バカとIS   作:陸のトリントン

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今回は、クラス代表戦を執筆するはずでしたが・・・十三話になる事になりました。

期待していた読者には迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。


第十二話 バカと「ケンカ」

「なあ、マドカ。なんで簪は不機嫌なんだ?」

 

「自分で考えろ」

 

「えぇ・・・」

 

鈴が去った後、翔は簪を不機嫌にさせたにも関わらず、マドカに理由を問い詰めていた。

 

「貴様は人の気持ちを踏みにじる事に関しては、優れているな」

 

「お前、言いすぎじゃねえのか?」

 

「事実を言ったまでだ」

 

マドカの発言に不満を持ちながらも、翔は簪を慰め続ける。

 

「なあ、簪」

 

「・・・ふん」

 

「その・・・悪かったよ。まさかお前が、ここまで恥ずかしがるとは思わなかったか「恋人がいるって・・・入学早々言ったのは誰?」いや、そう言わないとさすがに「翔・・・私、恥ずかしいんだから」・・・すいません」

 

もはやカップルというよりは、女の尻に敷かれてる男の図である。

 

 

 

 

 

 

(更識簪・・・ロシア代表、更識楯無の妹。今の彼女に楯無は不要か)

 

マドカは、二人のやり取りを見ながら考えていた。

 

簪は自分より肉体的に劣るが、精神的には自分より勝ってると確信したからである。

 

(だが、そんなことはどうでもいい)

 

マドカには夢を叶える使命があるからだ。それがどんなに血なまぐさい夢であっても・・・

 

 

 

 

 

 

「ところで、マドベ」

 

「・・・マドカだ」

 

「お前、部屋とかどうすんだ?」

 

「織斑先生がキーを渡しに来る」

 

「ふーん。そうか」

 

翔の問いかけにそっけなく答えるマドカ。彼女は、一人部屋にして欲しいと事前に千冬に頼んでいるため、これからの事を考えていた。

 

「あいつ」は何者なのか、「あいつ」は今どこにいるのか・・・

 

マドカの頭の中は「あいつ」の事で一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。キーを渡されたマドカは、それに表示されていた部屋の前に立っていた。

 

(さて、どうやって「あいつ」を探すか・・・)

 

これから一人で作戦会議を開こうと思い、ドアを開けたが・・・

 

 

 

 

 

 

「あれ?マドカさんが私のルームメイトなんだ!」

 

「お前は・・・」

 

「出席番号1番、相川清香(あいかわきよか)。ハンドボール部に所属しています!趣味はスポーツ観戦とジョギング!よろしく!」

 

「・・・・・・」

 

「あ、あれ・・・マドカさん?」

 

 

 

(姉さんの高笑いが目に浮かぶ・・・)

 

 

 

マドカは、現実というものを知ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、翔は今日も学園の野良猫と戯れていた。だが、その顔は笑顔に満ち溢れていない。

 

昼休みの一件で簪は不機嫌。翔はそれに対するフォローの仕方を全く知らない。そのため、翔はどうしたら簪の機嫌が良くなるのか考えてたが・・・

 

 

 

「全く分からねえ・・・」

 

(バカ)には、難題だった。

 

 

 

「なあ、俺は一体どうすればいいんだ?」

 

「「「「「ニャー」」」」」

 

「そんなこと言わなくていいだろ」

 

「「「「「ニャー」」」」」

 

「えぇ・・・」

 

猫の言葉を理解してる翔は、傍から見たら変人にしか見えない。

 

 

 

 

 

 

「あんた・・・何してるのよ?」

 

「ん?お前は・・・フェイ・イェン!」

 

凰鈴音(ファン・リンイン)よ!いい加減覚えて!」

 

「略して、ファイ!」

 

「鈴でいいよ!」

 

(バカ)を前に鈴のSAN値が下がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、彼女の機嫌を直すにはどうすればいいのか分からないと」

 

「ああ。全く分からないんだ」

 

「あんたねぇ・・・」

 

ベンチに座り、翔の悩みを聞いた鈴はため息をはいた。自分が原因である事に気付いていない。

 

これは気付かせないといけないと感じた鈴は、翔を睨みつけた。

 

「じゃあはっきり言うけど、原因はあんたよ!」

 

「俺!?」

 

「当たり前でしょ!あんな公衆の前で自分の彼女を紹介されて、恥ずかしがらない方がおかしいよ!」

 

「事実をただ言っただけなんだが・・・」

 

「それをあの場で堂々と言うのがおかしいのよ!」

 

もはや、簪が可哀想に思えてきた鈴は、ある質問をぶつけた。

 

「あんた、本当に簪が好きなの?」

 

「ああ!あいつと生涯共に生きて行くって決めたからな」

 

「あいつは、好きって言ってくれたの?」

 

「ああ」

 

「どういう風に言ってくれたの?」

 

「あなたのお嫁さんになってあげるって」

 

「・・・いつ言われたの?」

 

「中二の夏」

 

「はあ・・・」

 

鈴はこれ以上話をしてもらちがあかないと感じ、簡単なアドバイスを送る事にした。

 

「じゃあ、何かプレゼントをした方がいいわね」

 

「プレゼント?」

 

「彼女が好きなものとか、得意料理でもいいのよ。なんか無いの?」

 

「あいつ、抹茶のカップケーキが好きだったなあ」

 

「じゃあ、それをプレゼントしなさいよ」

 

「できるかなあ?」

 

「できるかなじゃなくて、やりなさい」

 

「何で、上から目線なんだ?」

 

「いいから、行きなさい!」

 

鈴の怒号に渋々従うことにした翔は、そのまま自分の部屋に戻って行った。

 

だが翔は気付いていない。簪は抹茶のカップケーキが得意料理であって、好きな食べ物では無いということを・・・

 

 

 

 

 

 

「ふう・・・もう出て来ていいわよ」

 

「・・・分かってたの?」

 

「あんなにジロジロ見られてたら、嫌でも分かるわよ」

 

木陰に隠れていた簪は少し怯えながら、顔を出した。

 

「聞きたいことがあるけど」

 

「・・・何?」

 

「あんた、翔のどこが好きになったの?」

 

「え?」

 

鈴から見れば、佐山翔という人物は危険そのものでしかない。日本の警察を倒し、数々の犯罪組織やテログループと喧嘩をした不良。簪は何故、そんな人間と付き合ってるのか。それを聞く絶好の機会は今しかないからだ。

 

「私には、翔を好きになる理由が私には「・・・一途なところ」え?」

 

「ロシア代表の妹で見比べもしないし・・・蔑ましもしない。ただ・・・一途に頑張る姿が私は好き」

 

顔を赤くしながらも、簪は笑顔で語っていた。

 

「で、今の(あいつ)にはそんな面影が無いから、嫌だって言いたいの?私が見る限り、あいつは一途に頑張ってるけど?」

 

「そ、そうじゃない・・・」

 

鈴の心も無い(?)一言に簪は落ち込みながらも、否定はするが・・・

 

「それとも・・・違うクラスだから?」

 

「・・・・・・」

 

「はあ・・・」

 

どうやら、図星の様であった。

 

「あいつはバカでデリカシーは無い。けど、あいつは純粋なバカなだけよ。あんたにバカと言えるほど好きで一途なだけ。だから今度会ったら、謝りなさい」

 

「どうして、そこまでのアドバイスを?」

 

「あんたたちを見てたら、何か応援したくなってね」

 

「・・・泣いてたのに?」

 

「あ、あれは。あんなバカに彼女がいることに悔しくて・・・つい」

 

簪の思わぬ反撃に鈴は言葉を詰まらせたが、無理矢理話を締め上げる。

 

「と、とにかく!あんたはちゃんと、翔に謝ること。いい?」

 

そう言い、鈴は一目散に去って行った。

 

 

 

「謝る・・・」

 

 

 

簪はこれまで翔と一度も喧嘩したことは無い。翔のバカっぷりに振り回されながらも楽しい毎日を送っていた。しかしそれは、翔が近くにいたからだ。今は、お互い違うクラスにいる。しかもロシア代表の姉がいる。そのせいで同じ寮の部屋にいても、緊張が抜けない。

 

(私・・・ストレス溜め込んでたかも・・・私・・・翔に八つ当たりをしたかも・・・)

 

知らないうちに翔を傷つけたのではないかと思い始めた簪。

 

(謝らなきゃ・・・)

 

そう決意した簪は、すぐに翔がいる部屋へ戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたら、こうなるんだ?」

 

翔は苦戦していた。寮の部屋で黒のエプロンを着込み、抹茶のカップケーキを作っていたはずなのだが・・・

 

 

 

出来上がったのは、パエリアである。

 

 

 

「分からん・・・どうしてこうなるんだ?」

 

あと一人分の材料しか残っていない。ここで失敗すればカップケーキは作れない・・・

 

「やべぇ・・・」

 

絶体絶命のピンチにドアのノック音が響き渡る。

 

「はーい?」

 

誰なのか知らず翔はドアを開けた。

 

「翔・・・」

 

「簪・・・」

 

「・・・」

 

「とりあえず、中に入れよ」

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

「・・・ごめん」

 

「え?」

 

簪の突然の謝罪に、翔は唖然とする。

 

「私、翔の気持ちを無視して・・・ひどいことを言って「いや、あれは俺が悪かった。すまないことをした」」

 

簪の言葉を遮り、翔は深々と頭を下げる。

 

「俺は、お前の乙女心を踏みにじる最低な行為をしたんだ。だから俺がものすごく悪い!」

 

「そんな・・・私だって・・・翔がすごく苦労してるのに酷いことを言ったから、私の方が悪い」

 

「いや!俺が悪いんだ!」

 

「私・・・」

 

「俺だ!」

 

「私」

 

「俺なんだ!」

 

「私!」

 

謝罪のはずが、悪いのは自分だと言い始める。そして・・・

 

 

 

「はあ、はあ、はあ」

 

「はあ・・・はあ・・・」

 

 

 

二人は疲れ切っていた。

 

「ところで・・・翔・・・何を・・・作ってたの?」

 

「カップ・・・ケーキ・・・お前・・・好きだろ?」

 

「得意料理・・・だけなんだけど」

 

「え!?」

 

「・・・ぷっ」

 

翔の呆気にとられた顔を見て、簪は思わず笑みをこぼした。

 

「なんで、笑うんだよ!?」

 

「だって・・・し、翔の呆気にとられた顔が・・・ふふっ、おもしろくて・・・」

 

「そんなにかよ・・・」

 

何故かそこで落ち込む翔。簪は笑い終えたのか、翔にある提案をする。

 

「翔、カップケーキ・・・一緒に作る?」

 

「いや、いい!これは俺が「ちゃんと出来てるの?」・・・できてません」

 

「じゃあ・・・一緒に作ろう」

 

「一人分しかないぞ。いいのか?」

 

「うん。一緒に・・・作りたいだけだから」

 

「じゃあ、頼む」

 

「うん。これで・・・おあいこだね」

 

 

 

 

 

 

新しい環境で起こったケンカ。

 

それは、ちょっとした二人の愛を確かめる出来事だったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなるんだ簪?」

 

「・・・分からない」

 

できあがったのは、フォアグラだった。




次回から、クラス代表戦です。

絶対、書いてやる・・・

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