Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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「一番大切なもの」


72. La chose qui est laissée finalement

「鈴、クラリッサ……準備はいいか?」

「いつでも」

「準備万端です」

 

 ISを展開し、ラウラの確認に一声だけ返して前を見据える。

 迫り来る戦車の群れ。

 この基地はフランスまで数キロという場所に作られていて、そこまではひたすらに平野が続いている。

 フランスからの攻撃ということにしたいみたいだけど実際には、ドイツ・フランスの地下に不法に作られた空間からの出撃と戦車自体の空輸によって無人機群が構成されていることも判明してる。

 問題は、その量。

 最初に確認した時点で戦車と戦闘機はそれぞれ五十程度だったのに、今じゃその三倍以上。しかもまだ数を増やし続けている。

 この調子で増えられると……ちょっと危ないかもね。

 私とラウラは襲撃前まで模擬戦してたからエネルギー足りないし、そもそも第三世代型の燃費じゃあ……

 

「アリサかシャルロットがいれば……」

 

 あの二人のは第二世代型だから継戦能力は私達の数倍あるしね……特に二人のISは実弾兵器が主体なのも大きいわ。

 ……双天牙月で近接なんてしても、逆にシールドエネルギー削られて早く落ちそうだし……

 

「って、ラウラ、あんたのIS、腰についてるの何?」

「む? ああ、これか?」

 

 シュヴァルツェア・レーゲンの腰に小さいドラム缶とでも言えばいいのか、そんな形状のものが複数ぶら下がってる。

 さっきまではあんなものついてなかったと思うんだけど……

 

「これは小型のIS整備機だ。ちょっとした調整や、戦地で立ち往生してしまった際に、自陣に帰還できる程度まで簡易的な修理を自動で行うロボットだな」

「ふぅん」

「まぁ、今回は本来の用途としては使わないがな。鈴、ジャックを開け」

「え? ……はい、開けたわよ?」

「じゃあお前たち、頼んだ」

「「「はっ!」」」

 

 ラウラの声に三人の隊員が応えて駆け足でラウラのと同じようなドラム缶を運んできた。

 そして、それを私の甲龍に手早く着けていく。

 

「え、ちょ、なに?」

「うむ、鈴、ステータスデータを見ろ」

「うん……うん? 追加バッテリーパック?」

「この整備機はISと同じエネルギーを利用しているからな。緊急時の整備、および追加バッテリーが主な役割だ。焼け石に水だが無いよりはましだろう」

「なるほどねぇ……」

 

 三つで一時間か……戦闘だと五分程度で使いきっちゃう量だけど、確かに無いよりはマシね。

 

『敵、レールカノンと龍砲の射程範囲内に入りました!』

「わかった」

「了解!」

 

 オペレーターの声に私とラウラが応える。

 エネルギーが少ない私達の作戦は敵が遠くにいる内に私とラウラで数を減らし、それを潜り抜けてきたのをクラリッサさんが潰していくという作戦。

 PICを使わなくていい分、エネルギーを節約できるって訳。

 それにクラリッサさんの黒い枝(シュヴァルツェア・ツヴァイク)は燃費がいい方らしいし……

 

「よーし、当たり」

「鈴、油断はするなよ?」

「分かってるって」

 

 私が龍砲で地面ごと戦車を引っくり返し、ラウラは戦闘機を撃ち落としていくっていう寸法。

 引っくり返した戦車はそのままバリケードになるし、障害物って感じに判断した無人機の人工知能が勝手に壊してくれる。

 エネルギーが切れるまではこのまま単純作業ね。

 問題はラウラの方。

 戦闘機は戦車みたいにのろまじゃないし、足止めなんてこともできない。向こうは数十機単位なのに、ラウラはパンツァー・カノーニアに付いてる二門のレールカノンしかないから遅かれ早かれ戦闘機は基地上空に到達しちゃう。

 

「ふむ……やはり一人で抑えるのは至難だな……クラリッサ!」

「了解です」

 

 ……ちょっと予定より早いけど仕方ないわね。

 それに私の方は予想より上手くできてるし。

 

「……スクワートゥ・スターム」

 

 クラリッサさんの声と共にシュヴァルツェア・ツヴァイクの背中から漆黒の木の枝みたいなものが展開された。

 見ようによっては翼の骨格標本にも見えるそれは分類上はセシリアのブルー・ティアーズと同じビット兵器。違いがあるとすればセシリアのは射撃だけど、こっちは斬撃。

 エネルギーを放ってしまうセシリアのブルー・ティアーズと違って、エネルギーを留めていられるソードビットとでも言うべき兵器ね。

 兵装の名前を言って展開するのは未熟な証なんて言われてるけど、実際の戦場では速さが全てだから、むしろ合理的だし……軍隊式ってものなのかしらね。

 アリサもIS乗りとしては高いレベルにいるのに本気の時は兵装の名前を叫ぶし。

 無言で展開する、なんていうのはスポーツとしての見映えを気にしただけのものなのかもしれないわ。

 

「では隊長、援護はお願いします」

「任せておけ」

 

 それだけ言ってクラリッサさんは戦闘機の群れに向かって飛んでいく。

 途中、IS本体から枝の根本の部分が切り離され、十数本のソードビットとしてクラリッサさんに付き従う。女王を守る騎士みたいでちょっと壮観ね。

 そして、クラリッサさんが戦闘機の一群のど真ん中に達した瞬間、それぞれが周囲の戦闘機を切り落とした。

 ものの数十秒で突出してきていた戦闘機の一団は壊滅、クラリッサさんは無傷だ。

 

「ラウラ、あの剣、全部操られてるの?」

「いや、実際にクラリッサが動かしているのは半分くらいだな。残りは視線による半自動制御で攻撃しているだけだ」

「なるほどねぇ……あんたのAICといいドイツの技術屋も相当よね」

 

 さすがヨーロッパでもいち早く第三世代型のプロトタイプを作り上げただけはあるわ。

 私の甲龍なんて燃費に拘った、なんて言ってるけど実際はこれ以外は作れなかっただけだしね……むしろ作れたことすら奇跡だったわ。

 

「さ、私達も働こう」

「そうね」

 

 ◇

 

『次の角を右、です』

 

 エリーさんに頂いたナビにしたがって走ります。

 ……なぜか、ナビゲーターがエリーさんの声なのですが……まさかあの瞬間にこれのプログラムを組み立てたわけではないですよね?

 行き先がシャルのいる部屋とその先のゲート以外に設定できなくなっているのも偶然ですよね。

 ……エリーさん、技術屋としてフランスに欲しいです。

 

「それこそドイツとはお隣さんなんですし、軍部を連合的な扱いにしてISも共同研究とかどうでしょう?」

 

 もうフランスは第三世代型のプロトタイプを組み上げ始めてますし、技術力が認められるのもそう遠い日ではないかもしれません。

 なにより、フランスには各国ISの詳細なデータがありますからね。

 グレーゾーンギリギリの方法すら使って機体情報を入手してます。

 これは、どこの国にとっても魅力的な情報です。

 それこそ、装備をある一つの機体の弱点を突けるものにすれば第二世代型で第三世代型に勝つことも可能ですからね。その代わり、それ以外では役立たずになりますけど。

 

「いたぞ!」

「止まれ! 撃つぞ!」

 

 廊下を塞ぐように何人かが設置した銃を構えていました。って、あの銃……対物ライフルじゃないですか!? あれはさすがに死ねます! 穴あいちゃいます!

 というか、いつの間にか私達が動き出したことを知られていたようですね。

 まぁ、篠ノ之さんを助けたときでしょう……なかなか迅速な対応もできるようで。ちょっと感心です。

 だからと言って止まってあげるわけでもないんですけどね。

 

「く、来るな!」

「全員、撃てぇ!」

 

 いや、全員て、あなた入れて四人しかいませんよ?

 まぁ、対物ライフルの威力は怖いですが……

 

 ダダダン!

 

 私の顔、胸、下腹部を穿とうと殺到する三発の弾丸。

 いい腕ですね。

 ですが、避けます。

 ……足に力を込めて斜め上に跳躍。PICを利用して重力を相殺すると共に、左手側の壁に向かって体を押し付けるような力を作り出し、壁を地面に見立てて走ります。

 そしてさらに跳躍。

 天井を二度蹴り、四人の頭上を抜けたところで彼らの背後に降ります。

 そして、反応される前にそれぞれの首筋に手刀を落として昏倒させました。

 うん、今の私、忍者みたいでかっこよかったはずです。

 さっき思い付いた超三次元殺法です。

 

『残り三十メートル強』

「……おかしいですね。もう少し人がいてもいいと思ったのですが」

 

 まぁ、楽なことには変わりませんし、気にすることでもないですね。早いとこシャルを助けましょう。

 ……シャルとうまく話せるかは分かりませんけど……それでも、仲直りできるかもしれませんし……

 

「私から……仲直りしたいって言えば……平気なのでしょうか?」

 

 シャルがいるはずの、その扉の前で足が止まってしまいました。

 自信が、ないです。

 いえ、きっとシャルは許してくれますが……私が引きずりそうで……もしかしたら怒ってるけど仕方なく我慢して許してくれてるのかも、なんて。

 もっと、いろいろ言ってほしいです。

 ……だから、ほんとはちょっと嬉しかったんです。

 怒っちゃいましたけど。

 友達じゃ嫌なんて、もう言いませんから……恋人か他人か(オール・オア・ナッシング)なんて私には無理でした。

 シャルが存在しない世界なんて……私に耐えられるはずが無かったんです。

 だって、

 

「私の世界は……シャルと出会ったあの瞬間に始まったんですから」

 

 ラウラさんから預かったマスターキーを使って扉の鍵を……開けました。

 そして扉を……

 なんて言いましょう。

 助けに来ました?

 守れなくてごめんなさい?

 無事で良かった?

 もう大丈夫です?

 ……どれも、しっくりきませんね。

 それでも、扉を開けない訳にはいかないので……私の怯えを表わすかのように、ゆっくりと扉を開けました。

 

「シャ、ル……?」

「アリサ!?」

「あ、の……その、怪我は、」

「アリサッ!」

「きゃっ!?」

 

 視界が回転して、身体にはちょっとした浮遊感。

 そして、体には少しの重み……飛び付かれました……?

 

 どさっ

 

 痛ぁ……突然のことで受け身を取り損ねました。

 

「よかった……アリサが怪我してなくて……よかった……」

「あ、ぅ……」

 

 抱きつかれた勢いで背中から床に落ちてしまったので息が……

 シャルは、私のことを心配してくれていたんですか……?

 自分は捕まってしまっていて、どんなふうに扱われるかも分からなかったのに?

 私が最後にシャルに向かって言った言葉が、大嫌い……なのに……?

 

「よかったよぉ」

「けふっ……あの、立てないので……」

「あっ……ごめん……アリサの気持ちも考えないで……」

「え……?」

 

 シャルがなにかよくないことに気付いたかのように、パッと離れてしまいました。

 私の気持ち?

 今の私の気持ちは……なんでしょう?

 嬉しいし、恥ずかしいし、ちょっと怒ってますし、やっぱり少し哀しいですし……でも、悪い気分じゃないです。

 

「んと、アリサ……ゴメン、ね?」

「へ?」

「僕はね……多分、心のどこかでアリサならちょっとくらいのことなら笑って許してくれるって……ううん、我慢してくれるって、勝手にそう思ってた」

 

 シャルが言っているのは……飛行機での、アレですか?

 ……あれが起きてからまだ一日と経っていないんですねぇ。

 結局、シャルに対して怒るなんてこと、私にはできないんでしょうね。

 

「シャル、もういいんですよ。私はもう怒ってません」

「違うの……アリサが怒ってるから謝ってるんじゃないの。僕が……僕がアリサを傷つけたから……」

「いえ、ですから、」

「誤魔化さないでいいよ……?」

 

 本当に誤魔化してなんて……

 私は、本当に……今、シャルが私に触れて、見て、話しかけてくれるだけで……

 

「シャルが私のことを都合よく扱っても、他の人のために私に我慢させ、ても……シャルが、私のことを見捨てないでいてくれるなら……それだけで、」

 

 泣いちゃダメです。

 今泣いたら、本当にシャルが私を傷つけたってことに……涙なんて、見せられません……

 

「ごめん・・・! アリサ、ごめんね! 僕、そんなつもりじゃなかったけど……それでも、アリサにたくさん我慢させてたんだね……? 嫌だったよね……?」

「違っ! そんなこと……!」

 

 そんなこと……そんなこと……

 口に出して言ってしまったら、シャルに嫌われてしまいます……だって、私は、本当は……

 

「そんなこと、ある、わけがぁ……ぐすっ」

「ごめんね……」

「だから、謝られることなんて……」

 

 ぎゅっ……

 

「ふぇ……?」

「我慢、しないでいいよ? 全部、悪口でも何でも……吐き出して……?」

「あ……ぅ……」

 

 シャルが、優しく抱きしめてくれました。

 

「今、全部言ってくれたら……多分、僕たちはもっと仲良くなれると思うの。ね?」

 

 本当に……ですか?

 私、すごく自分勝手なことを考えていますよ?

 本当に、腐った生ゴミみたいに……最低と最悪の乗算の結果みたいに……マイナスの要素しかない、そんなドロドロなことしか、出てきませんよ?

 

「大丈夫……僕を信じて?」

「あぅ……」

 

 こんな風に抱き締められて、そんな目で見つめられて、そんな声で信じてなんて言われたら……もう……

 

「私は、」

 

 我慢、できません……!

 

「私は、クラスの誰よりも、自分よりもシャルを優先してきて……そもそもシャルをずっと護ってきたのは私で……それは誰かからの命令ではなくて私がしたいからそうしていたということで。私が、一番シャルの近い場所にいていいはずなのに……!」

 

 一度、口を開いてしまったら、もう止まりません。

 支離滅裂なのも分かってますけど……それでも、私は……

 

「私はシャルと仲良くしたくて……シャルの隣にいたくて……シャルに誉めてほしくて……だから頑張ってるのに! 誰も、誉めてくれなくて……私ならできて当然って……私にだって、できないことは沢山あるのに……!」

 

 鈴ちゃんみたいに前向きでいられないし、セシぃみたいに全部を俯瞰できません。ラウラさんみたいに自分に自信はないし、織斑君や篠ノ之さんみたいに素直に回りの力を借りることも……出来ません。

 シャルみたいに、周りに気を遣うことも……できません。

 だから、私が唯一できる戦うことで、シャルの役に立ちたいのに……それでも、私は沢山いる専用機持ちの一人というだけで。

 戦うことじゃ、シャルにとっての唯一になれないのに……それでも守り続けたくて……

 

「ずっと、シャルを守ってるのに……シャルは私よりも他の人のことばっかり気にして……私が喜ぶようなことをしたら、それきりで……シャルの方からは、全然、なにもしてくれなくて……シャルは、人のことばかりで私のことなんてぜんぜん見てません。私くらい、シャルのために生きている人はいないのに、シャルは……気にしてくれてません……近くに、いさせてくれません」

 

 本当に、こんな自分勝手なことをばかり……でも、私はシャルを独り占めしたいんです。

 他の誰とも話してほしくないんです。

 私のことを離してほしくないんです。

 ずっと一緒に……いたいんです。

 

「アリサ、泣かないで?」

「……泣いて、ません」

「泣いてるよ。ほら……」

「ぅぐ……」

 

 私の一撫でしたシャルの指は確かに濡れて、光を反射しています。

 

「これは……あ、汗ですっ!」

「ベタだね……」

「ぁ……ぅぅぅ!」

 

 ぱくっ

 

「はぇ!? あ、アリサ!?」

 

 私の目の前に出されたシャルの指をくわえてやりました!

 

ふふむ(ふふん)ほうふへあ(こうすれば)わらひはあいは(私が泣いた)ひょうほはんへ(証拠なんて)……!」

「ちょ、アリサ、くすぐったいよぉ!」

 

 ん……シャルの指、ちょっとしょっぱくて……

 

おいひぃれふ(おいしいです)……」

「っ……!」

「ふふ、ひゃる(シャル)はおはあっはれふ(顔が真っ赤です)

「あ、アリサ、ほんとにダメだって!」

 

 なんでしょう。

 最初はちょっとした出来心と好奇心だったのですが……顔を真っ赤にして、でも指を引っ込めないシャが……なんといえばいいのでしょう……なんというか、愛しいです。

 指の腹を舐めると、シャルがピクリと反応してくれるのが楽しくて、嬉しくて……癖になっちゃいそうです……

 

「……こほん」

 

 そこに響く第三者の咳払い。

 ……っは!?

 そうでした、こんなことをしている場合じゃありませんでした!

 早くシャルを連れて逃げないと……!

 ……でも、まだせっぱつまってないのでもう少しくらいなら……

 

「篠ノ乃箒、お姉さまはどうして私達に一度気付いて動きを止めたのに、また行為を再開したのでしょうか?」

「いや、変態(アリサ)の考えることは私にも正直あまり理解出来ない」

「それにしても仲直りの手段が押し倒して相手の指を優しく愛おしそうに舐めることだなんて……お姉さまもなかなか激しい方ですね。きっと変態性癖の持ち主が多い私たちの隊に入ってもやっていけます」

「あ、あああアリサっ! 箒と、えっと……」

「……シュヴァルツェ・ハーゼの参謀、エリーです」

「とにかく見られてるからっ」

 

 ……っは!?

 そうでした、こんなことをしている場合じゃありませんでした!

 早くシャルを連れて逃げないと……!

 ……でも、まだせっぱつまってないのでもう少しくらいなら……

 

「もうひょっと……」

「セシリア・オルコット、何となくですがお姉さまは思考をループさせている気がします」

「そうですわね。それは私にも何となくわかりますわ。というか、多分私達にみられたのが恥ずかしくて現実逃避をしているのでしょう」

「なるほど。さすがお姉さまの幼馴染です……それにしてもお姉さま、私に向けてお尻をふりふりするということは……誘われているのでしょうか」

「むぅっ!?」

 

 背筋がぞわっとしました!

 なんというかお尻の穴から氷を入れられたような、そんな嫌なひんやり感に襲われて……ついシャルを起こしてその背中に隠れてしまいましたよ。

 ……今のエリーさん……ですよね?

 振り向けば可愛らしくにこりと笑って首をかしげるエリーさん。

 勘違い……ですね。

 まったく、こんなに可愛い女の子に対して怯えるだなんて私もどうかしてます。

 

「では、お姉さまも正気に戻りましたし行きましょうか」

「そうだな。早くラウラたちを手助けしなければ」

「きっと、苦戦していますわ」

 

 ん、セシぃも助かったんですね……

 織斑君はなぜかエリーさんに後頭部を踏みつけられていますが……あぁ、なんで跳ね除けないのかと思ったら、エリーさんの服、ISですね。

 ……エリーさんが背後に回した手からウィンウィンと良くない音がするのは気にしないでおきましょう。

 一体どういう教育を受けたら十二歳であんなにアダルティになるというのでしょうか。

 

「アリサ、行こっ? 早くみんなを助けないとね」

「……また、シャルは他の人たちのことを気にして……私は、シャル以外のために戦いたくありません」

「アリサ……」

 

 ……なんて、冗談ですけどね。

 ちょっとくらい困らせたっていいですよね?

 私は、シャルがお願いしてくれればなんでもします。

 だから、お願いしてくれるだけで……シャルのためになにかできると思わせてくれるだけで幸せです。

 

 ぎゅぅ……!

 

 しゃ、シャル!?

 

「じゃあ、僕がアリサの代わりに戦うよ。だから、後ろから応援してね?」

「あぅ……もう、冗談ですよっ! 戦うことしかできない私が戦わないわけないじゃなですか!」

 

 まったくもう。

 シャルのためなら戦うのだって幸せですって。

 

「……そんなことないよ?」

「へ?」

「戦わなくても、いてくれるでいいんだから」


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