Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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「人生楽ありゃ苦もあるさ」


84. Une montagne et la vallée de la vie

 どうして……この男を好きになってしまったのか。

 デリカシーがなく情けない……世間一般の女の好みからはかけ離れているだろう男のことを……

 

「なぁ、一夏……」

「ん? どうした、ラウラ」

 

 私よりも強かったからか?

 だが、私が一夏に敵わないと思ったのはあの大会のときだけだ。それもとどめが一夏だっただけで私が受けたダメージの大半はアリサによるものだ。

 あの、夢のような現実感のない空間で私のことを守ってくれると言ったからか?

 でも、私だけをではない。

 アリサのようにシャルロットのためなら全てを敵に回す覚悟があるとも思えない

 私が人工的に産み出されたと知っても態度を変えなかったから?

 それだってアリサも同じだ。むしろ自分自身のことを真っ当ではないと悩んでいるアリサの方が共感できる。

 ……だから、私と同じ試験管から生まれたエリーはアリサを思慕しているのだろう。隠しているようだが私には分かる。

 いや、シュヴァルツェ・ハーゼの仲間が見ていれば全員が確信しただろう。もっとも、その大半はあのランチパーティのお膳立てのために駆け回っていたのだが。

 

「いや、その……私を連れ出した理由はなんだ……?」

 

 パーティーが終わりアリサとシャルロットの復縁を確認した直後、一夏に誘われて外出している。

 今は眼帯も外し、前にシャルロットが見立ててくれた黒を基調としたワンピースを着ている。

 隣を歩く一夏に恥をかかせないためになるべく年相応の少女らしく見えるように意識した。

 これで手を繋げば事実はともかく回りから見れば恋人同士に見えないこともないだろう。

 

「まぁ、話があってな……」

 

 頭を掻くという少し困ったような仕草すら愛おしい。

 本当に、どうしてここまで入れ込んでしまったのか分からない。

 だが……

 

「分かっている……私じゃ、ないんだろ?」

「……すまん」

 

 一夏は、私を選ばない。

 私に魅力が足りなかったから。一夏がどこか遠慮してしまうから。私自身、純粋な人間ではないということで壁を作り出しているから。

 理由は沢山ありそうで……でも、本当は一つだけなのだろう。

 私よりも向こうのことが好きだったから……ただそれだけのことだ。

 たかが数年の違い、しかも間の空白の時期を考えると実質的な遅れは一年分もないだろう。

 私としても努力していたつもりだったが……敵わなかったな。

 

「謝るな……気持ちに応えてほしくて惚れたわけじゃないんだからな」

「…………」

 

 そういえばみんなに言わせれば私は“かっこいい”という形容が当てはまるのだとか。

 そう考えてみるとこの結果も順当なのかもしれない。別に自分の淡白な性格を呪ったりはしないが……ただ、少しは女の子らしくしてもよかったのかもしれない。

 せめて、最後くらいは、な。

 

「一夏」

「……?」

「私は……それでも一夏のことが好きだから、乗り換えたくなったらいつでもいいよ……?」

「ら、ラウラ……?」

 

 ……こ、これはダメだ!

 どれくらいダメかというと一夏の声が裏返るくらいダメだ!

 

「い、いつまでもアホみたいな顔をするな! 目的は達したんだからさっさと帰れ!」

 

 は、恥ずかしかったな今のは……やはり私は普段通りの私でいよう。

 女の子らしく、というのは憧れるが今すぐそうなるには私の覚悟が足りないな。さっきみたいな甘い声を年柄年中出しているなんて……我ながら怖気が走るな。

 ああいうのは……アリサとかがやるのが相応だろう。いや、もちろんバカにする気はないんだがな。

 

「……じゃあラウラ、帰ろう」

「先に帰っててくれ」

「でも暗くなるぞ? やることがあるなら付き合うけど……」

「一夏……」

 

 つい声がかすれる。

 もちろん感動してるわけではない。普通フった女と一緒に帰るか?

 そっとしておこうとかそういう気遣いはないのか?

 ……本当にどうしてこんなにデリカシーのない男に惚れてしまったのか。

 惚れたことにもフられたことにも腹がたつ……!

 

「いいから先に帰ってろ!」

「お、おう……気を付けろよ?」

「余計なお世話だ! 全くお前というやつは……」

 

 恐る恐ると離れていく一夏に向けて呟く。

 フった相手に怯えるなんてどこまで無神経な男なんだ……少し前の私なら問答無用で殴り倒しているぞ。

 それにフるならわざわざ外まで出掛けなくてもいいじゃないか……途中までは、本当にデートだと思ったんだからな……

 上の空の一夏を見て、ああこれは違うなと気付かされたが……

 

「まったく……もう少し上手くやってほしいものだな……」

 

 泣いていいのか笑えばいいのか……分からなくなるじゃないか……

 

 ◇

 

「もう……皆、好き勝手に寝ちゃうんですから!」

 

 エリーさんはいいとして……皆さんお酒なんか飲むからこうして倒れちゃうんです!

 私は飲んでませんよ?

 前にブライダルショップでやらかしてから生涯禁酒を誓いましたからね。

 あ、あんなに乱れてしまうなんて知らなかったんですよ……思い出しただけで穴に埋まりたくなります。

 

「そう言いながら布団を敷いてあげる優しいアリサが好きだよ?」

「あの、シャル? ……あ、あんまりストレートに言わないでくださいよ……」

 

 さらっと言われると恥ずかしいじゃないですか……それにお布団を敷いてあげようって言い出したのはシャルですよ?

 私は上から毛布をかけてあげればいいと思ってたんですから。

 私とシャル以外は全滅です。

 途中でデートから戻ってきたラウラさんも怒濤の勢いでボトルを開けていった結果、既に夢の世界へと旅立っています。

 

「ラウラ、フられちゃったってね……」

「とりあえずクラリッサさんとの賭けは私の勝ちですね」

「こら」

 

 ぽふっと頭に手を乗せられました。そのままシャルはグリグリと手を動かします。

 ……あの、叱られてるんじゃなくて撫でられてる気しかしないのですが。

 でもクラリッサさんには何を頼みましょうかね……賭けは賭けですから多目に見たりはしません。

 

「アリサ、悪いこと考えてる」

「なんのことです?」

「……僕のために嫌なことはしないでね?」

「え?」

「アリサ、本当に僕とデュノアのためにいろいろやってるみたいだから……」

 

 そんなに沢山のことはしてませんよ?

 確かに行動原理はそれですけど……まだ、それほど多くのことをやれていません。

 それに今回は……

 

「シャルのためじゃなくて……可愛い妹のためにですね……」

 

 唯一、お酒を飲まずにぐっすりと眠っているエリーちゃんを優しく撫でます。

 無意識なんでしょうがむずがる姿も可愛いですねー……本当の妹にしちゃいたいくらいです。

 

「むむむ……アリサ、私とエリーちゃん、どっちが大事……?」

「シャルですよ? 二人が溺れていてどちらかしか助けられないなら百回中百回シャルを助けます」

「……即答されてもなんだか嫌だね」

「ですが私の頑張りによって両方助けられるなら絶対に両方助けます」

「もう……本当に好き合ってるのか不安になるなぁ。そういうところがアリサらしいんだけどさ」

 

 両方助けてしまうところがですか……?

 確かに昼メロを見ていると誰にとってもいい人はかえって恋人を不安にさせて泥沼になったりしていますけど……

 

「シャルは私の愛情を感じてくれていると信じてますから!」

「あぅ……それはそれで重い信頼だね……」

「私は重い女だって言ったじゃないですか。それとも……シャルは私の愛情を疑いますか?」

 

 じっとシャルの瞳を見つめていたら……シャルが目を逸らしました。

 えへ、困らせちゃいましたね。わざとです。

 好きな人のことはどうしても困らせたくなっちゃいます。特にシャルは犬っぽいというか……そのあたりの感情の動きが分かりやすいので。

 

「でもアリサが僕からの愛情を疑ったから今朝みたいなことになったんだよね?」

「女の子はいつだって恋に不安なんですよ~」

「ぼ、僕だって女なのに……」

「シャルは私の王子様ですから」

 

 そう微笑み混じりシャルに言うと……あれ? 拗ねられちゃいました。

 でも、やっぱりシャルは王子様ですよ。

 内気で自信もなくて、そのうえ人が苦手だった私を変えたのは紛れもなくシャルですから。

 あの晩にシャルと出会っていなければ……私は今もあの時のままです。私が人と積極的に話すようになったのはシャルを守るためでしたら。

 

「僕だってお姫様とかがいいのにな……」

「その場合は私が騎士ですね」

「え?」

「最近の私たちはそう言われてますよ?」

「な、なんで……?」

 

 なんでと言われましても……私がシャルのことを守ろうとしているのは周知の事実だったらしく、何度か身を挺して守っていますしね。

 それに夏休みに入ってから私とシャルはほぼ毎日一緒にいましたから。

 さすがに恋愛関係と思っていた人は少ないでしょうが、それでも仲のいい私とシャルのことをお姫様と騎士と呼んでいるそうです。

 

「……でも、アリサが怪我するのも嫌だな……」

「この太腿の傷は姫から賜った聖なる傷跡、この脇腹の傷は姫を守った誉れ……姫が気にすることはないのですよ……という感じでしょうか?」

「ど、ドキッとしたよ……うん、お姫様とナイトってのもいいかもね」

 

 それはなによりです。

 さて、早くお布団を敷いちゃいましょう。

 

「あ、シャル、私のお布団はいりませんよ?」

「え? なんで?」

 

 なんでって、そりゃ……

 

「シャルと同じお布団で寝たいからに決まってるじゃないですか」

 

 まぁ、冗談ですけどね?

 シャルも恥ずかしがり屋さんですし、お互いに一歩ずつゆっくりいかないとですよね?

 

「そっか……恋人だもんね」

「ふえっ!?」

 

 い、いいんですか!?

 その恋人が同衾するということはつまりえーとそのあの裸と裸のお付き合いと言いますか人の奥底に秘められた獣性を解き放つことといいますか……

 

「アリサ? もう、ぼーっとしてないで早く終わらせないと寝る時間なくなっちゃうよ?」

「は、はぃ……」

 

 え!?

 まだ十二時も回ってないのに寝る時間がなくなるってそれはつまりそこまで長い時間頑張るってことですか!?

 は、初めてでそこまで濃厚にしてしまうともう後戻りできなくなる気がするのですが……

 

「よしっ、全部敷けたし、皆も布団の中に運んだから僕たちも寝よっか?」

「ふぁっ! ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 え、えとこういうときに備えて身体はしっかり入念に洗っていますし髪の毛もふわふわでシャルの好きなシトラスの香りです!

 下着も勝負下着ではありませんがなかなか可愛らしいお気に入り……生理中でもないですし危険日なのは女同士なので気にしなくてよくて、体調もばっちりなので途中でお腹を壊すこともないでしょう。

 えと、あとは爪も切ってますし無駄毛なんて生えてませんし、歯も磨きましたし口臭にも問題ないはずです。

 えと、あと確認すべきことは……あ! ご、ゴム持ってません! って女同士ですってば!

 

「アリサ?」

「シャル……」

「うん、おいで」

 

 シャルが掛け布団を、もちあげて私を招き入れます。

 恐る恐る横にお尻をついて、ゆっくり横になります。

 

「じゃ、おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

 

 ……あれ?

 あの、シャル、本当に寝ちゃうんですか?

 

「わ、私の意識のしすぎですか……」

「ん? 眠くないの?」

 

 も、もう!

 胸がドキドキしすぎて眠気なんかありませんよ!

 

「あ、そっか……アリサ」

「はい?」

 

 ちゅっ……

 

「っ!?」

「ふふっ、おやすみのチューだよ」

 

 あ……シャルのばか……

 

 

 ◇◆◇

 

 

「せっかく、落ち着き始めてたのに……シャルのせいですよ?」

「へ? ぅむぅ!?」

「ん、ちゅ……ぁむ、ん、ふぁ、んちゅ、ぁん、ん……」

 

 無理矢理シャルの唇を奪ってさらに舌でシャルの前歯をノック……少し緩んだ隙をついて舌を口腔内に挿し込みます。

 そのまま舌を絡み合わせ、歯茎をなぞり、唾液を注ぎ込みました。

 ……大人のキスは一松さんが二木さんに勝てる唯一の得意技だそうです。

 あの二木さんに耐えられないものが初めてのシャルに耐えられるわけもなく……

 

「あ、ありさ……?」

「ふふっ、シャル、目がトロンとしちゃってますよ?」

「う、うそぉ……そんなわけ…ないもん」

 

 まぁ、それならそれでもいいんですけどね?

 えと、口の次は確か……

 

「ひゃん!?」

「シャルって隠れ巨乳ですよねぇ。セシぃとかのせいでかすんでますけど十分妬ましいレベルです」

 

 シャルのネグリジェをたくし上げシャルの胸をブラジャーの上から片手でやわやわと揉みほぐしながら逆の手でホックを外します。

 

「あ、アリサ!?」

「ふふーん、フロントホックだなんて……」

 

 外しやすくていいですねぇ。もしかしてそのためにこれを選んだのでしょうか?

 そしてブラジャーを剥ぎ取り肝心なところを責め立てます。

 

「ぁ、痛っ! つ、摘ままないで……」

「とか言いながら声が甘くなってますよ?」

 

 シャルはちょっと痛いくらいがお好みですか?

 確かにどちらかといえばそっちの方ですよね……私と相性がいいんじゃないでしょうか?

 

「あ、ありさぁ…皆が起きちゃうよぉ」

「シャルが感じて声を出さなければいいんですよ?」

「そ、そんなぁ……ふぁ! もぅ……いぢわる……」

「そんな目しても……」

 

 胸から手を離しお腹をさすり、おへそを経て太腿の内側の肉を押します。

 

「あっ……」

「分かりました? 今、開きましたよね?」

「そ、そんなこと、ない……」

「またまたぁ……ほら」

「や、だめぇ……」

 

 そして手でショーツのクロッチ部分を擦ります。

 汗か、はたまたそれ以外のなにかか……夜気に冷やされた水分を指先で感じます。

 

「やぁ……ふぁ、ぁん……だ、め……」

「ね? 湿ってるじゅないですか。さっきので溢れちゃったんですよね?」

「…………うん」

 

 やっと素直になりましたね……真っ赤になっちゃって可愛いですね。

 準備もできましたし……メイク・ラブといきましょうか。

 

「しゃる……皆さんを起こさないように、声を抑えるの手伝ってあげます」

「え?」

 

 ちゅ……

 

「こうやって……」

「……ばか」


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