機動戦士ガンダム 0079 彼女の瞳に映るもの   作:セキエイ

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キャラクターを自然に紹介出来ない事で定評がある私ですが、とっても頑張りました(小並感

私の技量ではこうするしか無かったんです、許して下さい何でもしますから!


第二話 出会い

隊舎前で激しいアウェー感に苛まれながら待っていると、ややあってからさっきのアネモーネ中尉が三名の女性を引き連れてやって来た。

彼女らと対面し、中尉は言う。

「皆、彼女が今日からこの第二小隊に配属になったユリ伍長です。伍長、自己紹介を」

はい、と一歩前に出た。

「本日付けでこの陣地に配属となりました、機動兵科所属のユリ・レムトナリティ伍長です。

えっと、歳は16です。よろしくお願いします!」

本日三度目の自己紹介と挨拶をして最後に一礼する、何で年齢まで言っちゃったんだろう。

頭を上げると、それでは此方からも、そう言って最初に中尉が一歩前に出る。

「さっきも少し話したけど、私はこの南西第六哨戒陣地クライライン機械化混成中隊、第二MS小隊小隊長を務めるアネモーネ・アルブレヒツベルガー中尉よ。歳は20、これからよろしく頼むわ

指先にまで乱れの無い敬礼に私も返す。

中尉なのは知っていたけど、小隊長だとは。

つまりはこれからの直属の上司になるのだ、改めてビビる。

中尉が下がると今度は隣りに立つ、背の高い女性が癖っ毛を揺らしながら前に出た。

アルコール的な香りが鼻につく、何だろう?

「は〜い、これあたし達も自己紹介する流れよねぇ。

あたしもこの第二小隊所属でMSパイロットをやってます、オルテンシア・ロマニノス准尉です。歳は19歳、皆からオルシアって呼ばれてるからそう呼んでね。これからよろしくぅ〜」

何ともゆるいテンションでフリフリと手を振る。

やはりアルコール、いや完全に酒の匂いがした。

昼間から飲んでるのかこの准尉は。

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

私は手を振って返すわけにもいかず、ぎこちなく一礼した。

じゃあ次つぎぃっ!とロマニノス准尉に押される形で前に出たのは、私よりも小柄な体躯で長い白髪の少女、多分。

ぼそぼそと口元が動いて、きっと准尉に反抗してるのだろうけど彼女は聞いてない。

腰まである長髪は前髪も長く、その眼差しを伺う事が出来なかった。

「……同じく第二小隊のパイロット、アスセーナ・エルデリー…階級は軍曹、17歳」

ぺこりと頭を下げて素早く元の位置に戻る、此方が何かを口にする暇さえ与えずに。

相当シャイな性格みたい、でも歳上で階級も上なのか。

「どうだい、サバサバした隊長だの飲んだくれの煩い奴だの恥ずかしがり屋だの、僕らの部隊は中々だろ?」

次の女性は、苦笑いしながら黒髪のポニーテールを揺らす。

ロマニノス准尉、やっぱ飲んでたんですね。

「僕はマグノリア・アリエス曹長、歳は19。多分この中で一番マトモだから頼ってくれれば嬉しいかな」

深々とお辞儀した。

そのまま握手を求めて来た曹長、よろしくお願いします言って握った。

マトモそうな曹長はボクっ娘だった、貴女も大概です。

「なんだよぉマリア〜、あたしらがマトモじゃないってか〜?」

いやまあ、任務中に飲むのはマトモじゃないでしょ…、エルデリー軍曹も下を向いて何も言わないし。

所でマリアっていうのは、きっとマグノリアの愛称読みなのかな。

「隊長、そろそろ次に行きましょう?」

締めるようにアリエス曹長が中尉に言った。

「伍長、何か質問等はありますか?」

「いえ、有りません。皆仲良くてとても良い部隊ですね!」

私にとって実質初めてとなる部隊配属は、ちょっと個性的だ。

でも悪い人たちではなさそう。

かつて経験した事のある実戦は、宇宙空間での二機一組ローテーションによる警備任務だったから尚更そう感じた。

「そんな事…、次行くよ」

あ〜、照れた照れたぁ、ロマニノス准尉が囃し立てる。

アリエス曹長も止めるかと思いきや、イタズラっぽく笑っていた。

少しだけ頬を赤らめたアネモネ中尉は照れ隠しの為にか、ずんずん歩いて行いった。

私たちもそれに着いて行く、なんか随分初対面と印象が違う女性だ。

 

、、、

 

「ところで伍長、これまでのMSの

総操縦時間はどの位かしら?」

隊舎から少し離れた所にある、ファットアンクルに向かう道中。

中尉は口を開いた。

「えーと、細々した訓練を含めれば約700時間、実戦だけなら約85時間です」

「重力下、若しくは擬似重力下に於ける重力下訓練はどの位?」

うっ、口に出そうになりすんでの所で止める。

「ぎ、擬似重力下で20時間程…です」

一行の空気がどんよりと湿ったものになった。

 

、、、

 

周囲にそれらしき建築物が無かった辺りで予想はしていたが、輸送機ファットアンクルの格納庫はMSの簡易整備場になっていた。

中は薄暗く整備員の声と機材や鋼材から出る硬質な作業音、むっとするオイル臭さに満たされている。

「ド素人伍長」

格納庫に入ってすぐのMSハンガー前、目の前の機体を見上げたアネモネ中尉は、さらっと私を罵倒した。

「ちょっ、酷い!」

いや確かに重力下では素人ですけど、なんか腑に落ちない。

「うわ〜、モネたん毒舌ぅ〜」

腰に手を当てた格好に中尉に、長い身長と手足を活かして絡みつくロマニノス准尉。

そのままはむ、と耳朶を甘噛みする。

「こんな所で噛み付かないでオルシア。それと酒臭いんだけど」

ここじゃなきゃ良いのかい、いやそういう事じゃ無いんだろうけど。

中尉は表情を動かさずにロマニノス准尉をCQCで床に組み伏せると、そのまま私に目を移す。

「伍長、この目の前のMSが貴女の機体になる。よく見ておけ」

部下の腕を締め上げて、床に組み伏せながら言われてもなぁ…。

 

さてさて、私の目の前にそびえ立つMS。

それは、私が知っているどの機体にも適合するものではなかった。

頭はザクとグフのどちらともつか無いデザイン、頭頂部には鶏冠のようなセンサー。

ボディは角ばり厚ぼったく、グフを芯に装甲を増した様なビジュアル。

手足もグフ系のそれだけど、やはり角の立った形状でなんか洗練され切ってない印象を持った。

その左腕には、ザクのそれに似たシールドが付けられていた、ますます野暮ったい。

そして何より気になるのは、漆黒を基調としたカラーリングの全身だろう。

夜戦でもない限り戦場に出たら浮く事間違い無い。

「あの、この機体は何なんですか?今まで見た事無いんですけど」

 

「そいつはYMS-08A、高機動型試験機さ!」

 

答えたのは野太い男の声だった。

「おやっさん!」

「おっちゃん!」

隣のアリエス曹長とロマニノス准尉が喜色ばむ。

格納庫のコンテナの裏から、作業服に身を包んだ大柄な中年男性が現れた。

「ほう、見慣れない嬢ちゃんが一人。新隊員さんはこの娘かい、姫さま?」

中尉に歩み寄った大男は顎に手をやって、しげしげと私の顔を眺める。

いや姫さまって何か、中尉の事か?

「今日配属のユリ・レムトナリティ伍長よ、特筆すべきは重力下稼働時間20時間というド素人ぶりね」

あははは、准尉の笑いが響く。

アリエス曹長も腹を抱えていた。

「あ、アネモネ中尉ぃ、ひどいですよお!」

「済まない伍長、私は毒舌なのよ。フフフ」

口元に手を当てて含み笑う。

「くっ、はははは!姫さまも笑むたぁ中々無いぜ」

ロマニノス准尉に劣らず弾けて笑う大男、一通り笑うと私の目の前のまでやって来た。

「いやはや、笑ってゴメンなぁ伍長さん、事情は理解してるつもりだよ」

彼はうんうんと大仰に首を振った。

「多分アンタ、任務地が内定してた所で突然地上に変更になったんだろ? だから重力下稼働時間も少ない」

「は、はい。その通りです」

私は頷いた。

「四週間前に軍の兵士育成課程を終えて、月のグラナダ警戒部隊への勤務が内定した矢先に、このオデッサへの勤務地変更の辞令が来たんです」

「やっぱりなぁ」

おやっさん、なんで分かったのさ?

アリエス曹長が不思議そうに問う。

「連邦はここ最近、このオデッサ近辺に地球全土から戦力を集中してる傾向がある。それに対しお上は防衛戦力を拡充してんのさ。

伍長が突然地上に降ろされたのも、連邦戦力を恐れての兵力増強の一端なんだろう」

そういう事情があったのか。

最近連邦のMSが活躍しつつある事は何となく耳に挟んではいたが、その他にもそんな動きが有るなんて知らなかった。

「伍長以外の嬢ちゃん達は、この一週間程で何度も物資や兵員輸送機が飛び交ってるのは分かるだろ?」

「ええ、近隣やら宇宙からだいぶMSと人を連れて来ていますね。

上層部は遠くない内に大きな戦いが来る事を予想しているんでしょうね」

大男はかったるそうにガシガシと胡麻塩頭を掻いた。

「ああ来るよ、確実にね」

「水を注ぎ続けて溢れないコップは無い、か」

中尉は独白のように呟いた。

「ま、そう言う事さ」

と、大男は全体を見回してバツの悪そうに笑んだ。

「なんか新人歓迎のムードを変な空気にしちまったな。悪い悪い、へへへ」

「い、いえ…」

「レムトナリティ伍長、だったな。俺はこの第二小隊の機体整備長を務めるグレイコール・ボラスキニフ、階級は中尉だ。が、敬われるのはむず痒いからな、そいつらみたいに適当に呼んでくれや」

「よ、よろしくお願いします!」

差し出された手を取り、固く固く握手を交わす。

自分の手より何倍も大きく、ごつごつした漢の手だ。

というか

「痛い痛い痛い、痛いですよぉっ!グレコ中尉、離してっ」

万力に挟まれる感覚をこんな所で理解するとは。

はははいきなりグレコ呼びかぁ、悪かぁねえぜ、悲鳴が頂点に達すると整備長はそう言って手を離した。

 

、、、

 

「ところで話を戻すけど、この黒いのについて整備長、説明を頼めるかしら?」

「いいぜ、と言っても名前が全部を表してんだがな」

ゴツゴツと機体の爪先を拳で小突く。

ナンバーYMS-08A、高機動型試験機、見ての通りグフ系を素体にした機動性能向上試験機だ。

スペックデータによるとジャンプ力はザクの数倍、基本速度も現行機に比べりゃ速い筈だ。センサー能力もかなり強化されている。

そこまで聞いて、私は手を上げた。

「速さってどの位ですか?」

擬似重力下訓練じゃあロートル鈍足のザクⅠを使って居たから比較のアテにならない。

だから重力下での速さというものに、全く想像が及ばないのである。

「全速力でデブリ帯を横から突き抜けるよりは危険じゃない速度、と言えば分かりやすいか?」

全く分からないです。

「とにかくぅ〜、乗ってみれば良いんじゃない?」

准尉の提案、しかし

「でも、怖いです…」

確かに乗れば分かるのだが、素性の知れない試作機なんて怖過ぎる。

「だけど確かにオルシアの言う通りね」

出撃、の二の句を掻き消したのはグレコ整備長だ。

「ちょい待ち姫さま、アンタのザクとオルシア姉ちゃんのグフはまだ定期整備が済んでいないんだ。明日まで小隊出撃は出来ないぜ」

グレコ整備長の後押しにアネモネ中尉が唸った、いいぞもっとやれ。

「今日は無理か」

アネモネ中尉は床を見て嘆息すると、前に向き直った。

「明日、伍長の重力下訓練も踏まえた哨戒任務を行う。10:00までに各自支度して機体搭乗後、営地グラウンドに集合しろ」

「オッケー、モネたん中尉ぃ〜」

ゆるくロマニノス准尉が手をあげた。

「了解です」

「……了解、」

無難に続く二人。

「了解しましたっ」

私の訓練も兼ねて、というのがちょっぴり不服だ。

 




全話にて三話分のストックが有ると言いましたが、アレは嘘です。(一話分の平均字数が7000文字とかだったので分割しました)
お陰で更にプラス二話程稼げる結果に、やったね!

主人公機のYMS-08A(名無し)ですが、イフリートと混同しないようにお願いします。

作品へのご意見ご感想をお待ちしております。

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