バカとIS   作:陸のトリントン

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今回は更識姉妹をメインにしています。

シャルル?・・・知らんなぁ(すっとぼけ)


第十四話 バカと「姉妹」

「どうした、一夏?悪いもんでも食ったのか?」

 

「いや、そういうのじゃなくてちょっとね・・・」

 

「・・・?」

 

翔の問い掛けに、一夏はただ苦笑いして答える事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

クラス対抗戦の日、一夏は更識楯無に遊ばれた。

 

裸エプロン姿で出迎えられ、ベッドに押し倒され、からかわれ、暴走した箒に振り回され・・・

 

とにかく一夏の気が休まる事の無かった夜であった。

 

 

 

「お前こそ、大丈夫なのか?勝手にアリーナから出て行って」

 

「ん?ああ。あれから何も言われてないし、大丈夫だろ」

 

一夏の心配をよそにやる気なく淡々と答える翔。

 

 

 

クラス対抗戦の日、翔は更識簪と遊んでいた。

 

一緒に食事をして、一緒にアニメを観て、笑い合って、デリカシーのない発言で簪を振り回したり・・・

 

とにかく翔は充実した一日を迎えていた。

 

 

 

「それにあの技、どうやったら思いつくんだよ・・・」

 

「知らん。やったらできた」

 

謎のISに喰らわせた翔の一撃。翔の秘めた(?)力に教員たちは恐れをなしていたが、本人は特に気にすることは無かった。

 

実は好きなロボットアニメの技であることに、二人は気付いていない。

 

そんな他愛のない会話は朝のチャイムによって終わりを告げた。

 

 

 

 

 

「今日はなんと転校生を紹介します」

 

朝のSHR、山田先生の転校生発言にクラス中が騒ぐ。

 

マドカに続く転校生。

 

山田先生の声と共にドアの開き、そこから現れたのは金髪で小柄の美少年である。

 

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。皆さん、よろしくお願いします」

 

「お・・・男?」

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方といると聞いて、本国から転入を「「「「「キャー!」」」」」」え?」

 

突然の歓声の波にシャルルは戸惑いを隠せなかった。

 

 

 

「男子!?二人目の男子!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形!しかも守ってあげたくなる系の!」

 

 

 

美形に飢えた女性の歓声が溢れだしたのだ。ちなみに翔は「一人目の男子」ではない。

 

「騒ぐな。静かに「お前・・・」おい!」

 

「え・・・」

 

千冬の制止を振り切りシャルルの前に現れたのは・・・

 

 

 

 

 

 

(バカ)だった。

 

 

 

「き、君が佐山しょ「お前女だろ?」へ・・・?」

 

 

 

バカの発言に教室の空気が一気に凍りついた。

 

期待の眼差しをしていた女子達は固まり、一夏と山田先生は驚き、マドカと千冬は平然と翔を見続けている。

 

 

 

「僕、昔からみんなに言われ「チェス」うわぁっ!?」

 

シャルルが弁明をしようとした時

 

翔はためらいも無く

 

悪気も無く

 

まるで息をするかの如く

 

 

 

シャルルの胸を触った。

 

 

 

「お前何で嘘ついてるんだ?」

 

「いや・・・だから僕は「誤魔化すんじゃねえ」・・・」

 

「どうしておん「佐山・・・」ん?」

 

翔の言葉を遮ったのは修羅になりそうな千冬であった。

 

「マドカの時と言い、貴様は転校生にちょっかいを出さなければ気が済まないのか?」

 

千冬の顔はもはや教師としての面影は無く鬼か悪魔の顔をしている。

 

クラスメイトの何人かは千冬の気迫で気を失ってるにも関わらず、翔は何故千冬が怒っているのか理解していない。

 

「いや、こいつが女だって事を隠してる理由を聞いてるだけなんですけど」

 

「お前のやってる事は脅迫を正当化しているに過ぎない。それにシャルルは男だ」

 

「女だろこい「佐山、後で職員室に来い。以上だ」」

 

千冬の死刑宣告によって朝のSHRは終わったが・・・

 

 

 

「なんで怒ってんだ?」

 

 

 

(バカ)には理解できてなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、簪。俺の何が悪かったんだ」

 

「全部・・・悪い」

 

「え?」

 

昼休み、いつものように簪と食堂で朝の出来事を話している。

 

ちなみに翔は千冬に職員室へ連れ込まれ、今朝の行いの罰として補習地獄を味わい頭がショート寸前にまで追い込まれた。

 

「だって、何もしてないのに脅迫なんて・・・最低だよ」

 

「いや、あいつが女だって隠してる方が「証拠はあるの?」ある!「・・・何?」体つき」

 

「・・・エッチ」

 

「なんでそうなるんだ!?」

 

顔を赤くしながら見つめる簪に翔は戸惑う。

 

「だって・・・人の体を観て「男にしちゃ気持ち悪い動きだったからそう思ったんだ!エッチなのは簪の方だろ!?」わ、私はエッチじゃない!エッチなのは・・・翔の方だから・・・」

 

「俺は童貞だ!」

 

「わ、私だって!「言うな!はしたない!」私の初め「だから言うな!」」

 

過去にこのようなやり取りがあったにも関わらず、二人は叫び合い続ける。

 

賑やかだった食堂が二人の会話で静かになっていた。ある者は箸が止まり、ある者はむせて、ある者は食器を落とし、ある者は鼻血を出していた。

 

「俺はゲイじゃなくて「かんちゃん、さーやん」なんだ!」

 

二人の会話に割り込んだ人物。その名は・・・

 

 

 

「ここは食堂だよ~そういう話は部屋でし「誰だお前は?」えぇ・・・」

 

 

 

翔の心無い一言に落ち込む「布仏本音」である。

 

「さーやん。クラスメイトの顔と名前ぐらい覚えようよ~」

 

「お前、俺と同じクラスだっけ?」

 

「そうだよ~」

 

「・・・いたか?簪」

 

「いるから・・・」

 

翔の記憶力の低さに本音は落ち込む気すら湧かない。

 

「クラス対抗戦の時、お話した仲でしょ~」

 

「クラス対抗戦・・・・・・ああっ!あの時の!」

 

翔はやっと布仏本音を思いだしたが・・・

 

 

 

「あの時のお前がなんでいるんだ!?」

 

「・・・」

 

 

 

言い返す言葉が見つからない。

 

 

 

「おーい、翔!」

 

「ん?一夏か。どうした?」

 

そんな空気を打ち壊すかの如く一夏(朴念仁)が翔の所へやって来た。

 

「一緒に食べないか?」

 

「別に構わねえけどよ・・・」

 

一夏と一緒に食べる事に不満はないが・・・

 

 

 

「なんであいつらが怒ってんだ?」

 

不機嫌な一夏ラバーズが気になっていた。

 

 

 

「別に怒ってなどいない・・・」

 

「そうですわ・・・」

 

「アタシはあんたと飯を食べるのが嫌じゃないから」

 

箒とセシリアは不満な顔をし、鈴は翔の言動に若干呆れていた。

 

「気にしなくていいからさ、一緒に『ピーンポーンパーンポーン』ん?」

 

『一年一組の佐山翔君。繰り返します。一年一組の佐山翔君。直ちに生徒会室に来てください』

 

一夏の誘いは突然の放送により中断された。

 

「悪いな、一夏」

 

「また今度一緒に食べようぜ。というより、生徒会に呼ばれるようなことしたのか?」

 

「いや、してないが」

 

翔は生徒会に呼ばれるような事をしてないと主張しているが・・・

 

 

 

訓練機「打鉄」を壊した回数:25回

 

訓練機「ラファール・リヴァイヴ」を壊した回数:5回

 

学園での損害額:300万円

 

生徒指導室に呼ばれた回数:10回

 

 

 

生徒会に呼ばれる以前の問題を起こしていることに気付いていない。

 

「まあ・・・行ってみるか」

 

翔は呼ばれた理由を考えず生徒会室に行った。

 

 

 

 

 

 

「生徒会室ってどこだ?」

 

場所も分からずに・・・

 

 

 

 

 

 

「すまねぇ簪。生徒会室まで案内して」

 

「ううん。私も生徒会室に・・・用があるから」

 

結局簪の案内で生徒会室に着いたが、彼女の表情は硬かった。まるでこれから出会う人物と刺し違える覚悟を盛った顔だった。

 

「簪、安心しろ。何かあったら俺が絶対守るから」

 

「え・・・」

 

「お前は俺のために勉強やISの練習に付き合ってくれた。その礼だ」

 

「別に・・・いいよ。翔と一緒に・・・いたかった・・・だけだから」

 

「そうだったな」

 

簪が笑顔になった所で翔は生徒会室のドアを開けた。

 

部屋の中央に長テーブルが四角く取り囲まれ、壁には予算や部活動や生徒達に関する資料が入った棚が綺麗に陳列されている。そして生徒会室に無くてはならないホワイトボードがあり、その前に立っていた人物は・・・

 

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「簪ちゃん」

 

更識簪の姉「更識楯無」である。

 

 

 

「二人が付き合ってるのは知ってるけど、それをお姉ちゃんに見せつけられても困っちゃうな」

 

楯無は左手を腰に当て「健全推奨」と達筆に書かれた扇子を広げる。

 

「お前、俺に何の用があるんだ?」

 

「翔君、お前じゃなくて楯無って言う名前があるん「だから俺に何の用があるんだ?無いなら帰るぞ」分かったから、そうイラつかない」

 

楯無のペースに少しイラつきを表す翔。

 

「単刀直入に聞くわね。佐山翔君」

 

「何だ?」

 

「あなたは何者なの?」

 

「はぁ?俺は佐山翔だ。猫派の翔とも呼ばれてる」

 

「お姉ちゃん・・・どういう意味?」

 

翔は呆れた顔をし、簪は怒りを露わにし、楯無を睨んでいた。

 

「翔君の戦闘データと経歴を見せてもらったけど目を疑ったわ。あなた一人で数々の組織は潰れたし、訓練機で専用機を修理させる実力。この間の無人機も貴方の一撃で倒された。あなたの力はどこから湧き出てくるのかしら?」

 

「愛だな」

 

楯無の真面目な質問も淡々と答える翔。簪は姉が呼んだ理由がそれではないと考えてた。きっと・・・

 

「じゃあ、姉として言いたいことがあるけど良いかしら?」

 

「別に構わねえから、さっさと言え」

 

「翔君。簪ちゃんと「断る!」えっ!?まだ最後まで言ってないわよ!」

 

楯無の覚悟を蹴り飛ばすかの如く、翔は楯無の言い分を最後まで聞かずに否定した。

 

「どうせ簪と付き合うのはやめろとか言うんだろ?だったら断る!それにそれを決めるのは俺じゃない。簪が決める事だ」

 

そう言い翔は簪に視線を移す。

 

「お姉ちゃん・・・翔と付き合うのは・・・やめて欲しいの?」

 

簪は楯無をずっと見ている。まるで本当の事を言って欲しいと言わんばかりの視線を出している。

 

「できれば距離を取ってほしいだけよ。翔君の行動に簪ちゃ「本当の事を・・・言って」・・・分かったわ」

 

突然楯無の顔から笑みが消え、翔に視線を移す。

 

「家族で話し合ったけど、簪ちゃんと翔のお付き合いはやっぱり認められないわ。辛いのは分かるけど、簪ち「嫌だ!」簪ちゃん・・・」

 

楯無は簪の怒号に驚きを隠せていない。

 

「お姉ちゃん・・・私は・・・翔の事が・・・好きなの。バカで・・・デリカシーが無くて・・・物覚えが悪い・・・でも私は・・・そんな翔が・・・好きなの!」

 

簪の愛の叫びに楯無は何を言えばいいのか戸惑っている間に、簪は喋りつづけた。

 

「私は・・・無能じゃない!家族が反対しても・・・自分の道を進むから!」

 

簪は楯無に背を向き、生徒会室を去って行った。

 

「てめえの考えは知らねえが、簪は一人立ちできてるから心配すんな」

 

フォローを入れた翔は簪を追うように生徒会室を去って行った。

 

「無能じゃない・・・か」

 

楯無は後悔していた。簪に言ってしまった心無い言葉を。それが姉妹の仲を引き裂き、楯無自身を苦しめてる。失って初めて分かった「更識簪」がいることの大切さ、嬉しさ、愛おしさ。

 

 

 

もう一度やり直したい。

 

もう一度、簪と一緒に笑いあいたい。

 

だが、現実は違った。

 

姉妹の仲はより溝を深くし、楯無の望まぬ方へ進んでいく。

 

 

 

 

 

 

「簪ちゃん。もう・・・昔のように戻れないの?」

 

楯無の問いに答える者は現れず、授業開始のチャイムが鳴り響いていた。




次回は黒兎を登場させる予定です。

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