた簪は予約申請書を受付嬢に見せた所、「そのような申請を受けた覚えがない」の一点張りで追い出され、落胆したままアリーナのフィールドに向かって行った。

 

「こんなの・・・酷いよ」

 

日に日に増してく翔の悪評。クラス対抗戦の無人機襲来も翔が絡んでいるのではないかという、心無い噂が流れる始末である。

 

「これじゃ・・・翔が可哀想だよ」

 

残酷な現実に心を痛めながらフィールドに戻った簪が見たものは・・・

 

 

 

「ば・・・バカな。このシュヴァルツェア・レーゲンが手も足も出せないなど・・・」

 

「だから、俺はバカじゃねえ。俺の名前は佐山翔。縁の下の力持ちの翔とも呼ばれている」

 

少し煙が上がってる打鉄を纏った翔と、レールカノンが壊され倒れているシュヴァルツェア・レーゲンを纏ったラウラがいた。

 

周りの生徒達は、まるで見てはいけない物を見てしまったと言わんばかりの驚愕の顔をし、一夏と鈴は口を開けたまま呆然とし、シャルルは一夏の後で怯え、箒とセシリアは顔を真っ青に染めていた。

 

「な・・・何があったの?」

 

「簪か?いや、突然コイツ(ラウラ)が戦えっていうから戦ったらこうなった」

 

翔は今までの経緯をざっくり説明しているが、実際はラウラが行動を起こす前に一撃を叩きこんだら、レールカノンが壊れそのまま地面に倒れ込んだだけである。

 

「く・・・これが佐山翔の・・・力とでも言うのか?」

 

「まっ、そんな事だ」

 

そんなことを言ってる間に教員達がフィールドに駆けつけてきた。

 

「おっ!ちょうどいいタイミングだな」

 

翔はこれで問題が解決すると安堵していたが・・・

 

 

 

「佐山翔!職員室に来なさい!」

 

「はぁ!?」

 

解決するどころの問題ではなかった。

 




次回はクラスリーグマッチまでの話を執筆する予定です。

ご意見、ご感想、お待ちしております。



オマケ(マドカを登場させてなかったので、とりあえず補完)

幕間劇「マドカさん」



マドカと清香の部屋

「ねえ、マドカ」

「何だ清香?」

「しりとりしよう!」

「なんでだ?」

「暇だから!」

「・・・他の人に頼め」

「『め』?め・・・め・・・」

「おい!そういう意味じゃ・・・」

「メッキ!さあ、『き』だよ、『き』!」

「だ、だから・・・」

「ちっちっちっちっちっちっち、ぶー!時間切れ!私の勝ち!マドカの負け!」

「馬鹿馬鹿しい・・・」

「もう一回やる?負けでいい?」

「別に負けてない」

「あっ、強がり。じゃあやる?」

「断る」

「る・・・るぅ・・・るー」

「だから断ると・・・」

「ルーレット!『と』だよ、『と』」

「だから私は・・・」

「ちっちっちっちっちっち・・・」

「と・・・髑髏」

「と?・・・ロマンチスト!」

「と・・・毒薬」

「クインテット!」

「ドメスティックバイオレンス」

「マドカ、何か選ぶ言葉が暗いよ?」

「お前も『と』ばかりで攻めるのは意地が悪いぞ。さあ、『す』だ」

「す・・・す・・・スリット!」

「!?・・・まだやる気か。いいだろう。トス!」

「スト!」

「!?・・・お、お前」

「ちっちっちっちっちっち・・・」

「な!・・・と、床ずれ、友引・・・どうして明るい言葉が出ないんだ!」

「ちっちっちっちっち!」

「トライアスロン!駄目だ・・・『ん』が付いてしまう」

「ぶー!またマドカの負け!」

「ま、待て!まだネタがあったんだ。ただ選んでただけで・・・」

「負けは負けだよ」

「・・・くっ!」

「あ!もうすぐ夕食の時間だ!いい暇潰しになった!ありがとねマドカ!じゃあ、また暇なときにしりとりやろうね!」






「暇つぶし・・・下っ端・・・パーカー・・・カギ爪・・・カギ爪!・・・殺す!」

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