Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
ちゅん……ちゅんちゅん…………
「ん……アリサ……?」
「あ、起きましたか」
よかったです。他の誰かが先に起きていたらシャルとの、じょ、情事の痕跡を隠すことが難しかったですからね。
照れてませんよ!?
「って、アリサ!? 下着姿で出歩いてたの!?」
「え? あぁ、織斑君に会わなければいいだけですからね。あと証拠隠滅できていないので大きな声は……」
「あぅ」
それに……織斑君は今日どうやって鈴ちゃんに告白しようかと悶々と夜を過ごしたはずなので寝過ごしているはずです。
私の推理に間違いはありません。
「あ、確かに……ってそうじゃなくて!」
「ひぅ!?」
だから大きな声出しちゃダメですって!
私はもうお風呂に入ってきましたけどシャルはまだ……その、えと……てかてかというか、かぴかぴというか……その、いろいろ付いてるままなんですから!
それにお布団も取り替えないとそこはかとなく淫らな臭いが……
「え? ……って、どうして僕裸なの!? それになんかムズムズ……」
えと……その、私が獣性を発揮してしまったといいますか、シャルが可愛らしすぎたというか……つまり邪魔なものは全て剥ぎ取りました。
ムズムズは……余韻かもしれません。
一眠りはしましたが四時間しか経っていませんし。
「も、もしかして……」
「どうかしましたか?」
「あれ、夢じゃ…ない?」
恐る恐るという態度で布団に座り込んでいるシャルが上目遣いで聞いてきました。
頬が紅いことを自覚はあるみたいですが……嬉しさというより恥ずかしさと不安が見てとれますね。
はてさて、どういうのが正解なのでしょう。
……とはいっても、
「昨日のシャルは可愛くて……私も気持ちよかったですし、なにより嬉しかったです。一つになれて……」
「ひゃ、あ……ぅ……なぁ……」
「叫ぶなら私たちの部屋のお風呂でどうぞ」
しゅばっ、しゅばば……だだだだだ!
おー、速いですね。
五秒でシーツを体に巻いて走り去りました。
さて、私はこっちを片付けますかね。
「それにしても……我ながら昨夜はずいぶんとお盛んだったようですね」
シーツの染みの大きさが並みではありません。いえ、昨日が初めてなので普通どれくらいなのかが分かりませんが……私も女の子なのでいろいろと持て余すこともありますし、その時のものと比べてみても……それに一松さんと二木さんの事後の布団も見たことありますからやはり大洪水だったようです。
それに……アレの臭いだけではなくて、ちょっと鼻にくる臭いも……?
「……あぁ! そっか……シャルは一応お酒を飲んでいましたからね。その上であんなことをしたら……」
なるほどなるほど。
さて、時間に余裕があるわけではないのでぱぱっといきますか。とりあえずシーツはリネン室へ、敷布団は……致命的なほどの臭いはついていないのでいざとなったら私たちの部屋で天日干ししておきましょう。
消臭剤もありますし多分このまま平気でしょうけど。
バレてもシャルは恥かしいでしょうが私は開き直りますし。
「よし……これで終わりですね」
「ふぁ……? ありさぁ?」
「あ、鈴ちゃんおはようございます」
隣でごそごそしすぎましたかね?
「って、アリサなんで下着だけなのよ!?」
「いや、シャルにも言いましたけど女の子だけなんですから、」
「そうじゃなくて傷痕は!?」
え?
あー……そっちでしたか。
思った以上に私の周りの方々はこの傷のことを気にしてくれていたんですね。
「でも、もう平気です」
「え?」
「この傷のこと、気にならなくなりました」
「…………そう。よかったじゃない」
深くは聞かないんですね。
まぁ……ぱっと言ってしまえることでもないので助かりました……
太腿と脇腹の傷は元からあまり気にしていなかったのですが……火傷が気にならなくなったのは多分シャルと身体を重ねたからですから。
自分の裸に自信が持てたというんですかね?
とにかく詳しく話せと言われてしまったら昨日の行為をこと細かく……聞いているだけで濡れてしまうくらいリアルに聞かせてしまいそうですから……本当は誰かに話したいくらい嬉しいんですから。
……日本に帰ったら三好さんあたりに聞いてもらいましょう。三好さんは聞き上手さんですからね。ああいうお姉さん欲しいです。
「ま、気にしないならしないで早く服着なさいよ。湯冷めするわよ?」
「あ、そうですねー。あっついの入ってたので少し涼みたくて」
まぁ適当なTシャツと短パンでいいですね。今日はラウラさんを連れて慰めるついでにドイツ観光ですし。
……三日目でようやく観光だなんて、本当に忙しい旅行でしたね。
「アリサのお風呂、暑すぎて絶対に体に悪いわ」
そうですかね?
四十八度くらいなんですけどねぇ……でもシャルも苦手かもしれないので今度から四十二度くらいにしましょうかね。
バスタブの中でもイチャイチャしてみたいですしね。
「うん、今度からぬるま湯にします」
「下心感じられるとかアリサのぬるま湯でも十分熱いとかそういうツッコミは置いといて……今日ドイツ観光でしょ? なに着てけばいいと思う?」
「え?」
あ、そりゃそうですね。
織斑君が今日鈴ちゃんをデートに誘うことは私しか知りませんからね。
実は昨日の夜、ラウラさんをフってしまったことを気にしている織斑君を叱るついでに相談にのってあげたんです。
その中で今日鈴ちゃんとデートしなさいと約束もさせましたね。
……夏ってやっぱり恋の季節なんですねぇ。
「そうですね……可能な限り鈴ちゃんらしく、それでいてお洒落に……妥協はしない方がいいです」
「え?」
……まぁ、いきなりこんなこと言われたらそういう顔しますよね。豆鉄砲を撃たれた鳩みたいな顔です。
ですが当然、今日織斑君に告白されますよ、なんてことは言えませんし……これ以上はやりようがないですよね。
「とりあえずメイクは私に任せてください。今までで一番可愛くしてあげます」
「そう……? なんかよく分からないけど、それならあとでお願いね?」
「はい、大船に乗ったつもりでいてください」
そうですね……化粧道具は全部持ってきているはずなので三好さん直伝のメイクテクで織斑君もイチコロです。
髪の毛に少しパールラメを使ってもいいかもですね……それに鈴ちゃんには髪をおろすという最終兵器もありますし。
もともとくせっ毛気味の鈴ちゃんですが長年同じ髪型を続けている影響で髪を解くとゆるふわカールみたいになるんですよね。
あの鈴ちゃんはもう最っっぅ高にキュートなので世の男性の八割が見惚れるに違いありません!
残り二割は貧乳アンチです。死ねばいい。
「さ、準備始めますよ」
「え? まだ朝御飯も食べてないじゃない」
「善は急げですよ」
いつ、織斑君が覚悟を決めるかも分かりませんからね。
織斑君にも言いましたがやりすぎて困ることはないのですから。
◇
朝食を食べた後、部屋に戻ろうとしたら一夏に呼び止められた。
「鈴……今日一日付き合ってくれよ」
「ふぇっ!?」
な、ななななに!?
一夏から誘ってくるなんてどういう風の吹きまわし!?
こ、こんなことが起きるなんて……帰りの飛行機が落ちるかもしれないわ。
…………じゃなくて!
えと、どうしよう……今日は皆でドイツを見て回る予定なんだけど一夏の誘いも断りたくないし……
それに、昨日はラウラが誘われてフられたから……今日は私なのかもしれない。一夏なりにケジメをつけるつもりなのかな……?
それなら……
「今日は皆と……」
「いや、来てくれ」
「そ、そんな……」
いつもの私らしくない。
まるで蛇に睨まれたカエルみたいに一夏に怯えてる。今までこんなに押しが強かったことなんてなかったのに……
もう……誤魔化せないのかな。
「わ、分かった……うん、いいわよ」
「よかった……」
よ、よかったってどういうことよ……そんなに私との関係をはっきりさせたいわけ?
一昨日だって頑張ってアタックしたのに全然気にしてないみたいだし……やっぱり幼馴染以上だと思ってもらえないのかな。
私は……一夏のことを一度も幼馴染だって思ったことはないのに。
ずっと、好きだったんだからね。
「よし、じゃ、早速行こう」
「え? ちょ、だってまだ皆に一緒に行けなくなったって言って、」
「だって出掛ける準備できてるだろ?」
や、確かにもう出掛けられるけど!
ついでに言えばこれだけ本気なのに一言もないのかとか言いたいことはたくさんあるけど!
「大丈夫。なんとかなる」
「な……」
なんなのよ!
今日の一夏はどこかおかしいわ!
今までも……ピンチの時はかっこよかったけど普段はダメダメで……こんなに積極的じゃないのにどうして今日は自信満々なのよ。
「ほら、行くぞ!」
「あ、ちょっと……て、手を掴むな!」
……期待しちゃうじゃない。
一夏は何気なくこういうことするって知ってるけど、それでも好きな人に手を握られたらドキドキするの。
こればっかりは好きなんだからどうしようもないわ。
……でも、明日からはもう握ってもらえなくなるかもね。
流石にフった相手を動揺させるようなことは一夏でもしないだろうし……多分、私が一夏から距離をとるから。
一夏の隣に誰が立っているのかは分からない……分からないけど、もし私が一夏の近くにいたら嫉妬して、邪魔して……凄く嫌な子になると思う。
多分、そうなったらアリサが止めようとしてくれるだろうけど……私は止まらないわね。それどころかアリサには私の気持ちが分からないって逆ギレしそう。
……一夏のことを素直に祝福することはできそうにないわね。
やっぱり一夏とは距離を置くのが正解。だいたい学園に来たのも一夏が通っているを知ったからだし……あんまり辛いようだったら転校しちゃおうかな。
「でも、一夏は誰を選ぶのかな……」
「ん?」
「あ、いや、なんでもない! ……ってどこよここ?」
「いや、どこって基地を出たとこだよ。タクシーもすぐ来るってさ」
考え事に没頭しててどこをどう歩いたのかすら思い出せないわ。
でも独り言が一夏に聞こえなくてよかった……ぽろっと言わないように気を付けないとね。
誰が一夏の隣にいられるんだろう。
まぁ、箒が一番有力よね。付き合いは一番長いはずだし同じ日本人だし……なにより胸でかいし。
私とラウラがダメってことは貧乳に興味ないってことでしょ?
私だって好きで小さいんじゃないっての……
「鈴? 乗るぞ?」
「え? う、うん!」
もうタクシー来ちゃった。
一夏がドアを開けてくれたから先に入る。どこ行くんだろう?
一夏もドイツに詳しいとは思えないけど……か、帰ってこれるわよね?
少し不安に思っていたら一夏がタクシーの運転手にメモを見せた。
どうも行き先が書いてあったみたいで運転手のおじさんがニヤリとしたあと親指を立てた。
え、なに今の?
どこに行くって言ったらサムズアップされるのよ……?
「ねぇ一夏、どこいくのよ?」
「あー……まぁ、ついてからのお楽しみだ」
この男は……フられるのに楽しみにできるわけないじゃない。そうやって微妙な言い回しをするから誤解される……というかジゴロになるのよ。
よし決めた!
今日は一夏が何を言っても期待しない!
……ん?
待って……私、どうやって帰ればいいのか分からない……そうなると一夏にフられた後も一夏と一緒にいなきゃいけないってこと!?
……どういう拷問なのよ。
いざとなったら罰則覚悟で甲龍で基地まで飛んで帰るしかないかも。
「明日帰るのか……」
「え?」
「いや、なんか三日間なのにやけに長く感じなかったか?」
「まぁ、そうね」
テロに巻き込まれるわアリサ達が付き合うわ……かと思えば別れるとか……しかもこれから一夏にフられるんでしょ?
もう一生忘れられないドイツ旅行になりそうね。踏んだり蹴ったりだったわ。
「鈴は直接中国に帰るのか?」
「ん……どうだろ」
一夏にフられることを考えると……日本にいるのは辛いからやっぱり直接中国なのかな。
でもそしたら辛くて学園に戻ってこれなさそう。
「ラウラは残るみたいだし不破さんとシャルロットもフランスに行くってさ。この分だとセシリアも直接イギリスに帰るんじゃないかな?」
「そっか……なら私も中国かな」
「そうなると帰りは俺と箒だけか……果てしなく不安だ……」
まぁ、来るときのアレを思い出せば……ねぇ。
……でも箒と二人きりになりたくないってことは好きなのは箒じゃないの?
ということはセシリア!?
……うわ、意外だわ。
でも、やっぱり胸なのね。
「そんなに嫌ならさ」
「うん?」
「い、一緒に中国に来る? ……箒は置いてさ」
…………って、私はなに言ってるのよ!
こんなのダメに決まってるじゃない!
「あー、いや、それは難しいな。千冬姉に言わなきゃいけないこともあるし」
「千冬さんに……?」
も、もしかして一夏の本命って千冬さん!?
この三日間が長く感じたのもいろいろあったからじゃなくて千冬さんに会えなかったから!?
……そっか、一夏はやっぱり年上好きのシスコンだったのね。
ラウラがフられたのに妙にスッキリした顔してたのも納得できたわ。
千冬さん相手じゃ白旗あげるしかないもん。
やっぱり胸大きいし。
「お、着いたみたいだ」
「え? なにここ?」
川沿いの公園みたいだけど……誰もいないし。
「Glück junge! 」
「Dankes! 鈴、行こう」
ダンケ……ってありがとうって意味よね?
運転手の人、何て言ってたのかしら?
一夏もなんだか機嫌良さそうだし……ってちょっと待って!
一夏ってドイツ語わかるの!?
「一夏、ドイツ語なんてなんで喋れんのよ?」
「え? あぁ……ラウラが役に立つからって翻訳プログラムくれたんだよ。って言っても話すのは自前じゃないといけないからお礼くらいしか言えないけどな……ま、そんなことよりこっち来いよ」
そ、そんなものあるなら最初から渡しなさいよね!
……とりあえず河に面してるデッキに向かう。テーブルとかも老いてあってちょっとしたピクニックでも出来そうね。その割には人が少ないのが気になるけど……
「それで?」
「な、なんだよ?」
「いや、話したいことでもあったんじゃないの?」
善は急げ、なんていうけどよくないことこそ早く終わらせちゃいたいわ。
……これだけ準備ができちゃえば意外と泣いたりすることもないかもね。
「あー……その、だな……」
「はっきりしなさいよ……ラウラにだって言えたんでしょ?」
「いや、あれとは事情が違うというか……」
ラウラよりもフりにくいって……少しは、ラウラより近いところに私を感じてくれてるってこと?
でもどうせフられるんだから……そういうの嬉しくない。
「フるなら早くフりなさいよ……」
「へ?」
「なに驚いてるのよ……昨日はラウラだったんだからこんな風に連れ出されればわかるわよ」
「や、いや、鈴誤解だ」
なにが誤解なのよ……まったく最後の最後で幻滅させないでほしいわ。
「それで? 本命は誰なの? 箒? セシリア? まさか本当に千冬さんじゃ、」
「鈴だ」
「リンダ? うちのクラスの?」
ちょっと……さすがにそんなの聞いてないわよ?
「いや、だから鈴だって! 凰鈴音!」
「はぁ?」
ファン・リンインって中国人?
どこか聞いたような名前だけど……凰鈴音!?
は?
え、ちょっとタンマ! 時間ちょうだい!
私!?
「私なの!?」
「おう」
「なに堂々としてんのよ!」
「お?」
「お? じゃない! はぁ~!? あー、もうなんだこれ、なんなのよ!」
意味わかんない!
なんなのこの男!?
「り、鈴?」
「なに心配そうな顔してんのよ! バッカじゃないの!? なんで夢にまで見たあんたからの告白がこんなムードもへったくれもないのよ! 意味わかんない!」
なにが意味わかんないってこんなひっどい告白でも舞い上がってる自分が一番意味わかんない!
「いや、本当は頑張ろうと思ってたんだけど鈴が誤解してたから仕方ねぇと腹くくって……」
「そこで上手く誘導するのが大事なんでしょ!? なにも言わないで抱きしめたりとか!」
「いや、そんなことしたら変態とか言いそうだし……」
「言わないわよ!」
……多分。
いや、絶対言わない……殴るけど。
「やりなおして……」
「え?」
「最初からやりなおし! 早く抱き締めなさいよ!」
「お、おう……」
告白くらいちゃんとしてよね……待ちに待った告白があんなじゃがっかりよ。
……一夏の腕が私の腰に回される。
ずっと……何回もこうやって抱き締められるところを想像してたのに心臓が破裂しそうなくらい
怖くなってきた……
これで好きだなんて囁かれたらきっと爆発しちゃう……
「鈴……」
「なによ……?」
「……愛してる。一生、俺の隣にいてくれ」
~~~~~~~っっ!?
「鈴?」
「いちかぁ……」
「おう」
「しんぞう、とまったじゃない……」
ほ、ほんとなんだからね!
ずっとドキドキしてたのがいきなりキュってして……本当に死んじゃうかと思った。
愛してるって……一生俺の隣にいてくれ、だって……
「それで……返事は?」
ば、バカじゃないの……分かってるくせに……
「いいよ……でも、約束して?」
「何を?」
「絶対、
「おう、任せろ。絶対に幸せにしてやる」
バカ……一夏ってば私を殺す気?
……それに、今以上の幸せなんて心がパンクしちゃうわ。
…………というかいつまで抱き締めてるのよ!
誰かが来たら見られちゃうじゃない!
「そ、そろそろ離して……」
「さっき離さないでって言ったばっかだぞ? それに見せつけてやろうぜ」
「ば、ばか……へんたい」
「はは、やっぱり言った」
~~~~~~~~っっ!
ムカつく!
ムカつくのにやっぱり離してほしくないし、私のばか!
こんなに嬉しくなっちゃったら本当にバカになりそうだわ。
…………アリサとシャルロットみたいに。
うん、少しは自重しないとね。
そんなことを思った途端、一夏が手を話した。
離さないって言ったのに……
「おい、鈴、見ろよ」
「え?」
一夏に言われて川の方を見る。
「わぁ……」
ちょうど朝の日差しが対岸の町並みを越えて水面に反射してた。
光はキラキラ反射して私達まで届く。
「綺麗……」
宝石みたい……
「鈴も綺麗だぞ。髪がキラキラしてて、な。ここに来ること知ってたのか?」
「え? 知らなかったわよ?」
……って鈴も綺麗だぞってなによ!?
あんまりさりげなく言うから普通に受け取っちゃったじゃない!
でも綺麗って言ってもらえたのはアリサのおかげね。少なめだったパールラメもなんだかんだで効果が出たみたいだし……
「不破さんのおかげだな……」
「なんで?」
というか告白した直後に他の女の名前出すなんて……こういうところはいつもの一夏なんだから。
「この場所、不破さんが調べてきてくれたんだよ。知る人ぞ知る告白スポットだとか。タクシーのおっちゃんにも頑張れって言われたしな」
「そ、そうなんだ……」
化粧のことといい……もしかしてアリサは全部知ってたの!?
なによ……それなら先に教えておいてくれたって……なんて言ってもアリサは“それは野暮ってものです”なんて言いそうね。
それに前もって言われてたらこの感動もなかっただろうし……相変わらず人のことにまで気を回すんだから……
「じゃ、デート行こうぜ」
「へ?」
「ディナーのレストランまで予約済みだ。ここまでは不破さんだけどこっからは全部俺が考えたから」
「……し、仕方ないわね」
自分でもちゃんと考えてくれるなんて……あんまり私のことを喜ばせないでよね。
「つ、つまらなかったら承知しないんだからね!」
「素直じゃないな……」
照れ隠しくらいいいでしょ!
「だいたい二人でいればただの公園だって楽しいだろ?」
「ば……ばかっ!」