Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
追記:一話分抜けておりましたので補完させて頂きました
最初の戦闘地点からさらに数キロ離れた空域に
そして私達が索敵範囲に入ると同時に、まるで待っていたと言わんばかりに、その四肢を、翼を広げます。
ゆっくり起き上がる様は自らの優位性を自覚しているかのようです。
人工知能のくせに生意気ですね。
……私、これでもイライラしてるんですからね?
「それで威嚇しているつもりですか? ……篠ノ之さん、Go!」
「応っ! ……って不破も来ないか!」
「
最初から攻撃しては後で福音の裏をかくことができません。
……というのは建前で、やっぱり風邪引いてたみたいなんですよ。頭痛い……
セシぃは超上空に待機、シャルは私達の後方に、鈴ちゃんとラウラさんはビュンビュン飛び回ります。
篠ノ之さんが福音を攻撃し、皆が紅椿が攻撃されないように援護をする役割です。
そして私はその皆さんが狙われないように行動する役割。私が狙われ始めたら今度は篠ノ之さんが攻撃して……という感じになるはずです。
単純ですが、初めての実戦で連携もしなければならないという極めて困難な現状ですからこれくらいの方がいいんです。
「篠ノ之さんが敵と認識されました。シャルはガーデンカーテンを。鈴ちゃん、ラウラさん、援護射撃を始めて下さい!」
『了解!』
私はまずは遠くから射撃を。
今のところ確認されている福音の攻撃手段は翼型複合スラスターによるエネルギー弾のみ。なので双子のスナイパーライフル、スコルとハティを展開、その砲口を狙撃します。
唯一の攻撃手段ではなかったとしても最大の攻撃手段のはずですから、きっと破壊されることは避けようと動くはずです。
一発、二発、三発……流石にISの装甲は硬いですね。全て弾かれてます。
これでも一応対戦車ライフルより威力があるのですが……至近で発射すれば戦車二台くらいは貫通もするんですよ?
そんな多様な角度からの攻撃に痺れを切らしたのか、とうとう福音の翼が開かれます。
……いきなり全砲門展開ですか。豪気ですねぇ。
「篠ノ之さん無理に避けようとしないでシャルの陰に! セシぃはタイミングを合わせて福音左翼からの砲撃を潰して下さい! 鈴ちゃんは避けながら福音の背後に、双天牙月の準備を! ラウラさんは砲撃を続けて下さい!」
左翼側にシャルとラウラさん。右翼側に私と鈴ちゃんです。
篠ノ之さんはすぐにシャルの陰にいけますし、私と鈴ちゃんは福音からある程度距離があるので避けるのに意識を集中すれば簡単でしょう。
ハイパーセンサーを使って砲門の向きから前もって射線上から離れるの平行して、エネルギーを溜めている砲門を狙撃します。
砲内部は意外とデリケートなんですよね。とはいえ充填時間は数秒間。破壊できる砲門は精々二門が限度です。
「っと……これは、完全に狙われましたね」
今まで多面的な攻撃に翻弄されて動けなかった福音が方向転換。超高速で私に向かってきます。
到達必要時間コンマ〇二、イグニッションブーストは間に合いません。接地していないので嵐才流の歩法も実践できません。
これは、避けれませんね。
「避けれないなら……受け止めます!」
不破圓明流、金剛。
筋肉を収縮させて体を堅くする防御のための業。使いこなせば胸板で拳銃の弾を受け止めることも可能です。ライフルは無理です。
……でもお腹を狙ってきていてよかったです。腹筋なら私も一応は金剛を使えますから……ただの体当たりなら衝撃で内臓が破裂したりもしないでしょう。
ズドォン!
「ぐぅっ……!」
きっつぅ……いやぁ、これはやっぱり内臓まで来てるかもしれません。痛いというより苦しいです。
予想以上にお腹に響きました。破裂してなくても故障はしてそうです。
福音の突進(チャージ)を受け止めましたが、海面に向かって押され続けてます。
……さっきの衝撃に加えてこの勢いで海面に叩きつけられたら流石に気絶するかもしれませんね。
まぁ、もちろん?
「ここで墜ちる私じゃ、ないんですけどねぇっ!」
目の前にある福音の翼を掴み、スラスターを吹かせ相撲で言うところの
私という抵抗力を失い、ついでとばかりに私が蹴飛ばしたため福音は海へ真っ逆様。片側のみのスラスターでは逆噴射も効かないのでそのままドボンです。
これで頭冷やして暴走も止まってほしいですね……
『不破、大丈夫か!?』
「もちです! 篠ノ之さんは早く追撃をっ、」
グラリ
ここで、風邪の影響が……さっきの衝撃が原因ですね。
こうなると急激な視界のブレなんかでブラックアウトするかもしれません。
……とはいえ、そんなことで止まったら私じゃないです。
『上がってこないぞ?』
「……操縦者の意識が断絶したんでしょうか? でもIS反応はありますし……」
少し離れた位置に浮いている篠ノ之さんから通信が入りました。
妙ですね。海中にいればいるほど、こちらの準備が整って福音にとって状況が危険になるのは分かり切っているはずなんですけどね。
海面から私達を狙っているなら、それこそ意味がないです。あのエネルギー弾といえども海中から撃つのでは威力の現象が激しいはずです。
『待て。不破、海面を見ろ』
海面……やけに泡立っていますがそれ以外におかしなことは……
『あれは泡といっても沸騰した海水だ! 見ろ、湯気まで!』
でも、どうして……?
「とりあえず離れておきましょう。相手は海中です。対処のしようはいくらでも、」
『La……♪』
「っ!? 篠ノ之さん回避!」
突然の機械音声になぜか背筋が凍りました。
私もガーデンカーテンを展開、二枚の物理シールドと二枚のエネルギーシールドを前方に展開。やはり、なぜか全力で。
そして次の瞬間、
『キアアアアアア……!!』
悲鳴のような、獣の咆哮のような、そんな声が耳に届き、
「なっ!?」
いつの間にか……私のハイパーセンサーをもってしても知覚できない速度で福音が接近、私の腕を掴んでいました。
急いで離脱を……!
ぐわんっ
「うっ……っぐ!」
動こうとした瞬間、今までで一番強い頭痛の波が来て……結果的に脱出の機を逃しました。
そして福音の片羽の頭部から欠損を補うようにゆっくりとエネルギーで編まれた翼が生え……
「マジ、ですか……?」
オープン・チャネルを使ってある一言を呟いたのと同時にその翼に抱かれました。
◇
「アリサぁっ!」
あのエネルギー翼は今までの弾と同じ性質のもの……それをアリサは至近距離で何発も受け止めて、海に墜ちた。
福音の残っていた翼もひび割れ、左右が同じものに変わる。
これは……第二形態移行(セカンド・シフト)……?
「……アリサ、あんたもなかなか気が回るわよね」
最後の最後で、
『冷静に戦闘を続行してください』
だなんて……
「そんなこと、できるわけがないでしょうがっ……バカ!」
アリサに対するバカバカしさとか、福音に対する怒りとか、全部を吐き出すように龍砲を発射。
そのまま双天牙月を片手に突っ込もうとして、
スコンっ
妙にコミカルな音を立てて甲龍の装甲ぶつかった何かが私の動きを止めさせた。
反射的に落ちていくその塊を取る。
「なに、これ?」
ただの金属片。
でもその黒は嫌というほど見覚えがある。
アリサのIS――カゲロウに使われている特殊複合装甲の一枚。
「あの子……まったく、おせっかいすぎ」
タイミング的にアリサの装甲が破壊された余波で飛んだ来たわけではないはず。
……だとすると堕ちていく途中でこれを投げたわけね。
「皆! アリサは生きてるわ! てかあの子結構余裕あるじゃないの! また同じ作戦で追い詰めるわよ!」
全員に指示をしながら背中を向けている福音に双天牙月の刃を向ける。
まだ気付かれてないっ!
ズゴンっ!
鈍い音をたてて福音の背中の装甲が割った。
……いや、正確に言うなら、
「やっちゃったかも……」
自発的に装甲が割れたって方がいいわね。
そのひび割れの下から、福音の頭のものより二回りほど小型のエネルギー翼が生えて私が吹き飛ばされる。
……なんとか耐えられたけど、間に挟んで衝撃を肩代わりさせた双天牙月(これ)はもう使い物にならないわね。
福音はそのまま上昇、あっという間にセシリアに接近して撃墜してみせた。
続いてラウラ。
……龍砲だけで、どうしろっていうのよ……!
◇
――エネルギー充填率八……十七……二十二……三十五――
◆
リンが装備を潰されて、セシリアとラウラは落とされた。
アリサの時のを見る限りガーデンカーテンは最早意味がない……どうすればいい?
箒が残ってるのがせめてもの救いだけど、たった二人で相手取るには第二形態移行(セカンド・シフト)を経た福音の性能は異常すぎる。
それでも、やれるだけやらなきゃ……!
ガルムとヴェントを展開、距離を開けながら箒が斬り付けた時にどうしても生まれてしまう微妙な隙を潰すように連射する。
もう福音はほぼ全身がエネルギー翼で覆われててダメージが通っているのかも分からない……一夏の零落白夜があれば、あんなの関係ないのに……箒が頑張って切り続けるけど、やっぱり明確な効果はでない。
そして、とうとう箒のエネルギーが切れた。
やっぱりあれだけの性能を持つ機体だから燃費は悪いみたいだね……まだ墜落するまではいかないけど急激に動きの鈍った箒を
一向に効果を示さない二つの装備を放棄して二丁の重機関銃、デザートフォックスで福音の全身を狙う。これでどこかダメージの通る場所が見つかれば……
「なんて……無意味だよね。こうなったら、」
掃射を止めて僕を標的に定めた福音を見据え返す。
右手にレイン・オブ・サタデイ、左手に
ラファールに装備されている至近戦用の最高威力の装備を二つとも展開する。
一か八か、接近してきた福音を叩きつぶす……!
確実に捉えるために空中で停止、福音の動きを少しも見落とさないようにハイパーセンサーに動きの処理だけをさせる。
そして、
ぐぉん!
福音が消えた。
「っ、速っ!? ……くふっ」
二つの装備を構える暇もなく喉を締め上げられた。
それ、でも……今がチャンスだから……
両手を福音に突きつけて攻撃しようとする……だけど、酸素が足りなくなる方が先で……
『私の大事に、なにをしてるんです……?』
気絶する寸前、そんなことを言っている知っている人の知らない声を聞いた気がした。