ライザー・フェニックスは恵まれた存在である。血筋に恵まれ、家柄に恵まれ、素質に恵まれ、下僕に恵まれ、魔力に恵まれ、もちろん才能にも恵まれた。しかし、その全てが天賦へとは届かないものだった。ライザーは恵まれた存在であるが、けして天才ではなかった。
そのことを、ライザーは誰よりも知っている。
ライザーは見てきたのだ。白龍皇の恐るべき才能を、赤龍帝の怖るべき執念を、グレモリーの畏るべき血筋を、ライザーはその目で見てきたのだから。故に知っている。きっと生涯、これらに敵うことはないだろう。ライザーはそう悟っている。
だが、しかし。だからなんなのだ。確かにライザーが何をしても何を犠牲にしても超えられないだろう。白龍皇の才能を、赤龍帝の執念を、グレモリーの血筋を、ライザーが上回ることなどできやしない。
それでも、それが勝てない道理になるはずがない。
何故なら知っているからだ。ライザーと同じ才覚で、同じ血筋で、そして僅かな執念で、白龍皇より才覚に劣り、グレモリーより血筋に劣り、赤龍帝より執念に劣りながら、それでもなお上級悪魔たちの上位にいる存在を。
ライザーは己の兄を知っている。
白龍皇を、赤龍帝を、グレモリーを上回るような秀才を知っている。そして、間違いなくライザーは己の兄の領域に至る――否、それを超えるだろう。ライザーはそう確信している。ならば、今まだ兄に劣っている彼らにライザーが追いつけない道理はなく、そして追い越せない道理もない。故に、ライザーは彼らを上回ることができる。
故に、ライザーは赤龍帝に勝利できる。
「……来たか、兵藤一誠」
逃げも隠れもせぬ。そんな気持ちが表れているかのような、腕を組み、じっと相手を見据えるだけの、威風堂々とした佇まい。そこには油断の一欠片もなく、それでいて当たり前のような余裕に溢れている。
それは、まさしく王者の在り方。己こそが支配者なのだと言ってはばからぬような威圧感がそこにあった。大衆を惹きいるような貴族たりえる雰囲気が、大勢を率いるようなカリスマ溢れる空気がそこにあった。
「ああ。来たぜ。ライザーさん」
対するイッセーは腕に
それは、まさしく強者の在り方。己こそが勝者なのだと言ってはばからぬような威圧感がそこにあった。大衆を導くような英雄たりえる雰囲気が、大勢を吹き飛ばすような龍気溢れる空気がそこにあった。
「なんだ兵藤一誠。さんなんて敬称つけて下級の下僕悪魔らしいことしてんじゃねえかよ。ちょっとは礼儀が分かってきたってことか?」
くつくつ、とライザーは笑う。嗤う。
「ああ。やんなきゃいけないことが分かったし、覚えなきゃならねえこともできた。やるべきことはしっかりやんなきゃなんねえからな。これもやるべきことの一つだよ。ライザーさん」
イッセーもまた、にやりと笑う。嗤う。その答えに、ライザーはまたも笑った。そして、喜悦をたたえた、楽しそうな声で不敵に笑む。
「そうか。だが敬称だけじゃ意味はない。敬語も忘れるなよ。……まあ、今回は俺が挑戦者で、俺が誘ったリベンジマッチだからな。頭を下げるべきは俺だ。敬称なんていらねえし、無礼講で構わねえよ」
己を下の立場に置きながら、しかしその堂々たる姿はまさしく上に立つ者。決して己の感情を見せぬ悠々とした視線。不敵につり上がった口元。緊張感のない脱力した姿。白龍皇との、曹操との戦いを経験したイッセーでさえ、どこか嫌な予感がするのを拭えないほどの威圧感。それほどまでに、彼の存在は圧倒的だった。
だがしかし、今宵は彼こそが挑戦者。
勝者の貫禄を持ちながら、しかし彼こそが敗北者。
ライザーの目の前には強敵が在った。かつて圧倒的なまでに気圧された悪夢が在った。大敗を喫した相手が在った。他から見れば惜敗でも、その苦杯はあまりにも苦すぎた。
「そうか、なら俺のこともイッセーでいいぜ。無礼講なんだろ? ライザー?」
圧倒されながらも、それでもイッセーの精神は揺らがない。ライザーは間違いなく強いと認めながらも、けしてイッセーは自身を下に置かない。才能のないイッセーにとって、気後れすることは敗北と同義であるのだから。それでいて当然ながら油断もしない。僅かな油断など許される相手ではないのだから。
イッセーの目の前には強敵が在った。かつて絶望的なほどに圧倒された悪夢が在った。大敗を喫した相手が在った。他から見れば健闘でも、その苦杯はあまりにも苦すぎた。
「くく、そうだな。お言葉に甘えさせてもらおうか。イッセー」
「ああ、その呼ばれ方が一番しっくりくるんだ」
互いに互いから視線をそらさず、互いに互いから意識をそらさず。ライザーはそのままの姿勢を崩さない。腕すら解かず、威風堂々とそこに立っている。対しイッセーは拳を握り、構えるのはファイティングポーズ。その身は既に、赤い鎧を纏っている。
「準備は出来たか?」
「おう。いつでもいけるぜ」
「ならば来い!」
敗者が待ち構え、勝者が突撃する。そんな戦いが始まり――二人は、轟音と業火に包まれた。
★
「レイヴェル。ちょっといいか?」
それは、レイヴェルが人間界に行く数日前。タンニーンとの修行を終えたライザーが帰ってすぐのことだった。
「あら? どうなさいましたか? お兄様」
「いやなに。頼み事だよ。兵藤一誠に渡して欲しいものがあるんでな」
そう言って、ライザーが取り出したのは一封の封筒。その表面にはすこし歪んだ日本語で兵藤一誠と書かれている。
「これは手紙ですか?」
レイヴェルが問いかけると、ライザーはああ、と頷いた。
「本当なら俺が出向いて渡すべきなんだが、ちょっとやることがあって時間がなくてな。渡すだけでいいから頼む」
そういうライザーが、どこかイッセーに似てきた、なんてレイヴェルは思う。かつてのライザーならしないだろう。たかが下級悪魔相手に真っ直ぐに、正面から正々堂々ぶつかるなんてこと。昔ならしなかったはずだ。手紙に書かれた日本語も、おそらくわざわざ調べて、勉強して書いたのだろう。イッセーに、相手に合わせて書いている。そんな、相手への敬意がそこにはあった。
なら、この手紙はきっと果たし状だ。そして用事も、強くなるためのものだろう。本当は急ぎの用事ではないのだろうけれど、きっとライザーの中で最重要のことなのだ。
「それぐらいでしたらお安い御用ですわ。任せてください」
なんて考えを微塵も出さずに、レイヴェルはにこりと微笑む。イッセーと関わってから、彼女は幸せ続きであった。
「ああ。頼む。それともう一つ……」
★
「イッセー。お前は強い」
その身を自らの炎で焼きながら、ライザーはイッセーを強く見据える。
「予想の出来ない変則的な能力、時間ごとに倍々に強くなる神器、なによりもその心が生み出すしぶとさ。お前は格上の相手であっても、それでも勝ってきたんだろう」
ライザーは動かない。腕を組み、余裕を保ち、堂々とただ立っている。
「それは仲間を思う気持ちか、それともエロい想いなのか、どっちかなんて分からないが、しかしその全てがお前の心に起因している」
イッセーが殴りかかる。ライザーに攻撃したと思った瞬間、気づけばイッセーは大きく吹き飛ばされていた。何が起きたのか、何をされたのか、全く分からなかった。それが、何度も繰り返されている。
「故に、お前の強さにはムラがある」
心で勝つ、心で負ける。そんな言葉を体現しているのがイッセーである。その特性は赤龍帝の能力とひどく相性が良く、自分より何倍も強い相手を倒すことすら可能となる。
だが、それは安定して力を出せないということでもあった。心震える何かがなければ、イッセーは同格以下の相手にすら負けることもありえる。その凄まじいパワーで誤魔化してはいるが、イッセー自身の実力はあくまでそこそこである。
神滅具を加味しても、等身大のイッセーの実力は、等身大のライザーの実力に劣っていた。
「というかな。ふと思ったんだ。どこかブチ抜けている奴は、同じようにどっか抜けてんだよ」
ライザーの独り言は止まらない。その身を業火に包まれながら、何度もイッセーに殴られながら、何度も爆風に煽られながら、その不動の姿勢が崩れない。
「お前しかり、魔王様しかり、リアスしかり、白龍皇しかり、堕天使総督しかり、
だから、とライザーは笑う。誇らしげに笑う。
「欠けたなら補えばいい。足りないなら埋めればいい。イッセー。この技はな、俺の、そして俺たちの技なんだ」
そこで初めて、ライザーは腕組みをといた。倍々にブーストされたイッセーの拳を避けることなく、クロスカウンター気味に拳を突き出す。同時に、吹き荒れる業火。
「ぐっ!」
爆風に煽られながら、イッセーはライザーを視界から外さないよう、その業火に目を向け――
「そうだ。思わず見てしまうよな」
後方から、再度の爆発。派手な業火が辺りを覆う。花火のように轟音をまき散らしながら辺りを炎が埋め尽くしていく。
「な、んだこれっ!」
炎を消しても、既にそこにライザーはいない。音と炎が目くらましとなり、ライザーの居場所を掴ませない。
「意味がなくてもひたすらに派手な爆発は、イルとネルのアイデアだ」
爆発に紛れ、イッセーに近づき再度爆発する。それだけの行為だが、イッセーはそれを破れない。
「爆発の魔法はユーベルーナを参考にした」
時節、爆発せずにライザーはイッセーを殴る。お返しとばかりに放たれたイッセーの拳は、しかしライザーに届く前に爆発に巻き込まれた。
「相手の攻撃を見切る術はミラが知っていた」
ならばとイッセーが何千倍にも貯めに貯めた一撃は、しかしするりと躱される。
「牽制のタイミングはカーラマインから、とどめの刺し方はシーリスから、衝撃の受け流し方は雪蘭から、相手への貼り着き方はイザベラから、相手の行動の封じ方はニィとリィから、身体に魔法を充満させる方法は美南風から。もちろん他の下僕の技術もそれぞれこの技の礎となっている」
遠距離から攻撃しても、気づけばライザーはすぐそばにいた。気づけば爆炎が舞っていた。
「それらをまとめて使えるようにするために、レイヴェルにマネジメントのコツを教わった」
イッセーの身体中が悲鳴を上げる。爆風と爆炎がその身を刻む。それらを堪えて突き出した拳は、しかしライザーに届かない。
「自らが傷ついてでも相手を屠ろうという心意気は、
ライザーの拳が、イッセーを捉える。フェニックスの炎がライザーもろともイッセーを焼いていく。
「もう一度言おう。この技はな、俺たちの技なんだよ」
誇らしげに、愛おしげに、ライザーは笑った。それを見て、イッセーもまた笑う。
「それ、ただの自爆じゃねえか」
「その通り。ただの自爆さ。俺たちの技術を詰め込んだ、な」
イッセーは笑う。笑う。楽しげに笑う。自爆。そう自爆だ。いくらフェニックスとはいえ再生能力には限界がある。それをほいほいと投げ捨てるような技だ。あまりにもおかし過ぎる。けれど、もう何十も再生したはずのライザーから疲労は見えなかった。それがやせ我慢なのか、何か秘密があるのか。
しかし、そんなことはどうでもいい。イッセーは思う。ライザーは自爆という自らのリスクすら吞み込む技でもってイッセーを追い詰めている。当たり前のように、惜しげもなく何度も自らを四散させる。
爆発によってライザーは四散し、その間、攻撃はすり抜ける。よって、イッセーがどれだけの、それこそ爆発の威力すら封じ込めるような威力のものを放ったところで無駄だろう。だが、こんなアホなことを誰がするのだ。
するのだ。他ならぬイッセーが。今までしてきたのだ。
イッセーは笑う。可笑しくて笑う。そうだ。そうなのだ。イッセーだってしてきたことだ。道理の通らないことで無理を通して敵を倒してきた。無茶を突っ張って通してきた。それをライザーがしているだけなのだ。イッセーと同じである。
イッセーは笑う。自嘲するように笑う。
「出し惜しみのつもりじゃなかったんだ。消耗が激しすぎるから、まだ完全じゃないから、単純にお前相手だと相性が悪いと思ったから」
イッセーは、笑う。楽しそうに笑う。
「だけどそうじゃねえよな! 全てを出し尽くさずに何で勝てるってんだ!」
イッセーの鎧の形が変わっていく。厚く、重く、ただ硬く。堅牢の文字そのままのような形に変わっていく。
「見せてやるよライザー! 修学旅行中に
イッセーは笑う。高らかに笑う。
それを受けて、ライザーもまた笑った。
「来い! そして見せてみろイッセー!」
ライザーは恵まれた存在である。
★
家に帰ると鍵が閉まっていた。確かに鍵は閉めずに出かけたはずなんだけど。なぜ閉まっているのか。てか俺鍵持ってないんだけど。やべえ入れねえ。
いやまあ別に扉壊せば問題ないんだけど、むしろそれが問題になることが問題なのである。絶対レイヴェルに怒られる。めっちゃ怒られる。修理するなり新しくつけるなりしたらいいのに。俺を怒るなんてやめてほしい。あ、でもライザーからならいいかも。お仕置きとかでめちゃくちゃに犯してほしい。悪い子だなふひひみたいな。
しかしどうしよう。窓とか開いてたらそこから入るんだけど何故かやっぱり閉まっている。窓の鍵もかけた覚えがないのにかかっている。何故だ。泥棒か? いやでも盗むものとか特にないと思うんだけど。……あ、お金があったか。
ふむ。そっか泥棒か。なるほど。……でもなんで鍵かけてんの? もしかして中でスリルを求めて家主が帰ってくるまでセック●してるとか? ……ありえる。だって俺ライザーとそれしたいもん。いや別にスリルなくていいけど。
そっか。なら仕方ない。うん。よし壊そう。大丈夫正当な理由があればレイヴェルだって怒らないから。むしろよくやったとライザーをご褒美にくれるかもしれないし。むしろご褒美としてライザーにあげられるかもしれないし。
……ってあれ? 誰もいない。家の中に生物の気配感じなかったから気配消してるもんだと思ってたんだけど。そういうのは多分びっくりしたら解けるから扉壊したらなんか反応あると思ってたんだけどなあ。うーん。
ああ、なるほど。うん。あれだね。きっと逃げたかめっちゃ気配消すの得意な奴なんだね。逃げるにしても色々大変だろうけどやっぱり相当技量の高い泥棒だったんだね。恐ろしい恐ろしい。最近は物騒だなあ。ライザーが俺を犯さないかなあ。
「これは、どういうことですの?」
…………。
いやね? ほらあの。泥棒がね。入ったとね。思ってね。
「鍵を開けたまま無用心に外へ出て、私が鍵をかけて少し外に出ていれば扉を壊す。貴女、もしかして鍵に何か恨みでもあるんですの?」
いや、あの。その。恨みとかないです。違うんです。ただちょっと魔がさして。こう、溜まる一方の性欲をどうにか発散させようと思いまして。何かを壊すってほら、なんか気持ちいいじゃん? だから、ほら。うん。
ていうか今日来るなら来るって連絡してよ……。それならもう少しどうにか誤魔化せたかもしれないのに。そうだ。うん。連絡しなかったレイヴェルが悪いのであって俺はなにも悪くないのだ。
「……はあ。ま、いいですわ。とにかく行きますわよ」
……え? いや、え? 説教がこんなに早く終わった……? 何で? 俺の日頃の行いがいいから? まじか。さすが俺。ぱねえ。そんな俺にライザーから性交というご褒美が! やったあ!
「続きは帰ってからですわよ」
ですよねー。
連れて行かれたのはなんかの結界の中だった。そこでは、さらに結界が張られ中でライザーと主人公が戦っている。ライザーは爆発して、主人公はそれを耐えている。……なんだこれ。
しかも結構うるさい。何がうるさいって王様達がいてなんかすげえうるさい。なんなんだこれは。
「なんだ。お前らやっと来たのか」
あ。総督だ。にやにやと二人の戦い……戦い? を見ながら青いねえとか言ってる。お前のあごひげが青くなれ。というかまじでなんなんだ。ライザーが花火持って突進してんの? それを主人公がひたすら耐えるっていう遊びなの?
そんなことするぐらいなら俺にするべきことあるだろライザー! 本番とか生とか性行為とかさあ! 主人公と遊ぶくらいなら俺と遊べよ。性的な意味で。なぜ主人公を選ぶんだ。ホモか、ホモなのか。せめてバイであれ。
「しかしライザーも自爆なんて面白えことするよな。ロマン溢れててサイコーだぜ」
……は? 自爆? ライザーが?
え、ライザー馬鹿じゃねえの? 頭おかしくない? 大丈夫なの? 俺犯せるだけの知能は残ってる? ていうかありえないわ。自爆とかあれなんでそんなことやってんの? なんで嬉々として自分から死にに行ってんの? やべえライザーこええ。どうしたんだライザー。
確かに自爆はロマン溢れるけどさ、あれ所詮ロマンだけじゃん。ポケット怪物じゃノーマルタイプとかいう微妙さだし、龍クエストだとマジで使えない、ファイナル物語でもなんだかなあって感じだし、ドラゴン玉なんてベジタブル王子無駄死にじゃん。
確かに不死身のフェニックスからしたら自爆なんて問題ないし、やっぱりかっこいいからやってもいいと思うし、ロマンってやっぱ大事だと思うし……うん。うん。やっぱ俺もやりたい。ついでにヤりたい。ライザー全然正常だわ。問題なんてないわ。でも念のため俺を押し倒して動作確認してほしい。主に腰振り動作の。
いいなあ。かっこいいなあ。ロマンだなあ。あ、ロマンっていったら四十八手もロマンだよね。ライザーもロマンを求めるなら俺とベッドインして四十八手をコンプリートするのも全然ありだと思うんだ。むしろ推奨する。
でも主人公の無骨な鎧も捨てがたい。ああいうのもかっこいいよね。歴戦の英雄、みたいな感じで。背中で語るってのもいいなあ。まあ主人公には多分できないだろうけど。でも鎧かっこいいなあ。
「おいおい。ぼーっとしてないで見てやれよ」
ロマンに浸っていると総督に頭を叩かれた。仕返しに蹴ろうとしたがあっさり避けられた。禿げろ。
「ま、つまんないかもな。ライザーが自爆してイッセーが耐える。手に汗握る白熱した展開だが、ワンパターンだからな。熱中してないと面白くねえだろ」
いや。確かに面白いとは思わないけど自爆も鎧もかっこいいからいいんじゃね? つーかなんなんだ総督は。なんのようだ。殴るぞ。
「そう邪険すんなって。ちょっとお前にアドバイス……というより単なる疑問を伝えるだけだっての。変なことはしねえよ」
そんなことを言っても俺にイラマチ●をさせようとしたことは忘れない。永遠に。前科者の言うことなんて信用があるはずがない。世知辛い世の中である。
「警戒すんなって。いやほんとにふと思ったんだよ」
なんだ。
「
…………。……あっ。なるほど。あー。あー。あー。そっか。そっか。これ神器か。
あれ? でもこれ総督が作ったやつだよね? ちゃんと
よし。やり方よく分からんけどやってみよう。えっと、
……できた。割と簡単に。あっさりと。こんなに簡単にできるならもっと早くにやっとけばよかった。あーもう。まあでもいいや。とりあえず喋ろう。えーと。
ライザー。
「…………」
ライザー。
「…………」
ライザー!
「…………」
あれ? え、ちょ。え? なにこれ。どういうこと? 一言も声出ないんですけど。
「く、くくくくくくっ。まさかマジでやるとか、ほんとお前は飽きねえなあ。くくっ。最高だぜ」
なに笑ってんだクソが。こっちは最低だっての。
名付けるなら自爆天星。ライザーは王なのです。