魔法少女リリカルなのは~遥かなる悟空伝説~   作:群雲

36 / 93
出ました36話。 なのにもかかわらず、今回の題名と内容はあってない気がします。 悟空さん、あんた何やってんだ……

悟空が一番好きなもの……皆様には、すでに分かっていらっしゃると思うのであえて言いませんが、今回――それをやらないです。

では、どうぞ。


第36話  悟空が一番好きなこと――

 この世には、とても我々では想像できないことがある。 有象無象、森羅万象、この世の理全てを無視する……そう、神にも等しき力を発現する現象。 それが知らないどこかで行われ、もしくは発見されていくのである。

 

 もしもそれを目の当たりにしてしまったら、我々は果たしてどう接することができるのか……もしかしたら何もできないかもしれない。 でも、何かが出来るかもしれない、そう言う可能性があるのなら、きっとそのときは、全力で対応していきたい。 それが、きっと時空管理局にいる者の務めというものだから

 

 

著者――――クロノ・ハラオウン

 

 

「なんて、昔は思っていたが――――これはどうなんだああああ!」

 

 少年は叫ぶ。 それは夢幻にも等しき淡い叫び声であった。 聞く者は逃して、目にする者は通り過ぎる。 そんな理不尽な声を上げずにはいられないこの少年の目の前には、一枚の紙が鎮座していた。

 A3用紙にデカデカと、大きく書かれた文字は――5文字。 これを見た瞬間に、それを描いた人物と声色が脳内でモノローグ調に駆け巡り、なおも彼を苦しめる。

 

その字は――

 

 

『ごめんね♡』

 

「あんの――ご老体はああああ!!」

「……仕事、これ以上増やさないでくれるかしら……はぁ」

 

 プレシア女史が居るであろうところに張り出されたそれを見て、深く頭と肩を下げる苦労人たちは、そろってため息よりも深いナニカを吐き出したのでありました。 物語は、地球に移っていくのです。

 

 

「……んむ」

「……ぅん」

 

 今日も元気な朝が来た! さんさんと降り注ぐ太陽光は明るい色のカーテンに遮られてはいるモノの、焼き尽くさんと燃え盛る陽の光は何者にも完全には遮ることはできないのである。

 

「……ん、……ふぁぁああ…んぐ…」

「……すぅ……んん」

 

 零れ落ちた声がいくつか。 それは両手を上げて伸びをする声、それはいまだに毛布を肩まで掛けてこのままで……と、呟くかのような声。 両者は相反していながら、それでも距離は近いまま。

 

 片方が少しだけ態勢を崩す。 そのときに流れる長い灰色は、透き通るような肌を駆け下りていき、一晩前まで整っていたシーツの上に降りていく。 軽やかに響く音が、その髪の質が極上だという事を逐一知らせ、この人物がいかに手入れをしているかを想像させる。

 紫色のネグリジェに身体を預けた人物が、まだ眠いと片目をこすり、あくびをかみ殺して真横に居る“男”に向かって視線を流していた。

 

 ……そう、もう気づいたかもしれないがコノモノタチハ……

 

「おはよう、孫くん」

「……あり?」

「もう朝?」

「……?」

 

 いやいや、そんなことはあるはず無いと、一瞬でも窓の外を見た悟空の反応はかなり珍しい。 布団から尾をだし、揺らして、頭をかく。 ボサボサと音を立ててかき混ぜられるそれは、今ある混乱を露わにするあのように……激しいモノであった。

 

 それでも。

 

「なんだ、おめぇあのまま寝てたんか」

「フェイトの横には御嬢さんたちが居るもの。 あなたが寝ることになった客間の布団はこれしかないし、年頃のあの子と、酷く落ち込んでいた女の子、それに新婚同然なあの夫婦の部屋はありえない……ここ以外は考えられなかったのよ――たぶん、そう考えたはず」

「それもそうか」

 

 タンパクはここに極まれり。 男は手足でふとんを投げ出すと、ちいさな背を大きく伸ばして右に左に動かしていく。 ラジオが在ったら音楽を流していそうな運動に、ひとつ笑う女はそのまま体だけ起こして片手を顔に添える。

 窓の外に小鳥がとまる。 ちいさなさえずりは彼らが作り出す“間”を埋めていき、ひとつ、ささやかな声を聞くまでそれが続いた頃であろう。

 

「――――ふっ」

「うげ!?」

 

 女性は、……いいや、プレシアはその場で崩れる。 すぐ横に居た悟空を押しつぶすようにもたれ掛り、彼を――逃がさないようにその場へ押しとどめている。

 

「お、おい……おめぇまさか」

 

 そのさなかで聞こえる子供の声はかなりの警戒の念を込めたモノ。 先ほどまで在ったのどかな時間はどこへやら……悟空はプレシアから離れようとするものの、できない。

 

「ご、ごめんなさい」

「あやまるめぇにやることあんだろ――」

「もう、限界」

 

 そして……そしてついにプレシアの欲望は理性を乗り越える。 心ではダメと引き止めて、理性が急制動を掛けようとも身体は正直。 彼女は、己が肉の欲を開放する。

 

 

 

 

「――は、吐きそう」

 

 

 

「わー! わーー!! それだけは勘弁してくれえ! こんなとこでゲロなんかしたら、オラ一生恨んでやるからなあ!!」

「……うぷ」

「誰か来てくれーー!」

 

 …………少年の、必死な抵抗が始まったのでありました。 運命に反抗する彼の姿は立派の一言、それが、例えどんなに小汚い役割だとしても。

 

「と、トイレ……」

「おめぇ昨日飲みすぎなんだよ、病人のくせしてモモコのヤツと酒瓶3本も開けちまいやがってさ」

「……うぅ」

「あぁあぁ、今オラが連れてってやっから……ほれ、つかまれ」

「ごめんなさい――うっぷ」

「うわあ! おめぇ冗談じゃねぇぞ……はやくしてくれ――」

 

 おそらくターレスとの対戦時よりも衰弱しているのではないかというくらいに“痛々しい”プレシアを背に担いで同じ階のトイレへ急行するのであった。

 

「あ、鍵かかってんぞ」

「……誰よ、こんな非常事態に」

「…………」

「は、恥ずかしいからって黙り込む気ね……」

「…………ぅく」

「――この気は、なのはか!」

「――~~っ!?」

 

 そのあとの騒動に、今日という日がまたも騒乱で始まると予感しつつ……

 

「悟空くんのバカぁ!!」

「ぐへぇ?! いてぇ~~……なにすんだ!」

「知らない!!」

 

 彼はひっそりと、乙女の純情を蹴散らしていくのであった。

 

 

 PM 13時――高町家、リビング。

 

 平日の昼が過ぎ、学校がある高町3兄妹がいないこの家にはいま、その名に高町以外を冠するものが大半を占めていた。 結局帰れなかったプレシアを筆頭に、フェイト、悟空が、大黒柱のいないリビングで、熱いお茶をすすっているのはどうにも違和感の塊で。

 

「にしても、モモコの奴も相当飲んでんのに、なんであんなにケロッとしてんだ」

「ふふ、どうしてでしょう?」

「……あれが若さよ」

「おめぇが言うと冗談にならねぇからやめてくれよ」

「かあさん……」

 

 流し目で台所にいる桃子を見るプレシアの目は、遥か地平をながめるかのように遠い眼差しであった。

 

「……悪ふざけはここまでにして」

「いままでのが冗談なの?」

「オラには本気にしか見えなかったぞ――結局“戻した”しな」

「コホン」

 

 子供たちの非難を背に受け、ふわりと立ち上がる二日酔い患者は悟空を見下ろす。 その目は先ほどまでとは比べ物にならないくらいにシリアスに富み、見るモノを真剣な空気へと……

 

「母さんの目つきが変わった……?」

「さっきまでは吐いてばっかだったしな、こんくれぇでいつも通りだろ?」

「げふんげふん」

 

 いざなおうとしていたらしい。

 

「そろそろ本題に入りたいの、いい加減ちゃちゃ入れないでくれる?」

「へんな話題にした原因はおめぇじゃねぇか、いまさら何言ってんだ」

「その件はもうしわけありませんでした……これでいいわよね?」

「棒読みすぎるよ、かあさん」

「……オラ疲れたぞ」

 

 停滞ばかりする会話に、取ってつけすぎる謝罪の言葉にて切り捨てた女はここでやっと悟空に向き直る。 黒い瞳に映り込む、彼女自身の顔に話しかけるかのように、ただ、まっすぐに口を開き。

 

「あなた、こんどフェイト“たち”とデートするって本当?」

「ぶーー!」

「うわっ、あぶね! きたねぇぞフェイト」

 

 娘が一人、高温の茶を噴霧射出していた。 それを至近距離から吹きかけられた悟空は、首を振って見事かわす。 耳元に若干かかったともいえないが、それ程度は彼に何らダメージを負わせない。

 吹きかけた張本人がどう思うかは知らないのだが。

 

「けほっ、けほ……か、かあさん! どうしてそれを――」

「わたしの情報網を甘く見ない事ね……あなたの事なんて全部お見通しなのよ」

 

 ここぞとばかりの尊大な微笑み。 まさに母というその顔に、まいったなぁと笑う娘は困ったようでいて嬉しそう。 複雑骨子の枠組みは、今までの苦労を知るものでなければ到底理解の外な代物であろう。

 

「ん? ……そういや昨日、ユーノの奴がむせび泣いて布団の中に入ってきたんだけどよ、なんか関係あんのか?」

「……ふふ」

「…………かあさん?」

 

 到底理解できない代物なのであろう。

 

「それで孫くん、今のは本当なの?」

「か、かあさん。 デートと言ってもそんな――」

「でーとはでーとだ、な? フェイト」

「……あぅ」

 

 ユーノを華麗にスルーしたプレシアが切りこんできたと同時、なぜかかばうかのように打って出たフェイト、それを跳ね除けようとした瞬間に、それすらも切り崩すかのような悟空の発言に、フェイトは愚か……

 

「……そう」

 

 なぜかプレシアも黙ってしまう。 見た目相応の明るいまなざしに、思わず狼狽えそうになる彼女は、首を動かし頭を振ると質問を続けていく。 それが、ちょうど終わりを見えた頃合いだろうか、悟空に向けた最後の質問に。

 

「そのデート、もしかしてこのあいだあなたが気にしていた……?」

「そうだ。 “礼”ってヤツだ」

「ふぅん」

「他にアリサやすずか、それになのはとも行くんだ」

「――ごほっ!!」

「きゃあ!?」

 

 フェイトが毒霧の直撃に悲鳴を上げていた。

 

「あ――あなた、それは本気で言ってるの!?」

「なにがだ?」

「そんなかわいらしく首を傾げてもダメよ。 自分が言ってることがおかしいってことに気づきなさい」

「??」

「あーもう! ホントにかわいらしい仕草をするんだから」

「……悟空が子供になったら、かあさんが変になった…………」

 

 苦い顔をしながらもだえるというわけのわからない行動をとるプレシアに、ひと時の嫌気が射したのもつかの間、フェイトは思う。 やはり、なんだかんだ言おうとも、母は自分の事を心配してくれているのではないかと。

 

「行き先も決めてあんだぞ?」

「あら、あなたにしては準備がよすぎるわね? 誰の入知恵?」

「はは、ばれちまったか。 これな、エイミィの奴がいろいろと準備してくれてんだ」

「……あぁ、なんとなく読めてきたわ。 ふたりとも、みんなによろしくね」

「え!? かあさん、行っちゃうの?」

「……はぁ」

「?」

 

 しかし、悟空のだした名詞に、一気に熱は鎮火する。 まるでこれから見る映画の物語の“落ち”をばらされてしまった観客のように重い足取りを運ぶプレシアは、ため息の後に持っていた湯呑みを台所にいる桃子に手渡す。

 

「これ、おいしかったわ」

「あら、わざわざすみません」

「いいえ、とんでもないわ。 それじゃあ孫くん、その“でーと”というのが終わったら、また『こっち』に来てちょうだい。 そしたらこのあいだの続きをしてもらうよう、わたしから説得しておくから」

「……? わかったぞ」

「…………ぶるぶる」

 

 その時の顔は、妖しくも艶のある……そう、妖艶と形容できる美しくも攻撃的な貌をしていたのであった。 それを、誰に向けたのかは知らないが――

 

「とりあえず貴方は、その姿を管理局の阿呆たちには見せないでいること。 次元世界最強の人間の弱点を、あっさり見せることなんてないのだから」

「おう」

「では“もどった”頃にまた連絡を頂戴。 あの姿のあなたなら、テレパシーも使えるのよね?」

「ああ、たぶん行けると思う」

「なら、わたしはそろそろ行くわ。 ……桃子さん、またおいしいお酒をいただきに来るわね」

「あ、はい。 いつでもいらしてください」

「ふふ……失礼するわ」

 

 やわらかく笑う彼女は、片手を振るとリビングのドアを開いて歩く。 そのまま歩き、少しの間、玄関のドアを開ける音もなく、プレシアはこの家から居なくなってしまう。 ……それが、転移の魔法の一種であるとわかるのは、原理を知るフェイトと気で探知できる悟空のみであった。

 

「すげぇなぁ、結構遠くまで行けるのな」

「たぶん、このあいだまでわたしとアルフが間借りしてたマンションに行ったと思うんだけど……こんなすぐに飛べるのは母さんくらいだと思う」

「……?」

 

 それがわからぬ一般人の桃子はただ、子どもたちの空になった湯呑みを回収するだけである。 

 

「次の日曜だからな」

「……え?」

「なに呆けてんだ、“でーと”に行くって言ったろ? 次は……明日だから無理らしいからな、日曜に行くからな」

「あ、うん……」

 

 そうして悟空も、本日最大の疑問。 ……日程という名の執行日を言い渡すと、そのままふらりと立ち上がる。 見上げるフェイト、彼が何をするかわからないと、視線を飛ばすと。

 

「ちょっくら身体うごかしてくる。 この身体でどこまでやれるかみてぇし」

「あ、だったらわたしも行く。 相手がいたほうがいいよね」

「ほんとか! なら、久しぶりに相手してもらうかな」

「うん」

「“ばるでぃっしゅ”も、いいよな?」

[…………]

「はは、そうか! おめぇも戦いてぇか!!」

「え? いま……なにも言ってなかった気が」

「なにいってんだ? オラにははっきし聞こえたぞ?」

「……?」

「モモコー! オラたちちょっくら出かけてくるーー!」

「はいはーい、気を付けて行ってくるのよぉ」

『はーい』

 

 悟空は、フェイトをエスコートしつつ、筋斗雲を飛ばしていくのでありました。 彼らの戦いは……

 

「いっけーー!」

 

 決着はないのかもしれませんが。

 

 

 こんなやり取りがいくらか行われただろうか? 八神家訪問から3日目、プレシアが去ってからおおよそで51時間が経過した頃であろうか……

 

「あ」

「お」

「悟空さん!」

 

 彼の身体が、今度は青色の輝きに包まれていく。 このあいだの黄色とは違うその色はどういう意味か分かりかねるが……

 

「…………もどった」

『……おお』

 

 身長120センチ未満だった悟空はいま、175センチの孫悟空へと相成ったのである。 おもわず見上げる子供たち、大きな影を作る彼が懐かしいと、感じるのはどうしてだろう。

 自然体で立つだけの彼に、皆は近寄っていく。

 

「はっは! いやーなんだか変な感じだな。 大きくなったりチビになったりすんのは」

「相変わらずよくわかんないときに大きくなるよね」

「うん、それにどうしてか服も変わっちゃうし」

「……魔法なのかな?」

 

 なのはを筆頭に、子ども三人が……正確には一匹はフェレットだから違うとして、彼女たちは悟空の変異に息を吐き出す。 嘆息やため息、様々なものがある中で、高くなった彼の背を見つめる子供たちは複雑至極。 だって彼だけが……

 

「……離れちゃいそう」

「どうしたなのは?」

「――え? あ、あぁううん、なんでもないよ」

「……?」

 

 ……そうだったから。

 

 それは少女の心に、ほんのわずかながら影を射させる。 小さな影だ、放っておけば気にならない程度だろう。

 

「そうか? でも……ま、いいか」

「うん、いいの」

 

 

 だが影は、日の光りが強ければ闇の濃さを大きくする。 夕焼けに伸ばされる、家屋、建造物、人の影のように……――そして。

 

 

「さぁて、身体が戻ったところで、そろそろやらねぇとな」

「やる? なにを?」

「そりゃあアレしかねぇだろ……修行だ」

『修業!?』

 

 彼の本格始動。 それは、やはり身体を鍛え、己を消化し続けること。 ただそれだけが彼の生業なのだから、この発言に、矛盾をきたすことはない。 そう。

 

「あ、あれだけ強くなっちゃったのに……」

「まだ強くなるの?」

 

 この、少なからず道を踏み外しただけに過ぎない子供たちには、理解しかねる行為だとしても。

 彼らは知らない。

 

「まぁな。 いくら強くなっても、もしかしたら今のオラより、もっともっと強い奴らがいるかもしれねぇし」

「そんなわけ……」

「それにな――」

 

 彼に言い渡された――死の宣告。

 

「トランクスってやつが言ってたんだ。 20年後の未来じゃ、オラたちはみんな人造人間ってやつに殺されてるってな。 だから……」

「そんな!!」

「ぅお……いきなり大声出すなよ」

「だすよ!!」

「悟空さん……」

「……悟空」

 

 それとは別の、確定されたはずの未来での出来事。 唐突だった、突然だった、彼が言うお気楽な口調からは想像もできない悲惨な事象を、誰もが想像に難があって……でも、今まで歩いてきた記憶が語る。 彼が、そんなつまらない冗談など口にするわけがない……と。

 

「す、超サイヤ人になった悟空でも勝てないの?」

「そいつはわからねぇ」

「……?」

 

 その中で問われた物は酷く当たり前。 それでもと、何やらわけがありそうな青年の顔は、まるで来るべき未来を待つかのよう。 たとえ、それが絶望の未来だとしても。

 語ろうとする悟空は、そのまま屈伸を始める。

 

「オラな」

「うん」

「実はその人造人間とは戦えなかったんだってよ」

「え?」

 

 右足、左足、次に軽く握った左手を前に突出し、その下に右手を通しその甲で左の肘を引き寄せる。 交互に行われるそれは肩とわきを軟くさせ、ちょうどがいいくらいにほぐらせる。

 

「なんでも、よっよっ……オラはこのあとにさ……よっこいせ……心臓病で死んじまうんだってよ」

「………………はい?」

「だから――『なんだってえええええ!!?』……うぅお?! だから、いきなり大声で」

「それどころじゃないよ!」

「そ、その未来から来た人が言ったのはホントの事なの!?」

「悟空さん……ごくうさんが!!」

「お、おいおめぇたちそんなに引っ付くなよ……大ぇ丈夫」

『……え?』

 

 両手を地面に合わせ、そのまま天に足を伸ばす。 そのまま上下に身体を動かし、その度に上腕筋が微細な運動を開始する。

 

「オラが死んじまうっていうのはもう半年もめぇの事だ……たぶんな。 それなのにこうもぴんぴんしてんだ、きっとなにか変ったんじゃねぇかって思うんだ」

「かわった?」

「それにいざとなったらリンディたちのとこで厄介になるさ、魔法が使えんだ、きっと病気くれぇ……あ、それはプレシアがダメだからオラもダメなんか? まぁ、でも、きっと平気さ」

『でも』

「とにかく」

「とにかく?」

 

 着ける手の数を一本減らす。 とった腕を腰に回し、そのまま綺麗な姿勢で上下の運動をやめない。 普通なら鍛えるこの動作もどうしてだろう、彼が行うと暇つぶしに見えてしまう。 確実に時間の無駄というこれは当然だ、彼は今、話しをしているのだから。

 

「いまは眼の前の“でーと”ってのを先に片付けちまわねぇと、下手すっと修業よりも難しいかもしんねぇし」

「デートが……」

「……優先事項なの?」

「デートをかたづけるっていうのはどうなんだろう」

 

 むづかしい……むずかしい。 悟空がいうデートにいささか大きな不安を抱える子供たちは、やはり出来ることはひとつなのだろう。 ちょっぴり含めた不安の色を混ぜた小さな眼差しで只、孫悟空という青年を見ていることしかできなかったのである。

 

「どうなるんだろう」

「どうなっちゃうんだろう」

「……決めた、ボクは当日留守番してる…………怖いから」

「ふっ、ふっ、ふ――やるぞお!!」

 

 各々が様々な思いを抱く平日の夕方、紅の輝きが大きな影を作る中で、それに見合うほどの疑問を脳内で浮かべつつ、今秋がどんどん暮れていく。 迫る決戦――Xデイは、誰にも抑えられない速度でゆっくりと、しかし確実に押し寄せてくるのでした。

 

 

―――――事件(デート)当日。

 

 大きな輪車が宙を廻る。 観て、閲覧して回る車輪――言いやすくすれば観覧車がクルリと回る大きな場。 皆の“後”ろにいる人も“楽”しくて元気になる“園”は、その実血戦の舞台となるバトルドームへとなりそうで。 そうとも知らず駆け巡る絶叫系に乗る者たちの歓喜の声が、ほんの少しのスパイスとなって耳に届く。

 これを聞くだけで、もう、居ても立っても居られないのが子供が子供であるゆえんであるだろう。

 

「わ、わたし今日こそ女の子の方のネズミさんを見つけたいな」

「なのはちゃん、ここにそれは――」

「なにいってんのよ、ここだからいるんでしょ?」

「あれ? ここってそうだったっけ?」

「そうよ、だってここって東京の方だけどそうじゃない遊園地なのよ? 群馬か埼玉かなんかはさておき」

 

 かなり、どうでもいいことに花を咲かせるのは女が女である所以か。 なのは以下数名はここの大きな城に向かって、少なからず退屈の視線は飛ばしていないだろう。 むしろ、事ここに至ってようやく、本来の年齢通りに心を躍らせたと言っても……

 

「はわ……はわ……」

「フェイトちゃん?」

 

 過言ではないだろう。

 

「こ、こんなに人が……き、緊張してきた」

「なのは、もしかしてこの子」

「人見知りさん?」

「そうなのです……」

 

 身体が震えはじめた9歳児が一名。 頭脳明晰、容姿は将来性があるフェイト・テスタロッサが、そのキレイな髪を揺らしながら口元に手をやりワナワナと“ケイタイ”みたいになっていた……なんと微笑ましいと周りが見守る中で。

 

「……ていうか」

「なんでしょう」

「悟空はなんでいないのよ。 今日のためにいろいろと予定を切り崩してきたっていうのに、言いだしっぺがいないってどういうこと!!」

「そ、それは悟空くんに言ってもらいたいと思うのですが……」

「そうだよね、悟空さん、ほんとにどうしちゃったんだろ」

「まったくアイツ、すずかも心配するからさっさときなさいよね……」

「も?」

「――! とにかく! あいつは今どこにいるのよ」

「えっとぉ」

 

 猛るアリサはご機嫌斜め59度。 腕組みして髪をたなびかせること数秒のあいだはこうであった。 そう、彼が……――――

 

「よっ!」

『~~~~!?』

 

 そこに在るとも知らないで。 突然現れた悟空は眼の前の金髪ロングに手を置くと、そのまま左右に揺さぶっていく。

 

「わりぃな、モモコがコレ作ってくれててさ、出来上がんの待ってたんだ」

 

 特に理由なき撫ではすぐに終わり、彼の言っていた遅刻の理由を見て、聞いて、実感した彼女達からは既に鬱憤も緊張も消えてなくなっていた。

 

「……ぁ」

 

 小さく漏らしたのは誰の声だったか。 思わずつぶやいてしまったそれはジェットコースターの悲鳴でかき消されてしまいそうになる。 ちいさな感嘆符を作る子供たちの視線の先、そこには懐かしき戦闘衣装を身に纏う戦士が笑っていた。

 

「やっぱり、これじゃねぇとな」

「あの時の道着……」

「あぁ、これだよねやっぱり」

「そうね、これで完全にあの時の悟空と面影が重なったわ」

「服装って大事なんだねぇ」

 

 青いブーツに青いリストバンド。 そして、それらと相対するかのような明るい色……山吹。 背中に『悟』と書かれているのは悟空の要望。 以前、はやてからもらったそれと同じデザインは、そこから彼自身の変化が無いと、どこか静かに語るかのよう。

 腰の帯を両手で持ち、一気に引くと声を上げる。 ――しゃあ!! などと昂ぶる彼は、どこぞかに居た最強の合体戦士を彷彿とさせるのである。

 

「……デートですよね?」

「でーとだぞ?」

「……なんだろう、どうもニュアンスがおかしいような……?」

 

 あまりの気合の入れよう。 それに思わず丁寧語となるのは、なんとアリサであった。 その彼女を素通りする悟空は正面入り口……メインゲートへとブーツを鳴らして歩いていく。

 

「すんませーん! 大人ひとりと子供4人、おねがいしまーす!」

「はい、チケットをお預かりします……確認しました――どうぞ!」

「サンキュウ!」

『……なんか、ズカズカ行っちゃった…………』

 

 デートだよ、デートなのに……まるで子連れの父親かのような悟空――いいや、かなり適切な言葉なのだが、彼女達からしたら幼馴染的な人間が背を高くしただけの彼はいまだに不自然の塊でしかなくて。

 

「なにしてんだおめぇたち、さっさと来いよ、楽しい時間はあっちゅうまになくなっちまうんだぞ?」

『……あ、はーーい!』

 

 それでもと、先行くかれの後を追うのでした。 比喩でも表現でもある言葉通りの形で……

 

「わおーん!」

「お? ははっ、見ろなのは、でっけぇ犬がいっぞ」

「ほんとだぁ……おおきい。 こんにちは!」

「わふわふだぁ~」

「きもちぃ……」

 

 開園一番!! 悟空に追いついた子供たちは、園内の広さに目を奪われ、すぐ目の前に現れたファンシーな犬ともネコとも取れないキグルミ……もとい、キャラクターにココロを奪われる。

 

「がう!」

「なんだ? これくれんのか?」

「おん!」

「そっか、サンキュウあ……あ、あんがとな」

「がうがう~~」

「……あ、いっちゃった」

 

 悟空がイヌネコから受け取ったのは園内の地図とパンフレット。 それはこの日の目玉スポットとキャンペーンがでかでかと書かれたA3サイズの紙に二枚であった。 それを広げ、子どもたちと見る彼は小さくしゃがみ込む。

 

「さぁて、今日は何して遊ぶかな」

「悟空くん子供みたい」

「まぁな、今日くれぇはおめぇたちと初めて会ったときくれぇになってみようと思ってな……なにせ、オラからしたら10年近くはたっちまってるし」

「……そっか……うん! そうだよね!」

「今日は騒ぐぞーー」

『おーー!』

 

 一斉に飛び上がる彼らは完全に『子ども』である。 なかには8メートル近く“軽い高跳び”を敢行してしまった戦士が居るのだがそれはそれでおいておこう。 そんな彼等がまず最初に行くのは――当然。

 

「ワクワク」

「はわはわ……」

「こ、こんなもの……全然怖くないんだから」

「…………うん」

「あうう」

 

 声だけで、誰がどの配置か想像していただきたい。 先頭は悟空というのだけはあえて打ち明けるとして、それに続く焦りと恐怖の声は刻一刻と迫る落下に、テンションを明らかに不自然な方向へ引き上げていく。

 くるくると回る風景は心象を映す幻想のように艶めかしくも生々しい。 少女たちが絶賛テンパり中の時を過ごしたこと13秒の事である。

 

「――――きたああ!」

『きゃあああああああ!! 落ち――    ~~~~ッ』

 

 肺の中を圧迫される。

 

 思わず内またになる彼女達、それとは引き換えにバンザイしながら黒い髪をたなびかせる悟空の、なんと天真爛漫の事か。 景色がパラノマに広がるこのひと時はいつだってやめられない――孫悟空の真骨頂が発動した時である。

 

「いぇーい! ピースピース!!」

「~~~!!」

「おっぼぼぼ」

「むぐぐ――?!」

「きゃああああ」

 

 急降下に血流が自然の理から外れた運動を開始して、そのあとにくる真逆の運動でさらに中身をシェイクされ、螺旋を描いた進行経路で平衡感覚が瓦解する。 いささか子供には刺激的な運動も、悟空に取ってはアスレチックでしかない。

 彼は、童子のように笑いながら出発点へと帰ってくるのである。

 

「いやー、なんか自分の意思で飛べねぇのも楽しいもんだな」

「そ、そうですね……悟空くん」

「うっぷ」

「わー! フェイトちゃんの顔色がおかしいよ?!」

「ちょっとあんたしっかりしなさいよ……ほら、肩貸してあげるから」

「お、偉いなアリサ……でも、あし、震えてるぞ?」

「うるさいわよ! あんたも手伝いなさい!!」

 

 両手で口元を覆うフェイトを看護するアリサ、そんな彼女の足元をみて笑う悟空に一括入れて、それでも動かない彼の代わりに割と元気なすずかが手を貸し、お手洗いへと急行する。 その中で、残る子供と青年が一人、歳の差にしておおよそで15歳程度の彼女たちは自然、視線を交わらせていた。

 

「なのは……」

「え?」

 

 まるで二人きりになるのを待っていたかのよう……聞こえる喧騒が遠くの世界になっていく二人の間はいま、いったい何色の空間なのだろうか。 何気なく聞こえてきたブーツの音は、彼がなのはに一歩近づく音。 その、音の高鳴り方は少女の鼓動を響かせて高めていく……

 

「オラ……」

「悟空……くん」

 

 聞こえてしまうのではないか……なのはが自分の胸に手を当て、うつむきながら悟空を見上げる。 その仕草を取った彼女自身、その意味を理解しかねながらさらに鼓動を速めていく。 急転直下のこの事態、まるでメロドラマのような仕草の少女に、ついに悟空はしゃがみこみ、顔を近づけていく。 ……そして。

 

「……にぃ!」

「え?」

 

 

――――孫悟空のハラが鳴る。

 

 

「オラ腹ぁへっちまっただぁ!! ははっ!」

「――やっぱりそうですか!」

 

 すってんころりん……なのはは後頭部から崩れ落ちていく。 背後のコンクリートにヒビを作りながら埃を舞い散らせていく様は既にお約束の領域であろう。

 

「もう! そういうところまでは子供にならなくていいのに……」

「お?」

「……なんでもないですよぉーだ」

「なんなんだ?」

「……つーんだ」

 

 そんなこんなで、いつも通りで変わらない彼、その目覚ましい腹時計が知らせる飯の時間は……かなり正確であった。

 

「あ、お昼の鐘?」

「ほれ見ろ、オラが言った通りだろ?」

「そういうので怒ってるわけじゃないもん……」

「??」

「……はぁ」

 

 どこか大人がするため息はリンディを彷彿とさせるには十分で、知れがわからない悟空の方が、今日はなのはよりも子供なのかもしれない。 深い呼吸が大気に混ざる頃、用事を済ませた3人娘たちが奥の方から帰ってくる。 ……妙に清々しい表情になったフェイトを引きつれて。

 

「気分はどうだ?」

「すっきり……だよ」

「そうか、そいつはよかった! いっぺん吐いてみて正解だったみてぇだな」

「……うん」

 

 急に――表情が暗くなる。

 

 何かまだ引きずっているのか、などと顔を覗き込む悟空だが、そんな彼だからわからない女の子の心情。 うつむき、後にさがるフェイトは恥じらいを全開で見せつけていたのだ。

 

「あんたねぇ……もう」

「なんだよアリサ? なのはみてぇに変な声出しちまって」

「そりゃこんな声も出すわよ、このトウヘンボク!」

「……トウヘンボク」

「悟空のトウヘンボク」

「ヘンボク!」

「なんなんだよおめぇたち……?」

 

 それに加勢する乙女たちは、腰に手をやり明らかに『怒ってますよ』と彼を威嚇射撃、それが艦砲射撃に変わる頃であろう、唐突に壁を見上げたすずかはそれを発見する。

 

「あれ?」

「どうかしたの?」

 

 アリサの声と同時、指さすその先には数多き写真の羅列が迎えていた。 恐怖に染める者や、嬉々として頂上へ上るもの、それを通り越してしまった者、どれもが撮られるとは思っていなかった自然の表情を残す……記念写真であった。

 

「あ、さっきのジェットコースターで……」

「そうみたい、いくつかがコースのどこかに設置されてるっていう、案外お決まりなやつね」

「……でも」

「なんか」

「ん?」

 

 皆の視線が集中する写真群。 そのどれもが高速の一瞬を取り逃しなく、見事な一枚を収めているのだが……

 

「こっちは、なのはとアタシが目をつむって大声あげてた奴よね?」

「たぶん――悟空くんは“こっち”向いてVサインしてるけど」

 

 一枚、数えるなのはとアリサは思わず苦笑い。

 

「あ、これはフェイト……ちゃんと、わたしが写ってるやつだよ」

「うん、す……すずかの髪が思いっきりぶつかってきてたあれだよね? ……悟空は“こっち”向いてVサインしてるけど」

 

 二枚、並び替えたフェイトとすずかは肩を震わせる。

 

「お? これなんか全員写ってんじゃねぇか? ははっ、アリサおめぇ女の子のくせしてなんて顔してんだぁ」

「うるさいわよ!」

「フリーフォールみたいな落下の時のあれだね……悟空くんはまたまた“こっち”向いてVサインしてるけど」

「……ちょっと」

「??」

 

 三枚、気付いた異変に皆が戦慄する。 

 

「なによこれ! なんでアンタだけ全部カメラ目線なのよお!!」

「何か問題あんのか?」

「大あり……じゃないけど! でもなんで全部が全部、27枚そろいもそろっておんなじポーズなのよ!! ある意味ホラーよ! ジェットコースターの瞬間最高時速を舐めるのも大概にしなさいよ!!」

「もしかして悟空さん、設置してあったカメラ全部に気が付いたんですか?」

「え? 気づかなかったんか? ダメだぞ、もっとまわりみねぇと」

『………………うむぅ』

 

 顎に手をやり唇を尖らせる。 既に表情筋が引きつるを逸脱し始めた女の子たちは、ここで一旦常識を手放す。 こうすればラクだ、どこか無意識に行われるそれは、悟空と半月程度付かず離れない生活を送ってきた者たちの築いてきたレアスキルとでも呼ぼうか。

 名称は不明、 ……仮に付けるならば諦めに努めた現実主義者(アンロックハート)……とでも言ってあげるべきか。

 

「ん、今度はあいつか――」

「え? 悟空さん?」

 

 突然だった、急に歩き出したのは悟空だった。 彼は近くにあるポップコーン売り場に行くと、そのまま売り子……ウシのキグルミ――キャラクターに片手をあげて笑う。

 

「おっす! お疲れさん」

「モォ~~」

「お、これくれんのか? はは、すまねぇなク、食わせてもらうぞ」

「モォモ」

 

 どてっぱらがチャームポイントの牛の子は、風船と一緒にポップコーンを手渡してくる。 まるで知り合いと会話する彼はそれだけ自然体という事であろうか? 右手で子供たちの人数分の風船を受け取り、もう片方でポップコーンを掴むと、足取り軽く彼女たちのもとへ帰ってくる。

 

「おまたせ、あいつからの差し入れだってよ」

「あいつ?」

「あぁそうだぞ、これ食ってもっと遊んでくれだってさ」

「なんだ、ただの販促ね」

「アリサ、それは夢の国で言っちゃいけない言葉だと思う」

「にゃはは……」

 

 悟空の言葉の意味を深く捉えなかった時点で“彼等”の勝ち。 ポップコーンを口に運んで舌で遊ぶと喉を鳴らす。 昼飯にしては随分と甘い食事をとる彼女たちは、少しばかり行儀が悪い立ち食い状態である。

 弾けたコーンを包んでいたバターのコーティングは手を汚し、それのせいだろうか?

 

「……あ」

「お?」

 

 なのはの持っていた風船が、彼女の手から逃れていく。

 

「いっちゃった……あれ?」

「ひっかかった?」

 

 背の高い木で一休み。 小枝で引っかかった風船は、ちょうど悟空の背の1.5倍程度の所で停滞している。

 

「紐が引っかかったのかな……悟空くんとれる?」

「ん? ……んん」

「悟空?」

 

 見上げるなのはを見返す彼は、ほんのりと視線をあさってに投げる。 明日ではないそこには、セピア色に映り込む遠い昔の景色が広がって……泣き虫だった小さな子、その子を思い出してしまい――

 

「わわ! ちょっと!?」

「っこいせ」

 

思わず、なのはに向かってしゃがみ込む。

 

「おりゃ!」

「え? ぇえ?!」

 

 そして立つ! 完成した無敵の城に、皆が驚き天が鳴る!!

 

「なにしてんだ、早く取っちまえ」

「ご、ごご悟空くん! 恥ずかしい――」

「?」

「首動かさないで! へ、変なとこにあたるからぁ……うぅ」

 

 真っ赤に染まる姿はまるでリンゴのような色合い。 やんわりと微笑む彼とは対照的に過ぎるなのは、迫る緊張に噴き出す汗、思わず握った彼の髪を思うがままに引っ張ってしまう。

 

「いってて! イテェよなのは」

「そ、そんなこといったって」

「大人しくしてろって……ほら、オラがいつもやってた修行の時みたいにすんだ――」

「――できないよ!!」

「……まだまだだなぁ」

「~~っ」

 

 眉を動かしながら後頭部の少女に呆れた声を出す悟空、それに呆けるは周りの少女達、特に藍色と金の髪を持つモノたちは指を咥えて流し目にしている――あぁ、いいなぁ……と。

 

「右だな……行き過ぎだ――おいおい、なにやってんだ?」

「そ、そんなこと言ったって、こんな態勢でむりだよぉ」

「んな泣きそうな声出すなよな。 ……ほら、背伸びしてやっからこれで取れるだろ?」

「……とれた」

 

 そんな視線も気にしないのが孫悟空。 やっと取れた風船はそのままに、両手をなのはの脇の下に入れると後頭部から降ろしてやる……ちなみに本日、なのはさんのスタイルはスカートである……スカートである。

 

「それ!」

「すごいコントロール……」

「今の20メートルは離れてたよね?」

「腹ごしらえはいいみてぇだな」

「悟空は……出来るわけないよね」

「まぁな、でも、今日はいいんだ。 あとでたんまり食うさ」

「?」

 

 ポップコーンの入れ物が空になり、近場のゴミ箱にホールインワン。 そこから繰り出した悟空の言葉に、小腹をさすってうなずく彼女たちはなんと小食か。 さて、そんな彼女達はそこからさらに遊び、楽しんでいくのだが……

 

「レッツお化け屋敷!!」

「ひぃぃぃいいいやだよお!!」

「……なんだ、こいつらみんな生きてんぞ」

『はい?』

「あたまに輪がついてねぇ」

『……』

 

 悟空の体験談に二人が騒然となり。

 

「ゴー! ハンマー!」

「このゴングみたいなのをハンマーで叩いて、その反動で飛んだポインターが100点に行けばいいのね」

「それ!」

「あ、すごいよフェイトちゃん。 76点」

「――だりゃあ!!」

『……き、機械が消えた……だと……!?』

 

 悟空の正拳で遊具がスパーキングしたり。

 

「発声音量はいくらなんでしょう!!」

「なになに……このマイクに向かって叫んだ時の“デシベル”が表示されるので、飛行機のエンジン音レベルまで目指してみましょう?」

「120デシベルがそうね」

「普通の会話で60……たったの60でそんなに違うんだ」

「いくわよ……ああああああああああああ~~~~」

「98! ガード上で電車が通る音ぐらいだって」

「んじゃオラが……」

 

はぁぁぁあああああああ――――だああああああああああああああ!!

 

『じ、地震!?』

 

 人知れず災害を起こしていたり……

 

「お、だんだん日が暮れてきたな。 みろぉ、影があんなに伸びてんぞ」

「ホントだ、もう夕方なんだ」

「はやいなぁ、もう今日が終わっちゃう」

 

 気が付いたら陽が暮れようとしていた。 日没前の紅(くれない)の輝きが観覧車から零れ落ちていく。

 

「悟空さん悟空さん」

「なんだ、すずか?」

「あれ、乗ってみませんか……」

「ん? いいぞ」

 

 その中でひとり抜け駆けをする少女が、悟空の足元で裾を引っ張っていた。

 

「すずかちゃん……?」

「……え、その」

「あ……えっと」

 

 思わず引き止めてしまった……高町なのはは、ここで思わず口元に手をやる。 後悔とか、気後れとか、いろんな感情がせめぎ合い混ざり合うかのような目は、そのまま伸びた影に落ちていく。

 少しだけ居心地が悪くなる中、ため息を吐いたのはこの中で一番大人びている女の子……

 

「ほらほら、こういうのは無し! 定員は2人だって言うなら、ジャンケンでもなんでもやってさっさと決めちゃうわよ。 時間、もう無いんだから」

『あ、うん』

「??」

 

 取り持った仲は、きっと昔の自分が見たら驚く姿であっただろう。 まさか彼女たちの仲裁に回る日が来るとは。 感慨深くなる手前で引き換えし、むん! と、胸張っている彼女はどこまでも尊大であった――結果として。

 

「すずか、あんた勝負運なさすぎよ」

「でも悟空さんはフェイトちゃんと乗ることになったから……いいのかな?」

「それは知らないわよ……まったく、普段はふたりとも大人しいのに、思い立ったがなんとやらっていうか」

「……うぅ」

 

 アリサと一緒に観覧車に乗りこむことになっても。

 

 なのはとすずかが相打ちに沈み、最終決戦のじゃんけん大会でアリサに勝利してしまったフェイトが、晴れて悟空との相席の権利を得たのであった。 これはこれで問題はあるのだが、フェイトという少女の事をあまり知らないすずかはひとまずここでこの騒動に句読点を置くことに――「きゃあ!?」

 ……事件は、まだ始まってはいなかったようだ。

 

「何か今、鉄が外れたっていうか……金切り音みたいのが聞こえたわよ?!」

「い、嫌な予感が――」

 

 突然だった。 まるで落とした黒板消しを、一瞬の反射神経で持ち直したかのような動きをした滑車の中、その動きをいち早く察知したアリサは思わず上を見る。

 

「な、に……よ、あれ」

「か、か……かかか」

 

 かかか、すずかは決して笑っているわけでも、目の前に虫が飛んでいるわけでもない。 そう、今目の前で盛大に内部構造を披露なさっている観覧車のシャフト部分……いうなれば滑車の軸部分に向かって涙目になる……嗚呼、この先の展開は決まったのだと。

 

『観覧車がこわれたああああ!』

 

 少女達の叫び声は、遠い夕焼けへ翔けぬけていく。

 

「ん?」

 

 同時、孫悟空の足元で鉄くずが転がる。 このファンシーな世界に不釣り合いなそれは、見る者すべてに違和感を与える、もちろんそれは彼も例外ではない。

 

「なんだこれ……!?」

 

 その瞬間、悟空の頭上で何かの分解音が轟き叫ぶ!!

 

「お、……おぃそりゃあねぇだろ」

「悟空?」

「どうした……の……え?」

 

 一緒に見上げた少女たちは騒然、たちどころに慌てふためく。

 

「アリサ!」

「すずかちゃん!!」

 

 もう、今にも崩落しそうな観覧車がそこに在った。 シャフト部分がむき出しになり、傾き、それでも回転をやめない車輪は奇跡的なアンバランスで態勢を保っている。 潮風に吹かれただけで崩れそうなそれは、下にいるモノたちの恐怖心をあおり……

 

「――っく!」

 

 悟空を緊急出動させることに―――だが、それを止める者がいた。

 

「もぉも!」

「え?」

「ポップコーンの牛さん?」

 

 それは先ほど悟空にねぎらわれたマスコット。 彼は悟空の片手を引くと、そのまま首を左右に振る――そんな彼に苛立ち。

 

「そんなこと気にしてる場合じゃねぇだろ! あいつ等、死んじまうぞ!!」

「もうぅ」

 

 それでも、と。 どうしても彼を行かせたくないと首を縦には振らない牛。 その中で繰り上げられる機械の悲鳴と……

 

『きゃあああ!』

「こわいよぉ……」

「ふええええん」

 

中にいるであろう、彼が知らない子どもたちの嘆きの声。 それが、苦痛に変わるとき。

 

「……ちっ」

「悟空……?」

 

 悟空はおもむろに山吹色の道着を脱ぎ……

 

「フェイト、これちょっと預かっててくれ」

「え? ……ええ?」

 

 尻尾を張ったかと思うと、帯のように腰に巻きつける。 これで彼が“尻尾のある人物”とは見れなくなり、山吹色の道着を脱ぎ捨てた姿は、只の青い半そでを着た20代の男性となる。

 しかし……

 

「オラが目立っちまうのがいけねぇってんなら――」

「も!? も、もーー」

「“オレ”じゃないと思わせたらいいんだろ!!」

 

 その身に纏う色が、黄金色であることを除いて……だが。

 不意に握る右こぶしが唸りを上げると、彼の筋肉がわずかに膨張する。 広がる力場は金色の輝き、フレアとも言える漲るチカラはそのまま疾風へと成り変わる。

 悟空は、金色に成る!!

 

「でぇぇや!!」

 

 翔けぬける悟空は正に瞬間の出来事であった。 髪を染め上げた一瞬で観覧車に肉迫すると、そのままシャフトを――ぶち抜く!

 

「あ、あんのバカ、何やってんだ……気持ちはわからなくないが」

「え?」

「――もうも」

「……?」

 

 そのまま観覧車を持ち上げる彼は、壊れそうだったシャフトの代わりとなる。 重さにして数十トンのそれは、碧の目を鋭くさせた戦士にはいささか重い程度の代物。 超常現象を引き起こす彼は、次に声を高らかに警告する。

 

「おめぇら! ケガは無いな!」

「……は、はい」

「よぉし……だったらさっさとそこから消え失せろ! グズグズしてるやつはオレが叩き出してやる、それが嫌ならとっととここから逃げやがれ!!」

『は、……はい!!』

 

 まるで、クモの子散らした絵を見ているよう。 観覧車の周りから野次馬が大挙して消え失せていくところは最早ギャグである。 その風景を見下ろす被害者たちは、少なからず心に余裕を取り戻しつつあるのだろう、どこか苦笑いを浮かべていた。

 

「あ、あのひと……なんなの?」

「やってる事と言い、たぶん……間違いなく悟空の関係者なんでしょうけど……滅茶苦茶すぎるわよ」

 

 それは、もちろんアリサ達も同様である。 さて、悟空が腕を突っ込んだシャフト部分、それの回転がゆっくり行われていく中で、被害者たちを次々に地上へと返していく。 その作業時間にしておおよそ10分。 観覧車の通常運営程度の時間であったそうだ。

 

「この中にいた気は全部いなくなったな……せぇの!」

「……観覧車が」

「とんだ……」

 

 ふわり……すべての景色がスローモーションに切り替わる刹那、大観覧車は遠くの海まで飛んでいく。 何もそこまで、そう考えた者もいただろうが、今この時の彼がどういう経路で投げ飛ばすなんてたどり着いたと、聞くこともできない……いいや、したくない。 だって、それほどに今の悟空は怖い目をしていたのだから。

 

「おい、あいつ誰だよ」

「テレビ呼べテレビ」

「……人間……な訳――」

「こわいよーー!」

「ば、化け物……!」

「…………」

 

 その全貌が、その一部分が、あまりにも現実から離れ、常識から逸脱している彼はどう映ったのだろう。 地上の群集は自分勝手に憶測を広げていき、こともあろうか命の恩人の彼を罵るものまで現れる始末。 眼下に収め、悟空は何を思ったのだろう……――

 

「なんだ?」

「きえた?」

「おい、あいつどこいったんだよ」

 

 瞬間移動にて、この空から消えていくのであった――……

 

 

 

「悟空」

「…………ほぇ」

 

 周りの雑踏を、いいや、雑踏から離れるように夕焼け空をながめる魔法少女たちは、何を思い彼を見送っていたのだろう。 ぽつりとつぶやくフェイトと、なにもしゃべらないなのは、彼女たちの心境は測り兼ねるものがある。

 

「……なんだか、やな気分」

「なにがだ?」

「ほぇ」

「だって、せっかく悟空が頑張ったのにあんな……ひゃい!?」

「ん?」

「悟空?!」

「おっす」

 

 それを悟空が気に留めるかどうかという問題はさておきなのだが。 不意に背中を叩く悟空は、フェイトの背後でにししと笑う。 その後ろからひょっこり顔を出しているお嬢様Sは目が点になっている……それはもちろん、悟空の変異を目の当たりにしてしまったからであるのだが。

 

「悟空いつの間に」

「さっきな、瞬間移動使う時に、こいつらもついでに連れてきたんだ。 いやー! なんだかんだでホント便利だよなぁ」

「ほえ」

『……えっと』

 

 犯人は現場に戻ってくる。 まさにそれを実行した悟空は、背に抱えていたすずかとアリサを地面に降ろしてフェイトから道着をかっさらう。 素早く着込んで尻尾を動かし宙に垂らすころには。

 

「おいあんた」

「ん? おらか?」

「あ、……ん」

「ほえ」

 

 野次馬の一人が、悟空に向かって何かを問いただそうとして……フェイトは思わず息をのむ。

 

「いまここに変な金髪が来なかったか? こう、髪が逆立ってて」

「いんや、オラ知らねぇぞ?」

「そうか、ちくしょうどこに行ったんだ……あ、すまんな、それじゃ」

「おう、気ぃつけろよー」

 

 何事もなく過ぎ去っていく男に、皆が安堵のため息を漏らす。 手を振って見送る悟空は薄く笑うと、指さして彼を笑って尻尾を振っている。 ……あいつ、ここにいるのに馬鹿だなぁ……と。

 

「笑ってる場合なの?」

「ほぇ」

「笑ってる場合なんだ……よな?」

「……そうなんでしょうか」

「――っていうか」

 

 と、悟空が笑いで締めようかというところ、やっとアリサが事の異変を突き立てる。 友達が一人おかしな表情で、先ほどから動物みたいな声を出して突っ立っているのだと。

 

「どうすんのよアレ」

「ほえ……」

「ありゃりゃ。 昨日のフェイトみてぇにおかしくなっちまったなぁ」

「え! 昨日の?」

「おめぇおぼえて……まぁいいや。 めんどくせぇし」

「?」

「さってと、なのは! おい、なのはったら」

「あうあうあうあう~~あう?」

「鳴き声が変わったわよ」

「……まいったなぁ」

 

 肩をもってグラリと揺らすこと10往復。 アホの子から赤ん坊に階級転移(クラスチェンジ)を遂げたなのはに悟空はこめかみを掻く。 小さくこまめに数回の運動は、それだけしか困っていないという暗示だろうか。 小っちゃいツインテールを揺らしてあげると、彼はそのまま。

 

「今日はこのまま帰ぇるか」

「……あう」

「……いいなぁ」

「うらやましい……」

「あんたたち、どんだけよ」

 

 なのはを背中に抱え、長い尾を揺らしてメインゲートへ青いブーツを鳴らしていく。

 

「なんでなのはの奴こうなっちまったんだ? またオラがなんかしたんか?」

「うーん……なのはって知らなかったっけ」

「……アタシたちへの説明を先にお願いしたいんだけど」

「うん……悟空さん、さっきのはなんだったんですか?」

「あれか? ……あれはな――」

 

 夕焼け小焼けが彩る世界のおひざ元、孫悟空は普通の人間と同じく足で帰り路を進んでいく。 瞬間移動の方が早いのに……そんな卿が覚めることは言いっこなしの今日の午後、彼等彼女たちは喧噪の合間を潜り抜けていくのでした。

 もう、騒がしいのはごめんだと言い捨てるかのように。

 

 

 

 ――――そんな、彼を見つめていた者たちが居た。

 

「今回の事故は単なる施設の老朽化……最近起きてるらしい魔導師の襲撃事件とは関係なさそうね」

「えぇ……それにしてもすごいモノを見てしまったわ」

 

 その者たちは遠い彼方から悟空を見ていた。 その背に、そのでん部に悟空と同じく茶色い尾を生やしながら。

 

「リンディさんの報告通り、いいえ、あれには虚偽があると今回確信づいたわ。 ……まったく困ったお方ね」

「けど、あのヒトのそういうところは嫌いじゃないかなぁ。 なんて言っても、歴戦のつわものだし、あれくらいは当然トウゼン」

「あなたはそうやって気楽に……はぁ」

「そう怒りなさんな♪」

「……でも」

「……うん、それ以上にアイツ」

 

 人の身でありながら、人からはずれし彼女たちは花のように微笑み――わらう。 何がおかしい、何が変なのだ。 悟空という存在そのものをまるで遠くから見渡す目をした彼女たちはここで。

 

『なんなのよ、あの力』

 

 鋭くも、危うい目をするに至る。 その目に映るのは夕焼けの紅……世界の王を名乗るという技の色ではなく、最強の遺伝子が放つ生命の輝き――すなわち黄金。 彼女達は思わず歯ぎしりする、彼が『あの子』の周囲に入り込んでいたのは知っていた、でも、あれくらいならまだ対処ができたはずだと……そう軽んじてみていた。

 

「転移系……いわば瞬間移動という代物に、身体機能の増幅だけかと思いきや」

「あんな奥の手があるなんて……あらかじめこの目で見れてよかった」

「力の倍増だけじゃなくて、性格にもかなりの変化が見られたわ。 とてつもなく荒々しい感じ、おそらく一時的に凶暴性が増したんでしょうけど、厄介ね」

「……作戦変更はやむなしか」

 

 ふたを開けてみればなんてことのない、さきが完全に見えてしまった格闘技の試合だ。 完全に勝てる算段の無い状況を見せられ、気落ちしないモノはいない……だからこそ、そこからの挽回に彼女たちは大きく燃える。

 

「こうなったら力で無理矢理というのは止めましょう」

「そうね、ああいうのは大概搦め手に弱いってのが相場の筈、ならそこを突こう」

「えぇ、でもその前に」

「うん」

 

『お父さまに報告しなくちゃ』

 

 其の一言、その致命的な一言を捨て去って、そのふたりの娘は去っていく。 消える環状魔法陣、その遥か後方、紫電を纏わせた女が居ることも知らないで。

 

 

 

 

 

「……ふふ、やっと尻尾を出した」

 

 舌なめずりとはこういう事か、遥か彼方に浮かぶ魔女は、灰色の髪をなだらかに動かしながら、双眼鏡片手に髪を手で梳いていた。

 

「娘の成長記録を付けているときに、いろいろと面白いことが見れたけど……まさかあのひとの“使い”がこんなところにいるなんてねぇ…………うふふ」

 

 軽やかに、煌びやかに、踊るように魔女は嗤う。 それはまるでターレスを彷彿とさせる敵の笑い。 

 

「まったく、あの『ぼうや』もお馬鹿さんなんだから」

 

 微笑んで、ほほえんで……右頬を引きつらせるかのように傾けた彼女はただ……

 

「彼と娘の周りに手を出して――無事で済むと思わない事ね、ふふ……」

 

 微笑むだけしか、今はしないのであった。

 

 今日は、本当にやっと、ここで終わる。

 

 

 




悟空「おっす! オラ悟空」

恭也「おお!? 悟空! おまえ……あの時の!」

悟空「お、そうだぞ恭也。 ほら、おめぇとおんなじくれぇまで背が伸びたんだ、スゲェだろ」

恭也「……あ、あぁ。 しかしそっちよりも伸び縮みするのに驚くんだが」

悟空「そうか? ……そうか。 まぁ、そんなこまけぇこといいじゃねぇか。 ところでよ、なのはの様子はどうだ?」

恭也「ダメだ、帰ってきてから『金髪……金髪のおにいさん』って言ってるだけだ。 お前何かしたんだろ」

悟空「してねぇぞ。 ただ、落ちてきた観覧車をブン投げただけだ」

恭也「……じかい、魔法少女リリカルなのは~遥かなる悟空伝説~」

悟空「おい?」

恭也「第37話」

悟空「恭也?」

恭也「探 そ う ぜ! 龍を呼ぶ秘法」

悟空「……遠くの方に不思議な気を感じる……あっちだ」

リンディ「あっち? お願いだから次元世界を座標じゃなくって方向であらわさないで……」

悟空「あっちはあっちだぞ?」

リンディ「……はぁ」

悟空「なんだよため息なんかついちまって……んっじゃまたなっ!」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。