水銀inアマッカス   作:そるのい

2 / 5
シュピーネさん強化フラグ。

注意!
シュピーネさんの渇望を捏造します。
「渇望があるなんて、シュピーネさんじゃない!」
という人は、ブラウザバック推奨。


閑話―ある男の渇望―

「ここは……?」

 

 色白で手足の長い痩躯の男――ロート・シュピーネは暗い空間で目覚めた。辺りを見渡しても、見えるのは闇ばかりで他には何もない空間。ここは何処なのか、何故自分がここにいるのか、直前の自分の行動を思い出そうとする。

 

 ――『形成(Yetzirah)

時よ止まれ―――おまえは美しい(Verweile doch, du bist so schon!) 』

 

 

 ――『怖いからといって逃げ出す者に情けはかけない』

 

「ぎぃゃぁああああ!」

 

 思い出した。思い出してしまった。格下だと確信していたツァラトゥストラに聖遺物を斬られ、肺を貫かれて殺されかけたことを。必死に逃げた先で聖餐杯猊下に踏み潰され、スワスチカの贄にされたことを。

 ――何時間、何十時間たっただろう、既に悲鳴は止まり闇の中には静寂に満ちていた。しかし彼は気力こそ尽きたものの、正気を失ってはいなかった。

 いや、彼はもともと人体実験に拷問などの倫理に欠けたマッドサイエンティスト。狂気に落ちている精神はこれ以上狂うことは有り得ない。

 ともあれ、理性を保っていた彼はとりとめもなく思考に没頭した――現状から逃げるように、現実を否定するように。

 そんな風に無駄な思考をしていると、ふと彼の頭に疑問がよぎった。

 

「私の渇望とは、一体何なのでしょう?」

 

 仮にも私は永劫破壊で形成に至った身です。渇望が無いということはあり得ません。そして渇望が有ったのならば、自分の今までの行動にもその影響があったはずです。自分の行動を思い返してみましょう。

 

 自分よりも格下の相手を殺すのに楽しさを感じた。

 総統閣下の降臨によって今の自由な生活が壊れるのを恐れた。

 ツァラトゥストラに殺されかけた時、死を恐れて逃げたした。

 

 とりあえず、最後のことは当たり前のことですから別に外しても構わないでしょう。誰かに殺されるというのはその人間に敗北するということなのですから。

 

 ………あぁ、なるほど。これが私の渇望ですか。

 ――負けたくない。

 負けたくないが故に敗北の可能性がない弱者としか戦わず、負けたくないが故に私を負かせる強者が怖かった。ツァラツストラから逃げたのは敗北を認めたく無かったから。

 私の渇望は理解しました。ならば今は、このスワスチカの中で静かに時を待ちましょう。この身は既にあの恐ろしき総統閣下の一部なのだから。あのお方が全力を持って戦うとき――決戦の時を待ち続けよう。

 あぁ、私はツァラツストラに負けた。だからこそ、この敗北という汚名はそそがねばならない。

 決戦の舞台にて閣下の爪牙として、総統閣下に勝利を捧ぐことで私が負けないことを証明する。

 

「さぁ、彼らに見せ付けてあげましょう。純然たる実力差というものを」

 

 ――正史ではしがない敵でしか無かった人間は自分の渇望に気付き、戦う覚悟を決めた。

 

 ――決戦の時はもうすぐだ




最終決戦について考えていたらシュピーネさんが暴れだしたので、強化フラグを作るはめになりました。

筆者は現在PCが使用できませんので、シュピーネさんの渇望以外でおかしなところがあったら指摘をお願いします。

原作確認のためにCS版を購入したいのですが、金欠なので次回の更新は予告どおり来月になるはず。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。