Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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「仕返し開始」


55. Un début de la vengeance.

「では最終確認です。まず篠ノ之さんが主な攻撃役です」

「うむ」

「シャルは篠ノ之さんの近くでガーデンカーテンを展開しながら待機しててくださいね」

「うん」

 

 ……結局、さっきのハグはなんだったんでしょう。

 普通、仲がよくても押し倒して抱きしめたりは……しないですよね? あれ、でも鈴ちゃんにも抱きしめられたまま同じベッドで寝たりしてますね……

 うーん、普通じゃないと思ってしまうのは私に友達がいなかったからかもですね。

 そっか、女の子同士で抱きついたりするのは普通のことなんですね。

 ……ということは、私からぎゅってしても………………私から?

 

 ぼひゅっ

 

「あ、アリサ大丈夫か? 顔赤いぞ!?」

「うぇい!? あ、ラウラさん……えと、ラウラさんはシャルが狙われたときにその……名前、なんでしたっけ?」

 

 ……わ、私からというのは想像することすら無理そうでしたことのことですよ……お、落ち着きましょう。

 両肩にレールカノン、左右と正面に対砲撃用の物理シールドを展開するアレですよ。

 えっと、パンツ……?

 なんだかさっきから頭がぼーっとします。

 

「今朝、砲戦パッケージが届いたって言ってたじゃないですか」

「あぁ……パンツァーカノーニアか。それで福音の気を逸らしてシャルロットが狙われないようにすればいいんだな?」

「はい。その後は私が突っ込んで気を逸らすので」

 

 楯であるシャルに集中攻撃をされると困っちゃいますからね。

 ……それに、ラウラさんには悪いですけどシャルに怪我してほしくないですし。

 

「鈴ちゃんは龍砲で断続的に攻撃をお願いします。それでもし福音の後ろをとったら双天牙月で攻撃してください」

「了解」

「わたくしはいかがいたしましょう?」

「セシぃは福音の真下……いえ、真上で待機してください。真上と真下だけは福音の攻撃範囲ではないようなので」

「分かりましたわ。それでエネルギー弾を消していくだけでよろしいんですの?」

「はい」

 

 ブルー・ティアーズのビームは付近のエネルギー弾を誘爆させることは確認しています。

 おそらく電位差か温度差でエネルギー弾が誤作動を起こすのでしょう。

 

「私は篠ノ之さんに合わせて攻撃します。一応あの翼を壊すことを狙いますが……多分、高速戦闘になるので討鬼の鋼杭(ドラクル・ペイン)はダメージソースとして期待できません」 

 

 高速戦でも私が接地状態にあればマシなんですけど……そもそも私は相手を自分の土俵に引きずり込まないと対IS戦は勝てないんですよね……

 カゲロウは兵装的に競技用ISとはいえませんから、ISと戦うことは重要視されてないんですよ。

 この前の学年別トーナメントで思い知りました。

 あんな、少し考えれば気付くようなトリックに引っ掛けられてしまいましたしね。

 あの時は不完全燃焼でしたから……いつか、またシャルと本気で戦いたいなぁ。えへ

 

「っ!?」

「シャルロット? ずいぶん汗をかいているが暑いか?」

「いや……むしろ背筋が冷えたというか……なんかゾクッとしただけ」

「風邪ですか?」

「いやいや……」

 

 変なシャル……本当に風邪引いてないといいですけど……

 さっき、抱きしめられちゃいましたし……

 

「あれ……?」

 

 ぺたん

 

「アリサ? 突然座ってどうしたのよ?」

「あ、いえ、えっと……そうです! お腹空いちゃって……」

「あー。そうよねー、あんた今日朝御飯しか食べてないでしょ? 普段あんなに食べるんだから力抜けても不思議じゃ、」

「わー!」

 

 鈴ちゃん! シャルもいるんですから、普段あんなに食べてるとか言わないですくださいよ!

 しゃ、シャルに食いしん坊キャラみたいに思われたら責任とってくれるんですか!? お嫁さんにしてくれるんですか!?

 シャルも食べられそうなもの探し始めないでください!

 

「あ、アリサ、落ち着きなさいって……」

「とにかく! 私を食いしん坊みたいに、」

「アリサ、はい、あーん」

 

 イチゴジャムパン!

 大好物です!

 

「ぱくっ! モグモグ……食いしん坊みたいに言わないでください! 違うんですから!」

「いや、菓子パン食べながら言われても説得力無いわよ……」

 

 じょ、条件反射です。

 お腹空いてるのも本当のことですし。

 

「アリサ、美味しい? それ、最近の僕のお気に入りなんだよ」

「へー。要チェックですね!」

 

 でもジャムパンよりシャルの笑顔でお腹いっぱいになりそうです。

 もう、こんなに可愛い人が存在していいんでしょうか?

 シャルを見て、世の残念な人を見て、もう一回シャルを見ると神様の残酷さに涙が止まらなくなります。

 

「シャルロットもアリサの扱いになれてきたわね」

「そうかな?」

「そうですわね。傍から見ていると姉妹のようですわ」

「犬と飼い主……いや、今のは失言だ」

 

 犬……シャルのペット……!

 

「わんわん!」

「「「「…………」」」」

 

 ……あれ?

 ここは拾ってくれないと困るんですけど!?

 

わんわん(なにか)! わんわん(言って下さいよ)!」

「アリサ、可愛いー!」

「ちょ、鈴ちゃん!?」

 

 抱きしめっ、苦しいですって!

 ちょ、頬ずりとかダメですよ!

 

「……鈴ちゃんはどちらかというと猫ちゃんですよねー」

「……にゃーん?」

「ぐふっ……鈴ちゃん、可愛すぎます……わん!」

「にゃーっ!?」

 

 可愛いので仕返しです!

 すりすりぎゅー! ついでにペロペロ!

 

「あっ! ちょっとアリサ、舐めるのはさすがに、」

「はいはい、二人ともじゃれるのはそのくらいでね。早くしないと僕、先に行っちゃうよ?」

「あ、シャル……ごめんなさい。すぐ行きましょう!」

 

 少し、ふざけすぎたんでしょうか。

 シャルは笑ってますけど、ちょっぴり怒られちゃったような気がします……私がシャルのこと好きだから意識してしまっているだけかもしれませんね。

 で、でもシャル相手に今と同じことはできませんし……って自分に言い訳しても仕方ないですけど……想像したらクラッときました。

 とはいえ、戦争の時はこれくらい気楽になれた方がいいんですけどね……まぁ、戦争ではないですし、織斑君が大変な状況ですからね。

 真面目にやりましょう。

 

「えっと、準備は整いましたか?」

「すまん、エネルギー回復にもう少し時間がかかりそうだ」

「紅椿が動かないことには始まりませんからね。福音が逃げる素振りを見せていない以上焦ることはありませんよ」

 

 実際には逃げられない、が正しいはずですけど……きっと、福音は最初から束さんの掌の上ですから。

 操縦者の方には同情しますが……束さんにとっての優先順位は篠ノ之さんが最上ですから運が悪かったと諦めるしかないでしょう。

 まぁ、同情はしても助けられませんけどね。もう彼女の未来はある程度決まったも同然です。

 銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は私達に倒されアメリカ軍が回収。そのまま開発は凍結されて操縦者の彼女は新しい専用機が上がるまでは監視付きの長い休暇でしょうね。

 ほんとにご愁傷様ですけど、さすがの私も無関係の人までは助けられませんよ。精々、束さんにフォローの必要性を仄めかす程度です。

 

「でも、どうしましょう。もう確認することもないですし……」

「そうですわね……あまり細部を詰めすぎても臨機応変な対応がとれなくなりますし……」

「一つ崩れただけで全部オシャカだしね」

「アリサの作戦くらい大雑把なのがちょうどいいだろう」

 

 ラウラさん、それって誉めてます?

 ……まぁ、ポジティブに受け取っておきましょう。

 

「うーん……あ! 夏休みの予定とかどうです?」

「不破、いくら何でも気が早すぎだろう? まだ期末も残ってるんだぞ?」

「やー、篠ノ之さん、私にとって期末とかあってないようなものですし」

「これだから学年主席入学は嫌よねー」

「主席入学はわたくしですわ!」

 

 そうそう。私は次席ですよ。

 

「セシリア、今のアリサ見たら信じられないって……というかアリサは手を抜いてたって山田先生がこの前言ってたけど? 結構根に持ってるみたいよ?」

「アリサはなんで手を抜いたの?」

「あー……今だとバカみたいですがあの頃は目立つのが嫌で……本当は学年代表なんかもやるはずではなかったんですけどセシぃが勝手に……」

 

 いつの間にか目立つのにも慣れましたしね……まぁ、クラスの皆さんに慣れたというのもあるのでしょうけど。

 やっぱり大人数の前で戦う時は朝峰巡の人格に出てきてもらわないと辛いですし。

 彼、この前こっちの私は素直なのに……とか考えてましたけど、どういう意味なんでしょうね?

 

「へぇ、アリサが人見知り……少し意外かも」

 

 う……シャルにがっかりされているかもしれません。シャルが来た頃には鈴ちゃんや一松さんたちのおかげでほとんど克服できてましたし……

 なんでしょうね。

 海から戻ってきてから、今まで以上にシャルのことが気になりますよ?

 何を考えているのか。何が好きなのか。自分はどう思われているのか。その他諸々。

 シャルをあ、ああい、愛していると……そう自覚したときも気にならなかったのに……私、なに恥ずかしいことを考えているんでしょう。

 もう、これから戦闘なのにこれ以上体温を上げてしまったらヤバいです。

 

「ふむ。ちょうどいいな」

「なにがよ?」

「夏休み、予定が決まっているものは少ないようだからな。前に言っていたことを実行しよう」

 

 前に言っていたこと?

 なんかありましたっけ?

 ラウラさんはずいぶん嬉しそうにしていますけど……覚えてないとか言ったら泣き出すんじゃないかと思うくらい輝いています。

 

「全員、ドイツの我が軍、シュヴァルツェ・ハーゼに招待するぞ!」

「……あぁ、言ってましたね、そんなこと」

「なっ、アリサ、忘れていたのか!? 私はいつ言い出そうかと悩んでいたというのに!」

 

 ……つい言っちゃう余計な一言ってありますよね?

 まぁ、軍隊を目で見ておくのもいい経験になると思いますし、私個人としてもドイツと関係を持ちたいところですからね。

 私には反対する理由はありません。

 

「ドイツ政府は許可してんの? 同級生とは言っても、代表候補生なんだし私達はある意味敵同士よ?」

「候補生から外れたアリサさんはまだしも、わたくし達はドイツ政府から正式に招待されないと行けませんわね」

「既に頼んであるぞ。喜色満面の二つ返事だったな」

 

 ……招待される側が喜ぶなら分かりますけど……わざわざ内情を公開するようなことをするなんて。

 ドイツ政府、傾いたりしませんよね?

 

「なら、しっかりスパイをしないといけませんね。ドイツもイグニッション・プランのライバルですし」

「あれ? フランスって第三世代型がないからイグニッション・プランは参加させてもらえないんじゃなかった?」

「鈴ちゃん、それは今までの話です。来年の今頃には第三世代型は完成していますよ。試験機ではないものが、です」

 

 束さんのデータがありますからね……これで、シャルが男装していたことから世界の目を逸らせるでしょう。

 私の役目も終わりか近いですね……本妻さんもこの前のトーナメントでなかなかやるじゃないの、とか言ってたみたいですし、シャルの可愛い表情を捉えた写真を送りまくってますし。

 もちろん盗撮です。

 じ、自分用なんてないですよ?

 ……役目が終わって卒業もしてしまったら、シャルとの繋がりは無くなりますね。

 シャルはきっとフランスの国家代表になります。そうなれば私と会うことも難しくなるでしょうし……

 大学を出たらISも降りるつもりです……それだと、ケーキ屋さんになるには遅すぎますかね?

 

「アリサ? アリサ~?」

 

 目の前で手をパタパタふるシャル。

 できる限りのものをこの人に残したいですね。

 

「シャル、私、頑張りますね」

「え? うん。なにを……?」

「全部です!」

「そっか。頑張ってね。僕も応援するよ」

 

 さて、と。

 

「篠ノ之さん、どうですか?」

「ああ、準備万端だ」

「では……」

 

 行きましょう。

 目にもの見せてくれます。

 ……暴走IS相手なので見せる相手が誰かは分かりませんけど。


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